(※ホモセックスの支度や衛生面の描写は適当です。ご承知ください)   ツレカノ!  彼女いない俺たち五人の六畳一間に奇跡が起こって、突如セーラー服の美少女が現れた。 「っどぅおぉ? ん似合ってるかなぁっ♪」  黄色い声でピースとウインク。舞い散るハートと漂う色香。スカート膝上二十センチで、二の腕と太腿がまぶしくて、髪はふんわりつやつやのフレアボブ。 「おお……お」  正座で生唾を呑んでガン見するツレたち、中山、佐枝、滝之原。  と、その後ろで生温かい細目になってる俺。 「なんだよこれなんだよこれ」「クッソ可愛いなオイ!」「やべー惚れる。ちょ、撮るぞ。撮っていいよね?」  口々にはやし立てて、滝之原が携帯を取り出した途端に。 「いいわけあるかバーカ!」  美少女がほがらかに言い放って、パンツ丸出しの回し蹴りで携帯ごと滝之原を吹っ飛ばした。  その場でくるっと振り向いて、嗜虐的な目つきで見下ろして、ほかの二人のあごを白ソックスの爪先で、サッカーボールをリフトするみたいにポンポン蹴りあげる。 「なー似合うだろ? カワイイだろ? でもその中身はいつものオレなんだよオ・レ!」 「ぶち壊しじゃんよ、その格好でそれ言うな!」  半泣きで言い返した中山に、同じぐらいキツく美少女は言い返す。 「どの格好で何を言おうがオレの勝手だろ。そもそもオレいっつもこれだろうが! ちょっとスカートひらっとして声変えただけで、目の色変えんなこのサルどもが!」 「でも実は可愛くなるの、楽しいだろ。イサヤ」  俺がぼそりとそう言うと、美少女・五十塚伊沙也はぴたりと動きを止めた。  エアコンの音だけが低く響く。  やがてゆっくりとこちらを見ると、フッと薄笑いを浮かべた。 「いやーあ、そんなことないよ? 浩平ちゃん」  うん、ないない、ないから、と何度も言いながら、伊沙也はどすんとガサツに俺のベッドに腰を下ろして、ほっそい足をガサツに組んで、毛のない腕をガサツに組んで、喚き立てた。 「確かにオレはかわいいかもしれんし、しょっちゅう女装してるけど、中身は全然男だしおまえらに媚び売ってるわけじゃねーから! そこキッチリわきまえてほしいから!」 「お、おう……」 「つかフツーにツレだから。この部屋にはフツーに男五人いるだけだから。OK?」 「ああ、まあ……」 「それと」スーッと息を吸って、伊沙也はちょっと目を逸らした。「蹴って悪ィ。女装んとき、あれぐらいしねーと相手が目ぇ覚まさねぇからさ……」  ほっぺたがほんのり赤かった。  それを見ると中山佐枝滝之原もなんとなく座り直して、「ああ、まあいいよ」「俺たちもちょっと血迷っちゃったな」「な」とうなずきあった。  それで、いったん部屋に立ち込めかけた変な盛り上がった空気は、すっかり霧消してしまって、元の通りに、彼女いない高校生五人の醸し出す、かったるいけれど気の置けない雰囲気に戻っていった。  ベッドに寝転がってスマホをいじったり、ノートパソコンで下らないネタ情報サイトを流し見したり、PSPで対戦したり。たいして面白い事もなければ切羽詰まった義務もないとろんとした時間を過ごしつつ、決まり文句のように似たような言葉を口にした。 「っあー、彼女いればなあ」 「なあ」 「どっか行きてーし」 「行きてーな」 「だりぃ」 「彼女いればなあ」 「どっか行くのにな」 「いたら海行きてー」 「行くよなあ、それはぜってー行く」  最後から二番目が、俺のセリフ。その次が伊沙也の。  だが、どのセリフにも同感だった。 「じゃーなー」「おー」「また」  夕焼けになって一日が終わった。外へメシとか食べに行く金もなくて、誰からともなく腰を上げた。中山佐枝滝之原が短く挨拶して、部屋から出ていき外へと去った。 「またなー、みんな」  うちの隣に住む伊沙也はまだ帰らない。一戸建ての二階にある俺の部屋の窓を開けて、わざわざ手を振って三人を見送った。その顔は陽気で屈託がない。乱暴なやつだが性格は素直でフレンドリーだから嫌われない。美形のくせに女遊びしないから女子にもウケがいい。  そういった素性を、四つの時から俺はよく知ってる。  それ以外の隠れたところも知っているぐらい、こいつとは深い付き合いだった。 「あー……外あっつい」  夏の夕方の焼けた風を受けた伊沙也が、セーラー服の胸元をつまんでパタつかせる。そうすると、不思議なことが起こる。  男子五人がグダっていた部屋は、たとえエアコンをつけていてもかなりの男臭さがこもっていて、外の風を入れることでそれに気づくもの。だが俺と伊沙也の二人になったとたん、匂いがなんだか変わるのだ。  濃さはそのままで、甘く青臭いものが焦げたような匂いに。俺はそれをかぐといつも、枝ごと燃えたリンゴをかすかに連想する。空気がふわりと変えられ、目に見えない男の濁りみたいなものが急速に薄れていく。  それはきっと伊沙也から流れてくる。伊沙也の髪と腋とスカートの陰と。それも、ほかの場所ではそうならなくて、この部屋に限ってそうなる。  昔からそうだったと、ごく最近気づいた。  そして今でも、気が付いたと伊沙也本人には言ってない。 「あっついけど、たまにはいいよなこれ。エアコンびたりだとさ。なー、浩平ちゃん」  夕焼けで埋まった窓にもたれて、伊沙也がまだ陽気なままのテンションで言う。 「ん……」  俺は曖昧にうなずいて、ノートPCに顔を向けたまま伊沙也のやつを見る。  中山たちはよく我慢できたもんだ。  伊沙也の服は卒業した先輩女子からもらったとかで、学校指定のセーラーの夏服。マリンブルーの襟に入ったゴールドのラインが可愛いと評判だ。膝上二十センチのミニスカはもちろん脚を見せるために巻き上げまくっている。男モードだから夕風ではためいてもまるで気にしない。すらっとした太腿の奥にちらちらと覗く白いものは、女物のショーツだ。何やらピンクのひらひらまでついているけれど、ここからだとあまり細かいところまでは見えない。  見たければいくらでも見られるけれど。  小首を傾げて伊沙也が言う。 「ちょっと開けといてもいい?」 「ああ」 「じゃ、カーテン縛って……なあ、さっきから何見てんの?」 「別に。動画とか」 「えーどんなの? うわ何これ芝刈り機、耕運機? ひゃはははありえねー! はえー!」  机についている俺の隣の、さっきまで滝之原が座っていた丸椅子に、伊沙也がストンと小さい尻を据えてガッと雑に股を開く。ひとつ画面を覗いて爆笑するが、俺は押し当てられる肩の細さを意識している。  視界に横顔が入る。  形のいい小顔にかかる上手に色抜きしたフレアボブは、ひどいことに地毛だ。このたっぷりしたつやつやでふわふわの髪が、中学後半から多くの男を血迷わせた。鼻は小ぶりであごも丸くて、まつ毛は濃くて目は切れ長で、そのぷにっとした唇で馬鹿笑いさえしていなければ、絶妙のロリ美形で通る。もっともだからこそ馬鹿笑いとオレ発言を絶やさないのだが。ロリ美形のままでいると外出るたびにナンパされるからだ。  そんな伊沙也が、いつしかゆるゆると黙る。  そんな伊沙也の変化に、俺もゆっくりと気づく。  ほんとの伊沙也が出てきた、と。  ツレを蹴飛ばして馬鹿笑いする姿は、こいつの地じゃないのだ。  太陽が引き揚げていく二人きりの部屋で、伊沙也が表情と口調を微妙に変えていく。 「みんな相変わらずだったよなー、彼女ほしいほしいって」 「ああ」 「可愛い彼女いるといいよなー。浩平ちゃんも彼女ほしい?」 「むしろおまえはどうなの?」 「オレ? オレに彼女? あー無理無理、ムリだから」 「モテんじゃん、おまえ。女子トモ多いだろ」 「日常会話だけだよ。オレ明るくてイロモノ系に見えるから面白がられるだけ。マジ話始めるとドン引いて距離取る。中身全然かわいくないからなー、オレ」  あはは、とお気楽に笑う伊沙也の背中に手を回して、髪の毛越しに頭皮をくしゅりと優しくつかんだ。 「それ違うよ、イサヤ」 「は――」伊沙也がビクッと首をすくめる。 「おまえが彼女なの、女子にはバレバレなんだ、きっと」 「そう、かも、なあ……」  笑っていたはずの伊沙也の表情が、みるみるトロンと溶けた。  頭をつかんでくるりとこちらを向かせても、唇を深く重ねても、まるで文句を言わなかった。 「んっぷ……んむ……」 「くは。イサヤ。イサヤ……」 「こーへー、ちゃん……」  腕を回し、舌を重ね、息を交わし。  さっきまでクラスメイトがごちゃごちゃ溜まっていたいつもの部屋で、そいつらの前では決して見せない距離までぴったり密着して、俺たちは触れあった。 「なあ、こーへーちゃん、どうなの? 彼女……」 「聞くまでもねーだろ、んむ、くふ……」 「むぷ。彼女? オレ彼女でいいの?」 「おまえ、女じゃないんだっけ?」 「ねーよ、女じゃない。ツレだよ? こーへーちゃん……」  口ではそんなことを言いながら、スカートから伸びる膝や太腿をサラサラ撫でてやると、やっ、はぁっ、と色っぽい声をこぼして肌を震わせる。綺麗に丸い小ぶりな頭を、五本の指でくしゅくしゅくしゅと小刻みに揉んでやると、細い肩をびくびくさせて、心地よさそうにあごを上げる。夏服の裾から手を入れる。ぴくりと肌が震える。  伊沙也の、指を誘うような柔肌。それをゆっくりと探る。息づくあばら。なだらかな胸。もちろん乳房なんかない。でも薄い胸筋のしなやかさが心地いい。小さな乳首。つまむと、かすかにぴくりと震える睫毛。   その姿はどう見ても、さっき違う違うと言っていたメスそのものだった。少なくとも俺にとっては。  いや、メスというのもまた少し違う。 「見る? こーへーちゃん。触る……?」  太腿に触れた手をスカートの奥へ引き込み、シャツなしでじかに着ているセーラー越しに乳首を俺の胸にこすりつける。ビッチというのともまた違う。媚びてるんじゃなくて、お気に入りのゲームに誘ってくるような感じ。女というよりも子供の態度だ。 「くぅんっ、ふうう……こーへーちゃん、キモチイイッ……」  滑らかな太腿を撫でまわしてパンツの股間のふくらみをふにふにと揉むと、目を細めて喜ぶ。その姿はもう男でも女でもないけれど、とにかくエロくて可愛いのは間違いない。 「こーへーちゃんっ、もっと、もっとしてっ」   美少女の格好をして俺が触れば触るほど喜ぶ、なんだかよくわからない隣んちの親友、それが伊沙也なのだった。  俺の股間がズキズキと硬くなって、ズボンに大きなテントができる。小声で訊いた。 「おばさん、今日何時?」 「九時半――閉店まで、だから……」 「うち八時。兄貴は……まあ遅いだろ」  家族確認。たぶんあと二時間は、この家に二人きり。  それを確かめてから、伊沙也の手をズボンに引き寄せて、キスしながら言った。 「触って、イサヤ。ちんこ勃ってきた……」 「うは、ほんと」  さわさわと頂上を撫でまわした伊沙也が、目を細めた。 「こーへーちゃん最近、すぐ硬くなるよな。オレ、うれしいよ」  そう言って、クイクイとそれを握り始める。「気持ちいい?」と聞くので、俺は返事の代わりに、伊沙也の太腿と尻をぎゅっと握りしめた。張りのある肉の感触。  はあ、はあと二人の息が混じる。伊沙也の吐息は雨露のような落ち着く匂いで、首筋から漂うのは、あの焦げた果樹を思わせる心地よい汗の香りだ。嗅ぎなれた匂い。  伊沙也の股間を押し込むように握る。袋詰めの肉菓子みたいに、ショーツの中がぱんぱんに張っている。こりこりした、ごろごろした手触り。伊沙也がぞくぞくっと大げさなほど背筋を震わせる。  男なのになあ、と俺はわれながらおかしいほどの自然体でその感触を味わう。これが他のやつの股間だったら――いや、それは想像したくもない。けれど伊沙也のだと思うと、不思議なほど不快に感じないのだった。  ヂヂヂヂ、と伊沙也が俺のジッパーを下ろす。トランクスからごそごそとペニスを取り出して、わあ、と小さくつぶやく。こいつの輝く瞳で見つめられて、全体がむずむずした。操縦桿を握るように手をかぶせて、先端に宿った先走り汁を親指でくにくにし始めた。がさつな性格のくせに、丁寧で思いやりのある指使い。尻がぞくぞくする。俺は聞く。 「イサヤ……」 「なに? こーへーちゃん」 「汚いと思わねーの? 男のもの……」 「男っていうか、こーへーちゃんのだし」言ってから軽く手を振る。「あ、こーへーちゃんが男らしくないってことじゃねえからな。ずっと一緒だから、抵抗ないってコト」 「ずっと一緒だからって、普通こうなるか?」 「さあ? なってもいいじゃん」  ニコッと笑うと、伊沙也は頭を下げて俺のペニスにキスをした。  なんでもいいわけがないだろうが……と俺はしゃぶられながら、まだ思っている。何しろこんなことを始めたのはつい最近だった。 「んっ、んふぅ、んむ……んぷ……んふ」  唇をたっぷり湿らせて、表面を滑らせる。このフェラチオはまだ二回目。最初にされたのは先週だった。キスをしたのがその前の週。体を見たり見せたり触ったりでさえ、まだ先月から。  それまではずっと、単なるお隣さんの友達同士だったのだ。  確かにスキンシップは多かった。小さいころは素っぱだかでよく一緒に風呂に入ったし、体育もプールも並んで着替えた。学校でも外でも、どこへ行くにも一緒に動いた。一つ布団で寝たことだって数知れない。  ただ俺たちは、世間一般の幼馴染と違って、高学年になっても中学校に入っても、そんな距離感をやめなかった。部活も一緒、テスト勉強も一緒。中二の時には親のパソコンをこっそり一緒に見て、初めてのオナニーまで一緒にやった。  いや、そういえばあのときは、二人ともぴったり一緒ってわけではなかったような……。 「イサヤ」 「あん?」  俺のペニスを唇でつついたり吸ったりしまくっていた伊沙也が、甘噛みしたまま顔を上げる。額に汗が浮いてだいぶ暑そうだが、興奮で目がキラキラしてお楽しみの真っ最中という感じだ。俺は暴発をこらえながら聞く。 「おまえって、ひょっとして最初の時からエロ画像じゃなくて、俺のちんこ見てた?」 「ふぁいひょのとき?」 「中二の二月。一緒にオナっただろ、押し入れにノート持ちこんで!」 「ああ、あのとき?」口を離して伊沙也がニヤッと笑う。小悪魔めいた美しい笑顔とでも呼ぶのがぴったりだ。「そだよ。浩平ちゃんメッチャ可愛かったもん。オレ、ドッキドキだった」 「そんなころからか……くうっ」 「もっほまえはら」  返事をする間も惜しいとばかりに、伊沙也がもぐりと先っぽを呑み込んだ。 「こーへーひゃん……」  フレアボブのサラサラ頭が俺の股間に潜り込む。日はすっかり暮れて、スクリーンセイバーを使わない俺のパソコン画面だけが光っている。天使の輪が、んっんっと上下に揺れる。伊沙也は嫌悪も遠慮もしない。ごつごつと反り返った俺のものを隅々まで味わいぬいている。探るような舌使いが楽しげだ。 「こっの、野郎……」  腰を浮かせて、ずいとひときわそそり立たせる。ずにゅ……と先っぽが粘膜に呑まれて、んふー、と伊沙也が苦しげな鼻息を漏らす。こめかみの髪を掻き上げて覗き込んだ。伊沙也はつやつやした唇にずっぷりとペニスを根元まで頬張っていて、俺の目に気づくとピースを出した。 「ひょっぱいよ、こーへーひゃん」 「俺の……彼女になりたかったのか? イサヤ」 「ほうれもないけど」ぬるぬるぷはっ、とまた引き抜いて――どんだけ奥まで呑んでたんだ――伊沙也は横からペニスに頬ずりした。「彼女じゃなくて彼でもよかったけど、浩平ちゃんは女が好きっしょ?」 「やっぱり、それでか」 「それとも、男のままでもいい?」 「うーん」ちょっとだけ考えて、首を振った。「それでちんこは……勃たないかな」 「じゃあこれで正解ってことだよな」  可愛い顔に、きしし、となんだかせこい笑みを浮かべると、伊沙也はなぜか一度起き上がった。  見せるためだった。一歩離れて軽く両手を広げて、くるんっ、と回る。中山佐枝滝之原の前でやったみたいに。セーラーもスカートも広がって、縦長のへそがくぼんだ綺麗なすべすべの腹や、レースのショーツをぷっくり盛り上げた股間が、PCの青白い光を浴びて幻のようにひらめいた。 「オレ、浩平ちゃんの女の子だからな。どんどん好きにしちゃってよ! こっちも!」  さらにくるんと回ってミニスカの尻を突き出す。引き締まった小ぶりな尻で、女の子のようにむちむちたっぷりとはいかないが、肌のつや、きめの細かさは女よりもやばい。スカートが短すぎてショーツが少しはみ出ていて、ひらひらのそれが尻肉に食い込んでいるのは正直あざといが、それを上回るエロさだった。  俺は低くつぶやく。 「でも、それやったらホモだよなぁ……」 「あ痛ー!」わざとらしく舌を出して片目をつぶり、「でもそれ回避するための格好だから! その分オレ、女子よりもちょろいから! な?」 「リアルでてへぺろするやつ、初めて見た……」 「あー引かないでー」  実はそんなに引いてなかった。伊沙也はこういう仕草がわりと似合うのだ。寒いセリフでも滑らない、変な勢いがあるやつだ。 「ちんこ」 「あっハイ」  俺がベッドに移って腰かけると、伊沙也はまたいそいそとフェラチオに戻った。 「もう、下脱いで。全部見せて。あー、おいし……こーへーちゃんのちんぽ……」  足元にしゃがんでしゃぶろうとしたので、ベッドに横たわるよう言って、位置を変えさせた。膝枕のような姿勢で、ボロンと肉棒を突きつけると、伊沙也は嬉々として口に入れた。「んぷ……んふ……んっぷ……」とテンポよく頭を動かす。  ペニスがうずいてだんだん射精感が高まっていく中で、なんとなく俺は和んだ気分になってしまって、ゆったりと片手を後ろにつきながら、伊沙也の頭をまた撫でた。指の間をサラサラと流れる、冷たい紅茶のような髪。甘く焦げた頭皮の匂い。 「ああ、気持ちいい……イサヤ、それいいよ」 「ふぁぷほひ、出すとき言ってな。オレ飲むよ」 「精子飲めんの?」さすがにぎょっとした。「あれ、すごくまずいって……」 「しらね、初めてだし」くわえたり出したりして話しながら、伊沙也はなぜかクスッと無邪気に笑った。「初精子飲みが、こーへーちゃんのになるんだ。なんか嬉しいな」 「意味わからん……」 「気にすんな、それよりいっぱい出して。もっとしてほしいことない?」 「んじゃ、唇とろっとろにして、キスして」 「ん、こう? んちゅ、んぷ……」 「エッロ……そう、それから裏側舐めて……」 「うん。てろっ、ぺろぉ……ふふ、ガッチガチだ」 「ああ、もうちょいゆっくり……」 「んう……んれくらい?」 「そう……そんで、先のほうだけしゃぶって。カリんとこ、舌で……そう」 「んふ。んんん」 「ふうう……下の根元んとこシコって……いや、うん」 「ふぁまもね」  とうとう伊沙也が下の二つのタマまでもみもみし始めてしまったので、俺はたまらず後ろへドサリと倒れた。先っちょのおしゃぶりと棒のしごきと根元のコリコリのマッサージが、愛情たっぷりという感じで完璧に調和して、「くっそぉ……気持ち良すぎだろ、それ……んっ、ぐうっ」と両脚をビクつかせて悶えてしまった。 「そんなにいい? やった、今度もっと勉強しとくな!」  顔を上げて喜んだフレアボブの美少女が、長いまつげをすっと伏せて股間に目を寄せ、ピンクの唇をぷちゅ、ぺちゃ、と見せつけながら、れろれろ、こしゅこしゅ……と恐ろしく熱心に集中して愛撫にかかった。  それはもう明らかにこっちイかせるための最終攻撃で、俺は三十秒ももたずにこみ上げてしまった。 「きた、きた……イサヤ、いっイクッ、イクッ!」 「来いよぉ……」  誘うような伊沙也の声が耳に入るや、俺はその小さな頭を両手でつかんで、ずぶっと喉奥へ剛直を挿入した。 「んうううーっ!」  どびゅっ、どびゅっ、びゅうっ! と太い濃厚な精汁がほとばしった。伊沙也のかすかなうめきも聞こえたが、かまっていられない。俺をさんざん誘惑してセックスの横道へ引っぱりこんだこいつに、仕返しするような気持ちで粘液を呑ませる。 「出る……出るッ……イサヤ……飲めよ……」  喉を震わせてうめきながら、ずぽずぽと肉棒を出入りさせ、俺は親友の口内に精液を塗りたくった。 「んっ……んんっ……んおっ……」  伊沙也はくぐもったうめき声を漏らしながら、ほぼ無抵抗で犯され続け、俺が満足して力を抜くと、どぽりと白濁まみれの肉筒を吐き出して、けんけんっと何度かむせた。  それから俺の脇腹にずりずりと寄り添って寝て、口元を押さえた指の下から、ぷふぁ……と青臭い息を天井を送り出した。 「び、ビュルッビュル来たぞ、こーへーちゃぁん……」  恍惚としたピンクの声だった。指ですくった精液を鼻の下でくんくん嗅ぎながら、うっとりとつぶやく。 「すっごいたっぷりで、味がっつり分かったし、喉にどろっどろにからんで……エロかったぁぁ、妊娠するかと思った……」  肩をぎゅっと縮めて、本物の女の子みたいにぷるぷる震えていた。 「おまえな……」  はー、はーと荒い息をして、俺はぐったりと横たわった。汗が冷えて一気に落ち着いてくる。  さっきまでツレがたくさんいた部屋。今は薄暗くて精液臭い。窓の外はもう真っ暗だ。隣にいるやつに口内射精した。  小さなころから一緒の友達だ。  俺は体を起こした。どこもかしこもべとべとだ。ティッシュを取って渡すと「ん、うん」と伊沙也は少し正気に戻り、手指口周りと俺の股間をきっちりと拭き上げた。  そしておかしなことを言いだした。 「これでよし、と……じゃあオレ帰る」 「は?」まだズボンも引き上げていなかった俺は、ぽかんとして聞いた。「何いきなり?」 「賢者モードだろ、浩平ちゃん。だからさ」  じゃ、と笑顔で手を上げて出ていこうとしたので、とっさに手首をつかんだ。 「いや、なんだそれ。いきなり変な気配りすんなよ。なんで賢者モードだと帰るの? ちんこ柔らかいとだめか」 「何言ってんの、そうじゃねーって」伊沙也が軽く目を見張って言った。「浩平ちゃん、抜いたから、いま素だろ。だから消えるって言ってんの」 「は……」  立ち上がった伊沙也と、座ったままの俺。手首をつかんだまま見つめあった。  確かにちょっと、引いていた。  でもそれは伊沙也が舞い上がりすぎだったからだ。男だからじゃない。  と、思う。  グイと強く手を引いた。「わ」と伊沙也が声を上げてボスンとベッドに倒れた。 「まあ座れよ」 「言ってから引っぱれよ!」 「イサヤ」握ったままの手を見つめる。ちょっと骨ばってるけど白くてきれいな手だ。「おまえって、俺が初めて?」 「うん、もちろん」真剣な顔。でも「マジで?」と見つめると、「一応……」と目を逸らした。 「一応ってなんだよ」 「まだ最後までやってないってこと」 「誰と?」 「誰とも」 「誰かとちょっとだけしたのか」 「ちょっとだけっていうか。教わったっていうか」 「言うことあるなら今言えよ。あのな?」もう少し手を引っ張って、二の腕を握る。すべすべで目が離せない。「俺、いま妬いてるかも」 「えっ……マジで?」 「言えって」  そんなふうに水を向けると、伊沙也は掴まれた腕を俺に任せながら、はにかむみたいに小声で答えた。 「三年の谷中先輩。あの人中学のときからホモって話あったから」 「やったのかコラー!」 「やってないやってない!」バタバタ手を振って、伊沙也は泣きそうな顔をした。「男友達とどう話すとか、髪とか服とかメイクの話とか、そういうの聞いただけ!」 「あの人顔いいけど別に女装はしてないだろ?」 「いや裏でしてる、あっこれ秘密」 「そんだけか? 相談しただけか?」  のしかかって睨むと、伊沙也はまた曖昧に笑って目を逸らした。 「あと……多少エッチの話して、多少触られた、えへ……」 「えへっじゃねえ!」  俺は伊沙也をベッドに突き飛ばした。どさりと倒れたけれどあまり痛そうじゃなかったので、うつ伏せにして、尻を足で踏みつけた。ぐにゅ、と柔らかい感触。揺れる太腿。 「えへっじゃねえだろ、ほんとにヤられてないんだな!?」  ぐりぐり、とスカートの尻を思い切り踏みにじってやると、んあああ、と変な声を漏らしてのけぞり、内股になって腰をもぞつかせた。 「やっ、やってないやってないマジで! ってかこーへーひゃんそえゆかおなぁぁっ」 「喜ぶなクソ変態! じゃほんとに俺が初めてなんだな?」 「そうだっつってるだろ、もー」はあはあと涙目で振り向いて、伊沙也が言う。「大体浩平ちゃんのために女の子しようと思ったんだから、他のやつにやらせるわけねーよ」 「そうなのか」 「そう。たにちゅはただの師匠。あの人いい人だよ」  伊沙也の表情が柔らかくなった。 「こうすればこーへーちゃんが喜ぶかもって、教えてくれたしな」 「……どれのことだ?」 「んん? 全部」  ちらっと笑ってから、伊沙也は少し真面目な顔で、「でもなんで急にそんなこと聞くの」と言った。 「おまえが変な気配りするからだよ……」 「ひょっとして、オレが誰かにヤリ捨てられたんじゃないかって思った?」 「なきゃいいんだ」  俺はパタパタと手を振って、横たわる伊沙也の隣に腰を下ろした。  そして尻に手を置いた。 「ひゃ」 「おーよしよし」  さらさらと撫でる。スカートの尻なんか撫でたことがないから、なかなか貴重な体験だ。 「ちょ、浩平ちゃん」 「嫌か、じゃないよな?」 「うん、嫌じゃ……」 「それとも踏まれるほうがいいか」 「撫でろよ」すばやい返事。「撫でられるの、いい。お尻って気持ちいい」 「ケツさわり放題か」 「ん……」   伊沙也が両脚をまっすぐ伸ばして、力を抜いた。  プリーツスカートの下の肉が柔らかくなった。握りしめるとキュッと硬くなるけれど、はーっと伊沙也が息を吐くとまた柔らかくなる。  そのスカートも冗談みたいに短いから、見ようと思えばすぐ中を見られる。俺はしばらく見ないようにスカートの上から撫でていたけれど、行儀がいいふりをするのもだんだん馬鹿らしくなって、おもむろに足元方向へ動いた。  ミニスカの裾からパンツと生尻が見えた。ほの白い曲線が目に入って、手が止まる。 「いいぞ」と伊沙也の濡れたような声。  見てはいけないはずのところを、俺はものも言わずにじっと見つめた。  両手でスカートを上へずり上げる。ちょうど尻の丘の下半分が出たところで止める。  外側に筋肉のくぼみがある、締まり気味のぺたんとした尻だけれど、伊沙也ががんばって色っぽく腰を曲げているせいで、いくらか柔らかく見える。可愛いショーツがぴっちりと肉に食い込んでいてどうにもエロい。それにとにかく肌がなめらかだった。  伊沙也は、肌がやばい。薄く寒天でも塗ってあるみたいにつやつやで指に吸い付く。ほっぺたもつやつやしていたが、尻と太腿はもっとやばかった。ちょっと触っただけでもう、止められなくなる。軽く撫でさするつもりが、何度もぺったりと手のひらを張り付けた。 「見ろよ……」  膝をそろえたまま、伊沙也がさらに背を後ろへ反らせた。そうすると腰の後ろに余裕ができて、尻と太腿にさらにふっくらと肉が集まる。むっちりと幅広くなった太腿が、ほの明かりにてらてらと光っている。  俺は、顔を寄せて……さっきから高まりっぱなしの衝動に身を任せた。  ショーツごと、双丘をギュッとつかむ。  外から中へ、寄せるようにまるく揉む。  掌底を当てて、押し延ばすように揉む。  五本指を立ててつまみ、餅をちぎるように引き延ばす。  手の下、指の中で、もちもち、たゆたゆと肉が揺れ、伸び、潰れた。 「こーへーちゃっ……すっげ……」  伏せた伊沙也が感極まったように声を震わせた。揉まれながら腰の前を、いや股間を、ぐりぐりとはっきりシーツに押し付けている。こっちが体重をかけて、尻ごと股間を潰す感じでぐーっ……と押してみたら、「いいィ……ッ」と舌をこぼしてあえいだ。  はあはあ、と俺の息も荒い。萎えた股間もとっくに重さを取り戻してる。逆三角のショーツの下端、白いしわを挟み付ける肉丘を、両の母指球でグニッ……と左右へ広げると、白桃みたいな丘のあいだの、赤桃の底色がはみ出して見えた。  俺は、息を吸って少しだけ落ち着こうとした。けれども、ぐい、ぐいと尻を揉み続けていると、自分の股間がどんどん硬くなるのがわかった。  伊沙也はなすがままだ。パンツを引きずりおろして、俺がちょっとやることをやれば、初体験になる。  でも、まだそうしたくはなかった。 「なあ……こーへーちゃん……」  伊沙也が肩越しに振り向いていた。爪先をもじもじとすり合わせて、尻を小さく振る。スカートが揺れ、ほの暗い谷間がうずうずと動いた。俺はこいつの顔のほうへ身を乗り出した。 「おまえさ」 「ん」 「帰んねえの?」 「ええ? 今さらぁ……?」  伊沙也がつらそうな顔になる。俺は続ける。 「俺、一発抜いたからさ。いま冷静なんだわ。ツレのおまえとなし崩しにセックスすんのって、どうかなって」 「そんな……意地悪すんなよぉ……」 「意地悪じゃねえだろ、おまえがそう仕向けたんだから。んでな、こうすることにした――」  伊沙也の太腿をこじ開けて、足の間へぐっと右手を進めた。 「先におまえも一発抜いてやる」 「ぅわぁっ!?」  生温かい股間の奥に、伊沙也のコロコロした二つのタマと、生意気に俺のと同じぐらいガチガチに勃起したペニスがあった。ショーツの上からぎゅっと玉ごとつかんでやると、笑えるほどビクンッと跳ねた。感じたのと驚いたのと両方だろう。 「それで、冷静になってから聞いてやる。俺にハメられたいかどうか」 「ちょっ、待っこーへー、らっ、だめっ!」  びくん、びくんと派手に肩を震わせ、両脚をバタつかせて伊沙也はもがく。けれども抵抗はわずかだった。しっかりとつかんだ手でぐねぐねと股間をこねてやると、伊沙也の体からくたくたと力が抜けてしまった。喉をさらして「くひー……ぅ」と弱々しくうめき、ぴくつくだけになる。 「なんだおい、いろいろ吹かしてた割りにたいしたことねーな。おまえ口だけなの?」 「じゃなくて、くっそ……ひ」きゅ、と玉裏を手のひらにこすりつけて。「こっこれ、キモチイィ……オレっ、触られるの、初めてっん」 「あっそ。じゃサクッとイッとくか」  醒めた声で言って、俺は左手も伊沙也の尻に添えた。さっき踏んだ時に喜んでいた、腰骨の裏に掌底を当てる。 「サンドイッチにしてやる。思いっきりぶちまけろ」 「ひぃっ、くひぃぃんっ!」  腰を入れて揉み始めた途端に、セーラーから覗く腰の後ろと二の腕に、ぞわぞわと鳥肌が立ち、肢体が踊り出した。  伊沙也をイかせるのは意外に時間がかかった。  イくのが遅いからじゃない。逆だ。めちゃくちゃイきやすかったから。 「おらおら……いいか? 気持ちいいか?」  最初に腰骨をゴリゴリ押し込みながら右手で股間をしごくと、「ひっ、ひぃっ、んんっ」とすぐに甲高い声を上げ続け、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅぅっ……と太腿に力を入れて俺の手首を締め付けた。  それが、勃起したちんこを思い切り突き出す仕草だと気付いた時には、伊沙也はもう射精していた。 「いひぃぃ……っ、んんんっ……!」  ビクッ、ビクッと尻が揺れて、俺の親指と人差し指の間で、コリコリした筒がぶるっぶるっぶるっと立て続けに震えた。あ、こいつ……と腹のほうへ指を伸ばした途端、ぬちゃりとしたものに触れた。そこへさらに、飛び出てきたものがびゅっびゅっと当たった。ぎょっとして手を引き抜くと、白いぬらぬらがくっついてきた。 「おまえ、早すぎだろ! 三十秒もたってないぞ!」 「らっ、だぁってぇ、我慢してたから……」 「メッチャクチャ出してるし……」  顔をしかめて指の間を見つめながら、俺はなんだかむらむらしていた。同じ男なのに伊沙也の射精は妙にエロかった。  再び股間に手を入れると、伊沙也のペニスはまだ堅かった。「ちょっ、待っ……」としたけれど、今度はショーツに手を入れてじかに握ると、またすぐにおとなしくなった。余り皮を亀頭にかぶせるような感じで、じわじわと慎重にしごいてやると、ぱたりと手を落として薄い胸を上下させ、「こーへーひゃん、らめ、見るな、見るなぁ……」と弱々しく言いながら、くっと鼻を鳴らしてびゅるびゅると射精した。細い体がぶるぶると震えて、スカートの中と腹がびちゃびちゃになった。  そのときに、俺にも何が違うのかわかった。伊沙也の射精は、出してはいけないものを搾り出されてしまう射精なのだ。出すこと自体が背徳だ。俺の場合は出してはいけない相手にぶっかける射精だった。相手がいればエロく感じるが、射精だけではただの排泄行為でしかない。  そのあとも手でし続けた。伊沙也は触られるのも見られるのも嫌がったけれど、しごき始めるとすぐ無抵抗になった。出させること自体が愉しみとなって、さらに二回イかせた。  計四回射精させたころには、伊沙也はショーツをはぎ取られて下半身が靴下だけになり、下腹から膝まで精液まみれになって、仰向けで死体のようにぐったりしていた。  ねっとり汚れた太腿と、腹筋が薄く透けて見えるきれいな下腹に、射精し続けて赤剥けになったペニスが、緩んで伸びた玉袋と一緒にだらしなく萎れて乗っかっている。とんでもなく下品でエロい光景だ。  俺は顔を背けたいような気持ちになったが、それとは裏腹に、食い入るように眺めてしまった。伊沙也が決して見られたくない姿で、だからこそ、伊沙也が見てほしい姿だとわかった。  べたべたの肌を拭いてやりもせず、俺は伊沙也の頬を軽くはたいて、声をかけた。 「おい、イサヤ、イサヤ」 「ふぁ……こーへーひゃん?」 「どうだ、すっきりしたか」  何度か瞬きして、伊沙也は自分の体に目を落とした。ふっと何かをあきらめたような笑みを浮かべる。 「メッチャクチャにイかされたぁ」 「べたべただな」 「うん、ベッタベタ。ブタみてーじゃん? オレ……」 「ああブタだな、メスブタ。精子まみれで手に負えねーよ」汚れた右手を振って、ズボンの前をまた開けながら、俺は静かに訊いた。 「性欲、使い切ったろ。どう、まだツレとセックスしたい?」  バキバキに張りつめて引っかかるちんこを、無理やりトランクスから引っ張り出して、ぐいと伊沙也の頬に突きつけた。汗やさっきしたときのこもった匂いが、むわっと立ち上るのが自分でもわかった。  伊沙也は、目を丸くして頬に食い込むチンポを見つめた。クンと嗅いで、うわっと顔をしかめる。  それからやおらそいつを頬張って、じゅぷじゅぷとこってり濡らすと、生まれたての馬みたいにぷるぷる震えながら四つん這いになって、向きを変えた。  枕に伏せ、尻を突き出す。 「ヤって。オレいま完全にメス」 「ああ……出すものなくなって、呑みたくなった感じ?」 「それな。こーへーちゃんのチンポくれ。お願い」  片手で白い尻肉をムキッと割って、紫蘇みたいな色の穴を見せる。俺は膝立ちになって聞く。 「痛くね?」 「うちで自習した」  目だけ振り向いてニヤッと光るように笑うフレアボブの美少女。  「あっそう。結局乗せられたのな……」  溜息をついてから、俺はごくりと唾を呑んで、綺麗すぎて気後れしそうな伊沙也の肉穴に剛直をねじ込んだ。   「いつっ……つ」 「早いよ、焦んな」 「っても、初めて……」 「だからだよ、よく馴らして……ゆっくりな、ちょっとずつ」  情けないことに、教えてくれるほうが伊沙也で、俺が痛がるほうだった。焦って入れたら締め付ける括約筋に皮が引っかかって、カリが切れそうになった。血が出るかと思った。  伊沙也がゆったりと背筋を伸ばして入口を緩め、俺の性急な挿入を受け入れてくれた。途中で乾いてもう無理、と思ったら、「んっん……」と尻を動かして自分で加減を感じ取ったらしく、こう言った。 「ワセリンない? なきゃニベアでもなんでも」 「いや、俺そういうのは」 「あ、あった。こーへーちゃん、鞄とって」  伊沙也の鞄をベッド下からとってやると、中からリップクリームを取り出した。「塗って」と差し出す。  俺はそれを結合部とチンポのまわりにまんべんなく塗りたくった。すると格段に滑りがよくなって、ぬるぬるとスムーズに呑み込まれた。中はひどく熱かった。 「おお……あったけー」 「そりゃあ……ここで体温計測るし……」 「気持ちいいぞ、イサヤ」 「うんー、オレもぉ……」  伊沙也が甘い声を漏らす。俺はそこが熱いのと、リップのミントが少しスースーするのとで、実に不思議な感触を味わっていた。不思議な心地よさを。  ぬめりの生まれた伊沙也の尻は、俺のこわばりの先端からくびれまで、それにまっすぐな茎の部分も、ぴったりと吸い付くように包んでくれた。しっとりとした熱い洞穴。心地よさで腰が引けてしまうようでもあり、逆にすぐにも中身を吸い出されてしまいそうでもあった。 「イサヤ……」  じんわりと体重をかけ、ミリ単位でじりじりと押し込んでいきつつ、背中に覆いかぶさる。のけぞった伊沙也の頭が来る。髪に顔を押し付けて、深々と嗅ぐ。 「おまえいい匂いだよなぁ」 「そう? 別に普通のリンスだぞ……」 「じゃ地毛か。地匂いか」  あの焦げた果樹みたいな甘い匂いで胸を充たし、敏感な生の肉穴でじっくりと触れ合う。思い起こせば、こいつの体臭を不快に思ったことが一度もないって時点で、俺がこいつとこうなるのは決まっていたのかもしれない。  「イサヤぁ」 「なんだよ、そんなに何度も、んふーぅ……」  抱きしめながらうんと力をかけて、ぬちぬちと掘り進めてとうとう根元まで入れた。弾むような尻肉が鼠蹊部にぺったりと当たって潰れる。ガチガチの大きなものがまんべんなくぬめりに包まれて、背骨がどろどろになりそうなほど温かい。 「うおぉ……これ、やっべ……」  つながっただけでは足りずに、抱きしめてまさぐって――おっぱいを揉みたいのだと気付いた。セーラーの胸元に手を入れる。 「っく、何してんの」  伊沙也が笑った。平らですべすべした胸に、小さな乳首二つ。自分を馬鹿じゃないかと思った。これだけは八百屋で魚だ。  けれども乳房がない分、伊沙也は細くて、脇から入れた手で肩をつかむような抱き方が簡単にできた。その肩もがっしりして不安がない。またぞろ仕返しのような気分になる。片手で胸を、片手で首を、力いっぱい抱いて、尻を大きく、ずぷん、ずぷん、とえぐり上げた。 「こいつ、この野郎っ、こんな体、しやがって」 「ふぐ、こーへーちゃん、こーへーちゃんっ」  伊沙也の声はまるっきり嬌声だった。抱けば抱くほど、掘れば掘るほど、悦んで震えて、香りを放つ。青臭さが格段に強まっている。お互い、下はとっくに精液まみれだった。 「おまえ、いいの? こんなにズポズポされて痛くないの?」  言いながら腰をつかんでガツガツ挿入してやると、くっふっふと息を逃がしていた伊沙也が、はーと深呼吸して言った。 「いいよ、こーへーちゃん、初めてだし」 「経験者みたいに言うなコラ! 押し潰すぞ」 「んっく……そこじゃなくてさ、もうちょっとだけ抜いて、下のほう……」 「下って、ここ?」 「いや反対それ上」 「こうか」 「そっ……そう、そこっ……そおっ……」 「ここ、いいのか……?」  ケツの中がどうなってるかなんて経験もなければ知識もなかったが、中をかき回しているうちに伊沙也が喜ぶ場所がわかった。意識してそこをゆっくりこすってやると、不意に伊沙也がグスッとすすりあげた。 「こーへーちゃーん……」 「なんだ、どした」 「信じられねー、オレうれしい」 「何が」 「そこ、こーへーちゃんの生ちんぽでグリグリしてもらえるなんて、まさかほんとになると思わなかった……」 「あ、そう……」  たまに湿っぽくなるのがうっとうしいかも。とはいえそんな伊沙也はちょっと可愛かった。頭つかんで振り向かせて、キスしながら言った。 「おまえほんとチンポ好きだな」 「だからこーへーちゃんのだけだって……んぷ、うぁんん」  舌を舐めあっているとぴちゃぴちゃと小さな音がして、腹の下に白っぽい汁が飛び散った。伊沙也、キスとアナルセックスだけで、しごかずにまた射精したらしかった。  俺もそろそろだった。さっきからチンポの根元がおそろしくびくびくしていた。出すのを我慢していたのだが、別に全然我慢する必要はないんだと気付いていなかった。 「イサヤ、いい? 俺、もう……」 「いつでもいいよ、好きな時出せよ。オレ初めてだから、病気とか心配しないで」 「そうじゃなくてよ……」 「ずっとイッてるんだって! オレはいいの!」  そう言われてよし、それなら……と俺もフィニッシュを決めようと思った。  が、伊沙也の背中に張り付いてずぷずぷと動きながら、何がというわけじゃないが物足りなくて、高まり切れなかった。オナニーのときにもよくあることだった。している最中に階段を一個踏み外したみたいにフッと興奮が中断して、イケなくなるあれだ。 「イサヤ……」  体をまさぐったり、髪にキスしたり、細かな愛撫をしていると、伊沙也があえぐ合間に言った。 「こーへーちゃん、イキたい?」  なぜか伊沙也はこっちに気づいたみたいだった。いや、「なぜか」じゃない。俺のことを一番よく知ってる伊沙也だから気づいたんだ。  伊沙也はベッドに横向きに伏せて片脚を胸まで抱え上げた。俺の手を引いて、すらりとした太腿を抱かせる。  そして薄目でささやいた。 「孕ませてよ、こーへーちゃん。オレのお腹に、思いっきり種付けして……」  手に触れるむっちりした肉感に、火をつけられた。 「イサヤ……!」  片方の太腿をまたぎながら挿入する姿勢で、俺は一気に伊沙也の奥を何度もえぐった。ぬめぬめと包み続けてくれていた肉門が、きゅう、きゅうっと柔らかに締め付けた。 「イサヤ! くうっ、んぐっ……」  揺さぶり続けた腰をひときわ深く押し付けた瞬間、俺は撃ち放った。どくん、と溜めこんだものが走り出る。目を堅く閉じて穴奥に集中した。伊沙也の腹の奥のぬめる壁に先端を密着させて、どぷっ、どぷっと自分自身のエキスを浸みこむほど浴びせた。 「くふうっ……!」  伊沙也もうめいて硬直していた。左手で腿のあたりをまさぐり、俺の手首をしっかりと握った。お返しに俺も伊沙也の膝の裏をかたく握った。  しばらく、言葉もない世界だった。抱き合い握り合ったまま、つながった一番深いところでだけ、注ぎ込み、感じ取る。いや、飲み干す。伊沙也が尻奥にとんでもなく意識を集中して、俺の吐出に合わせてひくん、ひくんと締め付けをくわえているのが、巡り巡って俺にも感じ取れた。  出し切っても、抱き続けた。射精が終わったぐらいの理由で、その完璧な一瞬を終わらせたくなかった。俺も伊沙也も、抑制した細い息をはー、はー、と漏らすだけで、一番奥でつながったその時間を、できるだけ引き延ばそうとした。  けれども奇跡みたいなそんな時間も、だんだん鼓動が収まり、血の気が下りて、汗が冷えてくると、蜃気楼みたいに薄れて消えていった。最後まで残ったのは、仕事を終えて柔らかくなったチンポを包む、同級男子の肛門の粘ついた感触だった。  俺は、生まれて初めての「事後」というやつの扱いに、さっそく困惑し始めていた。不快ではないけれど、気まずい。抱き合ったままで、目を合わせられない。  かといって何もしないわけにもいかない。腹をくくって顔を上げた。 「イサヤ。おまえ、素敵――」 「浩平ちゃんまず聞いてくれ、死ぬほど大事な話がある」  ぎくりとして俺は口をつぐんだ。伊沙也がその美貌に氷のような表情を浮かべて見つめていた。そんな目をするところは見たことがなかった。  なんだろう、罵倒か、別れ話か? 確かにまったく下手くそな初体験だったとは思うが。 「な……なんだ」 「オレたちこれから下へいって全部脱いでシャワー浴びる。そのあいだ、絶対何も言うな。なんか見たり感じたりしてもスルーするんだ。一切」 「はあ?」 「大事だから。ここ失敗すると、オレたち壊れちゃうかも」 「お、おう……」 「OK? じゃ動くよ」  伊沙也が俺を押しのけた。俺はぬるりと伊沙也の中から出て、ぶらんと垂れた。  俺はそのやや清潔ではない状態を見て、ああ、とうなずいた。 「それでシャワーか」 「言うなつっただろおおおおおおお!」  伊沙也が半ギレの真っ赤な顔で怒鳴った。  一緒にシャワーしている最中におふくろが帰ってきた。まだ二人とも全然まっぱだっつーのにガラリと風呂の戸を開けて朗らかに言った。 「あらー誰かと思ったらイサヤなの。今日こそ浩平の彼女かと思ったら」  俺も伊沙也も一瞬固まったが、焦る必要はないと思い出した。俺たちは普段からしょっちゅう着替えも風呂も一緒にしている。男同士だから親公認以前の話だ。  ただ、今日は事後だというだけだ。  そしてそれはおふくろにも見破られなかった。晩御飯作るからイサヤも食ってけー、と呼び慣れた言い方をして、おふくろはドアをガラリと閉じた。  俺たちはため息をついた。 「やばかった……いや、全然やばくないのか?」 「一応やばいんじゃね? おばさん、孫の顔見たそうだし」 「おまえ産めよ」 「産んでやるよ。結婚できたら」  俺の顔を見て、ニヒ、と伊沙也は笑った。先のことなんか知るかと言いたげだった。  それは俺もそうだった。俺たちはこの先どうとでもなるという気がした。 「大体浩平ちゃんもデリカシーねーからなあ。結婚するならまずそこ第一になんとかしてほしいわ」  さっき俺のちんこを新妻みたいに丁寧に洗ってくれたくせして、そんなことをぶっきらぼうに言う。髪はタオルで包んでいるし、セーラーもスカートもブラもつけていないから、きりっとした体格がそのまま出ていて、服を着ているときよりも男らしく見える。  さっきこいつと二人合わせて六発もやったなんて信じられない。  信じられない――が。 「なー浩平ちゃん、うちのおかんのほうが多分OKだからそっち先に――お?」  両肩をつかんで、ぐるりとこっちを向かせた。じっと目を合わせる。「なん……だよ」と伊沙也が息を呑む。それでも見つめ続けると、落ち着きなく自分の体を見回して、うなだれた。 「あ、うん、言い過ぎた……かな。まだ何も決めてなかった、し……」 「……自信ねえな、イサヤ」 「あるわけねーだろ男なんだから」ぶつぶつと言う。「浩平ちゃんノンケだし。こっちも必死なんだよ……あ」  目を上げて、大失敗に気づいたような顔で言う。 「もしかして言葉? しゃべり方まずかった? もっと、可愛いほうが……」 「おまえなあ」  ふっと笑って、俺は伊沙也を軽く抱きしめた。ぽんぽんと背中を叩く。 「ツレだろ。そのままで」 「……浩平ちゃん」  伊沙也の細い体を縛っていた緊張が、ふーっと腕の中で抜けていった。 「うん。このままにすんよ……」 「それともこのままでエッチしてほしい?」 「え」  抱き合っていた俺たちは少し体を離して、下を見た。 「……全然だな、浩平ちゃんは」 「そりゃ、なあ。でもおまえは、このままでもクるのな」 「そりゃ、ね」  小さく笑って、くるりと伊沙也は身を離した。 「オレは彼女になりたいんだもん。いつだって浩平ちゃんにはドキドキだよ!」  そう言ってドアを開け、出て行った。 「イサヤ……」  ドアを閉めるときの濡れたうなじと白い背中、きれいな尻が目に焼きついていた。 「あ」  下が変化していた。  外へ出るのをしばらくためらってしまった。  夏の午後。ベッドに寝転がってスマホをいじったり、ノートパソコンで下らないネタ情報サイトを流し見したり、PSPで対戦したり。たいして面白い事もなければ切羽詰まった義務もないとろんとした時間を過ごしつつ、俺たちは決まり文句のように似たような言葉を口にした。 「っあー、彼女いればなあ」 「なあ」 「どっか行きてーし」 「行きてーな」 「だりぃ」 「彼女いればなあ」 「どっか行くのにな」 「いたら海行きてー」 「行くよなあ、それはぜってー行く」  最後から二番目が、俺のセリフ。その次が伊沙也の。  ベッドで寝転んでコミックを読む、セーラー姿の伊沙也に向かって、床の中山がのけぞって言う。 「もう伊沙也もう、女になってくれ。キャーキャー言ってくれ。そんで海いこう」 「ふざけろバーカ」  靴下の爪先で軽く中山の頭を蹴飛ばして、伊沙也が毒づく。 「誰が女なるか。男だっつってんだろオレは」 「くっそマジ使えん」 「ナンパして来りゃいいじゃん。それかゲーセンかなんか」 「あーもうそうすっかー。カラオケのチケあったわ。誰か行くやつ」 「あー俺」「いくわー」  中山佐枝滝之原が立ち上がり、俺たちを振り向いた。 「おまえらは? 行かん?」 「んー、行く」「オレも。オトリ役やるよ。釣るだけなら任せろ」  俺と伊沙也は立ち上がった。佐枝が不思議そうにつぶやく。 「あれ、来るんだ。二人で残りかと思ってた」 「行くに決まってんだろー、ツレだし」  俺はそう言い返し、伊沙也が付け加える。 「んでも三人声かけたら帰るかんな。オレたちは」  そう言って、俺にだけウインクした。 「な」 (おわり) 人物:   五十塚伊沙也 (いそづか・いさや)  右輪浩平   (みぎわ・こうへい) 2014/08/09