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1.海松 2.半島へ |
1. | |
●「海 松(みる)」● ★★ 川端康成文学賞 |
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2009/05/27
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三重県の志摩半島の一角、小さな湾に近い場所に70坪の土地を買い、家を建てる。 ただし、生活の本拠は東京でマンション暮らし。時間が空くと東京からこの家にやってくる。 川端康成文学賞を受賞した「海松」は、主人公が衝動的にこの土地を買った経緯とその後。 「光の沼」はその7年後となる続編。家の近くに沼を発見してからのあれこれが描かれます。 東京でマンションの一人暮らし。余程のことが起きなければその後の人生の有り様がほぼ見てしまう。 これまでの人生とこれからの人生、その間に今このひと時という自由な時間がある。そんな気分がとても気持ち良い。 ※なお、“海松”とは浅海の底に生える、みる科の緑藻類。 海松/光の沼/桟橋/指の上の深海 |
2. | |
●「半島へ」● ★★☆ 谷崎潤一郎賞 |
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2012/03/05
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川端康成文学賞を受賞した「海松」の、そのまま後に来るストーリィと言って間違いないでしょう。 志摩半島の一角、売れ残りの土地を買って2階建の細長い家を建てる。マンション暮らしの東京から時々ここへ通って来るというパターンは、別荘のようなもの。 今回、主人公は“あてのない休暇”を過ごすため、期間を定めずに東京からここに居を移します。 春から始まり12ヵ月弱を半島にある家で過ごす。その日々を描いた長篇小説。 静かで穏やかな日々、何かいいなぁ。心が休まる、という気がします。木々の緑、鳥のさえずり。 周囲の住人は、リタイアした後の暮しをここで過ごすためにやって来たという人ばかり。同類だから付き合いもし易いのでしょうか。 しかしやはり、良い処だけ、という土地はないようです。それなりの付き合いの必要も生じれば、夏ともなれば周囲は休暇を過ごしにやってきた子や孫らで賑わい、ホタルも眼にすることができる一方で、主人公自身は虫アレルギーだというのにヤブ蚊に悩まされ、また不法廃棄の惨状も目にします。 それでも秋になれば秋の実りがあり、自然の恵みを楽しむこともできます。 この地で養蜂業を始めた先輩格の住人=佳世子さんとの付き合いに頁の多くが割かれていますが、リアルで楽しめる部分です。 最後、主人公は“あてのない休暇”に終止符を打ち、ひとまず東京に戻ることになりますが、その文章の下り、ヘッセ「青春は美わし」の最後と似ているように感じます。 東京のマンションとこの半島の家という比較が常にある故に、味わいも彩りもあり、という一作となっています。 |