+αからのメッセージno3


社会と共生する博物館を目指して
平塚市博物館と友達になろう!


小林



 皆さんは、平塚市博物館の行事に参加したことがありますか。平塚市博物館は相模川流域の自然と文化の研究を目的に、市民参加の行事を取り入れて運営されています。歴史、考古、民俗、生物、地質、天文(2人)の計7人の学芸員が、それぞれ研究、教育普及、記録、企画、資料整理などの仕事に励んでいます。さらに、そうした学芸員と共に歩む市民のグループがいくつもあり、活発な活動を続けています。博物館の活動は、市の広報やホームページに紹介されています。また、常設展示の他に年約3回開催される特別展示では、研究成果が紹介されます。
 今年、3月17日〜5月6日まで、春季特別展「思いでの風景 思いでの人々‐山本登写真展」が開催されました。県の農業改良普及員をされ、平塚在住だった故・山本登さんが撮り続けた多くの貴重な写真の中から、昭和20年代から30年代の平塚の風景や暮しの写真が展示されました。企画担当は、民俗と生物の学芸員でした。また、現在と比較するための写真は、民俗に参加されている有志の方々が撮影しました。それによって、環境の変化が一目瞭然になりました。私は展示解説ボランティアとして参加し、来館された方々のお話をお聞きしました。懐かしい、暮しの様子、環境の変化に驚いた、この企画が有って良かった、感謝しているなどです。来館された方々の感想から、この特別展が現在の環境の変化を考えたり平塚市の歩みを振り返るなど、見学するだけではなく特別展をきっかけに様々な事を考える手がかりになったことが伺えます。それは、新しい地域のアイデンティティ(自分が自分であることの根拠)の萌芽だったと私は考えています。また、この特別展は平塚市博物館があったから初めて可能だったと言えないでしょうか。市民が準備に参加し、民俗、生物という異なる角度から、平塚市の地域の変化を資料によって分かりやすく提示しました。博物館を持たない市では、こうした展示は難しいでしょう。平塚市博物館において、日常的に市民参加で様々な角度からの地域研究があったからこそ、今回の特別展が実施できた訳です。そして、平塚市博物館と他の研究機関との違いは、地域の方に還元されるという点です。資料や研究結果は財産であり、市民はそれを基に考えを進めます。それは、市民と博物館が研究成果を共有したと言えるでしょう。私は、平塚市に博物館があって本当に良かったと思います。ただ残念なことは、来館者に中学生や高校生が少なかったことです。もっと若い人にも見ていただけたらと思いました。
 私が博物館の行事に参加するようになって11年になり、特に今年は印象に残る年です。2月、平塚市博物館まつりにおいて、漂着物を拾う会の発表を担当したからです。漂着物について、参加された方の意見を伺い、調べ、構成し、発表しました。振り返ってみると、初期の生物の観察会への参加、その後、貝の整理を手伝い、取り組んだ環境問題では、生物データを基に行政の方と交渉しました。そうした事から、博物館との関りに4段階のレベルがある事に気づきました。1期の勉強、2期のボランティア、3期の資料の活用、4期は自立した独自の活動です。私が平塚市博物館から学んだ事は、地域で何かにアプローチする(近づく)のは楽しいという事です。これは、環境方面で言われる「地球規模で考え、地域で行動しよう!」の実践に他なりません。だから、平塚市博物館関係者の皆さんには感謝しています。
 最後に、平塚市博物館のこれからについてですが、昨年の博物館利用者は、47,232人で市全体の18.6%(2001.4.1)です。せっかくのこうした活動が市民に知られていないのは残念なことです。もっと、市民が気軽に利用できる博物館であって欲しいので、以下の提案をします。

 @ レファレンス(問合せ)システムの充実…25年間の蓄積資料を市民が利用しやすいように。
 A 小学生・中学生・高校生の常時受け入れ環境、体制の充実…総合教育・奉仕活動の義務化などに対する受け皿づくりが必要です。
 B市民に開かれた運営方法…博物館と市民がより近づくには、お互いの意見交換が有効でしょう。

 浜口学芸員が「放課後博物館へようこそ」地人書館を出版されていますが、今後もさらに小学生・中学生・高校生が放課後、博物館に来て気軽に活動できるようになったらすばらしいと思います。…・・平塚市博物館は、地域、人、空間、時間、研究、資料、生物、暮し、情報、石、星、etcを暖かくつなぐ文化施設ですから。    

戻る