パッシブ・ソーラーハウス

FIT 制度は買い取り価格が27yen/kWhとなり、これで売電するメリットもなくなった。今後は配電コスト10yen/kWhを節約できるオフグリッド発電 が実用化されるであろう。電力会社も独占はゆるされなくなるので、コスト高の配電網を整備する義務もなくなる。というわけで再生可能エネルギー普及のため にもPVを使ったオフグリッド運転は時代の要請だ。

しかし梅 雨期もPVだけで乗り切るオフグリッド・ハウスにするには現在のリチウムイオンバッテリーは高価すぎる。安価になると期待されるハーバード大学のベ ンゼン環が3つ結合してアントラセンとなっているアントラキノンに,さらにスルホ基を2つ結合した分子AQDS(9,10-AnthraQuinone- 2,7-DiSulphonic acid)またはビタミンB2を使ったフロー電 池が定置型として市場に出てくるのかも定かでない。

いずれにせよ、家は屋根にPVを貼れるようにし、でき るだけ空調負荷を減らすことができるパッシブソーラーハウスとするのがおすすめ。以下そのパッシブソーラーハウスを紹介する。



敷地

2014/12/10 基礎工事。



基礎 2014/12/10

盛り土のため、コンクリート基礎下には鋼管杭を打設。



鋼管杭

2015/2/10 屋根の構造合板が張られた。まだ筋交などはこれから。



2015/2/10撮影

30年前は米栂材であったが、最近は秋田産の木材を使っている。コンピュータをつかうプレ・カットで あるから継手はぴっちりと嵌っている。秋田プライウッド(株)向浜第一工場製の厚さ12mmの構造用合板を屋根板に使用。スギ材のように見えた。



プラスチック製の換気のできるスペーサー


冷水・温水パイピング

コンクリート基礎と土台の間にプラスチック製の換気のできるスペーサーをいれてコンクリートの水分が土台木部に染み込まないようにしている。調べると城東 テクノのJoto基礎 パッキング工法というらしい。

屋内水道配管はプラスチックホースになっていることなどが、その 後の進歩。

南面する縁側は部分濡れ縁。



南面する掃出しドアの基礎


吹き抜け

2015/3/8の進捗状況はサッシが取り付けられ、バスユニットが組み込まれる。



南面する掃出しドア


バスユニット組み込み

2015/6完成。

パッシブソーラーハウスの仕掛けは南面する二階のファサードの透明ガラスはすべて二重ガラスにして太陽熱を取り込み二階の空気を温め る。固定ガラス部分はガラス単板+断熱材+ポリカーボネートでほぼ断熱壁となっている。広大な1階屋根にはPV設置予定。1階屋根裏の空気が温まる。1階 屋根で温められた空気を室内に取り込むガラリがついていて、夏場はガラリを閉じて暖た まった空気を閉じ込め、屋根材から放熱されるようになっている。そして冬季はガラリを開け、暖気を屋内に取り込む。この暖気は格子床を通過して二階に導か れる。格子床の下 は透明アクリル板があり、一階の明り取りとなっている。

二階は天井と屋根が一体で、夏場室内に溜まった熱気はファンで屋根にあけた小窓から外に放出するようになっている。天井、壁、床の断熱材は厚さ 100mm、充填密度24kg/m3のグラスウール。



2016/10/22撮影

こうして冬季には二階に溜まった暖気を空気を家の中央で一二階を縦に結ぶダクトで吸い込んで、一階の床に暖気を吹き出して一階の住環境を快適にする。補助 熱源とし て都市ガスで温水を作り、1階の床を3ゾーンに分けて温水マットを組み込んだ床暖房をしている。温水加熱器は給湯も兼ねている。

夏、二階の気温が上がりす ぎたらダクトの真上に開けた二階の小窓から熱気をファンで放出する。そして空調機で冷却する。



ダクト上部の暖気吸入口


ダクト下部の暖気放出口

熱交換型の外気取り入れ設備は検討したが、高価で断念。

一階の屋根裏と二階の切妻のガラス壁の内面に溜まる熱は夏季は切妻のガラス壁の上部のヴェント開口部から自然対流で放流。そして冬季はインテーク口を開け て二階室内に取り込む構造となっている。



切妻のガラス壁の上部のヴェント開口部


インテーク口

フローリング材はシイのむく。メーカーは山口県の(株)シンラテック

スエーデンの ASKOの食器洗い機をビルトインした。これは優れもので、高温水を巡回使用して夜間洗浄してくれる。



ASKOの食器洗い機

完成記録はタッペイ設計事務所のサイトで どうぞ。

2017/8/12 TV朝日の「渡辺篤史の建もの探訪」で四角に三角が載った家として紹介される。


パッシブ・ソーラーハウスはなぜ普及しないか?

スエーデンでは保温厚さ450mm、我が家は50mm、少し厚くした息子の新築保温厚さは100mm。

家の構造に省エネ機能を組み込むことはその分コストアップになるが、これを投資と考え、省エ ネ分で投資を回収することもできる。しかし自分の家を持つことは台風で屋根持って行かれるとか、地震で一階部分が潰れるとかのリスクも覚悟することにな る。

このリスクの他に、木造住宅は築後40年と古くなるとダニの巣窟になるリスクがある。特に畳 は彼らのディナーテーブルだ。英国式レンガ建ては数百年間、内装を更新するだけで使い続けるが。絨毯も日本ではダニの巣窟になる。このダニやその他雑多な 虫を捕食する家蜘蛛が主人のような顔して部屋の中を歩き回るようになる。家のオーナーと蜘蛛とは利害が一致するのでできるだけ蜘蛛の人権を認めて彼らの自 由にさせる。そうするとこの蜘蛛を捕食するヤモリが増えるというバイオスフェアが確立し、その糞を掃除するハメになる。

こ のような古民家に住んでいるとノートパソコンの横に灰色のゴミが落ちたのでつまんでゴミ箱にポイしようとしたところ、乾いていてひんやりした皮膚を持っ た、アバラ骨がしっかりした魚のような感触にビックリするハメになる。驚いて取り落したものを、もう一度気を取り直してティッシュで逮捕し、ベランダで釈 放した。いずれ屋内に入り込むだろうのは承知の上だ。

結論として日本家屋は一代限りで取り壊し、新築するということが文化となっていて省エネ投資を難しくしているが。全ては日本の気候のなせる業。ダニがベッ ドに入り込まないようにするには、掃除とともにダニが嫌いな青森ヒバ油、エレミ油などをスプレイする。そういうわけで日本家屋は木の香りがする新築がいい という文化が出来たのだろう。だから一代で建て替える文化の下では省エネ家屋は普及しない。銅とアルミでできた寿命10年(海岸では5年)のヒートポンプ のお世話になることになる。そしてオーナーはヒートポンプの電力料金を節約して熱中症で天国に召されることに相成る。

June 22, 2014

Rev. November 7, 2019


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