考える材料となっている本
1998/11
「鉄鼠の檻」
この本を書くために調べたであろう参考文献の数、その時間を考えると気が遠くなるほどだ。厚さからして、辞書ぐらいの厚さがあり、なかなか読み始めるまでの障壁が高い。石井に京極夏彦の本を薦められて「姑獲鳥の夏」を読んでいなければ、この本を手にとることもなかっただろう。
テーマは、禅宗。箱根の禅寺で起こった事件の展開の流れにそって、仏教の歴史が事細かく説明がされ、とにかくこの細かさに圧倒される。寺の中には臨済宗と曹洞宗を始めとする様々な宗派が入り乱れて、これが事件の推理のカギになっている。
展開や構成の見事さが、すごい。劇的なのだ。たとえば、章の終わりの幕引きの仕方や、人物を登場させるタイミングが絶妙だ。気づかぬようなところに様々の伏線が張られていて、これはとても一回では読み切れないと思う。禅や仏教に興味がある人ならば特に絶対に読むべき作品であると思う。
「オムライス」
星里もちるのマンガは、マンガらしいマンガだ。それなりに荒唐無稽で、それなりにハートウォーミングで、それなりに予定調和がある。でも、その中にゾクッとするほどのリアリティー、突き放した予定不調和が時々混じっていることがある。文学的な味を持ちながら、決して文学では表現できないものをこの作者は絵によって見事に表現しているのだと思う。
「一週間でわかるホームページの作り方」
自分で、パソコン用のテキストを作ろうと思い、見本として買ってきた本だけれども、初心者向けの本としてなかなかよく書かれていると思う。
専門書でなしに、こういう初心者向けの手引きの本を書くというのはとても難しいものだ。