本1999/12
1999/12
★★★★★「リバーズ・エッジ」岡崎京子/宝島社
「あたしはね、ザマアミロって思った。世の中みんなキレイぶってステキぶって楽しぶってるけどざけんじゃねえよって。
ざけんじゃねえよいいかげんにしろ、あたしにも無いけどあんたらにも逃げ道ないぞザマアミロって。」(p.109)
川沿いにある高校の、その高校生の、話し。
シンプルな線の絵だけれども、何でこんなに存在感があるのかよくわからない。話し自体もやっぱり異様な存在感があって、それはたぶん普通な部分と、普通じゃない部分のブレンドの割合が絶妙であるせいなのだと思う。
リアリティーというのは結局ディテールの積み重ねで、登場人物やページの数にかかわらず、出来あがった作品に詰め込まれた小さなディテールの分だけ説得力は増していくんじゃないかと思う。この作品は200ページそこそこの中に様々なディテールが折り重ねられている。
★★★★「イニシャルD」17巻しげの秀一/講談社
「この瞬間だけが…ぎこちなくスレちがい続けた二人の意識がひとつに通じあった瞬間であった…。文字どおり、この瞬間だけが…」
久しぶりに出た17巻も面白かった。
絵は下手なのだけれど、話の展開の仕方とか、ドラマチックな構成の作り方がとてもうまいのだと思う。イニシャルDの中の空間は、とても乾いた、冷たい空間のような気がする。話し自体はカーレースという緊迫した世界の話しであるのだけど、それにもかかわらず無機質で機械的な空気が全体にいつも流れている。
★★★★「この国のかたち」3巻司馬遼太郎/文春文庫
「ここで、遊びとしての作業をしてみたい。まず、
『江戸時代をそのままつづけていてもよかったのではないか』
ということである。答えは、その場合、十中八九、どこかの植民地になっていただろう。(p.21)
★★★「世界遺産の旅」小学館
世界各地の、遺跡や建造物が582点紹介されている。有名なものも多いけれども、聞いたことがないようなマイナーなものもあり、そういうのがとてもいい。ただ、眺めているだけでも面白い。
掲載されている中には京都の寺院や文化財も紹介されていて、世界の文化遺産と並べてそういうのがあると、日本もちゃんといい文化を持っているなあという気分になる。本当は、こういう本は子供時代に読んだりするともっといいのだろう。(興味を持てるかどうかは別として)
★★★「VB COM」トーマス・ルイス/翔泳社
Visual Basic上でのCOMについて網羅的に説明をしているけれども、Microsoftのホワイトペーパーの内容をそのまま繋ぎ合わせているような印象で、新しい視点や知識を与えてくれる本ではなかった。ただ、逆に、基本的な内容についてはすべて押さえられているので、COMの教科書代わりに持っているにはとてもいい本だと思う。
監修をやっている豊田という人は、COM関連の本では色んなところに顔を出していて、この本でも所々で注釈をつけているけれども、あまりいいコメントを書いていない。
★★「オムライス」5巻星里もちる/小学館
結局、最後はよくわからないまま終わってしまった。1、2巻はものすごくいい作品になりそうな感じだったのに、まとまりのないまま収束してしまったのは、テーマが今イチ曖昧なものだったからであるように思う。なんとなく、先の展開に続けにくいようなテーマだった。
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