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Sep./2004) 
| 1.ネタ振り ↓ 2.お題目 ↓ 3.私的考察 ↓ 4.独り言 ↓ 5.まとめ ↓ 6.あとがき ↓ 7.結論(再掲) | 
| 1.ネタ振り | |
| レガシィ系やインプレッサ系のインターネット掲示板では、「個体差」 
    という言葉がよく用いられる。特に Q&A的な読者掲示板 
    で顕著に見受けられる。例えば、こんな具合だ。 <例1> <例2> <例3> | (※注1):レガシー 正式には 「レガシィ」 と表記すべきであることは、言うまでもない。 | 
| 2.お題目 | |
| 念のため、各論に入る前に、ここでまず 
    「個体差」 という 言葉の意味 から確認しておこう。 三省堂・「大辞林 第二版」 によると、「個体差」 とは次の意味を表す、とされている。    ------------------------------------- また、英辞郎 on the Web (※注2)によると、「個体差」 は次のように英訳される。    ------------------------------------- これらの基本解釈(対訳)については、誰も異論は無いだろう。 こうした背景から 「個体差」 
    をクルマについて当てはめてみると、 とすると、例えばモンシロチョウの羽の紋様や、キイロショウジョウバエが受け継ぐ遺伝子といった生物学的・遺伝子学的な個体間の差異ではなく、   ” 設計仕様書(※注3) 
    に基づいて厳しく 例えば、 SONY の ウォークマン 
    に 個体差 はあるのか?  もちろん、これらは同一型番 
    (または型式) 同士での話である。もしも型番 (型式) 
    が違えば、仕様も異なるので、性能や機能、使い勝手や耐久性も異なって然(しか)るべきである。 | (※注2):英辞郎 on the Web Electric Dictionary Project 提供の和英辞書のサイト。 (→ http://www.alc.co.jp/index.html ) (※注3):設計仕様書 (※注4):生産管理 | 
| 3.私的考察 | |
| さて工業製品に 「個体差はあるか否か?」 
    という上記の問いに対しては、厳密には 「ある」 
    と私は考える。ただし、それはあくまでも 公差(※注5) 
    の範囲内 でのことである。 例えば、ある部品の寸法が 図示値(※注6) で 20.00±0.05 [mm] に規定されていたとする。すると、図面仕様上、その部品は 19.95 [mm] 〜 20.05 [mm] までの 範囲 で存在することになる。しかし、その意味は 「その部品の寸法が 19.95 [mm] 〜 20.05 [mm] までの範囲にあるならば、要求された仕様を満足することができる」 ということであり、またそうした 裏付け を持って設定されている、ということだ。これこそが前述の ”公差” に他ならない。 公差は、何も寸法だけに限ったものではない。例えば、ボルトの締め付けトルクにも公差がある。「ホイールナットの締め付けトルクは、9.0±1.0 [kgf・m] (※注7)」 
    といった場合、上限は 10.0 [kgf・m] 、下限は 8.0 [kgf・m] 
    で締めても構わない。公差で ±1.0 [kgf・m] 
    を許容しているということは、 を検討した上で、求められる機能を十分に確保できる範囲が確認されているということになる。したがってそれは正当な ”範囲” なのである。つまり、その範囲内であればメーカーが 機能を保証 する、という値の 集合体 であると言える。 また、部品によって公差の範囲は異なる のが普通である。求められる機能や適用部位、使用環境のシビアさ(要求耐久性)、あるいは製造機・加工機の精度上の制約などが部品によって異なるからだ。すなわち、それぞれの部品には最適な公差がある、ということだ。 だから、すべての工業製品にも、その工業製品が人々に提供可能な性能や機能を保証できる範囲内での公差の 組合せ(=集積公差) が存在する。「寸法下限(min)+締付トルク上限(max)」 の組合せの製品もあれば、その反対の製品もあって当然である。もちろん、確率的・統計的には限りなくゼロに近いものの、「すべて上限品同士の組合わせ」 で製品が成立する可能性もある。同様に、その逆 (=すべて下限品の組合せ) についても可能性がある。 これを模式化すると、次のようになる。 だがしかし、これらはすべて 許容 されうるものであり、所望の性能を十分に 満足 しているものである。もちろん、実用性能にバラツキがあってはお客様 (=消費者) が困るため、過度に性能が上がりすぎていることも下がりすぎていることも無い。そのための ”公差” でもある。 クルマについても然(しか)り。 どのクルマも、ポテンシャル的 には、狙いの性能 (≒本来クルマが持っている性能) を 発揮 できる仕様上にある。よって、使用環境が飛び抜けて劣悪だとか車両状態が飛び抜けて整備不良だとかでは無い限り、クルマのポテンシャルを引き出せないのは、”クルマの個体差” ではなくて、それを操っている ”ドライバー自身の個人差” のせいなのだ。 ドライバーは、クルマの性能が発揮されないのをクルマのせいにする前に、そのことを大いに 自覚する必要 がある。燃費が悪いのは クルマのせいではなく、運転手自身が燃費が悪くなるように運転している からに他ならないのだ(※注8)。 あるいは百歩譲ったとして、もしも同一型式同士のクルマなのに極端に性能が異なるとすれば、それは、適用している機能パーツ 
    (アフターマーケットの社外パーツ) 
    が異なる場合が考えられるだろう。例えば、どノーマル車と、エキマニからマフラーまで排気系一式を換えた触媒レスの車とでは、土俵が違うのでエンジンレスポンスや排気ガス濃度が異なって当然であろう。こういう場合は、「個体差」 
    ではなく 「仕様差」 である。 | (※注5):公差 tolerance. 規定された許容最大値と規定された許容最小値との差。狙いの性能が保証される上限と下限の差、または範囲。 個々の部品には、鋳物であれ加工品であれ設計上の寸法公差があり、また個々の部品の集合体であるAssyやシステムにも、系全体としての組立公差・性能公差がある。 (※注6):図示値 (※注7): 
    [kgf・m]  (※注8):クルマのせいではなく、運転手自身が〜 余談だが、「燃費が悪いのはクルマのせいではなく、運転手自身が燃費が悪くなるように運転しているからに他ならない」 
    という考えをモータースポーツに当てはめて考えると、「サーキットでタイムが出ないのはクルマのせいではなく、運転手自身がタイムが出ないように運転して(しまって)いるからに他ならない」 
    となる。 | 
| 4.独り言 | |
| こうして 「個体差」 
    という言葉の持つ意味を理解した上で、再度、冒頭で示した 
    <例1> 〜 <例3> について考えてみよう。 これらは 「個体差」 という言葉を誤って使っている例だということが、すぐに解るだろう。まぁそれ以前に、回答が質問に対する回答になっていない、という致命的な欠陥もある(※注9) のだが・・・。アイタタタ(笑)。 ♪バ〜カ野郎め、コ〜ノやろうめ、 ♪バ〜カ野郎め、コ〜ノやろうめ、 ♪バ〜カ野郎め、コ〜ノやろうめ、 | (※注9):致命的な欠陥 回答が質問に対する回答になっていない、という点もさることながら、ブースト(圧力)の単位を省略して 「キロ」 と言うのもどうかと思うがね。 ヤツらが 「キロ」 を [kg/cm2] の省略語として使用しているとは、とても思えない。 ヤツらは 車速 [km/h] を言うときだって 「キロ」、燃費 [km/L] を言うときだって 「キロ」、距離 [km] を言うときだって 「キロ」、そして重さ [kg] を言うときだって 「キロ」、どれもこれもみんな 「キロ」 だ。 個人的には、「(ブーストが)出る/出ない」 という表現を用いるのも、どうかと思うが。 | 
| 5.まとめ | |
| お前らが言うところの 
    「(クルマの)個体差」 は、より正確には 
    「(ドライバーの)個人差」 だぞ、コラ! もしくは、「(クルマの)仕様差」 だ。 ( → スバヲタ (※注10) は何でもノーマル部品を社外品に交換したがるので、 元は同じ車種・グレードなのに、現実に装着されている機能パーツが全然 異なり、結果として比較できる土俵にはない(のに、比較したがる)・・・、 なんてことがザラにあるからな、オイ!) | (※注10):スバヲタ スバル車の 「オタク」。中途半端に理論武装している人々を指すことが多い。 その一方、まじめなファンは 「スバリスト」 と呼ばれ、両者は区別されるようである。 | 
| 6.あとがき | |
| ここまで読んでもまだ 
    「スバル車は個体差が激しい」 と 言い張る 
    人々は、群馬県太田市の富士重工業(株) 矢島製作所の製造ライン 
    をぜひ見学してくれ。エンジンやミッションに興味があるヤツだったら、大泉工場 
    でもいいぞ。いやいや、いっそのこと 自ら期間工として雇われて、製造ラインで直接働いて 
    みてくれ。 その上で、エンジン部品自動選択組付によるバルブクリアランスが上下限で一体どれほどバラつくのか、ミッションのハイポイドギヤの歯当たりがトー側とヒール側で一体どれほどバラつくのか、あるいはカチオン電着塗装の溶液濃度が春夏秋冬の1年を通じてどれくらいバラつくのか、作業手順書に則った艤装工程が作業者の年齢や経験によってどれくらいバラつくのか。 そして それらのバラツキは結局、最初から認められた ”公差” の範囲内に収まっているのかどうか。 さらにここが一番肝心であるが、 もしも余力があれば、マツダや鈴木など 
    他メーカー の製造ラインにも同様に潜り込んで 製造バラツキと公差、そして最終製品状態での 
    ”個体差” を把握 
    してもらいたいものである。それぞれのメーカー間で、実際の製品のバラツキ具合を確認し比較してみない限りは、何人(なんびと)も 
    「富士重工業(のみ)が個体差が激しい。」 とは 言えない 
    はずだ。 | |
| 7.結論(再掲) | |
| ということで、再度、結論を述べておこう。 「スバル車は個体差が激しい」 
    のではなく、 ※当サイトは独自の視点から 
    「都市伝説 撲滅運動」 を推進してまいります。 | |
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