副題が「文化大国が聞いてあきれる-痛憤の母国批判」。
著者は、中国の瀋陽の朝鮮族三世で、日本文学科卒業、日本の大学での研究員としての経験も多く、比較文学、比較文化などの専門家。中国、日本、韓国の文化に通じているだけあって広く公平な視点を持っている。
中華思想の病理、徳と礼儀の文化はどこへ行ったか、反文明的な流氓(リウマン)文化、文化砂漠、サービス精神の欠如、人身売買、恐怖政治、焚書坑儒と文化大革命の類似性など様々な内容。非常に広い時間単位でモノを見ているのがいい。中国は伝統的に反文化的という印象を受ける。
面の皮が厚く、腹黒くならなければ成功しないという「厚黒学」がベストセラーになる現実や、面子の重視、極端な利己主義も印象的。国民病診断として欺瞞病、泥棒病、大同病、奴隷根性病、変革忌避病、実利病をあげている。
基本的には「中国人の真っ赤なホント」、「日本人は永遠に中国人を理解できない」と同じ様なことを言っているんだけど、より辛辣な視点である。
「耳袋(嚢)」は江戸の名奉行、根岸鎮衛の収集した不思議な話や愉快な話を集めたもので、全10巻、合計100話にもなる。宮部みゆきの「震える石」も、この「耳袋」の逸話が元になっている。これは現代版「耳袋」。
元の「耳袋」がバラエティに富み怪談はわずかであるのに対して、「新耳袋」はほとんどが怪談話。中にUFOなどが入っているのが現代的。面白いのもあるが、よくある錯覚っぽいのや都市伝説など様々。話を集めておく価値としては貴重。
→ 「新耳袋」オフィシャルサイト
→ 「耳袋」-
根岸鎮衛の耳袋、現代語訳も読める
→ 「仙境異聞」-「耳袋」姉妹サイト
四川飯店の創業者であり、陳健一の父親の陳建民の一生。語り風にまとめてあるので読みやすいが、それ以上に内容のトンデモなさにグイグイと引き込まれてしまう。なかなか面白かった。
1919年四川省生まれ、10人兄弟の末っ子。父が死に一家離散。大工、ソバ屋、阿片作り、重慶、揚子江を武漢、南京と下り上海、1947年に台北に渡り、高雄、香港、1952年に日本へ。各地の料理を吸収しながら、四川料理を広めていく、まさに四川料理人生はお見事。その間に3回の結婚、これが重婚というのも凄い(^^;)。
著者が上海パブで知り合った紅(ホン)ちゃん。プレゼントを買い、服を買い、マンションの家賃を払ってあげて、"もうすぐビザが切れる"の一言で籍を入れて…しかし水商売も止めず別居婚。金を絞りとられても、洗濯も掃除も料理もまるでしてもらえなくても、騙されていると周り中から言われても信じ続ける著者。アムウェイの糾弾本を書くようなジャーナリストで騙しについてには専門なはずなんだが…。しかしこの紅ちゃんのワガママぶりは文化的な部分と片づけている部分も多いが、他の中国人が怒るんじゃないかなあ。
「中国人のまっかなホント」に通じる部分がある。
漫画が始まったので読み返してみる。今、超能力モノを書く人もいないだろう。設定が安直ではあるけど、当時は結構面白かった。出だしは今読んでもかなり面白い。
著者はイスラエルの物理学者エリヤフ M.ゴールドラット博士。全米で250万部突破。上梓1984年出版以来、今までに著者により日本語への翻訳が禁止されていたのは、日本が全体最適化にノウハウを学び飛躍的な生産向上をすると世界経済が混乱するだとか…ホントか??
しかし内容は面白い。簡単に言えば、"業績が悪くなり三ヶ月後には閉鎖される工場の所長が、物理学の恩師の助言により工場を立て直す"物語。何故かコレがめちゃくちゃに面白い。
そこここに教育めいた話は散らばっているけど、読みやすい。確かに、生産、企業におけるパラダイムシフトを感じる物語。実際に、自分の仕事で役に立てるにはかなりな時間を要するだろうけど。
英語だと、著者に"Jeff Cox"の名前があるが日本語版では何故か無くなっている。解説は稲垣公夫.
→ Avraham Y.Goldratt Institute
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→ TOC
制約理論のひろば
→ TOCのページ
- 日本能率協会
上巻に続いてやっと読む。面白かった。
元々は「ナプキン」という題名で1250部だけ出版して抽選で販売されたらしい。その後、題名を変えて一般に出版されたが、オリジナルの「ナプキン」は素晴らしい題名だと思う。
→ キング公式サイト
映画にもなった「レナードの朝」の著者、脳神経学者。脳の障害による不可思議な症状を持つ7人の患者の話。その不可思議さから人間の脳の神秘的な働きの輪郭を知る事が出来て面白い。患者を見る眼には、好奇心によるのぞき見主義な意識はまるで感じられず、対等な人間同士の交流がある。そこがこの本を格調高く、そして感動的な物語にしている。
症状を治せるとしても治そうと思わないと皆が言うのが、興味深い。
1) 「色覚異常の画家」:完全に色を失った画家のジョナサン.I。
2) 「最後のヒッピー」:脳腫瘍のため視覚と記憶能力を失い、60年代に閉じ込められたグレッグ.F。
3) 「トゥレット症候群の外科医」:突然飛び跳ねたりする、あちこちに触るなどするトゥレット症候群。手術中は見事に症状が消えるのが不思議。
4) 「見えていても見えない」- 中年になってから手術によって初めて視力を得た男。見えるという異常な世界に戸惑い続け、再び視力を失う事により心の安定を取り戻す。
5) 「夢の風景」- 驚異的な記憶力で故郷のイタリアの村ポンティントを描きつづけるフランコ。現実のポンティントを訪れ、混乱してしまうのが悲しい。
6) 「神童たち」: ひと目見ただけで風景、建物の細部まで絵に描く自閉症の少年スティーブン。
7) 「火星の人類学者」: 自閉症でありながら、コロラド州立大学動物行動学助教授のテンプル・グランディン。人間同士の交流、触れ合い、感情、騙しあいが理解出来ず、自らを「火星の人類学者」の様な気がするという。
→ 「妻を帽子とまちがえた男」感想 サックスの著書
映画「遠い空の向こうに」の原作。
基本的には映画そのままの話だけど、映画には無いディティールの書き込みも楽しいし、素晴らしく面白かった。「このまちの子供は、みんなの子供、それがこの町の不文律」と言われる、共同体としての町に懐かしさを感じる。そこにいる人々、それぞれを等身大の人間として描いている。
大人よりは子供に読んで欲しい本。夢を追い求める事の大切さが実感出来る。
映画は、邦題が「遠い空の向こうに」、原題が「October Sky」だけど、原作の「ロケットボーイズ」の方がずっとかっこいいのに、何で変えたんだろう?
解説にあるように、宇宙飛行士の土井隆雄がコロンビア号に乗った時、メダルとオーク号のノズルを持っていったもらったとは驚き。
主人公シルヴィアは空港の草むらで血だらけで目ざめる。体に傷は一つも無い。事情が分からず、不安なままバルセロナの街をさまよう…。
映画「シエスタ」の原作。著者はチャーリ・チャップリンの義理の娘。
解説の最初の一行が"奇妙な小説である"。その通り。映画は気怠い時間と印象的なラストでで面白かったのだけど、小説的な時間の使い方ではなんかかったるい感じしかしなかった。ラストは映画で知っていたので、それ程感動も覚えなかったし。
米物理学会のホームページ、雑誌、新聞に著者が書いてる「ブードゥ・サイエンス」(邪悪な科学)に関するエッセイを一冊にまとめたもの。ホメオパシー、ロズウェル事件、ジョー・ニューマンの永久機関、などニセ科学ものによく出てくるネタもあれば、地球温暖化論争、電磁波論争など科学的論争のモノもあり、また宇宙開発の実態、常温核融合騒ぎ、スターウォーズ計画などをスパっと切っている論調も面白い。
パークは、ブードゥ・サイエンスを次の3つに分類している。
病的科学=科学者が自分で自分をだます科学、ジャンク科学 =司法関係者の科学の知識が浅い事につけこみ、集団訴訟で企業を食い物にする集団訴訟科学、ニセ科学=詐欺で金儲けをたくらむ詐欺科学。
次の話が傑作。子供時代に本で読んだ「アライグマが食物を洗うのは唾液腺が無いから」という豆知識を大人になるまで信じていたが、大人になってビスケットに群がってきたアライグマはよだれを垂らして集まってきた…。教訓「ある理論がどれほともっともらしく聞こえても、最後に決断を下すのは実験である」。
心理学者ジェームズ・オールコックの「信じたがる脳」という考え方も面白い。
2008年米国、世界有数のバイオテクノロジー会社、バイロベクター・ソリューション社の創設者アリス・プリンスとFBI女性長官マデライン・ネイラーは、<良心>という名の、男性のみが有する犯罪誘発遺伝子を破壊するウイルスを開発しようとする。FBI特別捜査官ルーク・デッカーは密かに改変されたDNAの存在を知り、行動遺伝学者キャスリン・カーと共に調査をするが、裏では<クライム・ゼロ>というプロジェクトが進行していた…。
「イエスの遺伝子」のコーディ次回作という事で期待度満点、結果的には結構面白かった。後半になるに従い話が大きくなり過ぎるが、いかにもエンターテイメントな展開で楽しんで読める。
背景となる、ユートピア主義、フェミニズム、男女の性差などを狭い世界で論じないで、全人類相手にしている所がなんとも凄い。
主人公はヴァイオリニスト志望の青年ジェームズ・ファレル、そしてのちに妻となるサラ、その従姉のエラ、エラの婚約者チャールズ、ジェームズの親友エリック、噂好きの友達カミラなど。話はジェームズの50年前の回想で展開する。
「45年間連れそった妻のサラが拳銃でみずからを打ち抜いて死んだ」という書き出し、そして数行後では「妻を殺したのはわたしである」と告白。この出だしの一文は21歳の俊英と言われるぐらいには見事ではあるけど、後はストーリ的にはイマイチ。文章は軽快で読みやすく、それなりには面白いのだけど、肝心のミステリ部分はあまりにお粗末。前半で想像出来たストーリ展開の一番面白くないモノに一致してしまうぐらい。ミステリ仕立てでありながら練りが足りず、文章には人生経験の浅さが出てしまっている。