“遠い山なみの光” ★★ 監督:石川慶 |
カズオ・イシグロの長編デビュー小説の映画化。 舞台は、1980年代イギリスのとある田舎町と、戦争の記憶が残る1950年代の長崎の二つが、交互に描かれて行きます。 前者における主要登場人物は、イギリス人と結婚して日本からイギリスに移住した日本人女性(吉田羊)。既に夫は亡くなっており一人暮らし。家の売却を決めた母親の手伝いに、次女のニキが久しぶりに実家に戻ってきます。 後者の主要登場人物は、新しくできた団地に会社員の夫と暮らす専業主婦で妊娠中の緒方悦子(広瀬すず)と、団地から見下ろせる川沿いに建つボロ屋で幼い娘の万里子と暮らす佐知子という謎めいた女性。 上記三人に共通して、謎めいた、不穏な陰があります。 戦後の復興期における中途半端さというか、陰を感じます。表面的に穏やかな生活が送られているようでいて、実はその過去に癒されない傷が隠れているよう。 そうしたミステリアスなストーリーであると認識したうえで、本作品は何を伝えようとしたものなのか、というと、それがわからず、という感想。 2025.09.10 |