何も無いものの並べ方




人間は、物を数え上げるために「順列」や、「組み合わせ」といったものを考えだしました。
これらは並べる物の種類が全て違い、並べる方向は一定である場合を考えています。

「順列」というのは、数え上げる物にすべて番号をつけて(順序を考えて)、
その並び方が何通りかを数えるもので、n! = n (n-1)(n-2) …(n-k-1)…1
で計算できます。(番号を一つずつ減らしながらかけ算していくわけです)

「組み合わせ」というのは、やはりすべてに番号をつけるて並べるが、
おのおのの順序は考えず、全ての並び方が何通りかを数えます。
つまり、a,b,cと物があるとき、(a,b,c),(a,c,b,) ... , (c,b, a)のように
並ぶ順番をあくまでも1通りと考えてしまうわけです。
これは、
nCr = n! / r! (n-r)!
で計算できます。

ところで、0! はどう計算するのでしょうか?
0! = 0だと思いませんか? そうですよね。0に0をかけたら0に決まっています。

では、0個とはどういう状態なのでしょうか?
そうです。「何も無いという数」だけ、物があるということです。

    例えば、集合を考えると、「何も含まれない集合」を「空集合」といいます。
この「空集合」は、中身が何も無い空の袋のような物です。つまり、0個入っています。

この「空集合」から0個取り出すという、なんともtrivialな順列・組み合わせを考えてみましょう。  
・・・え、0通り?!
いえいえ、1個あるでしょう。「何にも無い」というものが。

0個並べるということは、1通りしか無い。 だから、0! =1. 

・・・当然ですね。こういうのをtrivialというのです。わはは。
ですが、私が言いたかったことは、確かに、0! = 1は「決まり事」かもしれないけど、
そうやって単純に覚えるより、上のように考えた方が面白いじゃないかと言いたい訳です。

どうですか?こう考えると、算数も面白いと思えてきませんか?
「もっと数学的に0!を決めたい」という方の為に、
「プログラマの数学」(結城浩、ソフトバンクパブリッシング、2005)という本に載っていた、
次のような導き方を紹介します。

まず、n!を考えると、
n!=n(n-1)!.

よく見ると、(n-1)!はn!と同じ形をしていますから、
上のnをn-1に、n-1をn-2に書き換えれば、
(n-1)!=(n-1)(n-2)!

この手続きを繰り返す(nから1を引き続ける)と、

2!=2・1!
1!=1・0!

故に0! = 1.

こっちの方が数学的にはすっきりしていますね。
(参考文献では、自分とおなじ式を呼び出す「再帰」という構造の例として紹介されています)






このコーナー内の全ての画像及び文章の無断転載を禁止します。