わんだふる カナディアンロッキーズ (3)

  1.プロローグ 
  2.カナダへ向けて出発 : 7月13日(金) 
  3.マウント・ロブソン山麓 : 7月14日(土) 
  4.アイスフィールド・パークウェー : 7月15日(日) 

  5.シャドー・レイクへ : 7月16日(月) 
  6.シャドー・レイク(ボール・パス) : 7月17日(火) 
  7.シャドー・レイク(ギボン・パス) : 7月18日(水) 
  8.バンフへ : 7月19日(木) 
  9.さよならカナディアン・ロッキーズ : 7月20日(金) 


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4.アイスフィールド・パークウェー : 7月15日(日)

 6時に起きた。ようやく昨夜からの小雨はやんできたが、雲が低くたれこめ、お世辞にも天気がよいとはいえない。今回の旅行は、ずっと雨にたたられるのではないかという気持ちになり、とても気分がさえなくなってしまった。今日がビーバーに会う最後のチャンスなので、朝食前にキャビンの前の沼へ行ってみた。でもやっぱり会うことができなかった。残念・・・。
 今日は、1日中バスに乗って、アイスフィールド・パークウェー(Icefield Parkway)を走りながらバンフ(Bunff)まで、およそ7時間の観光旅行である。バスといっても、日本の豪華な観光バスではなく、かなり古い中型のバスであった。朝食後9時過ぎにバスに乗った。バスはイエローパーク・ハイウェー(Yellowpark Highway)に入り、ジャスパー(Jasper)に向かって東へ走り始める。するとすぐに、ブリティッシュ・コロンビア(British Columbia)州とアルバータ(Alberta)州の州境を越えた。ここで標準時間帯が変わってしまう。時計を1時間進めることになるので、9時過ぎに出たばかりなのに、もう10時過ぎとなってしまった。なんだか時間を損したような気になってしまう。ちょっと日本では考えられない感覚である。
 バスは山間の広い谷を快適に走って行く。ここはマウント・ロブソン州立公園(Mount Robson Provincial Park)内であるが、山には霧がかかっているため、時々ロッキー山脈の荒々しい岩肌や白い氷を見せてはくれるが、山の上の方はほとんど見えない。道路の脇は草原になっていて、川が並行に走っており、時々沼や大きな湖(ムース湖(Moose Lake)、イエローヘッド湖(Yellowhead Lake))も見ることができた。また、道路とは並行にカナダ横断鉄道(Canadian National Railway)が走っており、長い貨物列車が見えた。
 3000m以上の高峰をたくさん抱えるロッキー山脈の真っ只中をハイウェーで走るというイメージが、日本では想像できない。南アルプスの山間をハイウェーが走っているようなものかとも思うが、こちらのハイウェーは日本のように高い鉄橋の上やトンネルは通らない。広い谷に片側1車線の舗装道路が少し蛇行しながら続いており、ガードレールやフェンス、中央分離帯などもまったくない。道路脇は草地になっており、車線をはずれた車はどうぞ草地に突っ込んで、他人に迷惑をかけないでくださいということらしい。なるほど、合理的な考えと感心した。ガードレールや中央分離帯があると、車がそれに触れた場合、反対車線に飛び出したりして大事故につながるケースがよくある。これならば単独事故で済み、事故に伴う補修費用やハイウェーの運営コストも少なくなり、社会的には好都合であるといえる。ちなみに、ハイウェーは無料で、料金所もなく、日本のようなサービス・エリアもない。道路脇には、沼や湖が点在しており、時々野生動物も現れる。本当に豊かな自然が残っているようだ。
 1時間ほど走って、11時過ぎにジャスパー郊外に到着した。ここから南に向かって、93号線、通称アイスフィールド・パークウェーに入る。この道では自然公園を保護することを目的とした通行料が必要とのことである(カナダの通常のハイウェーは無料である)。ちょっと走ると、ハイウェー脇に数台の車が停車している。エルク(大きな鹿)が数頭、道路脇の草原でのんびりとしているのが見えた。この道路脇には、熊も含めてよく動物が現れるのだそうである。そうすると、ハイウェーにも関わらず車が道路脇に駐停車し、動物を見学することになり、あちこちで「渋滞?」が起こるそうである。ちょっと進むと、今度は黒いヤギを見ることができた。

 ここからコロンビア・アイスフィールドまでのおよそ100kmの間には、3000mを越すカナディアンロッキーズの山々が左右に見られるはずであるが、あいにくの霧で山頂はほとんど見えない。主な山の名前を挙げてみる。Mt.Edith Cavell(3368m)、Mt.Fryatt(3361m)、Brussels Pk.(3161m)、Mt.Unwin(3300m)、Mt.Mary Vaux(3207m)、Mt.Brazeau(3525m)、Mt.Henry MacLeod(3315m)、Mt.Confederation(3002m)、Mt.Alberta(3619m)、Mt.Wooly(3460m)、Sunwapta Pk.(3360m)。
 ハイウェーの周辺はもちろんすばらしい景観なのであるが、やはり青空を背景にした氷河の山をまったく見ることができないのでは、がっかりである。30分ほどして、最初の観光地、アサバスカ滝(Athabasca Falls)に着いた。この滝は、これから行くコロンビア・アイスフィールドのアサバスカ氷河を源とするサンワプタ川(Sunwapta River)、アサバスカ川(Athabasca River)の流域にある滝である。氷河から流れる豊富な水が岩の間から轟き音をあげて落ちる様子は圧巻である。



 再びバスに乗り、コロンビア・アイスフィールド(Columbia Icefield)に向かった。山と川、沼それに針葉樹(ほとんどロッジポール・パインとのこと)のロッキーズの特徴的な景観が延々と続く。それも標高1000m以上の高地である。とにかく広いと思った。
 1時近く、コロンビア・アイスフィールド・インフォーメーション・センター(およそ標高2000m)に到着した。この時、初めて青空が広がった。やっと運が向いてきたように思ったほどうれしくなった。センタービルは、おみやげ店、レストラン、それに氷河に関するいろんな模型などの展示を行っている室などがある大きな建物で、2階のテラスに出ると、目の前にアサバスカ氷河(Athabasca Glacier)、その奥にコロンビア氷原(Columbia Icefield)が大きく広がっているのが見える。氷河の左には、Mt.Athabasca(3490m)、Mt.Andromeda(3450m)、その右側には、Mt.Kitchene(3505m)、Snow Dome(3520m)等がそびえている。標高2000mの高さでこんなすばらしい氷河が見られるとは、大変な驚きであった。
 さすがにここには世界各国から大勢の観光客きており、大変混雑していた。日本人だけではなく、韓国や中国(台湾)などの東洋からも多くの人が来ているようである。食事をした後(1時45分頃)、いよいよアサバスカ氷河見物である。

 最初、センターからシャトルバスに乗り、氷河近くまで行く。バスはすべて日本人で占有されたので、説明も日本語で行われた。到着したところで、大型の雪上車に乗り換え、氷河の上に出る。雪上車は昔はキャタピラであったが、現在は氷河を傷めつけないように?、特殊ゴムタイヤに替えたとのことである。雪上車は、氷河上をゆっくりと走りながら、ちょうど氷河の真中(標高2210m)まで連れていってくれる。

Athabasca Glacier &
Mt.Andromeda(3450m)
 (Left)
Athabaska Gl.へ向かう雪上車
(超大型タイヤにはチェーンはない)
 氷河の上に降り立つと、多くの観光客が写真を撮っている。観光地化されているのでそれほど感激もしなかったが、まわりの雄大な風景は素晴らしい。食事をしていたときは青空が広がっていたのだが、到着する頃には雲が空全体を覆い、急に寒くなってきた。と思うまもなく、風が吹き始め、空からはヒョウが降り始めてきた。気温は急降下したようで(零度位)、とても外に立ってはおられず、あわてて雪上車に逃げ込んでしまった。

Center of Athabasca Glacier
(奥が、Columbia Icefield)
On Athabasca Glacier(2210m)
(風が吹き、ヒョウが降る)


 センターへ戻ると、空は曇で覆われてはいたが、風もなく、雨も降っていなかった。さきほどのヒョウは何だったのかと思ってしまった。氷河の方はまだ荒れているようで、やや霞んで見えた。ロッキーの氷河でもまた悪天候にあってしまったが、得がたい体験と思って納得した。日本の山でもそうだが、ロッキーの山の天候の変化はとても激しいようである。
観光旅行は後半に入る。もう3時半を過ぎている。2069mのサンワプタ峠(Sunwapta Pass)を越え、5、60kmほどサスカチュワン川(Saskatchewan Riv.)沿いを走り、ボウ峠(Bow Path:2069m)に着く(4時45分頃)。

 この峠付近に、ペイト・レイク(Peyto Lake)があった。駐車場から少し歩いた展望台から見る湖は、高い山に囲まれ、とても素敵なエメラルド色に輝いていた。
続いてバスに戻り、しばらく行くと、道路脇にボウ・レイク(Bow Lake)があった。こちらも、道路脇にも関わらず、ひっそりと神秘的にたたずんでいる。このハイウェー沿いには、このような湖がたくさんあるそうである。

Peyte Lake(2139m) Bow Lake( )

 今日の観光の最後のハイライトは、世界で最も美しいといわれるレイク・ルイーズ(Lake Louise)である。ボウ・レイクからおよそ30kmくらいで湖畔の駐車場に着いた。時間はもう6時になっていたが、まだまだとても明るかった。ここは、コロンビア・アイスフィールドと並んで、カナディアン・ロッキーズの観光スポットであり、その写真がカナディアン・ロッキーズの観光パンフレットに必ず掲載されるところである。当然観光地化されており、多くの観光客で賑わっていた。

 駐車場から湖に出ると、写真で見たとおりの絵のような風景が眼前に現れた。二つの山(Mt.Fairview(2774m)とMt.Niblock(2976m))の間から真っ白なマウント・ヴィクトリア(Mt.Victoria(3459m))が望まれ、それらの山々を背景にコバルトブルーのレイク・ルイーズが静かに横たわっている。その姿はとても美しい。この湖を最初に発見した?西洋人が感激した様子が目に浮かぶようである。

Lake Louise Chateau Lake Louise

 やむを得ないことではあるが、現在は観光地化されており、ちょっと残念な気はする。それでも、素晴らしい湖と景色であるには違いない。いつか再び訪れ、ゆっくりと過ごし、この周囲の山々をトレッキングでもきたらと思ってしまった(また来たいなー!)。

 これで今日の観光旅行が終りである。今日の宿泊地バンフ(Bunff)へ向かってバスは走った。天気は下へ行くに連れ、だんだんと回復してきて、青空が広がってきた。そのために、バスの両側には、Protection Mtn.()、Mt.Castle(2766m)、Copper Mtn.(2795m)、Pilot Mtn.(2941m)、Mt.Corry(2789m)、Mt.Bourgeau(2931m)などの高山がよく見えた。思わず気持ちが高ぶってくる。明日からの3泊4日のシャドウ・レイク(Shadow Lake)トレッキングが楽しみである。
 バンフ(Bunff)のホテル(Bunff International Hotel)に着いたのは夜の8時であった。でも、天気は快晴のため、町はまだ明るく、周りの山は輝いて見えるくらいである。ホテルで夕食をとった後、ちょっと街中を散歩してみた。気温はちょっと涼しいくらいで、Tシャツ1枚だとすこし寒い感じがする。街中はとても清潔で、きれいである。みやげもの店も夜遅くまで開いており、食品スーパーも10時までやっていた。明日からはザックを担いでの3泊4日のトレッキングなので、10時半にはホテルに戻った。そして、ザックのパッキングを行い、12時近くにベッドに入った。今日は長い旅だったので、すぐにぐっすりと寝ることができるだろう。明日こそ晴れますように!!


                                                           2001年08月11日 完


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