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11.校閲ガール トルネード 12.手のひらの楽園 13.CAボーイ 14.令和ブルガリアヨーグルト |
【作家歴】、花宵道中、雨の塔、白蝶花、セレモニー黒真珠、野良女、憧憬☆カトマンズ、校閲ガール、砂子のなかより青き草、帝国の女、校閲ガール ア・ラ・モード |
「校閲ガール トルネード」 ★★ |
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2018年10月
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石原さとみ主演によるTVドラマ化も好調、という観ある“校閲ガール”シリーズ第3弾。 冒頭こそ、もうマンネリか?と思ったものの、読み進めるとやはり河野悦子のキャラクター、言動は面白い! 「校閲ガールと恋のバカンス」では、新人作家兼モデル兼バイト店員である是永幸人と悦子との恋人関係がついにスタート。 2人で出かけた軽井沢、そこでまたもや悦子が校閲者ならではの切れ味で新進作家を隠された事情をスパッと明らかにします。 「辞令はある朝突然に」では、何と悦子が憧れのファッション雑誌、その別巻編集部へ突如として異動。しかし、天職と信じていたその仕事で、悦子は自分の能力不足を認識させられるばかり。 そうした中、これこそ現在のストレスの一因という事態を解決しようと、悦子が突撃します。 「When the World is Gone」は、悦子とその周囲人物たちの新しい旅立ちを描く篇。 河野悦子の突進力と鋭い舌鋒が魅力的な本シリーズ、これからも楽しめそうです。 1.校閲ガールと恋のバカンス−前編−/2.校閲ガールと恋のバカンス−後編−/3.辞令はある朝突然に−前編−/4.辞令はある朝突然に−後編−/5.When the World is Gone〜快走するむしず |
「手のひらの楽園 The paradise on my palm」 ★★☆ | |
2022年06月
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光満ち溢れんばかりの青春小説。 主人公の園部友麻(ゆうま)は長崎県の松乃島出身、同県大野村市にある私立夕陽ノ丘高校の2年生で、寮生活。 この高校がユニークで、就職および就労に直結する専科のみという学校。看護科、調理科、保育科、美容科、パティシエ科、エステティック科という構成で、友麻はエステティック科。 友麻は明るくさっぱりした性格で、誰ともうまくやっているという風。けれども実は友麻、特殊な生徒。 貧しい母子家庭のため返済負担のある奨学金を受給している奨学生なのですが、友麻の入学後、母親が島を出て音信不通という状況。ただし、毎月定額の振込は継続されているので、無事ではいるらしい。 そんな友麻の1年間を描く長編ストーリィ。 ごく普通の高校生らしい、友麻の溌溂とした学校&寮生活が描かれていきます。しかし、ある出来事が、友麻の気持ちに影を落とします。 それは、友麻と母親の身の上にかかること。 それでも、友麻は一方的に同情される立場にはありません。仲間のことを真摯に心配し、行動する積極性と優しさを持ち合わせています。 しかし、終盤に至り、友麻自身も仲間たちから、実は気に掛けられていたことに気付きます。 友麻の幼馴染、2年になって同室となったルームメイト、エステ科の仲間たち、それぞれに悩みもあれば葛藤もある。 それらが友麻を中心に群像劇のように浮かび上がり、同時にお互いの友情も鮮やかになっていくという展開。 これらのことを経て、友麻らは一歩成長を遂げます。 社会に出る前の、今しかない時期らしい、成長ストーリィ。 友麻と仲間たちのお互いを思いやる姿が清冽で爽快です。 まさに私好みの、学園もの青春ストーリィ。 1.松乃島の海は色が濃い/2.罰ゲームとかじゃなくて/3.ドーンっていうの、今だ/4.好きな人ができたら判ると思う/5.より多く私を愛せ、しかし遅く |
「CAボーイ」 ★★ | |
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お仕事系痛快エンターテインメント「校閲ガール」の男性版=航空会社男性客室乗務員(略称「男客」)編、という処。 主人公の高橋治真(はるま)は、外資系高級ホテルで働く、入社5年目のホテルマン。 子供の頃からの夢は父親のように航空会社のパイロットになることだったが、ある事情から新卒時に応募を諦め、ホテルに就職した次第。 ところがNAL(ニッポンエアライン)が中途採用募集。採用職種は「客室乗務員」ながら、2年間CA勤務をした後は適性があれば希望部署への異動も可という総合職採用の手法。 可能性は低いながらパイロットの夢をかけ、治真はホテルを退職しCAに応募します。 大学時代からの友人の応援、同年代ながら先輩CAである唐木紫絵(しえ)、指導教官のオブライエン美由紀との奇遇から始まる関係、治真に一目惚れした国際ターミナル保安検査員の小野寺茅乃等々、個性的な登場人物と絡み合いながら、治真のCA生活が展開されていきます。 この辺りは、「校閲ガール」とも共通するところ。 それに加えて本作には、10年以上前、運航中の事故の責任を負わされてNALパイロットの職を降りた治真の父親に関する謎解きがスパイスとして加えられています。 治真と一緒にCA業務をリアルに体験する気分を味わえるところが楽しい。 なお、本一冊でストーリィは一応完結した印象ですが、「校閲ガール」のように続編はあるのでしょうか。 第一話/第二話/第三話/第四話/第五話/第六話/あとがきという名のいいわけ |
「令和ブルガリアヨーグルト」 ★☆ | |
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<株式会社明和>に就職した理系女子の朋太子柚寿(ほうだいしゆず)を主人公に、ロングセラー商品<明和ブルガリアヨーグルト>の歴史を紐解いていくフィクション。 <明和>が「明治」であることは言うまでもありません。 てっきり新入社員女子を主人公にしたお仕事小説と思っていたのですが、いやはやこれはどうも・・・。 たしかにお仕事小説の部分はあるのですが、柚寿の身の内にいるブルガリア菌が「吾輩」と名乗って語り出したかと思えば、明治ブルガリアヨーグルトに使われている乳酸菌のブルガリア菌(「フルガリクス」)とサーモフィラス菌(「サーモフィルス」)を主人公とした謎の素人小説が並行して語り続けられるといった、少々困惑する構成。 “お仕事小説”と“ファンタジー小説”と“仮想小説”が入り乱れて展開していく、という風です。 どうもその根底にあるのは、日本における明治ブルガリアヨーグルトの登場から、日本の食卓に根付くまでの歴史物語、ということであるように感じます。 実は私、明治ブルガリアヨーグルトが1971年、ゲーブルトップという屋根型形状の紙容器で「明治プレーンヨーグルト」という名前で発売されたもの、覚えがあります。発売開始当初から食べていましたので。最初はその酸っぱさに驚き、顆粒糖が添付されるようになってしばらくは顆粒糖をかけていましたが、そのうち慣れてかけなくなっていました。 以来今まで、毎日のようにヨーグルトを食べています。その殆どは明治ブルガリアヨーグルトだったので、本作で最初の頃のことを読むと、懐かしい限りです。 という訳で本作、小説というより、ブルガリアヨーグルト物語だったなぁ、という読後感です。 プロローグ/1.大阪支店/2.東京のOLさん/3.汝、乳酸菌を愛せよ/4.発酵する壺漬け祭り/5.革命、あるいは黎明/6.百年先の青 |