(日本テレビ:1969年3月1日〜9月20日)

 学生時代、行きつけの定食屋で飯を食べながら読んでいたのが、『少年
マガジン』だった。その中で梶原一騎の『巨人の星』『あしたのジョー』と並
んで私がムサボリ読んだのが、さいとうたかをの『無用ノ介』だった。
 賞金稼ぎの素浪人・無用ノ介の活躍は、西部劇(それもマカロニ・ウエス
タン)タッチで人気を集めた。当然テレビ化され、1969年3月より日本テレ
ビで放送開始されたが、テレビではそれほど評判にならなかった。
 だけど、私はこの作品を隠れた名作だと思っている。私は、この作品を
帰省した時にしか観ていない(大学時代は貧乏下宿生活でテレビを持って
いなかったんですよ)が、強烈な印象が残っている。
 作品データーだけは折りに触れて集めていたが、再放送がなく、現在に
至るまで観る機会がなかったのだが、CATVの時代劇専門チャンネルで
放送が始まったので、面白さを証明するために徹底的に分析することにし
た。

第1話(虎穴にはいった無用ノ介)
 30両の賞金首・赤砂多十郎(小松方正)を追って、賞金稼ぎの無用ノ介(伊吹吾朗)が砂塵吹きすさぶ
宿場町にやってくる。無用ノ介が多十郎の配下を片付けている間に、多十郎は地獄自斎(山形勲)と呼ば
れる老賞金稼ぎに殺されてしまう。
 自斎は無用ノ介に300両の賞金首・押崎三兄弟(南原宏治、大前均、根岸一正)退治を一緒にやらな
いかと持ちかけるが、自斎の押崎三兄弟への個人的恨みであることを知り、無用ノ介はその申し出を断
る。自斎はひとりで押崎三兄弟と対決するが捕えられる。
 自斎の息子が父を訪ねてきて、事情を知った無用ノ介は自斎を救うために、押崎三兄弟の隠れ家であ
る古寺に乗り込むが……

 70年代安保を翌年に控え、鬱々とした気分が若者に漂いはじめた頃、無用ノ介がブラウン管に登場し
ました。
 「無用の子に生まれた用なし犬、この世に無用の悪を斬る。
  流れ流れの無用ノ介、どうってこたぁねぇんだ。
  どうってことは…… いや、違う!」
 伊吹吾朗のオープニング・ナレーションは、当時の私の心情に食込みましたねえ。本作を監修した内田
吐夢が、主人公を評して「無用ノ介は、チョンマゲをつけた現代の若者」と言っていますが、まさにその通
りでしたよ。主演の伊吹吾朗(当時は吾郎)は、100人以上の候補者(書類選考だけで1万3千人)から
選ばれただけあって、原作のキャラクターにピッタリでした。ただ、セリフはヘタですけどね。伊吹吾朗は
ヘタでも他の出演者の顔ぶれが凄いんですよ。個性的な役者ばかり集めていてね。
 山形勲の刀が小松方正を貫いた時、方正の顔面の刀傷がパッと赤くなるんですが、マンガチックな悪党
の方正だからピタッとくるんですよ。
 「お前さんは強いよ。だが、甘い。その甘さが命とりになるぞ」と山形勲が無用ノ介にいうセリフは、山形
勲にピッタシ。大前均が無用ノ介をドツキまわし、半殺しにするのも役柄にピッタシ。
 極めつけは南原宏治。原作そのままの格好で、不気味な可笑しさがありましたね。それに、居酒屋のオ
ヤジ役が中村是好という絶妙なキャスティングでした。

PS:原作もこれが最初の作品でした。 

第2話(無用ノ介の首500両也)
 無用ノ介は、商家に押し入った盗賊“闇の狼”を追いかけるが、“闇の狼”の拳銃によって傷つき、祖父
(吉田義夫)と暮す少女(吉沢京子)に助けられる。ヤクザの鬼達が“闇の狼”の一味とわかり、無用ノ介が
鬼達一家へ乗り込んだ間に、鬼達一家の用心棒(伊丹一三)によって少女と祖父は殺される……

 1969年は、カラーテレビはそれほど普及しておらず、カラー番組も少なく、カラー番組はカラーとわざわ
ざ表示していました。現在では逆にモノクロ番組を画面表示していますけどね。
 民放の連続時代劇の初カラー化は、フジテレビの『大奥』(新シリーズ)でしたが、1週間遅れで『無用ノ
介』もカラー時代劇として登場しました。チャンバラ時代劇のカラー化第1号といえます。それで、カラー作
品ならではの演出がされているんですね。
 第1話の小松方正の顔もそうですが、第2話でも無用ノ介が真赤な夕陽に顔を照らされるシーンがあり
ます。モノクロだと全然印象には残らないでしょう。無用ノ介の刀の鞘が赤いのもカラーを意識していると
思いますよ。父の仕事柄で私の家のテレビは既にカラーだったので、余計に『無用ノ介』に対して思い入
れが深いのかもしれません。
 第2話は、“闇の狼”の正体が最後までわからないミステリー・タッチの作品です。とは云っても、あまり
重要でない役をアレレという役者が演っていたのですぐにわかりましたけどね。
 今回は用心棒役の伊丹一三(当時は十三)が抜群に良い。表情ひとつ変えずに、吉田義夫と吉沢京子
を斬ってすてるんですよ。居合いの名人で、無用ノ介と互いの動きを読みあいながら、路上をすれ違うシー
ンにはゾクッとしましたねえ。ラストの対決は、原作よりも伏線を生かしており、こちらの方が格段に優れ
ていますよ。

第3話(吹雪が無用ノ介の肩で舞う)
 無用ノ介が、賞金首を峠の小屋で待ち伏せていたら、弓を背にした少年がやってくる。外は吹雪で出てい
けとも言えず、無用ノ介と少年は同じ小屋で時を過ごす。やがて、やってきた賞金首を倒した時、少年が父
母の仇を討とうとしていることがわかる。無用ノ介が仇討ちの愚かさを諭し、少年を故郷へ帰そうとした時、
少年の仇である瀬降り兄弟が現われる……

 今回は悪役が、悪役らしい顔をして出てきました。賞金首・鑓道の銀三を演った佐藤京一は、チャンバラ
をさせると流石に上手いですね。無用ノ介が銀三をやっとのことで倒し、喉の渇きを癒すために雪を貪り食
らうシーンが実感として迫りました。
 瀬降り兄弟の福山象三と戸上城太郎の人相の悪いこと、これぞ悪役。とても少年の手におえる相手では
ありません。仇討ちをとどまらせるために、無用ノ介が、自分が殺した賞金首を少年に見せて言ったセリフ
が良いんだなあ。
 「仇討ちといっても、殺し合いにすぎない。ブッた斬られて死ぬ時は、ヘドといっしょに喉がやぶれ、血を吐
き、のたうちまわって苦しむんだ。そんな殺し合いをまだやりたいのか!」

 この回から美空ひばりが歌う主題歌「ひとり行く」が使われています。
 (作詞:石本美由起、作曲:小野透)
 一.                    二.                  三.
 生きて行くのが さすらいならば   人はそれぞれ こころの奥に   のぞみむなしく はてない旅路
 剣は心の 杖なのさ          生きる淋しさ だいている     何を求めて 行きようか
 やぶれ袴が ひらりと舞えば     月にくるりと 背中を向けて    雲と流れて さだめのままに
 闇に白刃の 風が吹く         涙ふきたい 夜もある       明日を追いかけ ひとり行く

 私はこの曲より、B面の第2主題歌が好きなんですが、それはまた後で……
 歌といえば、フォークシンガーの岡林信康も「無用ノ介の唄」を作って、当時歌ってましたね。

第4話(無用ノ介・将棋・無用ノ介)
 甲州の宿場町を荒す将棋六花撰と呼ばれる凶悪犯がいた。無用ノ介は六花撰を追って、一人づつ倒して
いく。しかし、角兵衛・羅漢飛車との戦いで深手を負ってしまう。六花撰は首領一人を残すだけとなっていた
が、無用ノ介と名乗って5人分の賞金を受取った者がいた。無用ノ介は、自分の賞金を横取りした偽の無
用ノ介をおびき出すが……

 屋根にあがった六花撰の瓦攻撃を防ぐために、大八車の下に捕り方が潜り込んで、大八車を楯にして近
づくシーンや、刀の鞘に仕込んだ刃物で相手の油断をついて無用ノ介が羅漢飛車を倒すシーンなど、殺陣
に工夫があって面白いのですが、映像面では全体的に一人よがりの演出が目立ちましたね。テクニックに
走りすぎた嫌いがあります。
 六花撰の中では常田富士夫が存在感がありましたよ。アニメ『日本昔話』のナレーションと同じ口調なんで
すが、意外と不気味感が出ているんですよ。首領の御木本伸介は、これまでの個性派悪役の中では今イチ
でしたね。悪どさの中にある哀れさが伝わってこないんですよ。

第5話(夕日と弓と無用ノ介)
 旅の途中で無用ノ介は、弓矢による果し合いを目撃する。敗れた武士の仲間が多勢で勝った武士に斬り
かかったので、無用ノ介はその武士に助太刀をする。無用ノ介が助けた武士は水堂(岡田英治)と名乗り、
土砂崩れの峠の山道を百姓たちと修復していた。
 無用ノ介は峠道が通り抜けできないために、水堂たちが寝泊りしている小屋に泊めてもらう。水堂を手助
けしている胡散臭い浪人たちをみて、無用ノ介はこの工事が単なる慈善でないものを感じるのだった……

 冒頭の果し合いでの、矢が首を貫くシーンと、ラストの弓と刀の決闘シーン(無用ノ介が弓の名人に対して
崖の上から坂を一気に滑り降りて接近する)は見応えがありました。
 高橋繁男の演出は、内田吐夢の『宮本武蔵』に影響を受けたのか、ホリゾントを多用した映像がカラー効
果をあげていましたね。書き割り的夕焼けなんですが、リアルじゃないところが、この作品にマッチしてるん
ですよ。
 「侍というのは、いつになっても垢抜けないものだ。雨の中を待たしてすまなかったが、せいぜいそこで
夕焼けでも眺めていてくれ」
 藩の武術指南(金田龍之介)の挑戦をスッポかして立ち去るラストで無用ノ介が呟くセリフなんですが、な
かなか良いでしょう。

 この回に登場した、野良犬と無用ノ介が歩いて行くエンドシーンで流れる 
美空ひばりが歌う「無用ノ介」が私は好きなんですよ。曲がいいんだなあ。

  (作詞:さいとうたかを、作曲:佐々永治)
   一.
    破ればかまに まつわる犬も
    俺の目を見て 横を向く
    この野良犬が この野良犬が
    雨にふるえて どこへ行く
   二.
    雪の白さに 追われた道も
    俺のわらじが どろをふむ
    この野良犬が この野良犬が
    顔をそむけて どこへ行く
   三.
    宿場のあかりが うるんだ夜も
    俺の想いは 遠くなる
    この野良犬が この野良犬が
    夜風にまって どこへ行く


  (美空ひばり、伊吹吾郎)
第6話(剣につばする無用ノ介)
 無用ノ介に追われた賞金首・人買い姫次郎は、心形刀流の道場へ逃げ込み、老当主をだまして助けを
請う。無用ノ介は姫次郎を引き渡してくれるように頼むが、老当主は賞金稼ぎを剣士にあるまじき行為と
みなし、無用ノ介に刀を捨てるように強制する。そして、剣の道が何たるかを教えるので立会えと言う。
 無用ノ介は売られたケンカと考え、試合をするが、道場剣法に不慣れな為、師範代の伊庭七郎(中村
梅之助)の前に敗れる。無用ノ介に危険な匂いを感じた七郎は、無用ノ介をそのまま帰すが、無用ノ介の
刀を取り上げなかったことに不満を持つ門弟たちが無用ノ介を襲う。
 しかし、真剣勝負においては無用ノ介の敵ではなかった。事の子細を門弟たちから聞いた七郎は、無用
ノ介と真剣勝負を行う決意をする……

 中村梅之助がメチャ巧いんですよ。真剣勝負をしない剣客として一生を過ごすつもりでいた七郎が、常に
白刃の下に身をおいた生活をしている無用ノ介に興味がひかれ、道場剣法を“竹ザオ遊び”と言った無用
ノ介と真剣で闘う決意をする。そして、墓荒しをしている4人の浪人を一瞬のうちに斬り伏せ、真剣勝負に
自信を持っていく心の変化を実に自然に表現してましたよ。
 無用ノ介と七郎が対峙したまま、夕方〜夜〜朝と背景の色が変化していくのは、カラーならではの演出で
したね。
 

第7話(無用ノ介 世直し不動にあう)
 賞金首・南波兎角を追って無用ノ介がやって来た宿場町は、赤熊・中駒・大番という三組のヤクザが、い
がみあっていた。南波兎角は也源流の剣の達人で、身体に刀傷があるとだけしかわからなかった。無用ノ
介は、手掛かりを求めて大番の虎三(原保美)の用心棒となる。
 町民たちがヤクザの横暴に困り果て、窮状を番屋の役人(安井昌二)に訴えると、不動明王の仮面をつ
けた謎の怪覆面が現れ、ヤクザ退治を開始する。
 最初に赤熊が世直し不動に殺され、次ぎに大番が襲われる。大番は肩に傷を負っただけだったが、南波
兎角の手掛かりを知っていた大番の用心棒が殺される。そして、中駒が世直し不動に斬殺されるところを
目撃した無用ノ介は、世直し不動の太刀筋が也源流であることに気付く……

 黒澤明の『用心棒』のようなタッチで始まり、あとはチャンバラ、チャンバラの連続。ラストの無用ノ介と世直
し不動=難波兎角の対決まで、チャンバラの面白さを満喫できましたよ。
 世直し不動の殺陣が素晴らしかったのは、顔がわからないのを幸いに、殺陣師かチャンバラの上手い斬
られ役が吹き替えているんでしょうね。この手は、チャンバラを面白くする方法として今でも使えますよ。
 毎回おなじみの無用ノ介の片目のアップでエンドにならなかったのは、少し寂しいなあ。

第8話(雨に消える無用ノ介)
 盗賊団に襲われた槍の一平の、今わの際の頼みで、無用ノ介は一平の母親に50両の金を届けることに
なる。
 その光景を目撃していた東條造酒(大友柳太朗)は、無用ノ介に山分けをもちかける。無用ノ介は断るが
造酒はしつこく無用ノ介についてくる。
 一平の故郷へやってきた無用ノ介は、休息のために立寄ったボロ小屋で、殺人の嫌疑を受けて役人に取
り調べられている女・おきぬ(左幸子)に出会う。やがて、おきぬが一平の母親とわかり……

 六部の群れから無用ノ介が現われるオープニングと伊吹吾朗のナレーションが編集により少し変更され
ていました。前回までのほうが良かったような気がしますね。
 今回は左幸子が重要な役どころで出演しています。これまでは、女優不在のドラマばかりでしたが、“子ど
もの命と金”がテーマで、複雑な母親の心理を見事に演じてました。
 それと大友柳太朗が巧いんだなあ。悪役なんですが、複雑なキャラクターを見事に表現しています。この
頃の柳太朗は、年季が入って演技に幅が出るようになりましたね。
 しかし、演技以上に見事だったのが、伊吹吾朗とのラストの立ち回り。TVチャンバラでは、もう最高!

第9話(やってきた無用之介)
 片腕勘兵衛(安部徹)と呼ばれるショボクレ賞金稼ぎが、無用ノ介が倒した海坊主を、自分がやっつけたと
馬子(河原崎健三)に自慢したことから、勘兵衛は故郷で英雄に祭り上げられてしまう。
 そこへ海坊主の仲間の三人が、復讐のために勘兵衛のいる宿場町へやってくる……

 今回からオープニングが全面的に変更になりました。野良犬殺法で三人の侍を倒すスローモション映像
に、芥川隆行のナレーションが重なる。
 個人的には、異様な緊迫感があった、これまでのオープニングの方が好きですね。ナレーションも最後の
フレーズ“いや、違う!”がカットされていたし……。これは、存在感への決意を示す重要なフレーズなんです
がね。
 オープニングシーンに続いて流れる、美空ひばりが歌う「無用ノ介」だけはグッド。
 この作品、マスコミに対する痛烈な批判となっていますね。
 勘兵衛が英雄でないのことを知っていながら英雄と瓦版に書き、「瓦版に書かれていることが真実だ!」
「例えそれが真実でなくても、大衆が求めているものを瓦版に書く」という版元(内田朝雄)の発言は、現在
のマスコミにも通じるでしょう。

10
第10話(無用ノ介 かまいたちの異造を追う)
 熱病にかかって行き倒れとなった無用ノ介は、通りかかった薬売りの姉弟(お由と金一)に救われる。好色
な代官に見初められたお由(ニ木てるみ)は、代官の命を受けたヤクザの秋造(高品格)にかどわかされる。
 しかし、秋造一家に逗留していた凶悪犯のかまいたちの異造(深江章喜)が、秋造からお由を横取りする。
 お由は異造の隙をみて、酒に眠り薬を混ぜて異造を眠らせ、脱出するが、追いかけてきた異造に殺されて
しまう。
 無用ノ介はお由を葬ると、怒りに燃えて異造を追う……

 日活の悪役で顔なじみの深江章喜と高品格が、いい味を出していました。昭和30年代の日活アクションを
面白くしたのは、彼らのようなバイプレーヤーなんですよ。真面目にやってマンガチックになる悪役が、最近
は少なくなったなァ。
 原作は、無用ノ介と異造の追跡劇だけなんですが、お由の死で物語に厚みが出ました。反面、殺陣の迫力
が原作ほど出てなかったような気がしますね。
 だけど、この作品は本放送時未放映になっているんですよ。放送禁止になるような表現はなかったし、出来
の悪い作品でもないんですけどねェ。

11
第11話(月にうそぶく無用ノ介)
 金山の用心棒をしている賞金首・前川主膳(江見俊太郎)は、村にやってきた無用ノ介を見つけ、無用ノ介
が自分を追ってきたことに気付く。
 主膳は無用ノ介を罠にかけるために、鉱山役人へ偽の情報を流す。藩の隠密に間違えられた無用ノ介は
鉱山役人に追われて谷川へ落ちる。
 農夫の久助と清吉の親子に救われた無用ノ介だったが、主膳の凶刃は無用ノ介と間違って久助の命を奪
う。主膳の愛人だった清吉の姉・およね(左時枝)は、賞金欲しさに主膳を役人に売ろうとするが、主膳に気
付かれ殺されてしまう。
 無用ノ介は逃げる主膳を廃坑に追いつめるが……

 今回は珍しく男女の愛憎が描かれています。
 無用ノ介を殺すため、およねが手引きした主膳が誤って自分の父親を殺したのに、弟には無用ノ介が殺し
たと言ってしまう女心。父親の仇と、弟の生活のために主膳を役人に売って賞金を得ようとする娘心。惚れ
ていながら、裏切った女を殺す主膳。そして笑って死んでいくおよね。
 主膳のキャラクターが江見俊太郎だと、イメージが合いませんでしたね。現在なら、奥田瑛ニがピッタリな
んだが……。

12
第12話(処刑前 無用ノ介は走る)
 旅を行く無用ノ介が、老人(田中春男)と娘(広瀬みさ)に襲われる。二人の話によると、無用ノ介が捕えた
賞金首・夜がらすの青次は替え玉で、本当は見世物小屋の座長・徳次郎だったことがわかる。
 事情を知った山田浅右衛門(堀雄二)の計らいで、無用ノ介は徳次郎が命を捨ててまで守ろうとする夜が
らすの青次を追って走る。

    広瀬みさ
 無実の罪の囚人を救うために、顔のわからぬ真犯人を捜し出すサスペンスは魅力
にあふれていました。何しろ真犯人の顔を知っているのが、命を捨ててまで守ろうと
している無実の徳次郎だけなんですからね。処刑の時間までに、間に合うかどうか、
ハラハラ、ドキドキのラストでした。
 この作品の儲け役は、山田浅右衛門。冒頭で、浅右衛門が、斬首の刑に処せられ
る囚人に対して、「本日は日が悪い、また改めて行うことにしよう」と言ってホッとさせ
たところを、スパッと首を斬る呼吸が実にカッコ良かったんですよ。
 ただ、浅右衛門の不気味さを表現するのに、鈴木その子のような白塗りメーキャッ
プはどうもね。
 それと、牢屋で女に飢えた囚人たちが、やってきた広瀬みさに触ろうとするシーン
は演出過剰ですね。
 広瀬みさといえば、『悪魔のような素敵な奴』(高城丈二主演のTVドラマ)で初めて
知って、一時期は日活で小林旭の相手役もしていて、私は注目していたのですが、
結婚して、いつのまにか芸能界から引退しちゃった。
13
第13話(赤い月下の無用ノ介)
 辻斬りの恐怖に怯える宿場町。正体不明の辻斬りの賞金を狙って、賞金稼ぎが集まってくる。賞金稼ぎも
次々と辻斬りに殺される。
 父親を辻斬りに殺され、居酒屋で働く娘のために仇を討ってやろうとする助川(水島道太郎)から、無用ノ
介は手を組みたいと誘われるが断る。辻斬りが出没する場所へ二人は分かれて待伏せするが……

 覆面をしていても、辻斬りの正体が視聴者に前半でわかってしまうのはマイナス。代官の天野新士、賞金
稼ぎの水島道太郎、居酒屋の女将の愛人・田浦正巳のうち、辻斬りが誰かわからないようにしていたら、ラ
ストまでサスペンスが盛り上ったんですがねェ。
 それにしても、水島道太郎は渋いなァ。
 それから、野良犬剣法の殺陣師・渡辺高光が賞金稼ぎ役で出演していました。これまでにも2〜3度斬ら
れ役で顔を見せてましたが、セリフがあったのは、今回が初めて。『無用ノ介』のチャンバラの面白さは、彼
なくして考えられません。

14
第14話(無用ノ介 危機一髪)
 八州廻りの役人の中に、賞金首の伊賀谷丈次郎がいるとの情報を得た無用ノ介は、八州取締役・各務
弾正の巡察予定である宿場町にやってくる。無用ノ介は、恨みを持つ無法者に不意打ちされるが、牙の信
兵衛(永田靖)と呼ばれる老賞金稼ぎに、危ういところを救われる。
 牙の信兵衛も丈次郎を狙っており、宿場へやってきた八州取締役の行列に斬り込むが、与力の石黒主
水(加藤武)によって妨げられる。無用ノ介は、信兵衛を救出するが、役人たちに捕えられてしまう。
 各務弾正に恨みを持つ山目付けたちも加わり、宿場に血なまぐさい風が吹く……

 父子の愛憎がテーマです。老優・永田靖が巧いんですよ。瀕死の父と子が手を握り合おうと擦り寄るシー
ンは臭い演出なんですが、永田靖の演技で救われています。
 「剣法を知らぬ自己流だが、身体の動きが人を斬るようにできている」と信兵衛に云わしめる無用ノ介の
チャンバラがいいですねェ。それと、山目付けたちが使う十文字短槍、石黒主水が使う組み十手と、珍しい
武器が出てきたので嬉しくなりましたよ。

15
第15話(天にさけぶ無用ノ介)
 無用ノ介が町を歩いていると、昔一緒に仕事をした若林猪衛門(二瓶正也)が声をかけてくる。猪衛門は
“鬼の参上屋”と呼ばれる非情な賞金稼ぎになっていた。
 猪衛門は賞金首の朝吉(里見浩太郎)を追っていたが、朝吉に公金横領の悪事を握られた侍たちも朝吉
を追っていた。
 無用ノ介は、偶然、朝吉の弟・三吉と親しくなり、朝吉と知り合うが、侍たちに三吉を誘拐されてしまう……

 この作品は、原作のマンガをそのままシナリオにしているんですよ。原作と見比べたのですが、寸分たが
わず全く同じでした。
 無用ノ介がラストで対決する猪衛門は、原作では『無用ノ介 海に戦う』で、賞金稼ぎ志願のペーパー剣士
(腕は立つが人を斬ったことがない)として登場するのですが、テレビ化されていません。二瓶正也(『ウルト
ラマン』の井出隊員ね)は、原作のキャラクターに合っていたので、『無用ノ介 海に戦う』があって『天にさけ
ぶ無用ノ介』がくれば、もっと効果が出たと思うので、もったいない気がします。
 里見浩太郎が、何で出演したんだろうと思えるんですが、東映時代劇が消滅し、二枚目ヒーローとしての
出番がなくなり、雌伏の時期だったんですね。それと、悪役の石橋雅史が、セリフが殆どない斬られ役で出
演していたのも発見でした。

16
第16話(さむらい渡とのらいぬ無用ノ介)
 賞金首・垣沼矢藤次(梅津栄)を追って八代藩にやってきた無用ノ介は、藩の権力争いに巻き込まれる。
 禁制の抜け荷によって藩の財政を建て直そうとしている家老を失脚させようとする若侍たち。彼らは、抜け
荷の証人として矢藤次を連れ去る。
 目付けの渡(山本学)は、彼らの正義感が反家老勢力に利用されているに過ぎないことを知って若侍と矢
藤次を追う。矢藤次を追う無用ノ介と渡は……
 
 本編よりも、前回の最後に流された予告編がメチャかっこいいんです
よ。
 渡の側面姿が上から下へ降りてきて、次ぎに無用ノ介の側面姿が同
じように降りてくる。そして、渡と無用ノ介が向かい合って立ってる構図
がバツグン!(左のカットと同じね)
 ラストの対決もセンスがありますよ。用水路をはさんで、渡と無用ノ介
が対峙し、用水路上で斬りむすぶ。渡が流れの中に沈み、用水路の水
が真赤に染まっていく。そして、無用ノ介の独白。
「水の流れが人間の血を美しくみせている。
 その血が自分を汚していることを知ってるのだろうか。
 それとも、その美しさをうす汚れた野良犬に見せつけているんだろうか
 うす汚れた野良犬に……
17
第17話(おいらの好きな無用ノ介)
 賞金首の伝次(土屋嘉男)を追って日暮長屋にやってきた無用ノ介は、伝次が民五郎と名を変えて妻子と
幸せに暮しているのを見て躊躇する。
 伝次は、ヤクザの銭安から理不尽な立ち退きを迫られている長屋のために命をかけており、それが解決
するまで無用ノ介は伝次を捕まえるのを待つことにする。
 しかし、伝次は銭安が雇った殺し屋坊主・黒阿弥(山本麟一)に殺されてしまい、無用ノ介は行きがかり上、
黒阿弥と対決することになる……

 “弱きを助け、強きを挫く” そこいらに転がっている時代劇と何ら変わらない内容で、私は少しばかり気に
入りません。『無用ノ介』の魅力は、単純な勧善懲悪ドラマでないことでしたからね。
 甘い内容でしたが、黒阿弥との対決は見応えがあります。毎回、殺陣に工夫をこらしているのは嬉しいです
よ。

18
第18話(夏の終わり無用ノ介はひとり)
 灯篭流しの夜、無用ノ介は川で溺れかけている老婆を救う。老婆は、無用ノ介の掌に黒子があるのを見て
同じような黒子を持っている子どもと生き別れになった女の話をする。
 老婆が話した女を求めて、無用ノ介は下布田の宿へやってくる。そこでは、裏世界の黒幕・死人小左衛門
(巌金四郎)の後継ぎを決めるための腕試しの罠が待ちうけていた……

 『瞼の母』的な内容ですが、今イチ母恋しさが伝わってきません。これまでの物語の中で、母親について語
られてなかったからでしょうね。
 それよりも、無用ノ介のチャンバラが堪能できて、満足、満足。

19
最終回(明日に生きる無用ノ介)
 無用ノ介は、賞金首の十五夜左近を捕えて役人に引き渡すが、牢番は老人(渡辺篤)で、役人(塚本信夫)
はアル中といった有り様。そこへ左近を救出すべく、兄の大徳(田中淳一)が無法者たちを引き連れてやって
来る……

 これは名作西部劇『リオ・ブラボー』のパクリですね。ラストで、無法者の一味に捕まった役人と、左近の人
質交換となるんですが、歩いてきてすれ違いざまに役人が左近を押し倒し、それを機にチャンバラが始まる
のは、『リオ・ブラボー』のラストと同じです。
 そういえば、素面になった役人が、屋根裏に潜んでいた無法者を手裏剣で倒すところも、似たようなシーン
が『リオ・ブラボー』にありましたね。
 この作品が結局放映されなかったのは、パクリがあからさまだったこともあるかもしれません。

 
 今回、未放映分も含めて作品全部を観たのですが、TVチャンバラ史上、上位にランクできる番組であるこ
と認識しましたよ。
 だったら何故、放映時に人気番組とならなかったか?ですが、原因のひとつとして、カラー演出があると考
えます。
 無用ノ介の刀が賞金首の身体を貫いた瞬間、背景が真赤に染まったり、手配書の人相書きが青から赤に
変わったりと、カラー放送を意図した画面作りがされているんですよ。だけど、モノクロテレビが主流だった当
時としては、コントラストがはっきりせず、わけがわからなかったでしょうね。鈴木清順の映画をモノクロで見て
るようなもので、カラー演出がマイナスになったような気がします。
 カラー放送が当り前の現在では、カラーの特質を活かした演出なんて考えないでしょうが、『無用ノ介』にみ
られるカラーにこだわった演出は、現在の視点でみると逆に斬新ですね。

 原因の二つめは、番組の編成体制があります。土曜日の8時台は裏番組に、当時人気ナンバーワンだっ
たコント55号の『コント55号の世界が笑う!』と、チャンバラでは安定的支持者のある近衛十四郎の『素浪
人花山大吉』がありました。
 『無用ノ介』の放送は、野球中継(NTVだから、もちろん巨人戦)と重なっており、野球がない時だけ放送さ
れるという変則的なものでした。これでは、チャンバラ好きにも敬遠されてしまいますよ。野球のない時に、
ミーハーの巨人ファンが観ても、良さがわかるはずがないですからね。

 自分だけのお気に入り作品。これぞ、カルトの楽しみだァ。

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