日本の年金制度を糺(ただ)そう (2)


年金問題を糺す会 杉内




     年金制度の問題点と解決策
 1.「各論の前に、全体像を数値で表わせば」
  (1)公的年金加入者の状況(社会保険庁)
    @ 国民年金の納付者のみ1409万人
    (未納者、免除者等を除いた数)
    A 厚生年金等加入者   4944万人
    (共済年金&これから配偶者を含む)
  (2) 〔何故今この問題を取り上げるのか?〕
    それは、国民全員にとっても何にも増して最大の関心事だからです。
    @ 選挙前後の新聞は「年金改革法【白紙撤回】を8割が求めている」(朝日、平成16年7月4日)
      年金改革をめぐっては、自民党支持層でも約6割、公明党支持層でも半数以上が白紙に戻すことを求めており、
      撤回に応じない与党方針とのズレが浮き彫りになった。
    A その後の報道も「新内閣に望むこと」
     (a)朝日新聞・世論調査 調査日平成16年9月27〜28日
       〈1〉《年金・福祉52%》〈2〉《景気28%》
     (b)NHK・世論調査 調査日平成16年11月5〜7日
       〈1〉《年金制度29%》 〈2〉《景気 23%》
  (3) 〔国民年金〕と〔厚生年金〕とどちらが問題を抱えているのか? それは、〔厚生年金制度〕の方が構造的で
       一筋縄では解決できない問題を抱えています。従って、最初に〔厚生年金制度〕の方を取り上げます。

2.『厚生年金制度の問題点と解決策』
  (1)今回の〔年金制度改革関連法〕が野党の強い反対を押し切り可決し、施行されたことにより、常識では理解でき
     ない事が起きました。
    @ 保険料率は約35%も上げられるのに(現在の13.5%→14年かけて18.3%に)
    A 老後に受給する年金は、現在の高齢者が受給している額よりも30%以上も少ない年金しか受給できないという
      試算が出ています。
    B どうしてこんなバカげたことが起きるのでしょうか?
      (a)現在の〔厚生年金制度システム〕は、世代間扶養システムと言われるもので、現役の世代が支払った保険
       料で、現在の高齢者の年金受給の原資にする方式=賦課方式で、運用されている訳です。欧州ではドイツが
       これに似た方式のようですが、この方式が多数という訳でもありません。福祉先進国のスウェーデンの例を
       後述しますが、全然違います。
      (b)どんな場合でも、民間が預かって運営する年金は、全て〔積み立て方式〕です。最近の論調は(経団連
       や学者の多くの人達)、国家が管理・運営する年金も全てこの方式にすべきだと推しています。私も基本的
       にはこれ以外に無いと思います。
      (c)この制度の歴史的な推移は、今度小泉内閣で厚生労働大臣に就任した尾辻さんが、次のように新聞記者
       からのインタビュー(朝日、‘04年10月1日)に答えていますので記述します。
         「改正年金法は基本の議論が抜けていた。厚生労働省は、年金制度について、かっては〔積み立て方式〕
      、そのうちに〔修正積み立て方式〕、最近は〔世代間で助け合う賦課方式〕と言っている」。
          新大臣自ら、基本の議論が抜けていること、〔積み立て方式への回帰〕も有り得ることを認めていますね。
      (d)私は、賦課制度が全面的に悪いとは思っていません。インフレには滅法強いと言う面もあるのです。しか
       し、この賦課方式に全面的に頼っている現在の厚生労働省の方法では、《人口が増加しているか、最低限横這い
       である場合でしか成り立たず、今のように人口が激減して行く時代には成り立ちません》。
      (e)〔世代間で助け合う賦課方式〕に変わって行った背景には、日本経済の高度成長真っ只中の田中角栄内閣の
       時に、〔福祉元年〕政策の目玉と位置づけて【厚生年金の給付を大幅に改正しました】。
         この時の改正の内容は、「年金加入者が老後人間らしく生活できる年金を給付出来るように」と考えて【老後
       に受給する年金は〔現役世代の手取りの59%位は必要だ〕】と先ず決めて、次いでその為には財源はどう確保するべ
       きかの段階で@《世代間で助け合う賦課方式》を編み出しA財源の面では〔保険料を段階的に上げて行けばよい〕
       と考え、制度を大幅に改正しました。
         改正する動機や内容は、時代の要請もあったので良かったのですが、問題はその前提条件(注)が崩れた
       今見直しを真剣にせず突っ走っていってよいのか(方向転換をせずに)ということですね。

 【注】@今後も高度経済成長が続き、勤労者の給与が上がって行きA合計特殊出生率も横這いで推移するだろうと考えていた
のが、全て裏目に出た訳です。               

                                                    (次号に続く)

                                    

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