本1999/11
1999/11
★★★★「VBユーザーのためのWindowsプログラミング入門」矢沢久雄/日経BP
日経ソフトウェアに連載していたVBの記事を、まとめて加筆して別冊にしたもの。この本の解説は素晴らしいと思う。題名の通り、VisualBasicを基礎としていながらも、Windowsのコアの部分とVBのつながりをかなりわかりやすく説明している。
普通のVBの解説書は、そこらへんを無視していきなりVBの話しに入るから、肝心な部分が抜け落ちたまま先に進むことになるのだけれども、この本は基礎からの理論的な積上げによって、しっかりとした知識をつけながら進められるような構成になっている。
★★★★「この国のかたち」1〜2巻司馬遼太郎/文春文庫
「私は、日本史は世界でも第一級の歴史だと思っている。ところが、昭和十年から同二十年までのきわめて非日本史的な歴史を光源にして日本史ぜんたいを照射しがちなくせが世間にあるようにおもえてならない。」(p.83)
雑談的に、日本の様々な歴史についてあっちへ行ったりこっちへ行ったり色々なテーマについて書き連ねている。本人にとってはほんとうに雑談のような気軽さで書いているのだろうけれども、それでもこの人の歴史についての知識の豊富さや深さはものすごいものなんだということが感じられる。
明治維新の話しをしていたかと思うと突然戦国時代や平安時代の話しになる。ふらふらしているようで、最後には一本の筋が通って話がまとまる。読んでいてなるほどと感心することばかりで、面白くしようがない。
★★★「粗にして野だが卑ではない」城山三郎/文春文庫
「おれは大まかだが責任だけはとる、と石田さんはよく言っていた。私心がないから、人を恨んだり嫌ったりということもない。だから、何でも平気でぽんぽん言う。」(p.201)
貫名の実家に寄ったときに、お土産としてもらった本。三井物産を退職後、国鉄総裁を勤めた石田禮助という人の伝記。頑固で正義感が強く、良くも悪くも、いかにも昭和初期のやり手という感じがする。今は本当にこういうタイプの人は少なくなってしまっているのではないかと思う。この人の下についてゆきたい、と思わせるのはこういう人間なのだろうと、そういう風に思う。
★★★「文学部唯野教授」筒井康隆/岩波書店
文学部の教授を主人公にして、文学史や哲学史、大学の内部事情について色々織り交ぜたすごい本。こういう、たくさんの知識に裏打ちされた作品を読むとただ感心してしまう。昔、高校生の時に初めてこの本を読んだ時は、大学で世界史を教えたいなどと思っていた時期で、大学の教授の世界はこんなになっているのか、と驚いた覚えがあるけれども、この本の内容が事実なのかウソなのか、今もよくわからない。
★★★「グランドクロス・ベイビー」栗本薫/角川文庫
東スポに連載していたポルノ小説という、栗本薫の作品の中ではかなり異色の作品。「書けないジャンルはない」と言いきっている人だけに、きちんと作品にしっかりしたテーマや奥行きがある。たいした力量だと思う。
★★★「DirectX7 for VisualBasic」藤田伸二/翔泳社
ついに、DirectXがVBから使えるようになった。これは、世の中DirectXがおおはやりになるだろうと思っていたら、意外にあまりそういうことにはなってない。画像処理は、まだエンドユーザにはあまり馴染みのない、マイナーな分野なのかも知れない。
それにしても、この先VBで作った素晴らしい作品が世の中に出てくるようになれば、一気に市民権を得てものすごい盛り上がりを見せる可能性はあると思うのだけれども・・。そうなって、これからもっとDirectXが使いやすい環境がそろえばいいと思う。この本は、VBでのDirectXの使い方を覚えるにはとてもいい入門書だ。
★★★「花咲かぺんぺん草」餅月あんこ/ASCII
最近はパソコンブームで色々なコンピュータ素人が出たり消えたりしてるけれども、餅月あんこはそういう人達と一線を画した明らかな才能が文章や絵にあふれていると思う。こういうのはほんと、他の人はどうやっても追いつかない。
どこの業界でもそうだと思うけれど、コンピュータについての素人であるかどうかということよりも、少なくとも一定のクオリティーを毎回保って作品を作ることが出来るかどうかがプロとアマの境目なのだと思う。
★★「豹頭将軍の帰還」(グインサーガ68巻)栗本薫/ハヤカワ文庫
「ここが、ぼくの−−たどりつくさいごの場所だったとおっしゃるんですか。ぼくはケイロニアの、きれいな離宮で−−くる日もくる日もしあわせに暮らすために生まれてきたんだとおっしゃるんですか」(p.256)
もうこのところ、毎巻がクライマックスの連続という感じだ。しかも間を空けずにどんどん発刊されるから、続きが楽しみでしょうがない。
★★「オムライス」4巻星里もちる/小学館
だいぶ、最初に比べて勢いが落ちてきた。進む方向を、見失ってしまっているような感じだ。もう、この作品はだめかもしれない。
★「風の歌を聴け」村上春樹/講談社文庫
「話せば長いことだが、僕は21歳になる。
まだ充分に若くはあるが、以前ほど若くはない。もしそれが気にいらなければ、日曜の朝にエンパイア・ステート・ビルの屋上から飛び下りる以外に手はない。」(p.72)
村上春樹の本は、ごく一部の作品はものすごく好きなのだけれども、大部分はあまりどうとも思わない。どちらかというと、退屈でつまらないと思う。言葉遣いに透明感が・・とか聞くけれど、自分には無意味な言葉の言いまわしに思えることが多い。「はっきり言え!」と思ってしまう。この作品は、自分にとってしっくりこない部類のほうだ。
★「すべてがFになる」森博嗣/講談社
「死んでいることが本来で、生きているというのは、そうですね・・・、機械が故障しているような状態。生命なんてバグですものね。」(p.360)
この、森という人の推理小説は、コンピュータとか理系なテーマをネタにして作品を作っているらしい。でも、出てくる用語がものすごく中途ハンパで内容が薄くて、あまり面白いとは思わなかった。
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