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1.護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧 2.試練−護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧− |
「護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧」 ★★ JS AOGIRI(DD159) Commanding Officer Midori Saotome |
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本作の刊行を知った最初の思いは、ついにこうした作品が登場してきたか、というものでした。 有川ひろさんにも“自衛隊三部作”がありますが、エンターテイメントという色彩が濃い。 その点、本作は新鮮で、リアルな護衛艦勤務ストーリィ。 前半は、新たに護衛艦あおぎり艦長の辞令を受けた早乙女碧二等海佐のそれまで、家庭状況、前艦長からの引継ぎ、着任を描き、次いで艦長着任後の<分隊点検>の様子がリアルに描かれます。 この辺りは全く知らない世界のことですから、興味津々。 とくに「WAVE」と呼ばれる女性自衛官の扱いのことも。 後半は、初出港直前早々、乗員一名が帰艦していないことが分かる、という事件が発生。 さて、そのトラブルに早乙女艦長はどう向き合うのか、が興味どころです。 何故帰艦しなかったのか、未帰艦者の捜索という点は、ミステリあるいはサスペンス風です。しかし、本作における見処は、職場においてトップがどう危機に対応するか、どう責任を全うし、どう部下の信頼を勝ち得るのか、という点にあります。 そうした時、とかく女性トップは部下の男たちから見定めるような視線を受けがちでしょう。この護衛艦においてもそれは同様。 上記の問題を見事に切り抜けた、早乙女艦長の決断力と行動力に切れ味があって爽快。 折角のストーリィの中身がこれだけでは勿体ない、と思った処、4月に第2弾となる「試練−護衛艦あおぎり艦長早乙女碧−」が刊行予定とのこと。楽しみです。 ※呉と江田島には10年程前に行ったことがありますので、懐かしく感じました。 1.発令/2.着任/3.訓示/4.事故一名/5.捜索/6.出港、再び |
「試 練−護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧−」 ★★ JS AOGIRI(DD159) Commanding Officer Midori Saotome |
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「護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧」の続編と言うより、前作の1週間後という舞台設定からしても、2作を合わせたうえでの後半篇、と言うのが適切でしょう。 前半(前作)が着任と、早々に起きた問題ごとなら、後半である本作は<対潜戦闘訓練>と、ミス山口大学の一日艦長、一般人見学者を招いての<体験航海>の様子が描かれます。 前作から持ち越された早乙女新艦長の課題が、坂上砲術士の退職申出問題。これに対してどう早乙女がどういう決断をするのか、どういう行動を見せるのか、配下の人事問題を取り扱う艦長としての最初の見処です。 また、仕事小説として、女性隊員に関する問題を見逃せません。どの会社でも課題はありますが、航海という面は大きい。 しかし、男女平等、女性雇用という問題を考えるなら、それを特別な問題として扱ってはいけないのでしょうね。 後半はサスペンス感いっぱい。 一般人見学者を招いての体験航海中、教育航空隊の練習機から遭難信号を発し、あおぎりから近い海域に不時着水したという事態が発生。 救難に向かうか、見学者たちの扱いを優先するかの選択を迫られます。 そこへさらに、見学者たちの間に重病人が発生、一刻も早い病院への緊急搬送が必須という状況に。 2つの緊急事態に見舞われた早乙女、この時代をどう切り抜けるのか。 早乙女の決断以外に、乗組員が一体になっての奮闘がサスペンス感に溢れます。この場面が自衛隊という存在に相応しく、真に圧巻。 なお、何かと強面ぶりを発揮していた暮林副長が、ついに本音をさらけ出します。それは、凝り固まった偏見ぶり。 仕事は出来、信頼できるのだけれど、思考に柔軟性がなく、偏見を変えようとしない古いタイプ、いるいる、という感じです。 早乙女艦長と暮林副長の対決、その後の展開も興味処です。 新たな海上自衛隊小説として、お薦めです。 1.艦長室/2.訓練発射/3.体験航海/4.遭難信号/エピローグ |