4.SiO2と珪酸塩鉱物の結晶構造         このページや、下層のHTMLファイルに直接リンクされた方は、このボタンをクリックして下さい。

目次  4-1  4-2  次Page  前Page

 
金属イオン イオン半径 配位数 配位多面体
  (B3+)
  Si 4+
  Be 2+
  Al 3+
  〃
  Ti 4+
  Cr 3+
  Fe 3+
  Ni 2+
  Zr 4+
  Mg 2+
  Li +
  Fe 2+
  Mn 2+
  Cu 2+
  Na +
  Ca 2+
  〃
  K +
  0.2Å
0.4
0.4
0.5
0.6
0.7
0.7
0.7
0.8
0.8
0.8
0.8
0.9
0.9
0.9
1.1
1.1
1.2
1.6















6〜8


12
(正三角形)
正四面体


正八面体










〃,立方体
正八面体
立方体
(SiO4六角環)
表 4-1 主な金属イオンのイオン半径


  珪酸塩鉱物とは、SiO4四面体が単独、あるいは頂点を共有した複雑な連結体で色々な金属イオンとイオン結合しながら相手の姿(イオン価やイオン半径)に合わせて自分の姿(SiO4四面体の連結角)を変え冷えて結晶化したものである しかし、その時々の温度と圧力条件に従い自分の姿(空隙の大きさ)に合わせて結合する相手(金属イオン)を選んだことも事実である
  従って、結晶構造内の空隙に取り込まれてイオン結合している金属イオンの種類と量あるいは過剰な金属イオンに同伴している、水酸イオン(OH-)などの陰イオンの量を測定することによりその珪酸塩鉱物の出所をある程度知ることができる また、金属イオンとイオン結合する事がないはずの石英でもその結晶空隙や構造内に様々な金属陽イオンやOH-などの陰イオンが、均一に取り込まれていることが多く各々の金属イオンの比率や陰イオンの量は石英の産地ごとに特有な値を示している
  SiO4四面体の連結が進むにつれ結晶空隙が大きくなるためイオン半径の大きな金属イオンを取り込み易くなる しかし、同じ連結方式の珪酸塩鉱物でも高圧下で晶出したものは結晶空隙が小さいためイオン半径の小さな金属イオンと結合しなければならない このように、珪酸塩鉱物の結晶構造と金属イオンのイオン半径には密接な関係があることから各種金属イオンのイオン半径と配位すべき空隙の形を、表 4-1 に示しておいた

  
4−1.酸素の配列で決まる酸化鉱物の結晶構造          目次:

  珪酸塩鉱物の結晶構造を理解する上で、密に結晶した酸化鉱物の結晶構造について触れておく必要がある  一般に、酸化鉱物の結晶構造は、構成イオンの中でも最も多く、かつイオン半径の大きい酸素イオン(半径1.31.4Åで、空隙に入った金属イオンの大きさによって多少変化する)が図 4-1 のような最密充填型の構造を形成している そして、その空隙中に、イオン半径の小さい2価以上の金属陽イオンが入りイオン結合によって酸素イオン(O2-)を束ね、酸素イオン同士の反発力を弱めて、結晶構造を強固なものにしているのである

(a)六方最密充填 (b)立方最密充填
図 4-1 酸素イオンの最密充填型と正八面体空隙の位置関係

  上の図のように酸素イオンの最密充填には二つの形があり、第3層目の重なる位置が第1層目と同じ場合を六方最密充填と言い六角柱の繰り返しから六方晶系を形成する場合が多い また、第4層目が第1層目の位置と同じ場合は立方最密充填と言って立方体を斜めに立てた形となり基本的には立方晶系(等軸晶系)を形成する

図 4-2 最密充填の2層の酸素イオンに
   よって形成される空隙数とその位置

(1)六方晶系を成す酸素イオンの六方最密充填型構造
  最密充填した酸素イオンの空隙は、4個の酸素イオンで形成する正四面体の中心と6個の酸素イオンで囲まれる正八面体の中心の2種類がある(図 4-2) 六方最密充填は正八面体空隙の向きが互い違いに軸方向に積み重なり自ずと正四面体空隙も上向きと下向きが交互に、軸方向に連続している(立方最密充填は向きを変えず少しずつずれた位置関係で積み重なっている)
  今、酸素イオンの半径を1.4Åとすると、6配位正八面体の空隙は半径0.58Åとなり、ほぼアルミニウムイオン(Al3+)の半径0.6Åに等しい また表 4-1 にも示したように、Zr4+を除く3価ないし4価の金属イオンは比較的イオン半径が小さいためこれらの金属イオンが八面体空隙に入った場合は多少の歪みは生ずるものの、かなり密な結晶を形作ることができる しかし、Be2+以外の2価の金属イオンはイオン半径が大きいことから八面体空隙は大きく歪むこととなり結晶構造もかなり不安定になる
  図 4-2 からも分かるように、八面体1個を形成するのに必要な酸素イオン(O2-)は1個であるから、2価の金属陽イオンが八面体空隙に入るには、その全てを埋めなければならない しかし、Al3+Fe3+などの3価の金属イオンの場合は、八面体空隙の1/3が空席となり、Ti4+のような4価の金属イオンでは、1/2が空席となって正と負の電荷がバランスする 従って、3〜4価の金属イオンが八面体空隙に入る際に生ずるわずかな歪みは空席の八面体空隙で吸収することになるが、この場合の最密充填の構造としては、八面体が垂直(軸)方向に重なっている六方最密充填の方が都合が良い 後述する立方最密充填型の構造では、このような わずかな歪みをも吸収する余地が無く八面体空隙全体が膨れ上がってしまうのである
  六方最密充填の場合は、その構造にかなりの融通性がある 例えば、3価の金属イオンが八面体空隙内に入ると、八面体の軸方向の重なりに対し、3個置きに1個の空席が規則正しく確保され上下2個の金属イオンの入った八面体空隙の歪みを、この1個の空席で開放している この種の結晶構造は“コランダム型構造”と呼ばれ酸化鉱物の中でも最も安定した構造となっているが天然に産する酸化アルミニウムの鉱物としてコランダム(α-Al2O3,六方晶系)がある モース硬度は9とダイヤモンドに次ぐ硬さで、酸に侵されず、比重も4.0とこの種(軽金属)の酸化物では一番大きい そして、微量のチタン(Ti3+)+鉄(Fe3+)によって置換され、青色を呈した透明なものはサファイア(Sapphire)として、微量のクロム(Cr6+)によって紅色になった透明なものは ルビー(Ruby)として珍重されている

サファイア原石(加藤氏提供) コランダム原石(加藤氏提供)

◇ 参考に「鉱物の加藤さん」提供のきれいな鉱物写真を随所に貼っておきました 最初はサファイアとコランダムの原石で、サファイアは六角板状の結晶をコランダムは六角両錐状の結晶を形作っているのがよく分かります コランダムの左側がルビーで、右側がサファイアであることは言うまでもありません

  また、赤鉄鉱(α-Fe2O3,六方晶系)も同種の結晶構造を有するが、3価の鉄イオン(Fe3+)のイオン半径はAl3+よりは多少大きいものの、かなり安定した結晶で酸には強く、比重も5.3と鉄の酸化物の中では一番大きい 更に、チタン鉄鉱(FeTiO3,六方晶系)もコランダム型構造に属し、この場合は2価の鉄イオン(Fe2+)とチタニウムイオン(Ti4+)の1:1の組合せで、Al3+Fe3+単独の場合と同様、八面体空隙の1/3が空席となっているのである そして、この空席に歪みを集中させることにより、安定な六方最密充填(対称度は低くなる)を形成している
  しかしながら、4価の金属イオンの酸化物である ルチル(TiO2,正方晶系)の場合は少し事情が違う 基本形は六方最密充填型であるが、八面体空隙の1/2が空席(図 4-2 参照)となっていて横一列ごとにチタニウムイオン(Ti4+)の入った八面体列と、空席の八面体列が市松模様を成して並んでいるのである そして、一列に並んだ空席に歪みが開放されるため、図 4-3 に示したように空席の八面体列が押し潰されてより安定な“ルチル型構造”に転換し結晶系も六方晶系から正方晶系に変わっている

斜線:TiO6八面体,白ぬき:空席の八面体 a)正八面体構造 b)6個の正八面体で形作る八面体
図 4-3 六方最密充填から      
    ルチル型構造への転換(断面図)
図 4-4 立方最密充填を成す       
        正八面体構造の相似形
 
 
図 4-5 スピネル型構造の基本概念図

(2)立方(等軸)晶系を成す酸素イオンの立方最密充填型構造
  図 4-4 に示したように立方最密充填は、正八面体が12本の稜のみを共有して連続していることを考えると正八面体の関係にある様々な大きさの相似形を組むことができるため全体として等軸晶系(互いに直交する a,b,cの3軸が同じ長さ)になることは容易に理解できる 更に図 4-5 のように視点を変えてみると立方体の位置関係も 浮かび上がってくることから等軸晶系のことを立方晶系とも言う(但し、図 4-5 の立体図は正八面体を半分省略した形になっている)
  立方最密充填型構造は、各々の八面体空隙が完全に独立しているため非常に安定した結晶構造となっているが一部の八面体に生じた歪みの逃げ場が無く空席の八面体も含め全体が膨らんでしまう しかし、2価の大きな金属イオンが八面体空隙に入る場合六方最密充填では部分的な歪みが大き過ぎて最密充填型の構造が崩れてしまう可能性があることから、むしろ全体が膨らんでも最密充填型を崩さない立方最密充填の方が、より安定な結晶構造を築き上げるのかもしれない
  立方最密充填型の酸化物の例としては、2価の金属イオンのみから成るMgOFeOMnOなども挙げられるが、これらは八面体空隙の全てをイオン半径の大きい2価の金属イオンで埋める必要があるため天然の鉱物中にはほとんど存在していない 天然に存在する酸化鉱物としては、2価と3価の金属イオンの組合せで構成される、磁鉄鉱(FeOFe2O3,立方晶系)やクロム鉄鉱(FeOCr2O3,立方晶系)などがあり、両者とも非常に特異な結晶構造になっている つまり、立方最密充填における八面体空隙の1/2を、Fe3+Cr3+)の半分とFe2+で満たし、残りの半分のFe3+Cr3+)は(八面体空隙の2倍ある)四面体空隙の1/8に位置している そして、この結晶構造は“逆スピネル構造”と呼ばれ酸化物磁性材料の重要な構造となっているのである  参考 : 3価の金属イオンが八面体空隙の1/2に2価の金属イオンが四面体空隙の1/8に入ると“正スピネル構造”になり最も代表的な鉱物としてスピネル(尖晶石MgOAl2O3,立方晶系)がある 半径0.6Åのアルミニウムイオン(Al3+)が、八面体空隙にぴったりと納まったAlO6八面体は、SiO4四面体に優るとも劣らない安定した八面体で2価の金属イオンは四面体空隙に入ることで全体が均等に膨らみ安定した立方最密充填を維持していて、美しいものは宝石となる(下の写真参照)

a)立体図(酸素イオンは一部省略)
b)平面図(酸素イオンの積み重ね)
図 4-6 Ti4+の形成する立方体 
       ペロブスカイト型構造

  図 4-4(b) からも分かるように、個々の八面体が稜同士で平面方向に連結している一枚の凸凹シート(図 4-5 立体図の上半分だけ横に連続した形)を想定した場合立方最密充填とはこのシートを凸部と凹部がぴったりと重なるようにして垂直方向に積み上げていった構造でもある この観点から逆スピネル構造を説明すると八面体空隙に入る2価と3価の金属イオンがシート上の八面体列を一列づつ交互に埋め尽くし2枚目のシートは1枚目と 90°回転させてから頂点同士で重ね更に3枚目のシートは1枚目と平行に八面体列を一列だけずらした位置で頂点同士を重ねた形となる つまり、図 4-5 に示したような位置関係で頂点同士で重ねた分その間を埋めるはずの八面体シートは全部空席となる そして、四面体空隙に入る3価の金属イオンは金属イオンの入った八面体から一番遠くかつ等間隔の位置にある四面体を埋めているのが この構造の大きな特徴で全体として立方最密充填の形を崩さない理由でもある
  同じように特殊な例として“ペロブスカイト型構造”がある ペロブスカイト(灰チタン石CaOTiO2,斜方晶系)は、チタン鉄鉱(FeOTiO2,六方晶系)と組成的にはよく似ているものの表 4-1 からも分かるように、カルシウムイオン(Ca2+)のイオン半径がかなり大きく通常の最密充填型の構造は形成しにくい しかし、O2-Ca2+が入れ替わることを考えれば図 4-6 のように、O2-の1/4がCa2+と置換される形で立方最密充填型の構造を維持することができる つまり、図 4-6 の立体図のように酸素イオン6個で形成する八面体の中心にチタニウムイオン(Ti4+)が入った、TiO6八面体の頂点同士が酸素イオンを共有しながら連結すると12個の酸素イオンで取り囲まれた十四面体の大きな空隙ができる そして、この十四面体空隙にCa2+が入っているのがペロブスカイト構造である しかし、十四面体空隙の有効半径は酸素イオンと同じ1.4Åであり、この空隙にCa2+(イオン半径1.2Å)が入った場合は、空隙がわずかに押し潰されて 立方晶系から斜方晶系に変わってしまい鉱物名がペロブスカイトでありながら理想的なペロブスカイト構造とは言えない むしろ、Ca2+の代わりにイオン半径の更に大きいストロンチウムイオン(Sr2+,イオン半径1.4Å)や、バリウムイオン(Ba2+,同1.6Å)が入った方が理想形に近くなる(八面体空隙にTi4+イオンが入っているので、十四面体空隙は1.4Åよりも少し拡がっている)
  また、Ti4+の代わりにジルコニウムイオン(Zr4+)が八面体空隙を占めることもできイオン半径のバランスさえ良ければイオン価が合計6となる金属イオンの組合せでもよい 特に、比較的イオン半径(1Å前後)の大きな、3価のイットリウム(Y)やビスマス(Bi)を中心に、2価のバリウム(Ba)やストロンチウム(Sr)のほか、イオン価の変化し得る銅(Cu)や鉛(Pb)を、各々の空隙内に取り込んだペロブスカイト構造は最近脚光を浴びている酸化物超伝導材料の重要な構造となっている 極低温下においては全体が収縮する方向に転移し八面体空隙内の3価の金属イオンが押し潰されて(イオン価が増して)立方晶系の完全なペロブスカイト型構造となった時に、超伝導状態になるのかも知れない



磁鉄鉱(加藤氏提供) スピネル(尖晶石)(加藤氏提供)

上の2枚は、「鉱物の加藤さん」提供の磁鉄鉱とスピネルの写真で、両者ともきれいな立方晶系の八面体に結晶しています また、紅色で“正スピネル構造”のスピネルは宝石にもなります

  
4−2.独立型珪酸塩鉱物の結晶構造                 目次:

  独立型の珪酸塩鉱物は、SiO4四面体同士が連結することなく、バラバラに分散する珪酸イオン(SiO4)4-を、2価以上の金属イオンがイオン結合によって引き締めた構造となっている その主な例としては、カンラン石(Mg,Fe)2SiO4やザクロ石(Mg,Fe,Ca)3(Al,Fe)2(SiO4)3のほか、結晶がクサビのように尖ったクサビ石CaTiO(SiO4)や、宝石としても珍重されるトパーズ(黄玉)Al2(SiO4)(F,OH)、更に同じ成分Al2O(SiO4)で温度・圧力によって異なった結晶となる紅柱石・藍晶石・珪線石(これらを同質三像という)などがあり非常に密な結晶構造を成すことから、比重は3.5前後と大きくモース硬度も67.5と かなり硬い 更に、特殊な例としてジルコンZr(SiO4)がある ジルコンは、ジルコニウムイオン(Zr4+)自体が四面体空隙に入って、大きく歪んだZrO4四面体を形成し、SiO4四面体とは頂点の酸素イオンを共有して連結しているため、厳密には独立型とは言えないが非常に強固な結晶を形作っているのが特徴である そして、「比重4.7,融点2550℃,モース硬度7.5」は、珪酸塩鉱物中、最も高い部類に属している
  一方、複合型の珪酸塩鉱物は、SiO4四面体が2個連結した(Si2O7)6-イオンが構造の中心となってはいるが、通常は独立型の(SiO4)4-イオンとの組合せで、水分を伴った二次的な高圧変成鉱物として、緑簾石Ca2(Al,Fe)3O(SiO4)(Si2O7)(OH)や褐簾石(Ca,Na)2(Al,Fe,Mg)3O(SiO4)(Si2O7)(OH)などを晶出する場合が多い

(らん)晶石(加藤氏提供) ジルコン原石(加藤氏提供)
クサビ石(加藤氏提供) トパーズ(黄玉)原石(加藤氏提供)
褐簾(かつれん)(加藤氏提供) タンザナイト原石(加藤氏提供)

上の6枚は、「鉱物の加藤さん」提供の藍晶石、ジルコン、クサビ石、トパーズ、褐簾石そして灰簾石(タンザナイト)の写真です(らん)晶石は三斜晶系に属し、青色透明できれいな柱状結晶になりますが割れ易いため宝石には不向きです また、ジルコンは正方晶系の短柱状結晶で屈折率が高く、透明なものは宝石になります クサビ石は単斜晶系で、見るからにクサビ形の見事な結晶です トパーズ(黄玉=おうぎょく)は斜方晶系で、柱状結晶の先端に平らな面のほか様々な錐面が現れ、黄色透明なものは貴重な宝石になります そして、褐簾石は単斜晶系の細長い柱状結晶ですがタンザナイトは同じ単斜晶系の緑簾石の変種で、鉄分をほとんど含まずくすんだ灰色をしているため灰簾(かいれん)石とも呼ばれています しかし、加熱処理すると目の冴えるような青色透明に変化する1960年にタンザニアで発見された珍しい宝石です

(1)独立型(アイソレイト)珪酸塩の構造的特徴
  独立型の珪酸塩鉱物は超高圧下で形成される場合が多く、その結晶構造は、基本的には図 4-1 に示したような最密充填型構造になっている 従って、1個の酸素イオンから1個の八面体が生じ(図 4-2 参照)、1個の(SiO4)4-イオンからは4個の八面体が形成される つまり、図 4-8 にも示したように、独立したSiO4四面体の6つの頂点で形成される八面体空隙D(ここでは点空隙Dと呼ぶことにする)が2個と2つの面で形成される八面体空隙A(同様に、面空隙Aと呼ぶ)が2個の基本的には2種類4個の八面体空隙が生じているのである しかし、図 4-7 からも分かるように、(SiO4)4-イオンの並び方によっては、点空隙Dは、1つの稜と4つの頂点で囲まれ更に点空隙Cとして、2つの稜と2つの頂点で囲まれる場合も出てくる また、共通の面空隙Aの他にも面空隙Bとして1つの面と3つの頂点から成る八面体空隙も考慮に入れなければならない
  このような多岐にわたる八面体空隙の特徴としては、後者の面空隙Aの場合、SiO4四面体の(固定された3個の酸素イオンから成る)正三角形の面同士で挟まれているため八面体空隙の変形に対する融通性が少なく、比較的イオン半径の小さい3価の金属イオン(Al3+Fe3+Cr3+ etc)が入り易い そして、一旦この面空隙Aに3価の金属イオンが入ると、SiO4四面体の面同士を強力な接着剤で張り合わせることになり非常に強固な結晶構造を構築できるという、大きな特徴を持っている 反面、イオン半径の大きい2価の金属イオンが入った場合は結晶全体が膨れ上がり、すき間だらけになるため、SiO4四面体をイオン結合のみでつなぎ留めている独立型の珪酸塩鉱物にとっては非常に不安定な構造となってしまうのである また、この空隙に金属イオンが入らない場合は、面同士がずれて潰れることにより他の空隙の歪みを吸収するという大きな役目も担っている 同様なことは面空隙Bについても言えるが、面空隙Aよりは多少融通性がある
  一方、前者の点空隙Dの場合は、各々独立した5〜6個のSiO4四面体が寄り集まって形成されているためにどのような大きさや形にも変形することができ、イオン半径の大きな2価の金属イオン(Mg2+Fe2+Ca2+ etc)が入り易い傾向にある そして、イオン半径がかなり大きいカルシウムイオン(Ca2+)は、専ら点空隙Dがその優先席として指定されている しかし、沢山のSiO4四面体の寄り合い所帯であるがゆえにその結合力が弱く結晶のへき開は点空隙Dの並んでいる部分から生じ易いという大きな特徴を持っている また、点空隙Cの場合も同じような傾向にあるが、点空隙Dよりは結合力が強くイオン価の少ない2価の金属イオンにとっては、非常に有効な空隙となっている
  これらの八面体空隙の種類と特徴を表にまとめると次のようになる

空隙の
種類

SiO4四面体の構成(酸素の数)

八面体空隙の特徴
優先する
金属イオン
(3) (2) 頂点(1) 結合力 融通性 その他 [空席時]
面空隙 A 最大 [歪みの逃げ場] Al3+,(Fe3+,Cr3+)
面空隙 B [歪みを少し吸収] Fe3+,Cr3+
点空隙 C 弱いへき開 Mg2+,Fe2+,Mn2+
点空隙 D 〜1 〜4 最大 へき開面を形成 Ca2+,(Mg2+,Fe2+)
表 4-2 SiO4四面体によって形成される八面体空隙の種類と特徴

(2)カンラン石の六方最密充填“レンガ積み”構造
  カンラン(橄欖)石は、マグネシウムイオン(Mg2+)など2価の金属イオンが豊富に存在している中、珪酸塩鉱物の中でも最も高温・高圧条件下で形成されたと考えられる そして、超高温・高圧の原始マグマ中で、各々の独立したSiO4四面体が、珪酸イオン(SiO4)4-となって2価の金属イオンを2個従え、マグマの温度が徐々に低下するにつれてゆっくりと配列の秩序化が進み結晶が成長し始める (SiO4)4-イオンの配列の秩序化とは、SiO4四面体が四つの面を構成する正三角形の各3個の酸素イオンが、各々他のSiO4四面体の正三角形の面(3個の酸素イオン)と 60°向きを変えた位置関係でぴったり重なり、酸素イオンの最密充填型構造を形成することである しかし、イオン半径の大きな2価の金属イオンは、圧力が高いことも影響して、SiO4四面体の面で形成する八面体空隙(面空隙AB)に入ることができず、自ずと2価の金属イオンは、SiO4四面体の頂点や稜で形成する八面体空隙(点空隙CD)に入らなければならないが図 4-8 に示したような立方最密充填型では頂点のみで構成する点空隙Dだけを埋めることになりその結合力が弱いために非常に不安定な結晶となる 結果的に、下の図 4-7 に示した六方最密充填構造を取るようになり、それも、かなり特異なSiO4四面体の配列になっているのである
  つまり、上下左右逆向きのSiO4四面体を交互に並べて、四面体の面同士を 60°ずれた位置でぴったり合わせながら 軸方向に一列に並べると、SiO4四面体に配位している2個ずつの金属イオンが押し出され、図 4-7 の側面図に示したような 軸方向に伸びた菱形断面の“角棒”になる この“角棒”は、押し出された2価の金属イオンによって外側から糊(のり)付けされており隣の“角棒”とも容易に接着することができる そして、軸方向には軸に沿って平行移動した位置関係で隣の“角棒”と接着されこの時の“のり”は点空隙Cに入った2価の金属イオンがその役目を果たしている しかしこの“角棒”が軸方向にひとつずれた位置関係で重なると、図 4-8 の立方最密充填型となってしまうので前述したように、その構造は非常に不安定なものとなる
  一方、軸方向へ接着する場合、平行移動の位置関係では、まるで手抜き工事のブロック塀に似てこれも弱い 下の図 4-7 の側面図からは想像しにくいが酸素イオンの1〜2層間の八面体空隙は面空隙AとBのみ2〜3層間には点空隙CとDのみが交互に並び、2価の金属イオンは専ら点空隙に入るためにブロック塀のモルタルは 軸方向の接着分しか入っていないのだ まさに、軸方向の鉄筋にモルタルが付いていない手抜き工事である
  そこで、最後に登場したのが“レンガ積み”構造である つまり、軸方向への接着は、外側が“のり”だらけの“角棒”を 軸方向へ平行移動した位置関係で、点空隙Cによってしっかり糊付けされているが、軸方向へは“角棒”の前と後を逆にし、かつ酸素イオン一層分 軸方向へずらした位置に置いて、まさにレンガ積みの要領で重ねていくと点空隙Dによって満遍なく糊付けされることになる そして、この“レンガ積み”構造こそが唯一カンラン石の結晶化を可能にしていると言うことができる また、六方最密充填に特有の、八面体が 軸方向に積み重なっている構造から点空隙Cに比較的大きな金属イオンが入ることによって生ずる歪みを、軸方向にひとつ置きに配置されている糊付けされていない面空隙Aが少しずれることによって吸収されていることが図 4-7 の側面図からもよく分かる

4個のSiO4四面体(太丸)に対する八面体空隙数とその有効直径=面空隙A:4個( 1.2Å),
  面空隙B:4個( 1.6Å),点空隙C:4個( 1.6Å),点空隙D:4個( 1.6Å)
図 4-7 カンラン石の六方最密充填型結晶構造

  カンラン石(Mg,Fe)2SiO4の結晶構造は、酸素イオンの六方最密充填において、SiO4四面体1個につき2価の金属イオンが2個、SiO4四面体の頂点と稜のみから成る八面体の点空隙CとD(総八面体数の1/2)に入ることによって“レンガ積み”構造を取ることができるのだ そして、面空隙AとBは、イオン半径の大きい金属イオンは受け入れにくいことと“角棒”同士の接着に役立たないために空席となっている また、点空隙CとD(有効直径1.6Å)は、イオン半径が0.8ÅのMg2+イオンがちょうどはまる大きさとなっているが、イオン半径のわずかに小さいNi2+イオン(0.78Å)はほとんどが点空隙Cに入り、逆にイオン半径が少し大きいFe2+イオン(0.87Å)も、点空隙Cに入り易い傾向がある この原因として、点空隙Cに生じた歪みは、空席の面空隙Aで吸収できるためと考えられる しかし、Ca2+などイオン半径のかなり大きい2価の金属イオンは、面空隙Aによる歪みの吸収にも限度がありわずかな量に限って最も変形し易い点空隙Dに入ることができる
  従って、カンラン石には、結合力が最も弱い点空隙Dの並んだ(軸に垂直な)面{010}にへき開が見られる また、“レンガ積み”であるがゆえに、理想的な六方最密充填に対して a,b,cの3軸方向の歪みが異なり、苦土カンラン石(Mg2SiO4)の場合、各々約12%,13%,15%伸びた構造となるため、結晶系は六方晶系から斜方晶系に変わる いずれにしても、カンラン石は珪酸塩鉱物中最も融点が高い部類に属し、特に苦土カンラン石(融点1910℃、モース硬度6.57.0)が 90%以上含まれるものは粉砕してオリビンサンドとし、主に鋳型材料に利用されている

カンラン石(加藤氏提供) 玄武岩中のカンラン石(加藤氏提供)

上の2枚は、「鉱物の加藤さん」提供のカンラン石の写真で、鉄分が少し入ってきれいな緑色を呈し、別名オリビン石とも言い宝石にもなります

(3)ザクロ石の立方最密充填“ブロック積み”構造
  ザクロ(柘榴)石は、高温・高圧の原始マグマ中で、カンラン石の晶出後の比較的温度が低い条件下で形成された 従って、カンラン石が専ら2価の金属イオンを消費したことにより3価の金属イオン(あるいは原子)が濃縮され、2価の金属イオンと共に原始マグマの周辺部の温度の低い所でカンラン石とはかなり異なった結晶構造を構築したと考えられる もちろん、このザクロ石は、更に温度の低い高圧変成作用においてもわずかな水分と3価の金属イオンの存在下で晶出することは、3-4(4a)でも述べた通りである
  ザクロ石の構成単位は、3個の珪酸イオン(SiO4)4-であるが、高温・高圧下のマグマ中では、(SiO4)4-イオンがバラバラに分散していた そして、比較的高温のうちにカンラン石の晶出が進むとイオン化し易い2価の金属イオンの不足が際立ち、(SiO4)4-イオン1個当たり、1個程度の割当てしかなかったと思われる 比較的水分の多い条件下ではSiO4四面体の連結が進んで、輝石(MgSiO3)などに変化することもできるが、水分の少ない原始マグマ中ではそれも不可能に近い 一方、3価の金属イオンはマグマの周辺部に濃縮されてはいるがイオン化エネルギー(表 6-3 参照)が非常に大きく、たとえ1500℃もの高温下でも、水分が豊富に存在しない限り容易にイオン化できないのである 原始マグマ中では水分が少なかったためにカンラン石の構造内には、3価の金属イオンが取り込まれにくかったのかも知れない 従って、ザクロ石の原料となったマグマ中では、バラバラになっている(SiO4)4-イオンが2価の金属イオンを1個従えその回りには3価の金属が原子の状態で分散していたと考えられる そして、マグマの温度がゆっくりと低下するにつれて、徐々に配列の秩序化が進み結晶が成長し始める
  最初に形成されたのは、カンラン石の晶出時と同じ菱形断面の 軸方向に伸びた“角棒”であった この外側から糊付けされた“角棒”を形成するには、SiO4四面体1個当たり2価の金属イオンは1個で十分である しかし、この“角棒”をカンラン石で言う 軸と軸方向に接着させるには、2価の金属イオン1個だけでは不十分でどうしても3価の金属イオンが必要となる 幸いにも、原始マグマの中心部でカンラン石の晶出が進むにつれ、水分の濃縮も始まっており次第にマグマの上部や周辺部では水分濃度が増加していったに違いない そして、徐々にイオン化し始めた3価の金属イオンによって、“角棒”同士の接着が開始される この少量の水分がザクロ石の晶出に大きな影響を与えることは、高圧の合成実験でも確認されている

6個のSiO4四面体(太丸)に対する八面体空隙数とその有効直径=
面空隙A:12個( 1.2〜1.5Å),点空隙D:12個( 1.8〜2.2Å)
図 4-8 ザクロ石の立方最密充填型結晶構造(灰鉄柘榴石)

  図 4-8 にも示したように、“角棒”同士の接着は、イオン半径の小さな3価の金属イオンが入り易い(SiO4四面体の2つの面で形成される)八面体の面空隙Aによって行われるのである 結果的に、SiO4四面体を構成する酸素イオンが立方最密充填型構造を取るようになることは図 4-8 からも容易に理解できる また、2価の金属イオンによって、既に“角棒”ができ上がっていることから3価の金属イオンは“角棒”間の面空隙の全てに入る必要はなく、3個の(SiO4)4-イオンに対し2個の割合で、(SiO4)4-イオンとの電気的バランスから再配置され面空隙Aの1/3に均等に分布するようになる 更に、ザクロ石の晶出するような高圧条件下では“角棒”をおおっていた2価の金属イオンは押し出されて平均的に点空隙Dの1/2を占めているのである 従って、ザクロ石の結晶構造は、図 4-8 に示した側面図からも分かるように菱形断面の“角棒”を(“角棒”の長手方向につながっているSiO4四面体がひとつずれた位置関係で)上下・左右に積み重ねた“ブロック積み”の構造になっている それも、3価の金属イオンという強力な接着剤で均等に固められた構造である このように、3価の金属イオンを SiO4四面体の面(面空隙)の接着に利用している例は少ないが、このザクロ石の他には電気石がある そして両者の結晶は、高硬度でへき開が見られないという共通点を持っている
  ザクロ石の種類は数多くあるが、八面体空隙に入る金属イオンの大きさによって、アルミニウム(礬)ザクロ石(Mg,Fe)3Al2(SiO4)3と鉄ザクロ石Ca3(Fe,Al)2(SiO4)3の、概ね2種類に分類できる 前者のアルミニウムザクロ石は、2価のMg2+Fe2+イオンと3価のAl3+イオンが、共にイオン半径の小さい部類に属しているため酸素イオンの立方最密充填に近い、非常に強固な結晶構造を成している 一方、後者の鉄ザクロ石は、イオン半径の比較的大きい3価のFe3+イオンが面空隙Aの一部を占めているために立方最密充填型構造が全体に膨れ上がり、大きくなった点空隙Dに、イオン半径の大きい2価のCa2+イオンが入ることによってバランスを保っている(灰鉄柘榴石)
  いずれにしても、ザクロ石は非常にバランスのとれた結晶構造を成し、理想に近い立方最密充填を形作っていることから結晶は立方(等軸)晶系の斜方十二面体(正八面体の12本の稜の部分に、菱形の面が成長した形状)や偏菱二十四面体(菱形の隣合う2辺が少し短くなった四角形を3枚正三角形状に張り合わせ正八面体の8枚の正三角形と置き換えた丸みのある形状)になり易く両者の面が全て現れた三十六面体も稀に見られる 中でもアルミニウムザクロ石は、モース硬度は7.5とかなり高く、粉砕して研磨材に利用されているほか、2価の鉄イオンが入った鉄礬ザクロ石Fe3Al2(SiO4)3で濃紅色透明なものは、ガーネット(Garnet)として宝石にもなる

斜方十二面体のザクロ石(加藤氏提供) 偏菱二十四面体のザクロ石(加藤氏提供)

上の2枚は、「鉱物の加藤さん」提供の鉄マンガン系アルミニウム(満礬)ザクロ石(Fe,Mn)3Al2(SiO4)3の写真です 左は鉄分が多く色黒の斜方十二面体右が鉄分の少ない偏菱二十四面体(一部斜方十二面体)のきれいな結晶です

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