木地玩具 特集
01. 駄々っ子(山形県温海温泉)
02. 海老車(宮城県遠刈田温泉)
03. 車人形(宮城県秋保温泉)
04. 四つ車と大砲車(宮城県白石

05. 自動車(宮城県遠刈田温泉)
06. 汽車(宮城県白石・鳴子温泉)
07. 木地玩具各種(宮城県)

08. 輪投げ(宮城県遠刈田温泉・山形県温海温泉)
09. 柄もの(各地)
10. 笛(宮城県遠刈田温泉・鳴子温泉)
11. 鳴り独楽(宮城県仙台市・鳴子温泉)
12. 鳴り独楽(宮城県弥治郎)
13. 飛び独楽(宮城県遠刈田温泉)

14. 手品独楽(宮城県鳴子温泉・白石市)
15. お花独楽(宮城県弥治郎)
16. 追っかけ独楽(宮城県白石市・遠刈田温泉)
17. 提灯独楽(宮城県鳴子温泉)
18. 当て独楽(各地)
19. ドンコロ(宮城県白石市)と大吉独楽(鳥取県鳥取市)
20. 灯篭玉出しと箱独楽(宮城県鳴子温泉)

21. 七色独楽(宮城県鳴子温泉)
22. 臼と杵(宮城県鳴子温泉)
23. 臼と杵(宮城県弥治郎)
24. 水瓶と柄杓(山形県白布高湯)
25. 茶道具(宮城県白石市・鳴子温泉)
26. だるま(宮城県遠刈田温泉・山形県天童温泉)
27. 五つだるま(宮城県遠刈田温泉)
28. 姫だるま(宮城県仙台市)
29. えずこ(宮城県弥治郎)
30. えずこ(宮城県遠刈田温泉・七ヶ宿)
31. 各地の独楽(各地)
32. 大山独楽(神奈川県)
33. 大山の挽き物玩具(神奈川県)
34. ままごと道具(神奈川県)
35. 茶碗と菓子鉢(山形県)
36. 茶道具(その2)(宮城県・群馬県)
37. 木地屋(宮城県)
38. やじろべえ(宮城県)
39. ミニ木地玩具(宮城県)
40. 拳玉とヨーヨー(宮城県)

01.駄々っ子(山形県温海温泉)



木地玩具とは、木製玩具のうち木地屋がロクロを挽いて作る玩具をいう。こけしとともに、みちのくの温泉場を販路に誕生した木地玩具には、子供のおもちゃとして湯治客の土産として数多くの種類がある。ここではおもに東北地方の楽しい木地玩具を紹介する。さて、木地玩具には“車もの”と呼ぶ一群がある。子供が引いて遊べるように車の付いた玩具で、台車には人物やだるま、動物などが乗っていることが多い。写真の玩具は車を動かすと、乗っている赤ん坊が首を振り、手足をバタバタして駄々をこねる仕掛けである。高さ17cm。(H22.8.19)

02.海老車(宮城県遠刈田温泉)



土地ではエビッコと呼ぶ。やはり車が付いた玩具で、動くと海老のひげが出たり入ったりする。小田原(神奈川県)の動物玩具を見本にして作られたものという()。同じ仕掛けのものにはこのほか、虎(08)、鶴(宮城県24)、兎、馬、犬、あひる、バッタなどがある。二つの車の間に人物や動物が取り付けられた“二つ車”の一種である。高さ6cm。(H22.8.19)

03.車人形(宮城県秋保温泉)



えずこ(いずめこ)山形県20が取り付けられた二つ車。人形の重心によって、車の転がり方も安定している。二つ車は、間に挟む人形によって福車(福助)、車人形(こけし、えずこ)、人力車(車夫)などと呼び方も異なる。秋保の車人形には頭の剃(そ)り跡の青い“ヤロッコ(男の子を指す方言)こけし”が取り付けられている。秋保こけしは遠刈田系に属するが、男の子を模したこけしは他に例を見ない。高さ10cm(H22.9.8)

04.四つ車と大砲車(宮城県白石市)



“四つ車”は車もののうち、丸い木の輪を半分に割り、それに四つの車を付け、輪の台に人物やだるまなどを乗せた玩具。土地によっては“割り車”とも呼ぶ。頑丈なので、子供のおもちゃにふさわしいものである。大砲車は大砲自体が台車になっていて、その上に厳めしい顔をした軍人が乗っている。大砲車の高さ7cm(H22.9.8)

05.自動車(宮城県遠刈田温泉)



木地玩具は製作にロクロを使うので、独楽に代表される丸い回転体か、この自動車のような回転体の組み合わせが基本となる。自動車は、動く乗り物がまだ珍しかった時代のおもちゃ。次回の汽車(蒸気機関車)とともに、当時の子供達にはさぞ歓迎されたことだろう。高さ13cm(H22.9.8)

06.汽車(宮城県白石市・鳴子温泉)



自動車同様、組み合わせ式のおもちゃ。左は白石産。右は昔から我が家にあるもので、恐らく鳴子産だろう(亡父のふるさとが鳴子温泉なので、田舎に行くとよく木地玩具を買ってもらった)。人形に描かれた威厳のあるヒゲは、機関士が時代の先端をいく職業だったことを表すものかもしれない。左の汽車の高さ10cm(H22.9.8)

07.木地玩具各種(宮城県)



左より輪投げ(秋保温泉)、やじろべえ(遠刈田温泉)、メリーゴーランド(白石)、だるま落とし(遠刈田温泉)。このほかにも投げ独楽、剣玉(見玉、拳玉)、ヨーヨー(手車)などがあり、多彩である。メリーゴーランドではこけしの頭部の独楽を廻すと、ぶら下がっているだるまがブンブン回転する

メリーゴーランドというより、昔デパートの屋上にあった遊園地の“飛行塔”を想い出す。高さ22cm(H22.9.8)


08.輪投げ(宮城県遠刈田温泉・山形県温海温泉)



木を削ってドーナツのような輪に仕上げるのは手間のかかる仕事で、その技を持った工人も今ではわずかだという。そのせいか、最近では受け棒や台座は木製でも輪は縄やプラスチックで出来た輪投げが多いようだ。温海温泉の輪投げ(右)で輪を受け取るのは、戦前の新聞漫画の主人公“のんきな父さん“である。高さ37cm。(H22.9.12)

09.柄もの(各地)



赤ん坊に与えたり、あやしたりするのに使う木地玩具で、握りやすいように柄がついている。左から、だるま笛(宮城県遠刈田温泉)、カタカタ(山形県小野川温泉)、振り太鼓(福島県中ノ沢)。柄の先に笛口を付けたり、振ると音が出るように工夫されたものが多い。中ノ沢の振り太鼓(高さ21cm)では、太鼓を勢いよく回転させると遠心力で中から子供がひょっこり顔を出す仕掛けになっている。中に小豆が入っていてカラカラと音がする小槌笛宮城県24などもおもしろい。(H22.9.12)

10.笛(宮城県遠刈田温泉・鳴子温泉)




唐人笛(遠刈田)、ミミズク笛(鳴子)、鳩笛、アレイ笛山形県15)、花笛独楽東京都33など木地玩具には笛のおもちゃが多い。ミミズク笛は工業デザイナーの柳宗理がデザインしたもので、当初は頭部に木製の耳が付いていたようだ。高さ9cm。(H22.9.12)

11.鳴り独楽(宮城県仙台市・鳴子温泉)




東北各地で作られ、木地玩具のうちでも最もありふれたものの一つである。風独楽、唸(うなり)独楽、唐独楽などと別称も多い。一方、最も作るのが面倒な独楽でもある。穴の削り方ひとつで鳴り方が決まってしまうからだ山形県15。「ぐっと糸を引っ張って、廻したとたんに唸るのではなく、しばらくたってからグオーンと唸りだすのが上出来」という。左が仙台、右が鳴子(高さ16cm)。(H22.9.12)

12.鳴り独楽(宮城県弥治郎)




いつまでも音を楽しみたい向きにはこんな鳴り独楽もある。両側の棒を握ってタコ糸を引いたり緩めたりすると、糸の撚(よ)りで独楽が廻り続けてボー、ボーと音がする。この鳴り独楽にはどちら向きに回転しても音が出るように穴が開けてある。ところで、鳴り独楽の原理は笛、尺八、パイプオルガンなどと同じである。鳴らない場合の多くは穴が大きすぎるためであり、セロハンテープなどで少し穴を塞ぐと鳴ることがある。独楽の直径8cm。(H22.9.12)

13.飛び独楽(宮城県遠刈田温泉)




もともとは江戸独楽で、仕掛け独楽の傑作の一つ。外独楽を廻すと中独楽も廻り、遠心力で外独楽の内壁に押し付けられるので、持ち上げても落ちてこない。外独楽を手で振って振動を与えると、中独楽が一個ずつ出てきて廻る。中独楽の数はここでは3枚だが、12枚くらいまで色々ある。外独楽の高さ13cm。(H22.9.12)

14.手品独楽(宮城県鳴子温泉・白石市)




クルクルと廻っている独楽の動きが止まっても、棒の先につけた尖った木の先が独楽の縁に引っ掛かって落ちない。曲芸の皿廻しに似ているところから手品独楽の名が付いたという。皿独楽、軽業独楽、サーカス独楽とも呼ぶ。鳴子の独楽(左)の直径9cm。(H22.9.12)

15.お花独楽(宮城県弥治郎)



竹ヒゴの先で独楽を廻すと、手品独楽と同じく止まっても引っかかって落ちない。お花独楽も江戸独楽の代表の一つであるが、それを手本に東北各地で作られた。江戸独楽に比べると素朴な出来である。高さ23cm。(H22.9.12)

16.追っかけ独楽(宮城県白石市・遠刈田温泉)




摩擦の力を利用した仕掛けごまの一種。真ん中の独楽を糸引きや手で捻って廻すと、立てかけてある2個の独楽が中心の独楽の周囲を廻る。2個の独楽は円周や厚みがわずかに違うので速さが異なり、一方が他方に追いついては下をすり抜けて追い越す。台独楽、競争独楽、競馬独楽、追い独楽、鬼ごと独楽ともいう。手前は糸引きで廻す白石の追っかけ独楽(台の直径12cm)。(H22.9.12)

17.提灯独楽(宮城県鳴子温泉)




まず提灯に人形を受ける心棒を立て、これに人形の首を挿し、その上で独楽を廻すと人形も一緒に廻る。独楽が提灯に書かれたどの数字の上で止まるかを当てる “当て独楽”の一種。独楽、心棒、人形がすべて提灯の中に収まるように作られている。提灯の高さ8cm。(H22.9.19)

18.当て独楽(各地)




宮城県各地の当て独楽。中央は作並温泉の当て独楽で、こけしの頭上で独楽が廻る(高さ9cm)。当てるのは数字ばかりではなく、文字(いろは、東西南北、春夏秋冬など)であったりサイの目であったり、さらには絵の場合もある宮城県23。当たり独楽、賭け独楽とも呼ぶ。(H22.9.19)

19.ドンコロ(宮城県白石市)と大吉独楽(鳥取県鳥取市)




ロクロを使わず側面を削って作る独楽なので、厳密にいえば木地玩具ではない。左の六角独楽はドンコロと呼ばれ、それぞれの側面に一富士、ニ鷹、三なすび、四だるま、五虚無僧、六西行の絵が描かれている。同じ絵が描かれた台紙(あるいは木札)の上にお金を張り、胴元が廻した独楽のどの面が出るかを賭ける。右は鳥取の大吉独楽(占い独楽)。こちらは八角で、側面には大吉、半吉、一枚、三夜、休み、御無心、あかべ(あかんべい)などと書いてある。独楽を廻し、最後に転がって上を向いた面の文字に従い、定められたことをする遊びである。ドンコロの高さ9cm。(H22.9.19)

20.灯篭玉出しと箱独楽(宮城県鳴子温泉)




当て独楽(賭け独楽)の仲間で、どちらも端正な作りである。灯篭玉出し(左)の中には色付きの玉が5個入っている。灯篭の下の台を下げて、両手で何度も灯篭を振ってから上のつまみ(ぼんこ)を取り外して、片手で勢いよく下の台を上げてやると、中からポンと玉が1個飛び出す仕組み。箱独楽(右)は容器の中の独楽を廻し、その上に玉を転がす。しばらくして蓋を開け、どの位置に玉が止まっているかを当てる。ルーレット独楽ともいう。灯篭玉出しの高さ13.5cm。(H22.9.19)

21.七色独楽(宮城県鳴子温泉)




さまざまな変り独楽を紹介してきたが、やはり原型は捻(ひね)り独楽だ。なかでも七色独楽は最もシンプルなものの一つである。製造元の説明書きをそのまま写す。「まづ手をきれいに洗って頂きましょう。なるだけ影のうつる滑らかなところを選びましょう。黒檀漆塗等の茶ぶだいが、いちばんいいです。個々の記録を作りましょう(最高二分以上廻せます)。競争させ等級をきめましょう。一人にて続けざまに二十個位まで確実に廻せます...」直径3cm。(H22.9.19)

22.臼と杵(宮城県鳴子温泉)




古くからの木地玩具に、“勝手道具“(台所道具、自炊道具)のミニチュアがある。臼と杵、水瓶と柄杓、バケツ、たらい、飯櫃(めしびつ)、お釜、酒道具、茶道具など種類もいろいろあり、子供達はこれらを温泉みやげに買ってもらってままごと遊びをした。白木の臼神奈川県10などもドッシリしていて良いが、この菊紋もさりげないアクセントになっている。臼の高さ8cm。(H22.9.19)

23.臼と杵(宮城県弥治郎)




ロクロ線模様の臼。太い縞模様の帯は弥治郎系のこけしにも共通したものである。臼の高さ10cm。(H22.9.19)

24.水瓶と柄杓(山形県白布高湯)




水瓶の絵付けは子供の遊び道具にふさわしく簡素である。元の柄杓は無くしてしまったので、宮城県弥治郎の同系工人にお願いし改めて作ってもらった。水瓶の高さ7cm。(H22.9.19)

25.茶道具(宮城県白石市・鳴子温泉)




茶道具には白木と着色したものがあるが、白木のほうが材料を吟味するので高くつくという。また、透かして見て透き通るほどに薄く挽くのが上手とされた。茶碗、茶托、急須、茶壷、茶こぼしなどのほかに、さらに茶釜、柄杓、柄杓立てまで付いた精巧なものもあるが栃木県10、そうなるともう子供の遊び道具ではない。白石産(左)の台の直径12cm。(H22.9.19)

26.だるま(宮城県遠刈田温泉・山形県天童温泉)




木地だるまには単独のだるま、姫だるま(女だるま)入れ子細工のだるま、起きだるまなど様々な種類がある。こけし同様、描彩や形に産地と工人の個性が良く表れるので面白い青森県13。こけし以外の木地玩具はなかなか作らない昨今の工人も、だるま類はえずこ(いずめこ)と並んで比較的よく作る。左が遠刈田のだるま(高さ8cm)。(H22.9.19)

27.五つだるま(宮城県遠刈田温泉)




順番に中をくり抜いて入れていく“入れ子”のだるま(高さ6cm)。だるまの数によって、三つだるまから七つだるままである。七福神や三福神(福禄寿、布袋、大黒)を入れ子にする場合もある宮城県24。どちらも一番外側は福禄寿と決まっている。ところでロシアのマトリョーシカ人形も入れ子だが、最近、鳴子のこけし工人がマトリョーシカにこけしの絵付けをした「鳴子縁起マトリョーシカ」を考案した。人形の中を開けると小さな人形が次々と姿を現し、最後に縁結びや安産、商売繁盛を祈願する御守りやおみくじが出てくる。縁起物としてなかなか人気があるそうだ。H22.9.19)

28.姫だるま(宮城県仙台市)




こけしは幼女の表情をモデルにしたということだが、姫だるま(女だるま)を作るとなるとこけしの産地といえども工人は少なく、肘折系(山形県)と遠刈田系ぐらいに限られる。この二点はいずれも仙台で作られた姫だるまで、左は肘折系、右は遠刈田系。工人はいずれも女性である。左の高さ9cm。(H22.10.4)

29.えずこ(宮城県弥治郎)




えじこ、いず(づ)めこ、えずめこ、などと各地で多少呼び名が異なる。“嬰児籃“や”飯詰児“の字を当てたりもする。もともと農繁期や冬季に幼児を入れて育てる藁籠を指すが、転じて「えずこの中の子供」を人形化した木地玩具の呼び名となった。胴をくり抜き、頭部を蓋にした容器として作られることもあり、ここでは中に独楽が入っている。子供の頭部を可愛らしく傾(かし)げることも出来る。高さ13cm。(H22.9.19)

30.えずこ(宮城県遠刈田温泉・七ヶ宿)




こけし同様、えずこでも胴模様が工人の腕の見せ所である。いずれも遠刈田系特有の華麗な菊や梅がぽってりとした筆使いで描かれている。遠刈田のえずこ(左)の高さ9cm。(H22.9.19)

31.各地の独楽(各地)




後列左から熊本の肥後独楽、佐世保の祝独楽(長崎県)、宇目のけんか独楽(大分県)。九州地方の独楽は東北地方の独楽や江戸独楽とはだいぶ姿が異なっている。紡錘形をした極彩色の胴体に鋭い鉄芯を打ち込んだものが多く、いかにもけんか独楽にふさわしい出で立ちである。前列左は姫路の五色独楽(兵庫県)。姫路独楽の歴史は古く、曲芸用の揉み独楽や正月の祝儀に贈る飾り独楽が有名。右は佐土原の神代独楽(宮崎県)。竹製の鳴り独楽で木地玩具ではない。手前は大宰府天満宮の筆独楽(福岡県)。竹に細長く開けられた穴から出ている糸を引いたり緩めたりして先端の独楽を廻す仕掛けになっている。博多独楽の競演会が催されていた福岡の古刹・東長寺の縁日の土産物に端を発するという。肥後独楽の高さ10cm。(H22.9.19)

32. 大山独楽(神奈川県)



丹沢山系に属する大山は千年以上の歴史を持つ信仰の山で、山上には真言宗・雨降山(うこうざん)大山寺がある表紙62。ケーブルカー乗り場へ向かう石段のタイル絵にも描かれている大山独楽は、「金が回る」との縁起で、昔から参詣土産として歓迎されてきた。ミズキの木肌の美しさを生かすため彩色はごく簡素で、紅、藍、柴の三色が基本である。やはり木地が美しい無彩の臼杵神奈川10は、祭神・石尊大権現のご神体の石臼に由来するという。大きい独楽の直径8p。(R4.5.29)

33.大山の挽き物玩具(神奈川県)



江戸時代になると町民や職人の間でも大山詣りが盛んになった。その参詣土産が大山の竹蛇や挽き物玩具神奈川10である。これらは、箱根細工神奈川03-05と呼ばれる箱根、小田原近辺の木工玩具や民芸品の影響を受けて発達した。大山の挽き物玩具はどれもニス掛けで、子供が喜びそうな鮮やかな色に塗られている。なかには小田原製も混じっているかもしれないが、独楽よりもこちらの木工玩具に何とも言えない郷愁を感じるのである。左より兎ラッパ、金魚盥(たらい、金魚の独楽がクルクル泳ぎ回るアイデア)、正ちゃんやじろべえ、猫の玉押し(高さ11p)。(R4.5.29)

34.ままごと道具(神奈川県)



これも大山の挽き物玩具の一つ。私の子供の頃、ままごと道具といえばこのような厚手で極彩色の木製であった。ここでは酒徳利が時代を感じさせる。後になると、ままごと道具もプラスチック製にとって替わられた。盆の直径12p。(R4.5.29)

35.茶碗と菓子鉢(山形県)



木地玩具のままごと道具。外側の赤い花がアクセントになっている。挽物玩具のリンゴに収納するティーセット神奈川10に似た可愛らしさがあり、女の子のお土産に喜ばれる。蔵王高湯温泉で入手した。菓子鉢の直径4.5p。(R4.5.29)

36.茶道具(その2)(宮城県・群馬県)



挽物玩具や木地玩具には、茶道具のような手が込んだものもみられる。材料もエンジュやケヤキを使い、漆が塗られ、縁も透けて見えるほど薄く精巧に細工された茶椀などの組物は、玩具というより大人向けの工芸品である栃木10。ここでは木地玩具25に続き、まだ素朴さの残る茶道具三点を追加した。左が宮城県白石市(盆の直径13p)、右上が鳴子温泉(同7p)、右下が群馬県沼田市(同10p)の茶道具。それぞれスギ、サクラ、クワが使われており、素材の違いにより風合いも異なるのが面白い。(R4.5.29)

37.木地屋(宮城県)



箱根細工は、関東・東海地方の挽き物玩具神奈川05静岡09に影響を与えたばかりでなく、東北地方の木地玩具の発展にも貢献した。明治大正期に東北のこけし工人達も挽物技術の習得に箱根を訪れ、挽物玩具を目にしたからである。しかし、挽物玩具と木地玩具とは生産体制が異なる。挽き物玩具には観光地などに広い販路があるため、産業として分業体制をとる。いっぽう、木地玩具は限られた湯治客向けであり、必ずしも量産は求められないので、ロクロ挽きから玩具の組み立てまでを細々と一人でこなす。つまり、木地玩具は「こけし工人がこけし挽きの傍ら作る木製玩具」である。写真は、妻が綱引きロクロを回し、夫がこけしを挽く木地屋(方言で “きんぢや”)の様子を表した観光土産品。高さ6p。(R4.5.29)

38.やじろべえ(宮城県)



漢字では弥次郎兵衛と書く。与次郎、与次郎兵衛とも呼ぶ。むかしのやじろべえは頭と胴体が紙で、竹ひごの両腕に粘土を付けて重石とした。「年は寄ってもまだまだ大丈夫、シャンと来い、シャンと来い」という売り声とともに、やじろべえを揺らしながら行商して歩いたという。写真は左右が蔵王町(遠刈田系)、中央が白石市(弥治郎系)のやじろべえ(高さ35p)。木地玩具では胴体をこけしや動物にしたり、頭や両腕で独楽を回したりして工夫している。(R4.5.29)

39.ミニ木地玩具(宮城県)



左より拳玉(剣玉)、当て独楽、だるま落としのミニチュア。どれも僅か5pほどの大きさだが、実際に遊ぶことができる。白石市産。(R4.5.29)

40.拳玉とヨーヨー(宮城県)



江戸時代にヨーロッパのカップ・アンド・ボールが日本に伝わり、酒席の遊び道具として流行したのが拳玉である。当時は鹿の角製で、糸の付いた玉を猪口のような窪みに受け、受け損なったら罰として酒を飲ませるお座敷遊びに使われた。明治以後は木製となり、日月ボールと呼ばれて子供たちに親しまれた。ヨーヨーもヨーロッパが発祥で、やはり中国から長崎を経て江戸時代の日本に広まった。当初は菊模様の土製に胡粉を塗ったものを二つ合わせ、間を竹で繋いで作られていた。手車、釣り独楽と呼んでいたが、昭和初期に世界的に大流行し、金属製が輸入されるようになってからヨーヨーの名が定着した。その後、水を入れたゴム風船に輪ゴムを付けて上下させるおもちゃもヨーヨーと呼び、こちらはお祭り屋台の定番となった。写真は白石市の弥治郎系工人が作る拳玉とヨーヨー。拳玉の高さ21p。(R4.5.29)

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