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1.タイタン 2.小説 |
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「タイタン TITAN」 ★★ |
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2205年の未来社会、すべてのロボットを統合したAI=“タイタン”によって人類は仕事から解放され、暮らし全てについてタイタンのサポートが得られるという、極めて安楽な世界。 世界の12拠点に分けて設置された12基のタイタンはあらゆるロボット等に繋がり、協力して全世界をコントロールする仕組み。 そうした社会で生きる26歳の女性心理学博士=内匠成果は、講演を行ってもそれはもはや仕事ではなく、趣味に過ぎない。 その成果が罠に嵌められ、脅迫されて仕事をすることを命じられます。その仕事というのは、カウンセリング。 その相手は何と、第二知能拠点(北海道弟子屈)に設置されたタイタン<コイオス>。そしてその目的はというと、最近動きが不安定になっているコイオスを治療し、問題を解決すること。 管理責任者だというナレイン、ベックマン博士、エンジニアの雷と協力し、内匠は人格を与えられエアリアルの少年姿で登場したコイオスと対話を始めるのですが・・・。 野崎さんが描き出したのは、壮大な未来社会。 そしてそのストーリィ展開はというと、SFに留まらず、古今東西のあらゆる空想物語から道具立てを引っ張って来た、と言えるもの。これが本当に凄い、圧倒されるばかりです。 その一方、本物語のテーマは何かというと、「仕事とは何か」という現代にも共通する問題。 壮大な構想の一方で、哲学討論、旅を通じての成長物語、そして自立・・・。 SFという枠にとらわれない自由さ、奔放さが、本作の魅力と思う次第です。SFファンには是非お薦め。 1.就労/2.傾聴/3.休暇/4.旅路/5.対面/6.仕事/エピローグ |
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「小 説」 ★★☆ |
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読むか読まないか刊行時に迷い、本屋大賞候補作になってからそのうち読もう、読もうと思いながらタイミングを逸して延び延びになっていた作品。今回、ようやく読むに至りました。 主人公の内海集司は、5歳の時に「走れメロス」を読んで以来、小説の面白さに囚われてしまう。 そして小六の時に外崎真と出会ってからは、二人で一緒に小説をむさぼり読むようになります。 きっかけは、小学校に隣接した家に住む小説家の存在。 モジャ屋敷と呼ばれるその家に忍び込んだ二人は、名前も知らないまま「髭先生」と呼ぶことになった小説家から許され、自由に出入りしその図書室で日々読書に没頭することとなる。 まぁそれぐらいのことならまだあり得るかもと思うのですが、それ以降、高校、大学、社会人になってからも、二人の生活の軸は小説を読み続けることにある、というのですから凄い。 しかし、あることを機に、二人の道は<書くひと>と<読む人>に分かれていく・・・。 内海が外崎に向けた「読むだけじゃだめなのか?」という言葉。その問いこそが、本作の主題と言って誤りではありません。 そしてその問いに答える前に、小説とは何か、小説は何のために存在しているのか、という問いが浮かび上がってきます。 私自身、子どもの頃から読書は好きな方でしたし、読書を止められなくなったのは高一の時に出会った世界名作を読んでから。 そうした身としては、何のために小説はあるのか、そして小説を読むだけで十分なのだという答えを本作によって与えられたことは、目が覚める、あるいはこのままで良いのだと自信づけてもらった気持ちになります。 その意味で、本作はメッセージ性の高い、そして同時にメッセージ力の強い作品であるといって過言ではありません。 本好きにはたまらない魅力、メッセージを備えた作品。お薦めです。 |