読書録

シリアル番号 814

書名

原子力神話からの解放 日本を滅ぼす九つの呪縛

著者

高木仁三郎

出版社

光文社

ジャンル

技術

発行日

2000/8/30第1刷

購入日

2006/11/25

評価

1938年暮れ、ドイツのオットー・ハーン、シュトラスマン、マイトナーが核分裂現象を発見。

1942/9マンハッタン計画

1945年、広島・長崎に原爆投下

1953/12/8国連総会でアイゼンハワー大統領が平和利用にかぎって核の利用をみとめるという「アトムス・フォー・ピース」という方針を公表。

1954/3/2当時の野党の改進党の中曽根康弘が予算の修正案として原子力予算を国会に提出し可決される。初めての原子力潜水艦、ノーチラス就航。

1957年、英国のカンブリア州ホアイトヘブンの町の東南16kmのアイリッシュ海に面した海岸にあるBNFL社のウィンズケール燃料再処理場(現セラフィールド)でプルトニウム生産用の天然ウラン・黒鉛減速炉(フェルミ型)の火災事故、溶融ウラン、核燃料被覆管、核分裂生成物が燃えた。日本の再処理もここに委託。

1968年より1996年まで日本では濃縮ウランを使う軽水炉であるBWRとPWR炉が交互にほぼ直線状に基数が増えてきた。1979/3/28のスリーマイル島事故以来米国では原発の建設はストップ、1986/4/26のチェルノブイリ型黒鉛減速チャンネル型炉の事故後でも建設は減速することなく1996年まで原発の建設は継続、1995年の高速増殖炉もんじゅの事故後、ようやく新規建設は停止。それも電力需要の伸びが止まったのが一因。この継続のために日本政府は原発の安全神話と経済性の神話をでっち上げた。つまり廃棄物処理、廃炉費用などの将来のコストを過小評価したのである。また耐用年数を40年として固定費を過小評価したのである。増設計画は取り消していないが、絵に描いた餅であろう。

沸騰水型原子炉(BWR):GE社ー東芝ー日立、東京電力や中部電力がこれで32基、米国にも多い。

加圧水型原子炉(PWR):ウエスティングハウス社ー三菱、西日本に23基、またヨーロッパに多い。またスリーマイル島はこのタイプ。

ちなみに世界の原発は米国103基、フランス59基、日本55基である。

スリーマイル島では圧力容器にクラックが入ったがかろうじて閉じ込めた。しかし燃料ペレット、ジルコニウム核燃料被覆管、圧力容器、鋼製の格納容器、コンクリート製の建屋という五重の封じ込めは一つの原因で全て破壊されうる。例えば耐震設計審査指針を越える地震が発生するなどの事象である。

1998年フランスの高速増殖炉スーパーフェニックス計画中止。

2000/6/15シュレーダー首相が原発の平均寿命を運転開始から32年として20基ある原発を寿命のきたものから順次廃棄すると公表。これがこれからの文明的な潮流。

2000年末までの日本の炉の稼動年数。

稼動年数 基数
30年以上 2基
25年以上 9基
20年以上 20基

再処理がうまくできないで現在溜まっているプルトニウムは30トン。原爆8kgとすれば4,000発分となる。高速増殖炉、プルサーマルもできないとなればもっと溜まり、2,010年には100トンになる。すなわち12,000発分である。考えられるシナリオはプルトニウムを 再利用せず、放射性廃棄物と混ぜて人間が近寄れないようにするか全く分離せずそのまま永久保存することしかないのでは?

Rev. March 21, 2007


高木氏は死去されたが氏が危惧された事故は確実に2011/3/11に発生した。氏の見識を見直す。

2011/3/18


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