|
|
1.人のセックスを笑うな 2.浮世でランチ 3.カツラ美容室別室 6.手(文庫改題:お父さん大好き) 7.男と点と線 8.モサ 9.ここに消えない会話がある(文庫改題:「ジューシー」ってなんですか?) 10.あたしはビー玉 |
この世は二人組だけではできあがらない、男友だちを作ろう、ニキの屈辱、私の中の男の子、昼田とハッコウ、太陽がもったいない、ボーイミーツガールの極端なもの、可愛い世の中、反人生、ネンレイズム/開かれた食器棚 |
美しい距離、母ではなくて親になる、偽姉妹、趣味で腹いっぱい、リボンの男、肉体のジェンダーを笑うな、ミライの源氏物語、あきらめる |
●「人のセックスを笑うな」● ★☆ 文藝賞 |
|
2006年10月 2005/05/31 |
文藝賞を受賞して話題となった一冊。 ペンネーム、タイトルの印象度が強くて、作品内容についてはよく知らないままでしたが、実際に読んでみるとかなりあっさりとした内容。 美術関係の専門学校に通うオレ19歳と、講師ユリ39歳とのラブ・ストーリィです。
帯に記載されている選考委員各誌の選評はいずれも激賞なのですが、読んでみてもうひとつピンと来ない、というのが私の正直な思い。
2人の恋愛関係の終わりもあっさりと訪れ、お互いに相手を傷付けることもない。 |
●「浮世でランチ」● ★☆ |
|
|
ちょっとつかみ難いストーリィ。 会社を辞めて東南アジア、最終的にミャンマーを目指しす旅に出かけた丸山君枝、25歳。 その旅の行程と並行するように、彼女が中学生だった頃のことが描かれます。幼馴染の犬井幸太郎に救われるようにして同級生との関係を何とか維持していた頃。かなり扱いにくい少女だったろうが次第に明らかになります。 その中学時代のこととして印象的だったのが、同級生らと犬井の部屋に毎週集まって行なった“宗教ゴッコ”。 大人になってもうまく人と折り合えないでいるらしい君枝が何故ミャンマーへの旅に出かけたのか。その理由は中学時代の延長にあるようです。旅先のタイ、ミャンマーで君枝は、信仰の篤い人々の姿を目にします。 君枝は旅の目的を果たしたのか、果たさなかったのか。それは判然としませんが、そのミャンマーで君枝は思いも寄らぬ出会いをします。 |
●「カツラ美容室別室」● ★★ |
|
|
「カツラ美容室別室」の店長=桂孝蔵47歳は、傍目にもはっきりそれと判るカツラをつけて仕事をしている。それを売りにして商売をしているのではないか?と客たちは思う。
端的でグッと読み手を惹き付ける書き出しです。 2人のほか、カツラ美容室別室のカツラ店長、同僚の桃井ゆかり24歳、淳之介を美容室に引っ張り込んだ年上の友人、梅田さんとの関係も、なんとなく、そして柔らかく繋がっているようで、これまた絶妙。 |
●「論理と感性は相反しない」● ★★ |
|
2011年06月
|
まずは恋人と同棲中の神田川歩美24歳が登場。 一風変わった短篇集ではありますけれど、何となくさらさらと気分良く読めて楽しい。 本書、一つ一つの篇の意味を考えようとすることなど不要でしょう。そのままただ読んでいると、なんとなく面白く、楽しい。 論理と感性は相反しない/人間が出てこない話/プライベート/芥川/恐怖の脅迫状/架空のバンドバイオグラフィー/素直におごられよう/ブエノスアイレス/秋葉原/化石キャンディー/社長に電話/まったく新しい傘/アパートにさわれない/嘘系図/蜘蛛がお酒に |
●「長い終わりが始まる」● ★★ |
|
2011年10月
|
楽しみに読み始めた作品ですが、ちょっと流れがつかみにくい。 主人公の小笠原は大学四年生で、マンドリンサークルに入っている。そしてそのサークルには、サークルに入ってからずっと親しくしている田中という好きな相手がいる。 混沌としていて、フワフワしてばかりいるようなストーリィですが、大学時代のたゆたうような雰囲気がどこか心地好い、そんなところが本作品の魅力。 |
●「
手 」● ★★☆ |
|
2013年03月
|
「私は25歳。付き合ってきた男性はいつも年上だった。今度のお相手、会社の先輩もずいぶん年上、ひとりはお父さんより上なのだ」という紹介文を読んでしまうとつい構えてしまうのですが、そんな紹介文はキレイに忘れて読んだ方がいい。 本作品は、とてもサラリとした小説。その肌ざわり、手ざわりの心地良さが私には魅力です。 「笑うお姫さま」は、上記の「手」と裏表の関係にあるような作品。僅か15頁程度の小品ですが、私にはとても面白い。 芥川賞候補作になっただけのことはある、質の高い作品です。 手/笑うお姫さま/わけもなく走りたくなる/お父さん大好き |
●「男と点と線」● ★★ |
|
2012年03月
|
前作の「手」同様、これもさらりとした味わいの一冊。 その言葉どおり、各篇の舞台は世界中のあちこちに飛びます。主人公の年齢層も場所に負けず様々。 いずれもあっさりとした短篇小説ばかりですが、様々な形で繋がり合っている(袖触れ合う止まりの男女もいますが)男女の姿が描かれ、その背後が外国の地であって旅行気分も味わえるところが妙味。 「慧眼」の夫婦関係も良いし、「スカートのすそ」の関係が消えていくのは寂しい。 ※なお、作者の山崎さん、舞台となる上記5都市には全て行ったことがあるとか。 慧眼/スカートのすそをふんで歩く女/邂逅/膨脹する話/男と点と線/物語の完結 |
●「モ サ」●(絵:荒井良二) ★★ |
|
|
あれっ、と思った程、予想もしなかった山崎ナオコーラさんの児童向け小説。 主人公は、東京近郊ニカイの町に住む14歳のニート、モサ。 ことごとく親や世間に反抗的なモサ。そうさせてしまう自分のモヤモヤした気持ちの理由が、もうひとつモサには判っていない。 モサが足繁く通う天文台の老観測士=ホシヨミさん、流星に乗って落ちて来た女の子、モサの友人であるハリネズミのハリくん、モサの妹=ミサと、彼らのキャラクターがとても楽しい。 少年が大人になる過程を描いた児童向けストーリィ。児童向け作品がお好きな方には、お薦めしたい一冊です。 【荒井良二】 |
●「ここに消えない会話がある」● ★★ |
|
2011年11月
|
主人公は、各新聞社にテレビ・ラジオ番組欄を配信する「ラジオテレビ欄配信社」に勤める契約社員、広田、岸という男女。 自由に何ものにも捉われずに生きたいと願う広田。無欲に地味に暮らしている。それでも人と繋がることのできる今の職場から離れようとは思わない。 上司の目を窺ったり、諂ったり、昇進や昇給に一喜一憂してしまうというのは、会社勤めをしていて常のこと。 昨年来頻繁にニュースとなっている派遣切りの問題。職を失い収入が途絶えるのは勿論大きな問題でしょうけれど、それと同時に人との繋がりまで断ち切られてしまう辛さというのを、本ストーリィと対比して考えてしまいます。 「ああ、懐かしの肌色クレヨン」も、仕事を通じて人と繋がることができた若い女性を描いた短い作品。 ここに消えない会話がある/ああ、懐かしの肌色クレヨン |
●「あたしはビー玉」● ★★ |
|
2013年08月
|
「ビー玉」という仇名の少女を主人公とした物語とてっきり思い込んでいたのですが、ビー玉そのものを擬人化した物語。 やや性格に難がある感じの、でもシスコン(姉)という、ごく普通の高校生、南田清順16歳。 一人称でも三人称でもなく、ごく身近な存在、清順を仰ぎ見るビー玉という視点が斬新。中々心を打ち明けない男子高校生の本音を内側から観察する存在として、ビー玉というキャラクターは格別。キラキラして透明、光を当てれば光る存在、瑞々しい青春小説という雰囲気を守り立てています。 クラスで打ち解けることのない清順でしたが、ビー玉と言葉を交わすことによって次第に同級生とも言葉を交わし、バイトにも挑戦するといった具合に、積極的になっていく。 これまでの山崎ナオコーラ作品とはちょっと変わって、小さくて可愛らしい女の子の物語になっているところが、新鮮な魅力。 |
山崎ナオコーラ作品のページ No.2 へ 山崎ナオコーラ作品のページ No.3 へ