本1999/03

1999/03


★★★★★「死と生きる」池田晶子・睦田真志/新潮社
 池田晶子と、死刑囚睦田真志の往復書簡による語り合い。池田晶子の著作の中でも一番すごいと、思う。池田晶子の言葉は厳しい。厳しいことを言っているというよりも、正しいことを言うとそれは普通の人間にとっては厳しい言葉になってしまうということなのだろう。それにしても正しいことを述べるというのは難しいことだ。
 池田晶子が、睦田真志とのやりとりを続けるために裁判の控訴をするよう説く場面がある。睦田真志は控訴を行って延命をすることを潔しとしないのだけれども、それを説得する池田晶子の言葉がすごい。まっとうな言葉というのはとてつもない力を持っているのだと、あらためて思った。
 雑誌に記事を書いて一般大衆に語り掛けるというのは実のところ、無責任なことでも割と簡単に言えてしまうものだと思う。しかしこの死刑囚との1対1の対話というのは、並みの覚悟で出来る仕事ではない。無責任な発言は許されないし、本当に自分自身もギリギリのところで考えざるを得ない。だからこそ、この仕事は池田晶子のような覚悟を持った人間にしか出来ない、価値のある仕事なのだと思ってしまう。

☆☆☆★★「方法序説」デカルト/岩波文庫

☆☆☆★★「ある父親」シビル・ラカン/晶文社
 フランスの精神分析医ジャック・ラカンの娘による自伝的回想。この作者の生い立ちは確かに不幸とは言え、とりたてて特に特殊な人生というわけでもない。でも、それだけにメモ書きのように少しずつ、訥々と語られる彼女の自伝は真実味がある。
 どこの国であろうと、父親が誰であろうと、父と娘の関係というのはどれも似たような葛藤を持っているものなのだろうと、それだからこういった話しというのは国籍や世代を超えて他の人々にも伝わってゆくものなのだろうと思う。

☆☆☆☆☆「岬」中上健次/文春文庫

☆★★★★「すごいよ!マサルさん」4〜7巻 うすた京介/集英社
 最終巻は、だいぶレベルが落ちてしまって残念なのだけれども、4〜6巻はかなり面白かった。このマンガは、小学生よりも大学生あたりやもっと上の年代の人間が読んだほうが面白いんじゃないだろうかと思う。
 それにしても、このマンガを週刊ペースで連載するというのはかなりつらいと思う。もっとゆっくりとしたペースで連載が出来れば、さらにいいものが描けるはずだ。

☆☆☆☆★「あずみ」1〜13巻 小山ゆう/小学館
 刺客として育てられた女剣士、という設定は面白いのだけれども、全体的に話しが暗すぎてどうもうんざりする。序盤で人が死にすぎてクライマックスのようなものも迎えてしまって、それ以降話しがもたなくなってきた。このまま山場も話しの深みもなくなったまま、だらだらと話しが進んでゆくのではないだろうか。

☆☆☆★★「できるLinuxサーバー」
 Linuxは面白い。面白いけれども、それと仕事に使えるかどうかというのはまったく別問題だ。ソフトウェアの世界では、多数のシェアをとれるかどうかというのが絶対的な生命線で、Linuxがどれだけ良くともマイノリティーの地位にいるうちは使い物にはならない。ある地点を境にして一気にLinuxはメジャーなOSに変化するかも知れない。さもなくば消滅してしまうかだ。この先が楽しみだ。

☆☆☆★★「Internet Information Server 4.0」エド・ティッテル/翔泳社

☆☆☆☆★「豚の人生、人間の人生」落合信彦/小学館
 相変わらず落合信彦の言うことはアメリカ礼賛で、日本をけなしまくっている。世界のいいところを見習わなければいけないのはよくわかるけれども、落合信彦のいう世界がそれほどいいもののようには思えないし、日本はそれほど捨てたものでもないと自分は思うので、落合信彦の論調にもだいぶ飽きてきた。

☆☆☆☆☆「エリートの反乱」高杉良/社会思想社

☆☆★★★「ガンダム・エイジ」洋泉社
 今年はガンダム20周年とかで、関連の本も随分と出ている。この本はメインがガンプラを中心としたモビルスーツの話しで、とても面白かった。
 いつもながら不思議に思うのは、「ガンダム」というのは何故あれほど短期間の製作期間で様々な世界設定や人物設定・物語設定・メカ設定が出来たのかということだ。今から見てもモビルスーツのデザインや物語への登場のさせ方は見事としか言いようがない。

☆☆★★★「悪妻に訊け」池田晶子/新潮社

☆★★★★「デミアン」ヘッセ/岩波文庫
 この話しはちっとも古さを感じさせない。時代設定や背景はやや昔のものでも、そこで語られる根源的な問いや悩みは現代にそのまま変わらずに通用する。こういうのが文学の持つ強さなのだろうと思う。

 未読了 「道徳形而上学原論」カント/岩波文庫

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