オペラ座の怪人

ガストン・ルルー作/三輪秀彦 訳
創元推理文庫

ストーリー紹介


オペラ座にまつわる怪奇な伝説「オペラ座の幽霊」。

多くの人はその存在すら疑問視していたが、
「わたし」は独自の調査により、過去に起きた悲劇の数々が
「オペラ座の幽霊」のしわざであることをついに突き止めたのだった!

幽霊とは何ものなのか?
道具方主任の自殺、フィリップ・ド・シャ二イ伯爵の死の真相は?

ペルシア人を初めとする数々の人々の回想により、驚くべき物語が展開される・・


感想

はじめは、美しい娘を醜い男と美しい青年が取り合う心理劇だと思っていました。

・・が。ドキュメンタリー調でスタート。途中、ラウル青年登場で怪奇ロマンス物になるものの、
続く話では大金をめぐる推理ものと化し、さらにペルシア人の登場で舞台は冒険活劇へ。
これだけいろんな要素がチャンポンになっている本も珍しいです。

ところで、私を喜ばせたのは、幽霊の得意とする数々の面白い仕掛です。

鏡のトリック、安全ピン、分銅、拷問部屋、切穴、セイレンの歌声、
腹話術、書き割りの隙間、隠し部屋・・作れる物なら作りたい仕掛で一杯です。

ペルシア人登場から私の目は文章に釘付けでした。冒険活劇物が好きな人には特にお勧めです。

(ヨーロッパ人の幽霊の頭が良くて回教徒の頭が悪いとか、原注が多い所は問題がありますが)

しかし、極悪人で、独善的なオペラ座の怪人の哀れさが明らかになる所は涙をそそりますし、
音楽の天使についてのダーエの話は、深く考えさせられる所が多々あります。

もちろん、随所に笑えるシーンもあります。
安全ピンを求めて血眼になり、後ろ向きに歩く支配人達の姿といったら・・
(ピンは「黒衣婦人の香り」など、ガストン・ルルーの作品では必須アイテムです)

ちなみに、ルルーに対してあとがきに批判的なことを書く人が多い中、
この本は唯一理解を示しているので、貴重です。(あとがきは紀田順一郎さんが執筆)


その後ミュージカル版を聞き、映画最新作を見ましたが、原作の方が私は好きです。
「オペラ座の怪人」は恋愛モノじゃないと思うし。ラウル強すぎるし。怪人弱いし。
おまけに怪人、ロリコンでストーカーだし。(泣)

何より悪いのは、クリスチーヌが玉の輿に乗る所でしょうか・・(特に映画は・・)

原作では伯爵殺しの容疑がかかっているためにラウルは家に帰れないので、
クリスチーヌの収入で暮らすんだと想像してただけに・・(以下略)

まあ、好きな人は、好きなんだ!・・と思う事にします。ハイ。(泣)


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