日本の年金制度を糺(ただ)そう (3)


年金問題を糺す会 杉内




年金制度の問題点と解決策

  (前号からの続き)
 (f)厚生労働省は、今も次のような前提条件(次項の〔g〕)が維持されるならば、今の【世代間で助け合う賦課方式】は維持していけると強弁していますが、私は崩壊の危機に直面していると断言します。
 前号の〔2−(1)@〜Aで記述したように、保険料は上げられるが、年金の給付金額はダウンする事態〕に対し、坂口前大臣や官僚達は、「少子高齢化が進行するこれからの日本の社会では、若い現役の世代が高齢者を支えるのは当然で、若い働き手が損をする(後述しますが、〔自分たちが支払った保険料の総額の34%〜42%が自分たちの手元に戻ってこない=損をする〕)と言うのは、考え方が間違っている」と言っていましたが皆様はどう思いますか?。
 現在は、【世代間で助け合う賦課方式】ですが、前号で解説したように、この方式には弱点もあり、前提条件が崩れた場合は成り立たないのです。政府のお偉方は〔損をすると言うな、我慢しろ〕と言われますが、保険加入が強制でなく任意加入の場合、自分の為でなく他人の為に保険加入なんかするでしょうか?。
 (g)下記の条件の成就を前提にしているが、
★今後ずーっと、現役世代の実質賃金上昇率が毎年《1.1%》達成されること。
★合計特殊出生率が1.39へ回復すること(‘03年は1.29迄落ち込んだ)
  【私の反論】
イ)経済の国際化が進展し(特に中国への製造拠点の移転)、求人と雇用のミスマッチが起きて若年者の失業率が高止まりしているだけでなく、人口の激減(‘06年をピークに今世紀末には、日本の人口は6千4百万人と半減化する《社会保障・人口問題研究所の資料より》)というかって無い経済の縮小化の時代にまもなく入り、とても賃金労働者の実質賃金上昇率が毎年上がることは考えられない。
ロ)《出生率の1.39への回復も困難》
 ‘03年の合計特殊出生率は1.29でした。〔年金制度改革関連法〕の審議の段階では、政府側はまさか出生率が1.3を割ることは想定せずに「2050年頃にかけて1.39に回復する」と答弁していましたが、法案が参議院で可決された数日後に「実は1.29でした」と発表し、新聞等で叩かれたのは皆さんご存知ですね。私は「この達成は非常に難しい」と思っています。
 『阻害要因』として(‘04年〔少子化社会白書〕)
☆この世代の男女の高学歴化、有業率の低下に起因する未婚化の増加
☆結婚したカップルの晩婚化・晩産化
・少子化(子供の数も少ない)
☆《日本的な家族観が大きな障害》
今以って根強い〔性別役割分業意識〕があり、例え若い人達の間では意識面では弱まったとはいえ、実際は〔男性の家事・育児に割く割合は、先進国中最も少なく、数十年前とほとんど変わっていない〕(NHKスペシャル〔63億人の地図〕‘04年9月26日放映)
★日本は〔男女平等については、法制面では既にほとんど対応済み〕だが、実社会ではあまり効果は表われておらず、『若い女性が仕事を続けながら〔結婚退社をせずに〕積極的に結婚を選択し、子供を産み・育てることを選択する社会には〔よほど強力な施策をしない限り〕ならないでしょう。』
★《仕事と出産・子育てを両立できる環境整備の遅れの解消が必要》
◆企業社会は、出産・子育てに優しい環境に変わって行けるか?
◆社会全体の保育環境の整備も不充分だが急速に進むだろうか?
ハ) 正規従業員数の比率の低下は、出生率低下に輪を掛けて〔厚生年金の財源を蝕み〕、年金制度そのものを根底から崩壊させます。
☆フリーター〔217万人も居る〕やパートタイマーの比率増加に加え、NEET〔義務教育終了後、進学も就職もせず、職業訓練も受けていない若者を指し、約84万人も居る〕やパラサイトシングル等の無気力層の増加も影響しています。

                                                  (次号に続く)  
                                    

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