2000/04
★★★★「大人袋」5巻中川いさみ/小学館
「それはー『すしの形をしたカバンを持っていって欲しい』、とゆーことです。」(p.33)
4コママンガは、連載を続けるほどに途中で勢いが落ちてつまらなくなっていってしまうものだけれども、この人のマンガはどんどん磨きがかかってきている。より、少ない説明や描写で本質を伝える技術が高まっているような気がする。
★★★★「黒い家」貴志祐介/角川文庫
「彼らはいわばミュータントなんですよ。人間を人間たらしめている一番大切な要素が、すっぽりと抜け落ちていますから。SF小説に出てくるミュータントのような超能力こそありませんけれど、それ以上に危険な存在かも知れませんよ。罰せられないと判断すれば、彼らは平然と人を殺すでしょう。」(p.208)
この本は怖い。といっても、「リング」のような怖さではなく、もっと現実的な、こういうことがあったらイヤだ、という恐ろしさだ。内容的にも、今の時代にあわせて描いたリアリティがあって、一層怖さが増す。
★★★「愛の生活」岡崎京子/角川書店
「と口では言ってはみたが
桜田(妹)のこれまでの人生もこれからの人生も知るよしもないが
なんだか桜田(妹)の言うとおりなのだと思った
つまり自分の人生はすでにピークがやってきてしまってもうあとは下り坂だという考え方」(p.121)
「自分に何かふりかかると受け止めるフリして実は無関心なんだ
あたし 知ってる」(p.172)
★★★「ドラゴンヘッド」10巻望月峯太郎/講談社
気になっていたドラゴンヘッドも完結してくれて一安心だけれども、どうもやっぱり個人的にはこの終わり方はしっくりこない。何故ああいった天変地異が起こったのか、など残されていたたくさんの謎は未解決のまま残されてしまった。この終わり方でも、作者の伝えたかった大事な部分というのはきっと表されているのだろうとは思うけれども、画竜点睛を欠いた感じで、ちょっと残念だ。
★★★「X−ペケ」6〜7巻新井理恵/小学館
女の人でここまでセンスのある4コママンガを描ける人はとても貴重なんじゃないかと思う。5巻くらいまではとても好調だったのだけれども、最終巻の7巻では突然勢いが落ちてしまった。
★★★「Windows2000Serverシステム構築ガイド」向山隆行/技術評論社
Windows2000Serverの解説書はほとんどまだ出版されていないので、とても貴重な本。内容的にはちょっと薄めだけれども、訳書ではないために読みやすくていい。
★★★「この国のかたち」4巻司馬遼太郎/文春文庫
「日本は、明治以来、西洋のものを何でも入れてきましたが、文学だけは入れませんでしたね。」(4巻p.255)
★★「関ヶ原」上中下巻司馬遼太郎/新潮文庫
関が原の主役は徳川家康だったけれども、この本では明らかに石田三成が主人公だ。作者は、損な性格の三成が世渡り上手な家康よりもずっと好きなのだろう。三国志を吉川英治が劉備びいきに描いているのと同じような心理だと思う。
★★「共生虫」村上龍/講談社
不要な接触を断ったから気付くことができたのだとウエハラは思った。他のほとんどの人間は不必要な人間関係の中で本当に自分が必要としているものは何かということがわからなくなっている。引きこもりが正しいのかどうかはわからないが、その他にはあまり方法がないのだ。(p.289)
主人公の人物設定がはっきりしないのが、どうもしっくりこなかった。引きこもりをずっとしていた人間が突然ああまで行動的に意思を持って動くことが出来るのかどうか、ということがずっと気にかかってしまっていた。でも、内容はとてもよく伝わった。
[BACK]