2011.7
介護職と医療ケア
介護職員などによる痰の吸引などの実施の制度化の必要性(大島伸一)
- やむを得ない必要な措置として在宅・特養・特別支援学校に置いて介護職員が痰の吸引・経管栄養のうちの一定の行為を実施することを運用によって認めてきたが、法制化する必要があるとの論点で議論された。
- 医療技術の移転はこれまでもたくさんされてきた、レントゲンや静脈注射、採血など必要に応じて専門技術職の資格を新設したり、既存の資格者に業務を付与してきた。
- 医療もまた最初はないかと外科しかなかったが技術と科学の進歩により多様な科が生み出されてきた。
- そもそも介護職は介護の専門とする国家資格者であるのに医療行為を行わせるのは筋が違うのではないかとする論点もあったが、高齢者の数の増加が需要と供給が追いつかず結果として技術移転することが決まった。しかし、介護職に技術を移転するのは初めてのことであること。医療と介護は異なる分野であり、それがどのように協働するのか。責任の在り方や待遇を考えると摺り合わせていくことは相当にある。
- 原則介護福祉士が研修を受けたりして一定の条件下で行う(事業者の業務として実施)ことが基本だが、介護職員、保育士、特別支援学校の教員も研修を修了した上で内容に応じ一定の条件下でできることとした。
医療的ケアを安全・安心のもとに実施する(白江浩)
- この痰の吸引などは実は20年前から違法性阻却として黙認されてきた。
- とはいえ、責任の不在や行為に対する曖昧さなどが結局吸引や経管栄養を必要とする人にとって不利益であったから今回の制度化は安全性を担保するためでもあり、望ましいことである。
- 医療的ケアというのは新しい言葉で、「医療行為」とケアはそもそも違う意味合いがあった。しかし、日常生活のケアと「医療行為」の境目が曖昧になったために使われている。
- 痰の吸引などを安全性とともに介護者に対して責任を転嫁するのではなく、介護者にも安心できるだけの基準と条件などを担保する必要がある(フォローアップやメンタル面でのケアを含む)。
特別養護老人ホームの介護職が痰の吸引などに対応するために(湯川智美)
- 介護職員に対して医行為の実施が一部許容されたが、それは法律の改正で認めたのではなく一定の条件で行われる違法性阻却として許容されている。
- 介護職員が許容される医行為の範囲は、口腔内(咽頭の手前)までの痰の吸引、いろうによる経管栄養(栄養チューブなどの接続・注入開始は除く)その上で、看護職員との役割を明確にし、配置医が承認することになっている。
- 施設内での一定の条件を整えることが、日常的ケアで医行為を必要とする利用者の利益を護ることになるという視点で取り組むこと。
- 詳しい条件について概説している。
2014.11.23