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11.エピクロスの処方箋 |
【作家歴】、神様のカルテ、神様のカルテ2、神様のカルテ3、神様のカルテ0、本を守ろうとする猫の話、新章神様のカルテ、始まりの木、レッドゾーン、きみを守ろうとする猫の話 |
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「スピノザの診察室」 ★★ |
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「神様のカルテ」後、その発展形と言うべき新たなシリーズの始動でしょうか。 主人公の雄町(おまち)哲郎は、京都の街中にある48病床を持つ地域病院<原田病院>に勤務する消化器内科医、38歳。 かつて洛都大学病院で医局長を勤め、難しい内視鏡手術を何度も成功させた凄腕医師という評判を得ていたが、三年前にシングルマザーだった妹が病気で死去、小四の甥=美山龍之介を引き取って育てるため、医局を退職して転職したという経緯。 それを怒った教授から大学病院への出入り禁止となったものの、雄町を高く評価する花垣辰雄准教授は足繁く原田病院に顔を出して雄町に意見を求めたりしている。今なお、大学病院には雄町を信頼する医療関係者がいる、という人物設定。 地域病院であるが故に、通院患者も入院患者も近くの高齢者が多く、最期を看取るという役割も多い。 そうした地域医療を背景に、医者による医療とは何か、を問うストーリィになっています。 原田病院に勤める常勤医は雄町を含めて4人。外科の鍋島治、中将亜矢、内科の秋鹿淳之介と、それぞれ個性的な医師。 それらの面々に、花垣から研修に派遣され、週1回原田病院に勤務することになった若い医師=南茉莉(まつり)も加わり、顔ぶれは賑やかで活気があります。 雄町たちがどのように患者と向き合うのか、そこが本作の読み処です。 新しいシリーズとなる筈。今後の巻がとても楽しみであり、同時に期待大です。 1.半夏生/2.五山/3.境界線/4.秋 |
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「エピクロスの処方箋」 ★★ |
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「スピノザの診察室」続編。 前作で書き切れなかった部分が、本作に盛り込まれています。 主人公の雄町哲郎が何故洛都大学病院から出入り禁止となったのか、大学病院で後輩医師である西島基次郎は何故雄町に敵愾心を燃やすのか。そして、癌で死去した妹の美山奈々とのやりとり、とか。 特に雄町の退職に激怒した、洛都大学病院の絶対的権力者である飛良泉寅彦教授の登場が注目点。 前作で分からないままだった部分が語られ、経緯が分かってすっきりした気持ちがします。 また、医療に対して雄町が抱いている想い、考えがいろいろと語られますが、「私は医療というものを基本的に信頼していないんだ」「医療では人を救えないんだよ」「人を救うのは、医療ではない。人なんだ」という雄町の言葉は衝撃的ですが、その一方で得心できる処でもあります。 何故なら、人はいつか必ず死ぬ、死から免れられる人は誰もいないのですから。 とは言いつつ、本作に登場する、死を間近にした患者たち、彼らに対する雄町の真摯で誠実な姿勢には心打たれます。 治療という前に、人と人として繋がれることがまず医療においては必要だと感じさせられる次第です。 洛都大学病院の花垣准教授、原田病院の同僚医師たち、相変わらず個性的で楽しい。また、ほんのちょっと登場するだけですが、祇園にある老舗料亭<蛍屋>の女将の存在も好いなぁ。 本作で目覚ましい成長ぶりを見せるのは、甥の龍之介と、雄町の指導を受けている南茉莉の二人。 とくに南茉莉が雄町に遠慮ない口も利けるようになった辺りは、今後の二人の関係進展が匂わされていて楽しみです。 新たに大好きとなったシリーズ、続刊に期待大です。 1.錦秋/2.冬至考/3.百鬼夜行/4.初弘法 |