◆◆● 電脳PiCARO ●●●第4弾記事

(S&T誌87号)Desert Fox賛歌
S&T nr87 (SPI)


 まず始めに、入手困難となってしまったゲームのレビューを書く事は、本人にはそのゲームを保有している事の自慢と優越感をそして他の人間にとっては欲求と焦燥感を与えるだけで、私にとってはなはだ不本意ではあるのだが、本会ピカロ誌にゲームの記事が少なくゲーム記事を書く事を要望されたのとその為の題材が思い浮かばなかったのとそして、このゲームを入手した時の経緯(オークションでそれまでのゲームに対し皆の反応と比べいちじるしく異なり、金額が提示された瞬間直ちに手を挙げ誰にも有無を言わせないような迫力の元私が入手した、それまで箱入りのゲームが数百円でもなかなか買い手がつかない状態で千円の雑誌ゲームを。これまでのゲームに魅力が無いわけではなかった、ただ既に保有しており価格の魅力的ではあったが重複してまで手にいれる価値を見いださなかっただけである。しかし本ゲームは異なった、重複してまで入手しておいてよいゲームであり価格であった。会の仲間は知っているであろうが私のゲームの購入量けっこうハイペースである、ゆえにやり込んだ品はごく僅かであるがその内の1つが本ゲームである)の異常さより注目を浴びていると感じたからである。

 前置きが長くなってしまったが、表題にもあるように本ゲームはまだSPI社が健在であった(とは言ってもしばらく後に潰れた)時のもので、その本文のクレジットをみれば1981年7〜8月号となっている。また同誌に掲載されてある宣伝には「ALAMO」や「SPIES」があり、同誌が行っているフィードバックによるゲーム・レイト・チャートの2次大戦物のトップにはスコード・リーダー<AH>の「Crescendo of Doom」(邦題、電撃ドイツ戦車隊)でその発売は80年6月である。またそのチャートでは「Panzer Armee Afrika」<まだSPI、後AH>(邦題、砂漠のロンメル)は47位で、「Afrika Korps」<AH>(邦題、ドイツアフリカ軍団)を見いだすことはできない。ちなみにこの日付であると私は、ウォーゲームを始めて1年と半年を少し越した頃である。
 ゲーム・デザインはリチャード・バーグ。(またまた私事で恐縮だが、私はデザイナーに対してあまり興味を抱いていない、この人物のゲームは全て集めるとかあの人のゲームはダメといった先入観はない。バーグ氏の名は確かによく聞くが、代表作を挙げて見ろと言われても思いつかない。)
 ユニットはマーカーも含めて200個(1シート)で収まっており、基本的に連隊/旅団規模で、偵察,対戦車砲といったところが大隊、例によってイタリア歩兵が師団である。ユニットに記されているデータは、戦闘力(攻防同等),モラル値(練度),移動力,部隊名/所属,スッタク価,登場ターン,兵科シンボル(特殊能力を持つのは砲兵ドットと対戦車砲だけで、他は補充の際に異なるぐらいである)で普通裏表の2ステップを持つ。戦車で9前後、歩兵連隊/旅団で3前後の戦闘力である。そしてこれらは徒歩と自動車化の2種類に大別(色帯)される。スッタク限度は6(街は9)で連隊/旅団なら6枚まで積み重ねる事ができ、大隊は0で幾つでも可である。しかしながら大隊はZOCを持たない。マーカーは補給トラック/補給集積所がそれぞれ専用に多数有り、他に陣地1/2,補給切れ/混乱,等があり空軍はポインット制でマーカー1つで表され、海軍ユニット/マーカー共に無い。
 マップはいわゆるフルマップ1枚分と同等であるが、北アフリカという地域性よりこれを半分に割り短い辺を合わせて細長くしてある。そしてその美しさ(北アフリカというイメージ対して)には驚かされる、砂漠に格も多様な地形があったとは。7種のタイプに3種のヘクスサイドそして3種の交通網、その他情報よりなっている。トブルクの戦闘正面は3ヘクス、エル・アラメインからカッタラ低地まで5ヘクスでとりあえず2ユニットあれば足止めはできる。マップの占めている範囲は、リビヤのほぼ中央部エル・アゲイラ(ロンメルが攻勢を開始した地点)よりエジプトのアレキサンドリアまでで1ヘクスは16km、エル・アゲイラからエル・アラメインまで(1級)道路(海岸線で砂漠を迂回しながら)でちょうど90ヘクス、戦車なら2回の移動フェイズでほぼたどり着く。
 ちなみに1ターンは1月で、移動期は当初移動と自動車化移動の2フェイズが用意されている。また各ターンの先手プレイヤーはサイコロを振ってイニシアチブを得た方が選択できる様になっておりもっぱら枢軸軍が得て、英連邦が主導権を握れるのは18ターン(42年8月)以降でありそれでも15/36で5割に満たない。よって、強力な陣地といえど補充援軍共になく連続して攻撃されるので注意が必要である。その他に増援,補充,補給(除、枢軸),空軍力と皆ターン表に定められておりプレイヤーに選択の余地は無い(英連邦にはきつい)。  プレイ手順は先手プレイヤー決定後そのプレイヤーの、1.増援,2.空軍配分(マルタ),3.当初移動,4.1次リアクション,5.1次戦闘,6.自動車化移動,7.2次リアクション,8.2次戦闘,9.補充、となっており次いで後手プレイヤーが同じ手順を繰り返す。
 以下詳細に述べていく。

 増援は、前述したようにしかるべく定められており枢軸はエル・アゲイラに、英連邦はアレキサンドリアに登場する。そして英連邦軍はギリシャ・極東・本国へと引き抜かれていく。枢軸の補給駒はターン毎にサイ(2D)を振り定めるが、最高で4,悪くすれば0でまず2つ(出目6,7)といったところか。
 空軍は、ターン毎の増援量は少ないが戦闘により消耗しない限り継続し加算されていく。マルタに配分された英空軍力(最高2)分、枢軸の補給駒到着のサイの目修正となる。そのマルタ島に対して枢軸空軍が空襲する事もできるが、自軍を道連れにされる事もあるし大量に投入すれば補給を消費する。
 そこで北アフリカ戦にはつきものの補給であるが、移動,戦闘の毎フェイズ毎に両軍共にチェックする。補給は補給集積所(DUMP)へユニットからもらい受けに行くがその範囲は自動車化移動力で12で、移動では6スタック価以上,戦闘では4スタック価以上を1つのDUMPが負担すれば(それぞれ別個に上限有)そのDUMPは消耗し除去されてしまう。よって好転すれば好転したで、悪化すれば悪化したで雪だるま式に変化していく。またそのDUMPを機動状態(MSU,トラック)にすれば補給源としての能力は失われるが、独自の移動力を持ち(DUMPは移動する事も運ばれる事も無い)更に補給線を延長する(6自動車化移動力)事ができる(但し同様にその量が多ければ消耗する)。また、相手の補給ユニット(DUMP,MSU共に)を捕獲することもでき、その確率は1/2である。補給を得られなければ、移動では自動車化は1ヘクス非自動車化は許容力の半分(切捨て)、戦闘では戦闘力半分(切捨て),モラル値1悪化となる。
 移動は、歩兵(自動車化、非自動車化を問わず)が14,戦車が22,偵察が28が基本であるようだが若干異なる部隊もおり装備が推定される(マチルダやスチュアート)。この時10対1の戦力比があれば自動車化部隊の1スタックは、オーバーランを行う事ができる。非自動車化部隊は補給ユニットに対してのみ可。
 リアクションは、相手の移動が終えた後非手番側が2ヘクス以内に相手側ユニットが存在すれば行える。その際は1/4の移動力が利用でき、敵ZOCより離れる事や敵ZOCへの侵入(既に友軍のZOC内にあれば)ができる。2次リアクションの際は自動車化ユニットだけである。  戦闘は、ZOC内に存在するユニット全てが何れの戦闘に参加しなければならないし、ZOC内に敵ユニットを捉えているユニットは攻撃されなければならない。戦闘解決表一般のゲームと少し変わっている、戦闘比を求めるところまでは同じだがサイの目はその戦闘比列と平行に加算されその位置より攻防それぞれのコラム修正(砲爆撃)が別個に加算され別個に相手に与える結果を得る、またその際防御側同モラル値毎そのコラムの適用欄を別個に使用する。その結果は後退,混乱,1つステップ・ロス/全てステップ・ロス,の単独か組み合わせそして全滅かである。諸兵科連合は戦車毎に対応する歩兵がその戦闘に参加していないと、戦車の戦闘力は半減(切捨て)される。対戦車砲は、修正後の戦車の戦力から対戦車砲の戦力と同等分戦車戦力を減じる。なお2次戦闘では自動車化ユニットだけが攻撃する訳では無く、ZOCの影響を受けるもの全てが参加する。
 補充はターン毎に割当が決まっており、使用せずに次ターン以降に残しておいてもかまわない。なお補充ポイントに戦車/歩兵,自動車化/非自動車の区別は無く何に割り当てるかはその都度プレイヤーがその時点で選択して良い、ただその補充させる兵科毎に必要な補充ポイントが異なるだけである(ちなみに消費量は両軍とも同じである)。連絡線を引けずに除去されたユニットを除いて除去されたユニットを再建する事もできるし、敵ZOC内になく混乱していなければステップの回復をさせてやる事もできる。おもしろい事に、戦車のステップの回復は歩兵連隊,偵察大隊等と並んで最低の“1”である、砂漠での戦車回収率の高さであろうか。また戦車装備の改編も別ユニットが両軍に用意されており(但し使用できる時期は定められているが)、一端マップ上より除去し然るべき再建ポイントを支払わなければならない。

 以上がルールのあらましである。以下思うにまかせて書き進めていく。
 当初のべた様にこのゲームが世に出されたのは10年以上も前になってしまっているが、当時本ゲームの出現によって「Panzer Armee Afrika」はAH社に売り飛ばされたと、まことしやかに囁やかれる程(実際問題は知らないが)本ゲームはプレイヤビリティ,シミュレーショナリティ,グラフィク(他のゲームの味気なさ)は他の追随を許さなかった。それから北アフリカ・キャンペーンは幾つか発売され、できうる限り購入してきた(プレイしたとは言わない/言えない)「Rommel’s War」<QD>−チュニジアまであったのがうれしかった,「Legend Begin」<Rhino>−唯一対抗馬かもしれない,「アフリカン ギャンビット」<朝日出版>−全て(動く事も、戦う事も、存在する事にまで)に補給ポイントの消費を必要とし改めて北アフリカ戦の補給の大変さを感じた,「Afrika」<Gamers>も補給ポイントに苦労する,他にシミュレーション・カナダの「D.A.K.」やオーストラリヤ製やコロンビア・ゲームスの「Rommel in the Desert」積み木シリーズ,他Point−to−Pointシステムのもあった。しかし私は…、頂上に上りきってしまったのであろうか?

 ちなみに、SPI倒産後のS&Tに同じシステムを用いエル・アゲイラから西,チュニジアまで含めた43年の北アフリカ戦の「Trail the Fox」というもある/あったという言葉で本稿を締めくくろう。

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