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11.クレイジー・フォー・ラビット 12.求めよ、さらば 13.夏鳥たちのとまり木 14.運命の終い 15.今を春べと |
【作家歴】、左目に映る星、透明人間は 204号室の夢を見る、ファミリー・レス、五つ星をつけてよ、リバース&リバース、青春のジョーカー、魔法がとけたあとも、愛の色いろ、愉快な青春が最高の復讐!、白野真澄はしょうがない |
| 「クレイジー・フォー・ラビット」 ★★ | |
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小六、中二、高三、大学生、そして娘を持つ30代専業主婦という5つの年代に分けて、大島愛衣(あい)という女性の成長していく姿を描いた連作ストーリィ。 この愛衣、相手が嘘をついているのを匂いで感じ取ってしまう、という特異さを持つ。そのため、人間関係についつい慎重になってしまう、という設定。 成長物語であることに間違いはありませんが、もうひとつ重要な要素は、友だちとは?を問い掛けている処にあります。 その点で強烈に感じたのが、冒頭の「クレイジー・フォー・ラビット」と最後の「私のキトゥン」で、それぞれ愛衣が浴びせられた言葉。 どういう関係になれば友だちと言えるのか。どうすれば友だちになれるのか。・・・考えさせられます。 冒頭の2章あたりは物足りなかったのですが、「ブラックシープの手触り」から手応えを感じるようになりました。それは、愛衣が自分の抱える思いと、相手を気遣う思いときちんと向かい合うことができるようになったからでしょうか。 とはいえ、友だち以上に難しいのが我が子なのかもしれません。 まだ幼稚園児だというのに相当な負けず嫌いである娘の優里、手強いと共にかなり面白いキャラクターです。 クレイジー・フォー・ラビット/テスト用紙のドッグイア/ブラックシープの手触り/クラッシュ・オブ・ライノス/私のキトゥン |
| 「求めよ、さらば」 ★★ | |
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2025年01月
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主人公の辻原志織(旧姓:高野)は34歳、フリーでIT関連本の翻訳業。 夫の誠太は、大学時代にバイトしていた居酒屋でのバイト仲間。 仲の良い女子バイト仲間からは存在感のない男子と見下げられていた誠太ですが、優しくて家事も手伝ってくれる理想的な夫。 唯一の悩みは結婚して7年経つものの、子供ができないこと。そのため妊活中だが結果が得られず。 ある日、その誠太が離婚届と「自分は志織にひどいことをした」という一文から始まる手紙を残して、突然失踪してしまう。 一体、誠太に何があったのか、自分を愛してはいなかったのか、志織は呆然としてしまう。 そうなって初めて、志織は誠太の気持ちを知ろうとします。その結果は・・・。 最初は志織を主人公にした現在、次いで誠太を主人公にしてのバイト時代、そして再び志織を主人公にした現在、という三段階の構成。 ストーリィ運びはとてもスムーズで、妊活でもやもやしていた志織に突然襲い掛かった苦悩、一方では誠太の不器用な想いが、すんなり胸の内に届いてきます。 平穏に結婚へと進んだ2人の、夫婦になって7年も経ってから繰り広げられたラブ・ストーリィ、と言って良いのでしょう。 最後は2人本来の性格がやっと現れたようで、嬉しくも、愉快にもなります。 素敵な恋愛小説を堪能した気分です。奥田さんに感謝。 |
| 「夏鳥たちのとまり木」 ★★ | |
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2025年05月
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親との関係に問題があり、そのことを学校の教師にも相談できない少女たちが、ネットで知りあった男たちが差し伸べる手にすがって居場所を求めようとするのは、間違いなのでしょうか。 中学校教師の田丸葉奈子も自身、母子家庭でその母親が散財と吝嗇を繰り返す問題人物であったことから、15年前の中二の夏に居場所をもとめ、ネットで知り会ったナオという男性のアパートに2週間滞在した経験を持つ。 そのナオから掛けられた「はなちゃんは大丈夫だよ」という言葉が、その後の葉奈子の支えとなった。 しかし今、担任生徒の高根星来がやはり2日間、親の知らない先に外泊するという問題を起こします。 インスタグラマー仲間だと星来は説明したのですが、葉奈子はかつての自分と同じ状況ではなかったかと疑いを持ちます。 経歴に謎めいたところがある50代の男性教師で副担任である溝渕の助けを受けながら、星来のことを契機に、葉奈子は自分の過去と向き合うことになります。また、今もなお時々娘に金の無心をしてくる実母との関係についても。 たとえ自分で危険を承知していたからといっても、女の子は悪くない、全面的に相手の男が悪い、さらに周囲の大人たち全てに責任があるという溝渕の言葉が強く胸に響きます。 葉奈子、星来、溝渕、それぞれが自分自身にきちんと向き合い、前に向かって歩き出す覚悟をもつまでのストーリィ。 現代的な社会問題を踏まえた、胸に響く作品です。お薦め。 |
| 「運命の終い(しまい)」 -- | |
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2025/12/-- |
近日中に読書予定 1.アジサイ/2.カーネーション/3.ベニバナ/4.カスミソウ/5.ワスレナグサ/6.アネモネ |
| 「今を春べと」 ★★ | |
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皆川希海は39歳、幼稚園児の郁登を育てながら、地元スーパーでパート勤め。夫の勇助は総合病院の事務職で人事部員。 幼稚園でかるたを覚えた郁登がやりたがり、地元のかるた教室に入会。郁登の相手をするため一緒に<競技かるた>を習った希海は、いつしか競技かるたの面白さに目覚めます。 やがて小学校に上がった郁登はかるたに興味を失い、元サッカー部だった勇助と一緒にサッカーに熱中するようになります。 郁登という理由を失った希海、自分だけでも競技かるたを続けたいと思いますが、子育て中の母親がそんなことをしていいのかと逡巡。また、勇助も郁登も、希海は自分たちのサポートをするのが当然、という態度。 子育て主婦は、趣味をもつことさえ許されないのか、自分を犠牲にしてまで夫や子供の都合を優先しなければならないのか、という疑問を希海は抱くようになります。 希海への指南という部分、競技かるたの入門篇といった面白さもあります。 でも肝心なのは、主婦・母親の立場、自由という問題ですし、さらには嫁という問題にも繋がります。 今だったら私も、主婦だからといって趣味を我慢する必要はないし、応援したいと思いますが、若い頃に子育て部分も含めてそうであったかというと、全く自信なし。そのため、勇助を批判する資格などないよなぁ・・・。 希海や、仲間の主婦たちによる競技かるたの大会挑戦、それを通じての(子どもではなく主婦・母親たちの)成長ストーリーは、真に新鮮かつ爽快。 エピローグ部分ではついニヤリとしてしまいました。お薦め! ※なお、題名の「今を春べと」は、競技かるたの試合で“序歌”とされている和歌の一部。 |