さて、メルビルでさらにかせいだ十代コンビは引き続き資金集めのために、メルビルから徒歩で東のブルエーレへ向かった。
そしてブルエーレから北エスタミルへと船出し、さらに船で対岸の南エスタミルへ渡った。
(もちろん、前回の二人組とはそこでおさらばしたのである)
以前南エスタミルに行った時に、酒場にいた詩人から開拓地・フロンティアのことを聞いたからである。
ユーエン大陸にある南エスタミルからニューロードを通りタルミッタの街へ向かい、さらにニューロードを通り、北西へ向かった。
フロンティアはマルディアス世界の西の果てにある大きな半島であり、北東から海を望めばローザリア地域が見え、南東には昔エスタミルを支配したクジャラート地方が位置する。
もちろん、西の海をへだてて南海の孤島・リガウ島が位置しているが、これらの地域とフロンティアの間には船の行き来はない。
山や川も多く、決して開墾に向く土地には見えないうえ、モンスターも数多く生息する危険な地域であるが、それでも開拓者たちはたくましく暮らしていた。
その姿を見て、不幸な十代コンビはいたく感激、彼等のお手伝いをすることにした。
フロンティアのダンジョンは複雑なものも多いが宝も多い。
いくつかのダンジョンをクリアし、十代コンビは北東にある村によってみることにした。
しかし、村は静まり返っていた。
村人の様子もおかしい。亡霊のようにさまよい歩いている。
そのへんの男性に話しかけてみると、
一瞬のうちに男の目はまっ赤に染まり、口がさけ、そこから二本の牙が生えてきた。
彼はモンスターになってしまったのだ!
ついに中期イベント『ヴァンパイアの復活』が発生したのだ。
しかし、襲ってきたとはいえこいつはヴァンパイアのしもべとなった村人なので、殺すわけにはいかない。
と、いうわけでアグネスの聖杯から沸きだす神秘の水で攻撃。
気絶した男をそのままに、二人は大急ぎでウェストエンドに走った。
酒場 で情報をえた二人は、北東の村のさらに東にある、ヴァンパイアのねぐらに向かった。
すでに聖杯を手にいれているので、道中はさしてつらいものではない。
ただゾンビ系のモンスターとヴァンパイアのしもべがうじゃうじゃいて狭い道を塞いでいるので、通るだけでも大変だ。
しかし、である。ヴァンパイアのしもべは弱いけど、なぜかレベルアップがよい。
たぶん現在のアセトくん達の強さよりレベルが高いんだろう。
洞窟の奥には澄んだ泉が湧き出で、泉の真ん中には美しい女性がたたずんでいた。
しかし、彼女はアセトくんたちを見るや否や美しい顔を醜く歪ませ、言った。
「また我がしもべとなるものがやってきたようね!」
しゃべらなければ絵のような風景だったのに・・ぼそぼそ彼女の悪口を言いだす二人。
それを見たヴァンパイアはまったくバカにされていることに気付き、
「おまえたち人間ごとき、800年生きている私の足下にも及ばぬわ!」
と叫んだ。
その時。
アセトアルデヒドは背中に背負っていたものに手を伸ばし、叫んだ。
「なんの!これが目に入らぬか〜!」
ばばーん!聖杯登場!!
それを見たヴァンパイアは
「そ、それはアグネスの!だれもそれには近付かせないという約束で目を覚ましたのに!」
と叫び、水戸黄門の印籠を見た悪代官のようにあとずざった。
一人足りないが、傍らのアイシャはさながら助さん角さんである。
そーか・・・ヴァンパイアと何者かの取り引きを、聖女は知っていたんだな。
聖杯を得た者にヴァンパイアを完全に滅ぼさせるため、墓泥棒行為を黙認したのか・・
しかし、ヴァンパイアは気を取りなおした。おもむろに高笑いすると、
「おまえたちにアグネスほどの法力がそなわっているはずがない!」
と叫んでおそいかかってきた。
もちろん、聖杯があるので気が楽。
運良くクリティカルヒットも出て、ヴァンパイアに勝利!
こうして二人はウェストエンドへ帰ってきた。
しかし、アセトアルデヒドは宿についてからも
(ヴァンパイアは誰と約束したんだろう・・)
と考えつづけていた。