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1.傍聞き 2.教場 3.交番相談員 百目鬼巴 |
1. | |
●「傍聞き(かたえぎき)」● ★☆ |
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2011年09月 2008/10/27 |
服役囚の更生支援施設長、消防隊員、子持ちの女性刑事、消防署の救急隊員と、かなり特殊な職業を背景としたミステリ短篇集。 4篇の中では文句なく、日本推理作家協会短篇部門を受賞した表題作の「傍聞き」が秀逸。 また、怪我人を乗せた救急車が迷走するという、どんな事態が起きたのかと読み手までハラハラさせられてしまう「迷走」も、なかなかの仕掛け。ただ、結末が出来過ぎ、という感じは否めません。 仕掛けに充分面白さはあったものの★評価が辛目となったのは、ストーリィのドラマ性に物足りなさを感じたから。 迷い箱/899/傍聞き/迷走 |
2. | |
「教 場」 ★★ | |
2015年12月
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警察学校の初任科短期課程、この教習をクリアできなければ、あるいは決められたルール違反が見つかれば、「君には、警察学校を辞めてもらう」という教官の言葉が待ち受けている。 警官養成の教場で起きる様々な教習生間の事件、その経緯と顛末を連作風に描いた異色の警官小説。 1.職質/2.牢問/3.蟻穴/4.調達/5.異物/6.背水/エピローグ |
3. | |
「交番相談員 百目鬼巴(どうめき・ともえ)」 ★★ |
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警察を定年退職し、60代の今は非常勤の交番相談員を務めている百目鬼巴を主役に据えた、連作警察ミステリ。 その百目鬼巴、見た目は穏やかな初老の女性という印象なのですが、県警本部で刑事畑以外の部門をひととおり経験し、科学捜査の知識も豊富。そのため刑事部から「未解決事件の捜査にあたってほしいと」熱烈なお呼びが掛かっていたが、「ものごとをほじくり返すと、ろくなことがないから」と断り続けていたらしい、という。 警察が捜査する様々な事件について、百目鬼が独自の視点から事件の真相を見抜く、というストーリーかと思っていたのですが、とんでもない。 百目鬼が推理するのは、警察内部で起きた事件の真相。 それも警察が見抜けなかったことを鋭く見据え、関係者自身に指摘して見せるというのですから、これまでには無かった、と思えるような趣向の連作ミステリ。 なお、百目鬼巴、どんな女性なのか、どんな警察官だったのか、その正体はもうひとつ不明。 シリーズ化されるらしいので、今後徐々にその正体が明らかになっていくのではないかと思われます。それが楽しみ。 ・「裏庭のある交番」:南原交番勤務の警官が連続して自殺するという事件が発生。その真相は・・・。 ・「瞬刻の魔」:私服捜査員をしている警察学校の同期が、駅ホームから飛び込み自殺を図る。いったい何故? ・「曲がった残効」:自動車警ら班の渡会がパトカーの運転事故を起こす。渡会を恋慕する福原、その真相を突き止めようと一人で独自捜査をするのですが・・・。 ・「冬の刻印」:轢き逃げによる中学生死亡事件。記憶力が落ちたという老医師が目撃したその自動車ナンバーを書き留めたところは何と・・・。 ・「噛みついた沼」:留置管理課所属だった夫は何故、僻地の交番勤務に応募し、その沼にゴムボートを浮かべ転落したのか。 ・「土中の座標」:警備部長の娘と結婚が決まった向江、関係した女性から妊娠したと言われ、殺してしまう。証拠は隠滅した筈だったのに、百目鬼が・・・。 裏庭のある交番/瞬刻の魔/曲がった残効/冬の刻印/嚙みついた沼/土中の座標 |