シリアル番号 | 933 |
書名 |
水素エコノミー エネルギー・ウェブの時代 |
著者 |
ジェレミー・リフキン |
出版社 |
日本放送出版協会 |
ジャンル |
技術 |
発行日 |
2003/4/25第1刷 |
購入日 |
2008/2/29 |
評価 |
良 |
鎌倉図書館蔵書
「グローバル・ヒーティングの黙示録」を書き上げた後の推敲段階で目にした本のなかで関係あると思われる本には目を通すことにしている。これもその一つ。
オックスフォードで学び、テキサコ、アモコで探査部長として働いたコリン・キャンベルとトタールで探査を担当したジャン・H・ラエレールがスイスのペトロ コンサルタンツ社のデータベースを基に石油生産は2005年頃にピークを迎えるという予測をサイエンティフィック・アメリカン誌1998年3月号に発表し た 。これを原著で読み、深い感銘をうけ、世の中が無関心であることに驚いたものであるが、著者もこれを詳しく紹介している。
そしてこの予言は現実のものとなり、2008年には100ドルを越えた。(そして2015年には40ドルに下がった)
ペルシャ湾岸のイスラム教国家が、石油に関しては最終権限を握るべく地質学的に運命付けられているという地質学者ウォルター・ヤンクィストの説を紹介している。
次にエネルギーと文明の興亡について意味深い考察を紹介している。ジョセフ・A・テンターの「複合社会の崩壊」(The Collapse of Complex Society by Joseph Tainter Cambridge University Press.)で成熟した文明が、自らの複雑な社会制度をただ維持するためだけに、エネルギーの蓄えをどんどん費やさざるを得なくなり、その制度から得ら れる一人当たりのエネルギーが減ってゆくと、崩壊が始まる。この本の日本語訳はないが講演がU-tubeで聴講できる。
ローマ帝国の熱力学は一読の価値あり。すなわち実りを生む土地と農民に変る代替エネルギー体制を埋めなかったのでこの形の資本を消耗したための崩壊として理解するというのだ。
化石燃料を失った後、代替エネルギーを見つけることができなければ我々の文明は崩壊するのかどうか?
水素エネルギー時代を予告しているが「グローバル・ヒーティングの黙示録」に論じたとおり、ここにこの本の詰めの甘さと弱点があるように思う。 とくに水素の価格がどんどん安くなるという点がわからない。
電子時代にシリコンの価格は安くなったのではなく微細加工により、少ないシリコンでメモリーや演算素子が安く製造できるようになっただけのこと と錯覚しているのではないか。
水素を作るのに太陽光を使うなら、著者の言うとおり、分散型エネルギーとなろう。しかし水素は液化にも圧縮にも膨大なエネルギーが必要である。だから水素 で蓄える必要はなく、二次電池、イオンをタンクに蓄えるフロー電池、フライホイール、超伝導磁力平衡コイルという方法で蓄えることになると思う。
二次電池のなかでもアントラキノンのイオンをタンクに蓄えるフロー電池安価に蓄電量を増やせるので、もっとも有望。Rev. November 17, 2015