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3.トリガール! 4.僕は小説が書けない(共著:中田永一) |
●「リレキショ」● ★☆ |
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2005年10月 2003/10/06 |
「姉さん」に拾われ、同居して「半沢良」になった、という青年が本作品の主人公。 そして主人公は、当座のリレキショを書き、近所のガソリンスタンドで深夜勤務のアルバイトを始めます。 そんな主人公の、姉さんとその親友、ガソリンスタンドに手紙を届けてくる女子高生との関わりを描いた、あっさり目のストーリィ。 主人公が、姉さんとどのような経緯で知り合い、同居するようになったかは、一切本書には書かれていません。 まるで、そこから初めて半沢良の生活が始まり、リレキショが新たに埋められていく、そう語っているかのようです。 登場人物は僅かに、姉さん=半沢橙子とその親友=山崎、ガソリンスタンドの同僚=加藤、女子高生=漆原玲子の5人。 |
●「ぐるぐるまわるすべり台」● ★ 野間文芸新人賞 |
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2006年5月
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「リレキショ」「夏休み」に続く“始まりの”三部作、完結篇とのこと。 前篇の「ぐるぐるまわるすべり台」は、主人公の僕(小林)が大学へ退学届を出すところから始まり、新たにバンドメンバーを集める話が描かれます。それと並行して、バイト先の学習塾で面倒みている不登校児ヨシモクが二学期から学校へ行きます、と僕に語るところで終わる。 ぐるぐるまわるすべり台/月に吠える |
3. | |
「トリガール!」 ★★ |
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さてどんなストーリィかというと、題名からある程度推測はつくと思いますが、空を飛ぶために奮闘する大学女子の物語。 主人公は一浪して工業大学の機械工学科に入学した鳥山ゆきな。といって、何か目標があって入学した訳ではない。 工業系学校の部活動と言えば忘れられない作品が、濱野京子「レッドシャイン」。真夏下でのソーラーカーレースも過酷でしたが、人力が鍵とあってコンテストまでの日々のトレーニングが重要と、違った意味でこれもまた過酷。 最後は主人公たちと一緒に読み手も、空を飛ぶ爽快感が味わえます! でもその快感を味わうためには本書を最初から最後まで、しっかりと読むことが不可欠です、念のため。 |
4. | |
「僕は小説が書けない」(共著:中田永一) ★★ |
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2017年06月
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2人の作家による合作小説。それもこれまでにない試みだったようです。 |
5. | |
「広告の会社、作りました」 ★★ |
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2023年03月
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主人公は遠山健一、デザインの専門学校卒、小さな広告会社にデザイナーとして就職したものの、主要顧客の不祥事から売り上げが減少、会社は倒産してしまう。 ようやくデザイナー募集のチラシを見つけ面接に赴いた処、募集をした天津功明は個人事業主。さっそくポスター作成の仕事を押し付けられるのですが・・・。 いわゆるお仕事小説。 しかし、奮闘、苦闘の末の成長、成功といった展開となる一般的なビジネス物語とは、一線を画すストーリー。 何となくほんわかしていて、融通無碍な処が楽しい。 それもそのはず、お仕事小説といっても、仕事とは何ぞや、仕事とはどのようにするべきか、ということを描いた作品なのですから。 天津が健一に語るそのモットーは、本作を読んでのお楽しみ。 そうであったらどんなに良いだろう、毎日がどんなに楽しくなることか、と思います。 成果ばかり求められる仕事って、辛いし、ストレスばかり溜まりそうです。 さて天津と健一の二人、大手広告代理店と競合する出来レースのコンペに、法人成り(天津遠山合同会社)して挑戦します。 愉快、爽快、楽しい、と言えるストーリー。 見方を変えれば景色も変わる、ということでしょう。 ※彼らと共に登場する女性二人も、中々に楽しいキャラクター。 いい人生ってなんだろう/いい仕事ってなんだろう/いい会社ってなんだろう/いい相棒ってなんだろう/いい未来ってなんだろう |
6. | |
「大きな玉ねぎの下で Under The Big Onion」 ★★ |
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爆風スランプの名曲「大きな玉ねぎの下で」をモチーフにした、映画版とは共通する部分もありますが、基本的には異なるストーリー。 ストーリーは、2つの時代が交互に並行して描かれます。 一方は 1986年4月から。もう一方は 2024年4月から。共に 8月18日の武道館(※擬宝珠のことを「玉ねぎ」と)に至るまで。 1986年は、高校で放送部員2人だけという堤虎太郎と布川大樹、やはり高校生で入院中の池尻今日子と友人の明日香が登場。 女の子と文通をしたいと言い出した大樹とそれに応じた今日子の間で文通が始まりますが、大樹は虎太郎の住所・名前を借用して自分の写真を同封した挙句、返信書きを事実上虎太郎に丸投げ。 綺麗な字と気持ちの通じ合う手紙に今日子は虎太郎に会ってみたいという気持ちを募らせます。 2024年では、美術系大学の4年生美優(ミュウ)と、東京の大学に進学したばかりという青木丈流(タケポン)が登場。 恋人のつれない態度や就職に問題を抱える美優、WHOがDJを務めるラジオ音楽番組<気まぐれグッドナイト>で、洋楽の好みが自分と合う相手を見つけます。 会いたいのに会えない・・・そんな切ない想いが歌詞にぴったりで胸を打ちます。 九段下の坂道という情景が目の前に浮かび上がって来るような気がします。 そしてそんな出来事があったからこその、奇跡的な出会い。 何とも心洗われるような青春ラブストーリー。良いなぁ。 なお、ストーリーとしては小説版の方が好きですが、俳優さんたちが演じているという魅力は映画版だからこそのもの。どちらも捨て難いです。 |
※映画版 →「大きな玉ねぎの下で」