2017.1
共生社会と社会保障の未来像
座談会
- この号が第100巻1号と言うこと.
- これからの社会福祉のキーワードは共生ではないかということ.社会福祉基礎構造改革では福祉の普遍化が説かれたが,経済停滞と中間層の解体が進んでしまう.そのため普通の暮らしのイメージがつかみにくくなってしまった.そうなか,生活困窮者の自立支援や高齢者の生活支援など,暮らしと支え合いの条件を改めて確保していくことが求められた.
- 中央集権的な仕組みから地域の分散ネットワークが保育や福祉,医療で求められている.
- そもそも共生社会とは1970年代にすでに提起されているが,現在はそれよりももっと深刻な時代を背景にしている.人口減少,消滅しそうな自治体…
- 家族機能の低下や既存の社会資源では対応できない状況が拡大しており,支援する側が福祉の対象を総合的,開発的に捉えていくことが共生社会におけるサービス提供のポイントになると思う.
- 2016年3月の社会福祉法改正において第24条で,日常生活または社会生活上の支援を必要とするものに対して無料または低額な料金で福祉サービスを積極的に提供するように努めないと行けないされ,全ての社会福祉法人の責務として規定された.
- 生活モデルが台頭して,自己決定などが尊重されるようになってきたが,まだまだ施設が多くそうした利用者の「参加」の部分で日本はしっかりと対応していないと思う.
- 増え続ける社会保障費の抑制は待ったなし.医療分野での再編は行わないと行けない.ただ,共生社会を目指すことが縦割りを超えて窓口やサービスを連携させ,地域の支え合いに依拠することで財政を削減するという話になりかねない.それは違うと思う.
- 創造的な取り組みは現場から常に始まっていた.また多様な主体の参加と連携による持続発展的な取り組みをしているところもある.滋賀県東近江市の魅知普請(みちぶしん)の実践の紹介
その他,レポートでは「地域包括支援センターの役割への期待(和気純子)」,「家族の介護問題と家族支援のあり方(湯原悦子)」,「過疎地域の地域福祉活動と地域圏域(高良和良)」,「都市部の団地における課題と支援(山本美香)」,「生活困窮者自立支援の今後の展開(後藤広史)」,「社会保障と消費税(高端正幸)」とそれなりに有名な先生が報告している.新年号なので,ここ最近の問題群を取りそろえた感じで,一つ一つがちょっとした論文レベルとなっている.
- 和気は,地域包括支援センターに求められる役割を概説し,タダでさえ激務なのにそれ以上になってどうするのかという課題提起.
- 湯原は,ケアラーが殺人を犯す危険性とケア能力の低下により問題が起こっていること.日本には満足な介護者支援が無いことを紹介し,イギリスでの取り組みを例に提案.ケアラーを社会参加させることリフレッシュさせることを提案している.
- 高良は,過疎地域とそうではない地域の帰属意識の比較調査をしている.過疎地域では案外というか当然,帰属意識は高いが将来への不安が強いことなどを紹介.
- 山本は,都市部の団地の消滅とコミュニティの場がなくなっている現状を紹介.社協のいきいきサロンなどを通じてコミュニティを創出していることを紹介.
- 後藤は,生活困窮者自立支援についての概説.
- 高端は,税の負担感が強いことや公平性を担保するためには社会保障の使い道を高齢者だけでは無く広く現役世代にまで広げて手厚くすること.そして,所得税や法人税などで広く税を集めながら消費税を上げないと納得しないのではないかと提案.