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1.震雷の人 2.飲中八仙歌 3.煬帝と少年 |
| 「震雷の人」 ★☆ 松本清張賞 | |
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2022年06月
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中国は唐朝、玄宗帝時代に起きた安禄山の乱(755~763年)に材をとった中国歴史ストーリィ。 <常山郡>太守の息子である顔季明(がんきめい)、その親友で<平原郡>第一大隊の隊長である張永(ちょうえい)、張永の妹であり顔季明の3歳年上の許婚である采春(さいしゅん)の3人が、主要登場人物。 季明と采春の婚儀を前に起きた、安禄山の息子=安慶緒による平原郡第一大隊への攻撃、さらに安禄山の乱から、3人の運命が大きく変動します。 「書の力で世を動かしたい」と願った顔季明は反乱軍の犠牲となり、采春は季明の仇を討つために出奔しますがその途中で世の犠牲になる女たちの哀しい運命を知ります。 そして長永は、唐帝国に従うのが正しいことなのかどうかと迷うことになります。 動乱の時代、それによって生きるべき道を翻弄された兄妹の対照的な道のりが描かれますが、何と戦場で兄と妹が一騎打ちをすることになるなんて一体・・・・・。 松本清張賞を受賞した本作ですが、宮城谷昌光さんの中国古代ストーリィを長く読んできた所為か、つい比較して物足りなさを感じざるを得ません。 どういう処かというと、ストーリィに大きな変動はあっても、実感としてそれが余り感じられないこと。そして、主要人物3人の輪郭が(采春はまだしも)明確に感じられない、という処。 そして、一番惜しまれるところは、顔季明がいつの間にか退場してしまった、というところでしょうか。 一方、民にとってはどちらが支配者になろうと、さほど重要事ではない、自分たちの平穏な暮らしこそもっとも大事なこと、という訴えは胸を打ちます。 1.烽火(とぶひ)立つ/2.永字八法/3.辟召の契り/4.雲霄の奥/5.僧侠、現る/6.密約、成る/7.魏郡、攻略/8.胞衣壺眠りて/9.不幸に非ず/10.大儀、親を滅す/11.希望の風/12.震雷の人 |
| 「飲中八仙歌 杜甫と李白」 ★★ | |
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「飲中八仙歌」とは、唐時代に李白と並ぶ有名な詩人=杜甫が、交流のあった8人の有名な酒好きについてユーモラスに詠んだ七言古詩だそうです。 本作は、朝廷への仕官活動を続ける杜甫の、上記酒豪8人との出会いと関わりを描いた、連作形式による歴史ストーリー。 冒頭、杜甫は朝廷から引退した賀知章と会い、賀公から酒好きは仕官活動で強みになる、官界でも名を知られる酒豪の名を知っておいて損はないと助言され、教えてもらった酒豪たちを一人ずつ訪ねていくことになります。 酒豪一人に一章を当て、各章の冒頭に杜甫が当人たちを詠んだ詩を現代語訳と共に記載するという構成。 したがって、杜甫が詠んだ「飲中八仙歌」と、千葉さんによる創作物語と、その両方を楽しめる処が嬉しい。 題名からすると、杜甫と酒豪8人が酒を飲み交わす愉快な交遊ストーリーかと思うのですが、大違い。 当時の皇帝=玄宗の宰相であったのが、悪名高き李林甫。自らが非知識階層出身であるため、知識階層の人々を憎み、迫害する等々。 儒者である杜甫も酒豪たちも、李林甫による政治的迫害から無縁ではありません。 したがって、李林甫からの迫害と闘う歴史ストーリーとなっています。 8人の中でも異色なのは、焦遂。何しろ、阿倍仲麻呂が日本から連れてきた忍びの一人、という設定なのですから。 何はともあれ、歴史を知らずとも酒豪たちのキャラクターはそれぞれ魅力的かつ面白いですし、歴史と併せて読めばその面白さも味わえるという快作。 面白いこと請け合いです。お薦め。 1.酔狂な長老-賀知章-/2.当代一の美少年-崔宗之-/3.天才肌の高官-蘇晋-/4.天衣無縫の酒仙-李白-/5.変わり者の張先生-張旭-/6.鯨の宰相-李適之-/7.顔を隠した皇族-汝陽王李璡-/8.志能備の父-焦遂-/9.国破れて山河あり-杜甫- |
| 「煬帝(ようだい)と少年」 ★★ | |
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隋の二代皇帝=楊広と、その側近くに仕えた楽人の美少年=翼の二人を軸に、激動の中華王朝=隋(581~618)の時代を描いた歴史小説。 楊広が何故「煬帝」と呼ばれるかというと、暴君であったことを示す謚として次王朝の唐が付けたものだそうです。 その煬帝、人民を苦役に酷使し、中国史を代表する暴君とされているとのこと。しかし、その一方では、大運河の掘削、律令制の整備、人材登用制度という功績も遺した人物。 もう一方の主人公である翼は、体に翼の形の痣を持つ美少年で、「翼の形の痣をもつ楽人は、名君に仕えれば国家安寧をもたらす福神となり、暗君であればその君主を滅ぼす儺神となる」と伝えられる<翼星>。義姉の護秋によって育てられてきた。 そんな言い伝えから、翼は楽人として楊広に側仕えすることとなるのですが、二人の関係は出逢いからして良好なものとはなりません。 謀略家であり、傍若無人な振る舞いが常、そして民を酷使して平然としている楊広を、翼は嫌う。 しかし、宮廷内において楊広に対する好悪は、人によって異なります。楊広を信じてやまない筆頭が、正妻である蕭蓮皇后。 楊広に側仕えする内に、翼の楊広に対する想いがどう変わっていくのか、そして楊広の真の姿は如何なるものなのか、そこが本作の読み処です。 また、本作には多彩な男女が登場し、その中で楊広に対する陰謀が繰り広げられます。その真相は・・というとまさに複雑怪奇。いったい誰が陰謀の首魁なのか。その辺りは、ミステリ、サスペンスに劣らぬドキドキするような面白さが味わえます。 歴史を変える訳にはいかず、最後は隋の没落となりますが、それは別として、波乱万丈の中華王朝史をたっぷり楽しむことが出来ました。満足です。 ※それにしても隋、僅か37年の王朝だったのですねぇ。 序章/1.翼星/2.儺神(なしん)/3.運河/4.東京(とうけい)/5.万能の天子/6.高句麗遠征/7.七弦琴/8.福神/終章 |