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マテラ(Matera)

40 39 50.60N,16 36 32.82E

 靴のかかとにあたるプーリア地方の港町バーリからローカル線に揺られて約1時間、人口約4.5万人の町マテラに到着します。駅前はさほど特徴のある所ではないのですが、グラヴィーナ川の斜面に拡がっているのは、近代都市の廃墟とも言えるサッシの集落です。

 紀元前からこの付近に人が住み始め、中世には修道士も大挙して住んでいたという。その住み方は奥に洞窟を掘り、前面には家を建てるという、半地下、半地上というものでした。この営々と暮らしてきたこの地を行政側が、ここは不衛生であり貧民掘だという理由で、斜面地ではなく、上の新市街地に強制移住をさせた結果、ここは近代の廃墟と化したのです。その後行政側もここの貴重さに気づき、徐々に人を戻しているそうですが、廃墟と化した都市を元に戻すのは並大抵のことでは出来ません。

 約半日しかいられませんでしたが、その間この都市の壮絶な死を身をもって凝視するため、ひたすら路地を彷徨して回りました。廃墟といっても、フォロロマーノのように、大昔のものではなく、つい先程死した都市、まだ冷たくはなっておらず、いわば死臭が漂よってきているような妖気に満ちた、異様な都市空間だったのです。
 人口を戻し始めてもう10年以上になり、ここも世界遺産に登録され、そしてどんどんと観光地化され、少しは死臭も消えてきたでしょうか。

サッシ全景。ここの建物の殆どすべてが廃墟と化しているのです。

市内。窓が黒くなっている所は窓が入っていない、すなわち廃墟の住宅です。(頂上の建物は健在です)一人だけ住民が写っている。

屋根が崩れ落ちていたりもしています。
  

廃墟と化した建物内部。前の方は建てていますが、奥の方は全部岩を掘り進んで居室を作っています。しかしここから奥には気持ち悪くて入れませんでした。

移り住むことなく暮らしてきた一家。
何故か異邦人の私を招き入れ、家畜を見せてくれたり(家の中に一緒にいる)、水っぽい自家製のワインをご馳走してくれました。しかし殆ど真っ暗で、ピントが合わなかったのが残念。

かなり丘の上の方での写真。このあたりは人が住んでいる感じです。
帰ってきてからルドフスキーの本を広げたら、全く偶然に同じ場所が紹介されていました。(右写真)

「人間のための街路」での挿入写真。「迷路」の章です。