本1999/09

1999/09


☆★★★★「絡新婦(じょろうぐも)の理」京極夏彦/講談社
 厚さもハンパじゃないけれども、構成の緻密さや、展開の見事さもハンパじゃない出来だと思う。京極夏彦の作品は、最後の最後で一気に物語の収集がつく。そして、途中幾つもの伏線を貼りながら、幾つものどんでん返しを用意し、後から全体を俯瞰してみると様々な部分が納得出来るような仕組みになっている。その合間に物語のベースとして織り込まれる、作品の「テーマ」の掘り下げ方も感心する。読み終わった後、改めて読みなおせば更に色々な部分で「なるほど」と思う点を発見出来るのだろうけれども、なかなかこのボリュームを読み返す気力は生まれそうにない・・。

☆★★★★「ドラゴンヘッド」8巻望月峯太郎/講談社
 かなり久しぶりに続きが発刊された。期待外れの内容ではなくて安心した。てっきりあのまま作品は中断してしまっていたかと思っていたから、続きがまた読めるというのはとても嬉しい。それにしても、望月峯太郎という人は、破壊と無秩序を描くのが何でこんなにも上手いのかと思う。「もし、この建物が破壊されたらこんな感じだろう」という表現を、見てきたかのようにリアルに描く。この、描写のリアルさが作品のエネルギーとなって、読み手は何か得体の知れない力に惹き込まれてしまうのだと思う。

☆☆★★★「あたしんち」1〜5巻けらえいこ/メディアファクトリー
 読売新聞の日曜版に連載しているらしい。話しとしては何でもない内容が多いのだけれども、コマ割りの仕方とか、ちょっとした描写の仕方がとても面白い。こういうのはひたすら、作者の物事をとらえる感性によるもので、余人には及びようもない才能なのだと思う。

☆☆☆★★「ゲーデルの哲学」
 名前はそんなに馴染みがなかったけれども、論理学の筋ではかなりの天才らしい。論理学につきものの、「パラドックス」の話しは面白い。物事の矛盾を排することが目的の論理学でも、絶対に明かにすることが出来ない矛盾が存在することを証明したのが、ゲーデルという人らしい。この事実は、数学や物理上の公式を絶対と考える人々にはものすごい衝撃を与えたのだろう。

☆☆☆★★「エグザイルス」ロバート・ハリス/講談社
 高校生の時から世界を放浪したりして、数奇な人生を送っている作者の自伝のような話し。この人の何十年間の体験してきたことはスゴいと思うのだけれど、ちょっと説教っぽいのと、文章自体がそれほど上手ではないことで、あまり読んでいて面白いという感じはうけない。

☆☆☆☆★「ワイルドサイドをゆけ」ロバート・ハリス/講談社
 『エグザイルス』の続編。

☆☆☆★★「北京特派員」信太謙三/平凡社新書

☆☆☆★★「百鬼夜行−陰」京極夏彦/講談社
 これまでの京極堂のシリーズの脇役的な登場人物が多く登場して、サイドストーリーのオムニバスのような形になっている。一作一作が短い分、推理が中心ではなく、妖怪そのものにより主眼が置かれている。
 このシリーズは、登場人物が重複して色々な話しに現れすぎだという気がする。人物の性格設定や説明をする手間は省けるのだろうけれども、何人かの主要人物が繰り返しどの作品にも登場するのは、どうも不自然な感じがしてしまう。

☆☆☆☆★「大人失格」松尾スズキ/光文社文庫

☆☆☆☆★「ここまでは誰でもやる」中谷彰宏/PHP

☆☆☆☆☆「結婚しようよ」2巻星里もちる/小学館

☆☆☆★★「まず、あるがままの自分から始めよう」弘兼憲史/大和書房
 自分の生死にかかわること以外はこだわる必要がないという、シンプルな姿勢は、とても好きだ

☆☆☆☆☆「HEAT」2巻池上遼一/小学館
 原作が面白くないためだろうか、どうも面白くない。

☆☆☆★★「黄昏流星群」8巻弘兼憲史/小学館
 この作品は老人達が主人公で、この巻は『死』が大きなテーマになっている。自分がガンで、残り少ない命とわかると、自分の会社を放り出して、気になっている昔の知人達を訪ねて回る。
 映画「生きる」と似たようなテーマだけれども、やはり人間は死が現実的なものとなると、生き方も変わってくるものなのだろう。安易に、このテーマで作品を作ろうとしてもチャチなものになって失敗するだけだと思うけれど、このマンガは、しっかりとテーマを伝えていると思う。

☆☆☆★★「7年目のセキララ結婚生活」けらえいこ/メディアファクトリー
 自分自身の結婚生活をマンガにしたもので、結構面白い。ただ、純粋なマンガと違い、自分の生活をベースにして作品にしなければならないので、内容的には自由な創作が出来ずに現実的な話しに終わってしまい、そういう意味ではあまり面白くすることが出来ないジャンルなんじゃないかという気がする。
 この人の絵や、話しの作り方は内田春菊にとても似ている。女性ならではの視点というやつなんだろうけれども、新鮮さが、色々とある。

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