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1.街に躍ねる 2.今日のかたすみ 3.ほころぶしるし 4.贅沢な関係 |
| 「街に躍ねる(はねる)」 ★★ ポプラ社小説新人賞特別賞 | |
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2025年02月
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小学5年生の弟=晶(あき)にとって高校生の達(とおる)は、いろいろなことを教えてくれる大切な兄です。 しかし、達は今、どういう訳か学校に行かなくなり、不登校生。でも晶にとっては、今までと何ら変わらない兄なのです。 確かに兄の達は、母親から頼まれた洗濯もの干しをいつも忘れるし、部屋の中で走り回ったりしては大家の女性から苦情を申し立てられたりしていて、どこか普通じゃないらしい。 また、同級生の内にも、兄の達が不登校と聞くと、途端に可哀想な人を見るような態度を見せる子がいる。 達は、両親との間にもちょっと距離があるようです。 その達が心を許しているのは、自分を慕ってくれる弟の晶だけ、のようです。 でも、そんな兄弟の有り様にも、晶が思ってもいなかった変化が訪れます。 普通、こんな状態になったらどこかぎくしゃくしてしまうのではないかと思いますが、晶の達に対する信頼の気持ちは少しも変わらないようです。そんな兄弟2人の姿が愛おしい。 「兄弟であるための話」の主人公は坪内晶。そして、「朝子の場合」の主人公は2人の母親である朝子。 前篇の後半で坪内家にちょっと理解困難な変化が生じるのですが、その理由が説明されず、また後篇の「朝子の場合」になってもきちんと説明されないまま。 その点が不明のまま終わってしまったことには、得心できない思いが残ります。 1.兄弟であるための話/2.朝子の場合 |
| 「今日のかたすみ Corner of the day」 ★☆ | |
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2026年01月
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誰かと一緒に暮らすことの面倒くささ、愛おしさを描く連作ストーリィ。 人と暮らすというのはそんなものですよね〜。たとえひとつ家族であっても、時に面倒くさいということはあります。 本作でも、相手が勝手に足掻いてバタバタしているだけ、と感じる処もあります。 ・「愛が一位」:進学塾に講師として勤めている一柳遥。そのアパートに恋人の百ちゃんが押しかけてくるようにやってきて同棲開始。しかし、少しずつすれ違いが目立ち・・・。 ・「毎日のグミ」:両親が離婚して母親と暮らしてきた柿元緋名(中三)、母親と喧嘩した勢いで父親「滝さん」の元に同居。しかし、慣れない同居生活とあってお互いにギクシャク。 ・「避難訓練」:一柳遥が、まだ友人のモチキこと茂田祥吉、塾で後輩の戻田と同居していた頃、2人は戻田の悩みに真摯に相談に乗るのですが・・・。 ・「ピンクちゃん」:緋名の姉で大学生の朱夏、あろうことか隣室の老女=中原さんと交換日記を始めることに・・・。 ・「荷ほどき」:モチキの引っ越しに、中学来の友人たちが集まってくれるのですが・・・。 べったりしてくる恋人に、時には一人でいたい、自分の楽しみに浸りたいと思う遥の気持ち、分かります。そんなに譲歩しなくても良いのではないかなぁと思いますけど。 一方、緋名と実父の「滝さん」、慣れていない娘との同居に遠慮する父親の心情が何とも可愛らしいというか、愛おしいというべきか。 また、隣室に住む老女との交換日記も面白い。 愛が一位/毎日のグミ/避難訓練/ピンクちゃん/荷ほどき |
| 「ほころぶしるし」 ★★☆ | |
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主人公の道田奈央は高校二年生。 父親に誘われて参加したツアーが立ち寄ったサービスエリアで、ねぎまきを食べている少年と言葉を交わし、彼に関心を抱く。 その少年と再び奈央が出会ったのは、地元の図書館。 彼を好きになった奈央は、度々図書館に足を向けるようになり、磐田陸と名乗った彼と少しずつ距離を縮め、親しくなっていく。 ところが、奈央と保育園からの友人である田仲千恵里は、見せてもらった陸の写真を見て、これ、君津睦生だ、と。 その君津睦生とは、小四の時に2人が一年間だけ一緒だった同級生。そして千恵里にとっては因縁の相手・・・。 本作の魅力は何といっても、好きという気持ちを、奈央が素直にそし率直に相手へ向けていく処にあります。 この部分、奈央の心持ちがとても清新で、いいなぁ。 しかし、3人の過去にいったい何があったのか。そして、既に過去の出来事となったことを、どう償えばいいのか。やり直しをすることはできるのか。 奈央にとっては2人とも大事な相手。だからこそ、好きな相手のこと、友人の気持ちを考え、真剣に自分で引き受けようとする、そんな奈央の気持ちが愛おしい。 一言で言ってしまえば、よくある青春恋愛小説のひとつに過ぎないかもしれません。 でも、奈央、そして睦生が、真剣に相手と向き合おうとする、そんな処が愛おしくてたまらず、好きだなぁ。 読む人の好み次第と思いますが、私としてはお薦め。 |
| 「贅沢な関係」 ★☆ | |
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「贅沢な関係」とは、はて友情のことでしょうか? 学校卒業後、青春後の友情をテーマとした連作風短編集。 “友だち”とは、会わなくなっても友だちのままでしょうか、会っていないと友だちとは言えないのでしょうか。 本作を読むと、そうした問いかけをしたくなります。 私の思いとしては、始終会わないからといって友だちが友だちでなくなることはないし、友だちだから頻繁に会わないといけないということはない。 現実的に、大学までには年中会っていられても、住む場所が離れたり、卒業して就職、さらに結婚すれば必然的に会うことは少なくなる、あるいは皆無となります。 でも友だちであることに変わりはないし、会う機会があればそこはすんなり友だち関係を取り戻せるし。 ・「音めぐり」:高校以来、異性同士の親友関係。しかし、シバサキの結婚が決まり、ニッタは結婚相手のことを考えずにはいられない・・・。 ・「あかし」:中学水泳部の友人・沙希の結婚式に出席したりさは帰りの電車内で、同じ水泳部の毛利と偶然再会します。でもりさと毛利には温度差があり・・・。 ・「ルガっち」:柊がよく行くカフェで出会ったのは、小学校を卒業したばかりの斉藤みつほ。二人の違いは・・・。 ・「崩せない光景」:ジム仲間で集まったところ、来ない一人が黙ってSNSグループから抜けていて・・・。 ・「色めく同窓会」:高校の同窓会に出席した町田、今の自分は高校時代の自分とは違うのだけど・・・。 音めぐり/あかし/ルガっち/崩せない光景/色めき同窓会 |