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「私が鳥のときは」 ★★☆ 氷室冴子青春文学賞大賞 | |
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読むかどうか逡巡して先延ばしにしてきたのですが、結果的に読んでよかったです。 まさに青春文学、というに相応しい佳作。 「私が鳥のときは」 娘の蒼子が中三、受験生だというのに、母はスーパーで元パート仲間であったバナミ(芭波)という女性を家に連れ帰って来て、「さらってきちゃった」と一言。 そのバナミは30歳くらい、末期がんで既に余命宣告を受けた月数を越えているのだと。 ガサツで遠慮のないバナミに蒼子は反感を抱きますが、同居している内次第に・・・。 そして、高校に行けなかったから高校受験をしたいというバナミと一緒に、受験塾で友人となったヒナちゃんの指導を受けながら受験勉強に励むのですが・・・。 最初の印象と異なり、バナミという女性がどれだけ一生懸命に生きてきたか、そして何故蒼子の家に同居したのか、彼女が秘めていた篤い思いは圧巻です。 そしてそれは、蒼子をもまた強く成長させたのではないか。 忘れ難い青春小説の一幕。 「アイムアハッピー・フォーエバー」 中一だった頃のバナミを主人公にした、書下ろし作品。 中学に入ってせっかくテニス部に入部したというのに、学校で使えるテニスコートは一面のみ。結果、一年生はコートに立てさせてもらえず、基礎練習だけ。 そのことに不満を溜めたバナミたちは、英子という年配女性の家にあるテニスコートを使わせてもらうことに成功します。 その英子と知り合ったことによってバナミは、ちょっとだけ大人の世界を垣間見ることになります。 バナミの幼馴染である優太、その従弟の翔太、テニス部の仲間たちと、中学生たちが数多く登場し、まさに青春小説という名に相応しい。 青春文学が魅力的なのは、登場人物たちが青春記にあるというだけではなく、小説の最後が彼らの未来へと輝かしく繋がっていくからでしょう。 本作もまさにそうした作品です。 お薦め。 私が鳥のときは/アイムアハッピー・フォーエバー |