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医薬分業と院内処方

2004.03.04. 掲載
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目次
  1.はじめに
  2.医薬分業とは
  3.わが国の医薬分業の現状
  4.医薬分業の利点と欠点
    1)患者にとっての利点
    2)患者にとっての欠点
    3)医院にとっての利点
    4)医院にとっての欠点
  5.当院が院内処方を続けてきた理由
  6.院内処方活用のための工夫
    1)カルテの工夫
    2)薬剤管理の工夫
    3)コンピュータの活用
    4)薬剤説明の工夫
    5)薬剤購入の工夫
  7.将来の展望とまとめ


1.はじめに

73年9月に開院して以来、一貫して院内処方を続け、30年が過ぎた。最近では院内処方から院外処方に切り替える医療機関が急増している。時代は医薬分業へと変わりつつあるようだ。私はあと1年余りで引退をして、息子に引き継ぐ予定なので、それまでは院内処方を続けるが、この際「医薬分業と院内処方」について自分なりのまとめをしておく必要があると考えた。


2.医薬分業とは

「医薬分業」とは、医師の診察を受けたあと、処方せんが交付され、保険調剤薬局で薬剤師が調剤し、処方箋と引換えに薬が渡されるシステムを言う。


3.わが国の医薬分業の現状

日本薬剤師会のホームページのデータによると、「医薬分業」率の全国平均は、87年で10%であったのが、95年に20%、98年に30%、00年に40%を越え、03年の8月には50.2%となり、50%の大台を突破した。ここ数年で「医薬分業」は急速に普及してきている。

しかし、都道府県別ではバラツキが大きく、03年8月のデータでは、秋田の70% が最高、福井の17%が最低で、大都市でも東京の62%、神奈川の67%に対して、京都は28%、大阪は35%である。


4.医薬分業の利点と欠点

「医薬分業」について、一般に言われている利点と欠点をまとめてみた。ただし、これは病院と理想的な保険調剤薬局の場合に当てはまるとしても、診療所や普通の保険調剤薬局には当てはまらないこともあり、それに対する私見をつけ加えておく。


1)患者にとっての利点

1.処方内容のオープン化(情報公開)

処方内容のオープン化は処方箋に薬剤名、単位、服用方法が記載されているので明白である。

2.薬の充分な説明・服薬指導が受けられる

薬剤師は、処方された薬の名前、形や色、用法・用量、効能・効果、副作用のほか、食事、飲物を取る上での注意、保管や服用上特に留意すべき事項などを説明する義務がある。医院などのように診療した医師が薬の説明をするのに比べて、薬剤師が薬の説明を行う場合は、説明の質と量が向上する可能性はある。

しかし、だからと言って、薬の充分な説明・服薬指導ができるとは限らない。それは薬剤師個人の資質、知識、判断力が大いに関係しているだけでなく、勤務している薬局の経営方針や規模、設備にも左右されるからである。

3.薬の安全性向上

a.副作用防止
副作用の起きる危険性や頻度、その兆候などを説明することによって、副作用の発現を早期に発見したり、発生頻度を下げる可能性がある。

しかし、副作用かどうか分からないものまでも副作用と思わせてしまったり、副作用ではないものを副作用と自己暗示的に思い込ませてしまう可能性も、説明の仕方によってはあり得る。

また、副作用の防止に役立つのは、1)かかりつけ薬局があり、2)そこで個人の薬歴が完全に作られていて、3)しかもそのデータが容易に参照ができて、4)それを使いこなす薬剤師が居るという条件が必須であるが、それは頭で考えるほど簡単なことではない。その上、「かかりつけ医」を決めることに抵抗のある人がいるように、「かかりつけ薬局」を決めることに抵抗のある人もいるかもしれないのだ。

b.重複投薬の危険防止
薬の説明を専門とする薬剤師がいることで、説明の質と量が増える結果、重複投与を見つけやすくなる可能性がある。しかし、上記の4条件が満たされなければ、重複投薬を見落とす可能性も充分にある。

c.調剤ミスの減少
薬を取り扱う専門家である薬剤師が調剤に専従する方が、調剤ミスをする可能性は低くなることは充分考えられる。

しかし、大病院の場合は別として、一般開業医で処方される薬剤の調剤は、複雑なものは少なく、調剤ミスは調剤する個人の資質によるところが大きいほか、調剤ミスを防ぐ対策の有無も関係するので、院内調剤に比べて院外調剤の調剤ミスが極端に少ないとは考え難い。

d.処方ミスの減少
医師の処方ミスはあってはならないが、人間のすることだから、それを無くすことは不可能であり、それをできるだけ減らし、被害を最小限にすることが肝要である。そのために、医師の処方を薬剤師がダブルチェックすることは有用だと考えられる。

しかし、一般開業医での処方は簡単なものが大部分である上に、調剤する人、会計計算をする人のチェックは受けるので、単純ミスはその段階で発見されることが多い。ここでも、院内処方に比べて院外処方の方が処方ミスが極端に少ないとは考え難い。

4.調剤待ち時間の減少

これは、病院の院内薬局の場合であって、一般開業医では調剤の待ち時間が長い場合は少ないであろう。特定の医療機関と結びつきの強い薬局 であれば、備蓄すべき薬剤や処方の類型パターンが分かっているので、調剤に要する時間を短くすることはできるだろうが、そうでない場合は調剤時間が大幅に延びる可能性は充分にある。


2)患者にとっての欠点

1.金銭的:2度払いをしなければならない上に、費用が高くなる

「院内処方」と比べて「院外処方」では薬剤関係の費用ががどれほど高くなるかを試算してみる。薬剤料は保険で決められた薬価で変わらないため、違いは「処方料」「調剤料」「管理料」による。

処方例 内服1:A薬 分3毎食後 30日分 1剤
       内服2:B薬 分2朝夕食後30日分 1剤
       内服3:C薬 分1寝る前 30日分 1剤
       頓服 :D薬       20回分 1剤
       外用 :E薬            1剤

慢性疾患でよく行われる上記の処方の場合、薬剤料以外の薬剤関係費用は、「院内処方」で67点、「院外処方」では421点となり、その差は354点になる。1点は10円と換算されるので、「院外処方」では3540円医療費は高くなり、3割負担の患者では1060円の負担増となる。

処方例 内服1:F薬 分3毎食後 3日分 1剤
       内服2:G薬 分2朝夕食後3日分 1剤
       頓服 :H薬       3回分 1剤
       外用 :I薬           1剤

急性疾患で上記のような3日分の投薬を受ける場合にも、「院外処方」では1740円医療費が高くなり、3割負担の患者では520円の負担増となる。

慢性疾患と急性疾患に分けて、「院外処方」「院内処方」の違いによる医療費と患者負担額の違いについて、結論だけを書いたが、その<算出方法>については次にまとめておいた。

--------------------------------------------------------------------------------
<算出方法>
計算は平成14年4月改定の診療報酬点数表による。

【院内で調剤した場合の薬剤料以外の費用】(急性疾患、慢性疾患、投薬日数に無関係)
        外来処方料    42点
        内服・頓服調剤料  9点
        外用調剤料     6点
        薬剤情報提供料  10点

        (合計)     67点

【院外処方にした場合の薬剤料以外の費用】(慢性疾患30日分投薬の場合)
(医院側)   処方箋料     69点
(薬局側)
     調剤技術料
        調剤基本料    49点 調剤基本料*
        調剤料(内服) 210点(=80点×3剤)
           (外用)  10点 
           (頓服)  21点
     薬剤服用歴管理指導料
        普通指導料    17点
        特別指導加算   30点
     薬剤情報提供料     15点

        (合計)    421点

*:処方箋の受付回数が月4000回以下、同じ医療機関の処方箋が70%以下の調剤薬局の場合

院内処方と院外処方の差額    421点−67点=354点
                  全額負担の場合3540円
                  3割負担の場合1060円


【院外処方にした場合の薬剤料以外の費用】(急性疾患3日分投薬の場合)
(医院側)   処方箋料     69点
(薬局側)
     調剤技術料
        調剤基本料    49点 調剤基本料*
        調剤料(内服)  30点(=15点×2)
           (外用)  10点 
           (頓服)  21点
     薬剤服用歴管理指導料
        普通指導料    17点(前は22点)
        特別指導加算   30点(前は20点)
     薬剤情報提供料     15点

        (合計)    241点

*:処方箋の受付回数が月4000回以下、同じ医療機関の処方箋が70%以下の調剤薬局の場合

★院内処方と院外処方の差額   241点−67点=174点
                 全額負担の場合1740円
                 3割負担の場合 520円
--------------------------------------------------------------------------------

2.時間的:医療機関と薬局へ合わせて2回行かなければならない

大病院の院内薬局では患者数が多いため、薬を受け取るまでの待ち時間が長いが、一般の診療所では、調剤薬局よりも待ち時間が短い場合が多いと思われる。当院の場合、診療を終えた患者が薬を受け取り、会計計算を済ますまでに要する時間は平均数分である。

3.物理的:医療機関と薬局の2箇所に行かなければならない

たまたま医療機関と調剤薬局が近くにあれば、それほど負担にはならないかも分からないが、遠く離れている場所にあれば、病人が2箇所を巡ることは苦痛であろう。

4.薬の変更に手間取る>

医院の窓口では、患者の希望で薬剤の追加、変更、取消をしなければならないケースがかなりあるが、その場合の変更は「院内処方」であれば比較的簡単に行える。しかし、「院外処方」の場合はかなり手間取るのは当然だろう。

5.処方された薬が調剤薬局に無い場合、取り寄せに時間がかかる

「院内処方」であれば、処方薬が院内薬局にないケースは稀であるが、「院外処方」では高頻度で発生する可能性があり、無在庫薬剤の調達に時間がかかる。


3)医院にとっての利点

1.薬剤の説明が簡単で済む

医院では、多くの場合医師が薬剤の説明をするが、その時間を省くことができる

2.調剤ミスが起こらない

調剤ミスはあってはならないが、それでも起こり得る。調剤をしなければ、その心配がない。

3.処方医薬品の選択が自由で、在庫のない薬、高価な薬も処方し易い

私は、自分が処方したい薬剤は購入する主義だが、稀にしか使わない薬剤がデッド・ストックとなり、期限切れで廃棄処分することも稀ではない。それを避けるために、使用頻度の低く高価な薬剤は使わない方針を採らざるを得ない医療機関もあるだろう。そのような場合、処方箋に書くだけで処方できるのはありがたい。

4.在庫管理が不要になる

薬剤を、間違えず、迅速に取り出せるようにするのは、最も重要なことである。また、あるべき薬剤を在庫無しにしないことや不良在庫(デッド・ストック)を作らないことも、それに次いで大切であり、そのためにいろいろ工夫をしたり絶えざる努力が必要となる。また、会計年度末に行う薬剤の棚卸しも、多くの人と時間を必要とする。これらの仕事から解放されることは、精神的、肉体的、経済的に大きなメリットがある。

5.薬剤購入事務量が激減する

薬品購入のために薬品問屋に入札を求め、購入価格を決める作業や、無在庫を避け、不良在庫を少なくするように適正量の薬剤を問屋に発注するのは、いずれもかなり面倒な仕事である。これらから解放されることも大変ありがたい。

6.薬剤購入資金が激減する

在庫管理をどれほど厳しく行っても、1ヶ月分の薬剤使用量以下に抑えることは不可能に近い。そこで、1ヶ月分の薬剤購入費のほかに最低1ヶ月分の在庫薬剤費用の合わせて最低2ヶ月分の薬剤購入資金が毎月必要となる。これは医療原価の中で非常に大きな数字となるが、「院内処方」を止めれば、これは零に近くなる。

7.人件費が軽減する

調剤を行う者、在庫管理をする者、薬剤購入に係わる者が不要となれば、事務員の数を減らし、人件費を軽減させることができる。

8.薬剤の院内在庫がほとんど無くなるので、利用可能スペースが増大する

院内処方を止めれば、薬剤保管のスペースが不要となり、そこを他の目的で利用することができる。

9.処方箋料が増大する

処方料は「院内処方」の場合は42点であるが、「院外処方」では69点になり、その差は27点(270円)である。96年までは、「院外処方」「院内処方」の格差は50点(500円)が続き、それ以後も02年4月の改定以前は格差が44点(440円)も付けられていた。1回の処方で44点(440円)もの差を付け、医薬分業へシフトするように利益誘導を厚生労働省は図ってきたのだった。


4)医院にとっての欠点

1.手許に現物を持っていない

手許に薬剤の現物を持っていないため、剤形の大きさ、形、色、味、などが分かり難いし、水薬などの配合による変色、混濁なども知ることが難しい。

2.薬価差益がなくなる

決められた薬価と実際の購入価格との差を薬価差と呼ぶ。この差益のため、薬を使えば使うだけ儲かるので、院内処方の医療機関は薬を大量に処方して「薬漬け」にし、これがが医療費高騰の元凶であるとマスコミは常に書きたててきた。

しかし、度重なる薬価ダウンで、先発品の薬剤の場合は薬価差は僅少である。その上、薬剤の購入には消費税がかかり、医療に使う場合は消費税を含めないため、最低限消費税分の差益がなければ、逆ザヤになってしまうが、そのような薬剤もかなりある。だから、製造特許期限切れの後発薬品(最近はジェネリックと呼ばれているが、俗にゾロ品と呼ばれてきた)を使わない場合は、薬価差益は問題とならないほどわずかである。


5.当院が院内処方を続けてきた理由


1)開業当初は院内処方が常態であり、医薬分業は特殊なケースだった

開業してしばらくは「院内処方」が常態で、「院外処方」による医薬分業はほとんど行われていなかった。そのため、「院内処方」に慣れ、また「院内処方」に工夫を凝らしてきたので、「院外処方」に切り替える気持になれなかった。

2)院内処方に工夫を凝らしてきた

「院内処方」による患者のデメリットをできるだけ減らし、メリットを増やすように対策を講じ、努力を重ねてきた。私は解決すべき問題があれば、与えられた条件の中で工夫して、できるレベルの解決を図るのが好きな性分なので、これは楽しい作業だった。その結果として、開業医レベルではほぼ満足できるものができたと思っている。その具体的な工夫や対策については、次項「6.院内処方活用のための工夫」のところにまとめておく。

3)院外処方は患者の負担が大きく、患者のメリットは小さい

「院内処方」を続けてきた最大の理由は、患者負担が大きいのに、それに見合う患者のメリットが少ないことである。一般開業医では、大病院のような難しい病気を診療することは稀で、処方する薬剤も簡単なものが多く、難しい調剤や副作用の強い薬を処方する場合も少ない。だから、調剤薬局で薬剤師から薬をもらう「医薬分業」というシステムのメリットがいくらかはあるとしても、それに対して支払う代価が大きすぎると思ってきた。

開業医の場合、「院内処方」を止めて院外処方に切り換え、医薬分業を行うと、経済的、時間的、心理的にメリットが大きく、デメリットはわずかである、しかし、この患者負担が大きすぎることを無視することはできなかった。


6.院内処方活用のための工夫

開業以来、「院内処方」による患者のデメリットをできるだけ減らし、メリットを増やすように対策を講じ、努力を重ねてきた。それを、1)カルテの工夫、2)薬剤管理の工夫、3)コンピュータの活用、4)薬剤説明の工夫、5)薬剤購入の工夫に分けて書いていくことにする。


1)カルテの工夫

「院外処方」の場合は処方箋に、誰が読んでも間違わないように処方を書く必要がある。しかし、開業医の「院内処方」の場合は内規を決めておけば、その一部を省略したり、略号や略語を活用することによって、早く、分かりやすく、間違いが少なく、処方をカルテに記載することができる。

a.省略
 剤形の省略
   錠、カプセル、管、瓶、バイアルなどを省略。ただし、同じ薬品名で剤形の違うものを使っている場合は、錠、カプセル、末の代わりに、T、C、Gを付ける
(例:ビオフェルミンR錠 ビオR−T、ビオフェルミンR末 ビオR−G)

 規格単位の省略
   200mg、0.1%などを省略。ただし、同じ薬品名で規格単位が2種類以上ある場合は、規格単位を付ける
(例:バファリン81mg、バファリン300mg)

 分量単位の省略
     g、ml、錠、カプセル、管、瓶、バイアルなどを省略

   散在の分量数量は散剤にかぎり
最低小数点1位まで記入(3.0 1.5 など)

b.処方用略語
 頭書の略号
 Rx、Rpの代わりに、より細分した以下の頭書を使い、それぞれに通し番号をつける。

  内 :内用薬
 (屯):頓服薬
  外 :外用薬
  M :筋肉注射、皮下注射
  V :静脈注射
  関 :関節腔内注射
  点 :点滴注射

 用法の略号

  1日1回 朝食後    -----------------/
               ア
       朝食前    /-----------------
               ア
       夕食後    -----------------/
               夕
       眠る前    /-----------------
               ね
  1日2回 朝昼食後   -----------------/
               ア ヒ
       朝昼食前   /-----------------
               ア ヒ
       朝夕食後   -----------------/
               ア 夕
       朝夕食前   /-----------------
               ア 夕
  1日3回 毎食後    -----------------/

       毎食前    /-----------------

       毎食間    --------/---------

  1日4回 毎食後と眠る前-----------//-----
                     ね   
        

 用量の略号
  数字を○で囲む
  3日分[内服]:(3)
  3回分[頓服]:(3)
   ただし、外用薬は投与総量を書くので○で囲まない

 同一内容の略号
  前回診療時と全く同じ診療内容:DD
  指定日と全く同じ診療内容:D月/日
  調剤の薬品名が同一の場合の代用:do
   例えば、内1 A薬、B薬、C薬を、内1do で代用するが、
        用法、用量までは代用しない。
   doはラテン語ditto「同じ」の略。

c.薬剤略名
略名のルール
1.原則として前3字をカタカナで書く
   例:リンデロン → リンデ 2.特別な字は一つにまとめる
   例:トラン → T
       トランコロン  → Tコロ
       トランサミン  → Tサミ
       トランコパール → Tコパ 3.語尾にアルファベットが付くものは、前2字に
 アルファベットを加える
   例:アリナミンF  → アリF
     インテバンSP → インSP 4.例外として
 同じ薬剤で単位数が違う場合は単位数字を付ける
     例:バファリン81mg → バファリン81
       バファリン300mg → バファリン300

 製品の記号が分かりやすいものは流用する。
   ケフレックス→KX、ペレックス顆粒→PG

 紛らわしい略語になる時は、省略をしない
   アルマールとアマリール

5.内用薬の添字
 −S:シロップ
    例:ペリア−S=ペリアクチンシロップ  −DS:ドライシロップ、シロップ用末
    例:エリス−DS=エリスロシンドライシロップ  −C:小児用
    例:フスタ−C=小児用フスタゾール  −G:錠剤、カプセルと区別するときの散剤
    例:シナー−G=シナール顆粒  −T:同名の散剤を繁用する場合それと区別するときの錠剤
    例:ビオR−T=ビオフェルミンR錠剤

6.外用薬の添字
 −E:液剤
    例:インテバン外用液=インテ E  −K:クリーム
    例:インテバンクリーム=インテ K  −N:軟膏
    例:ソルコセリル軟膏=ソルコ N  −T:点鼻、点眼、点耳薬
    例:コールタイジン点鼻液=コール T  −Z:座薬
    例:アルピニー座薬=アルピ Z

d.略式処方記載法と正式処方記載法

<略式処方記載法>       <正式処方記載法>

内1.クラビ  3              Rx1.クラビット錠100mg 3錠
   トクSP 3                  トクレススパンスールカプセル30mg 3カプセル
   PG   3.0               ペレックス顆粒 3g
   -------------/ (5)                 1日3回、毎食後、 5日分
 2.テオド100 2             Rx2.テオドール錠100mg 2錠
   -------------/ (5)                 1日2回、朝夕食後、5日分
   ア夕                    

屯1.カロナ   2 (5)    Rx3.カロナール錠200mg 2錠
      熱、頭に                    発熱、頭痛に頓用、 5回分

外1.イソG     30      Rx4.イソジンガーグル 30ml
 2.SPトロ    30      Rx5.SPトローチ   30個

以上を比較すると、略式記載法の方が、簡潔明瞭で、分かり易く、短時間で記載できるし、短時間で読めて、間違う確率が低いことがお分かりいただけると思う。さらに、上に述べたDDやD月/日、doなどを使って「同一内容を略号で記載」する場合には、飛躍的に書きやすく、読みやすく、間違えが起こり難くなる。


2)薬剤管理の工夫

院内処方を成功させるもう一つの大きな要因は、迅速かつ正確に薬剤を取り出せて、在庫切れと不良在庫を少なくする薬剤管理である。開業以来その工夫を積み重ねてきたので、開業医レベルでは満足できるものと思っている。

a.薬剤保管場所
薬剤保管場所は開業以来変わっていない。これは大きく分けて、1)小出し用薬品保管区画(小出しと略す)、2)薬品を1箱づつ収納する棚(薬品棚と略す)、3)それ以外の薬品庫の3箇所からなる。

この薬剤保管場所についての工夫は
1)小出し薬品棚のいずれも10グループに大別して配置し、大きな変動は行わない。
  ただし、そのテリトリーの境界の小移動は行う。

2)使用頻度の高い薬剤を、一番手の届きやすい位置に配置する。

3)小出しにある個々の薬品の保管位置も原則として移動しない。

4)小出しの使用頻度が減った薬剤と使用頻度が増えた薬剤の保管場所を変えることがある。

5)小出しの位置を変えた場合は、その変更を職員全員に徹底して知らせる。

6)小出しには、薬効別カラーラベル、薬剤名、規格、識別情報、主要な効能を付ける。
  カラーラベルについては、b.薬効分類とカラーコントロールで詳述する。

7)小出しには、薬剤と一緒に薬剤説明用シートを複数枚置いておく。
  これについては薬剤情報提供のところで詳述する。

8)小出しには、1ヶ月の概算使用量を、テプラで黄色台紙黒文字で印刷したものを貼っておく。
  これについては、薬剤担当職員が使用状況に応じて変更することが認めている。

9)注意すべき薬剤については、テプラで赤色台紙に黒文字で印刷したテープを貼っておく。

b.薬効分類とカラーコントロール
開業以来、薬剤を9種の薬効別分類と外用薬の合計10グループに分け、それぞれに下記のシンボルカラーを割り当て、カラーコントロールを行ってきた。これは直感的に薬効が分かり、分類がしやすく、薬剤の配置、取り出しが迅速に行えて、間違え難くする効果がある。

  1.神経系薬剤	黄 ●
  2.消炎鎮痛剤 緑 ●
  3.抗アレルギー剤 桃 ●
  4.循環器薬剤 赤 ●
  5.呼吸器薬剤 青 ●
  6.消化器薬剤 茶 ●
  7.栄養剤 橙 ●
  8.抗菌剤 黒 ●
  9.特殊薬 金 ●
 10.外用薬 銀 ●
 20.注射薬 水 ●

神経系が黄色なのはゴッホの絵のイメージ、消炎鎮痛剤が緑なのは外科の手術着、アレルギーがピンクなのは昔のセレスタミンの色、循環器系の赤は血液の色、呼吸器系が青なのは空気、空の色、消化器系が茶色なのはウンチの色、栄養剤が橙色なのは総合ビタミン剤のイメージ、抗菌薬が黒なのは病原菌=悪魔のイメージ、特殊薬は貴重なものだから金のイメージ、外用薬は銀紙包装が多いので銀色、注射薬は水溶液だから水色。このようにして薬効に対応するカラーを決めた。

実際に使ってきたのは直径9mmと15mmの丸いカラーラベルで、同じものが30年以上も前から市販されている。

c.在庫管理
薬剤の在庫管理で大切なことは、診療(処方)に即対応できること、在庫切れを防ぎ、過剰在庫(不良在庫)を少なくすることである。処方に迅速に対応するためには、薬品の適切な配置と標識が重要であるが、それについては、a.薬剤保管場所で詳述した。

在庫切れによる急配(至急配送)を避けるには在庫量を多く持てば良いが、保管場所が増え、必要な薬を見つけ難くなり、不良在庫で期限切れによる廃棄処分が増える。だから、在庫管理の基本は「多すぎず少なすぎず」となる。

これに対して行ってきた工夫は、1)レセプトコンピュータで1ヶ月の各薬剤の使用量を出力し、2)それに基づき各薬剤の下限在庫量を決め、3)これをテプラで黄色台紙に黒文字で印刷し、4)それを小出しの各区分に貼り付けておく。5)在庫がこの量を下回れば発注リストに記入する。6)発注リストを見て帳合の問屋に発注する。7)下限在庫量は季節などで変動することがあり、その微調整を行う。1)から4)までは私が行うが、5)と7)は職員が、6)は妻が行う。

下限在庫量は、30、60、90、100、150、160、200、300、400、500の10ランクに分けている。

現在の方法に到達するまで、いくつか別のやり方を試みた。その最初は「レセコンによる管理」で、1982年から約3年間行った。その方法は、入庫量をレセコンに入力しておくと、レセコンを使って窓口会計をする度に自動的に出庫量が算出され、それぞれの薬剤について下限在庫量を設定しておけば、発注すべき薬剤の数量を問屋毎に1錠単位でリストアップして打ち出してくる。これと前月の出庫量を検討することで極めて正確な在庫管理が可能だった。

入庫量の入力や発注量をプリントアウトするのは簡単な操作だが、この方法の欠点は、1)私がすべて行わなければならないのが面倒であること、2)入庫量の入力を1桁間違えば(案外やってしまうことがある)とんでもない誤りを招くこと、3)レセコンに頼ることで職員が薬剤の在庫管理におろそかになること、4)実際問題としてそれほど厳密な薬剤の在庫管理は必要でないのにも関わらず、そのために費やす私の努力が、それに見合わないほど大きいこと、などの理由で「レセコンによる在庫管理」は取りやめた。

それから暫くは特別な在庫管理をしないでいたが、1990年から「SML法」を思い付き、実行して来た。この方法は簡単かつ有用で、1))在庫量が15〜20%減っただけでなく、2)急配を依頼することが少なくなり、3)職員が積極的に在庫を管理してくれるので、私の負担が皆無に近くなった。

「SML法」は、現在行っている薬剤の在庫管理の元になった方法で、現在の方法と違って1ヶ月の使用量を大雑把に、1)100以下、2)100〜500、3)500〜1000、4)1000以上の4ランクに分けて、それぞれをS、M、L、LLグループと名付け、各薬剤の小出し区画にこの情報もつけた。そして、これに対応する下限在庫量を決め(S<50、M<100、L<300、LL<500)、職員ががチェックして、薬剤の在庫量がこの値より少なくなれば、職員が発注リストに書き出すことにした。

また、この時から、当院の取引がある薬品問屋6社(現在は5社)に対応する薬品メーカー名の一覧表を張り出し、在庫をチェックした職員は薬剤名だけでなく、問屋名まで発注リストに書き出すように決めた。

この薬剤在庫管理法は有効であったが、「多すぎず少なすぎず」の精度をより上げるために行った改良が現在の方法である。まず、下限在庫量を4ランクから10ランクに増やした。さらに、このランク間の変更(例えば、ある薬剤の下限在庫量100から300に変更すること)を職員に任せた。これにより、在庫量は更に10%程度減り、至急配送の依頼もより少なくなった。


3)コンピュータの活用

レセプトコンピュータ(レセコン)やパソコンをフルに活用してきたが、費用対効果比が大き過ぎるものは取りやめたり、はじめから採用しなかった。「レセコンによる在庫管理」は取りやめた一例である。

a.レセコン

1.窓口会計
1974年からレセコンを使い始めた。当時レセコンを使う医療機関は病院を含めてまだ少なかった。使っているところでも、レセプト作成が目的で、外来会計に使うところはわずかだった。しかし、当院では最初から窓口計算にも使用し、レセプト作成と同じ程度に重宝してきた。受付事務職員は3〜7人いたが、全員がレセコンを窓口会計で使えるように私が教育してきた。

入力にキーボードを使わず、タッチパネルとし、これとテンキーだけで全ての窓口会計が行えるようにした。その上で、先に「カルテの工夫」で述べた「略号」「略語」をタッチパネルの各項目に登録し、カルテに書かれた通りに、パネルの項目をタッチし、それに数量、日数(回数)をテンキーで入力すると、自然に計算が行えるようにカスタマイズしておいた。これにより、窓口会計を、迅速かつ正確に行うことができて、患者の待ち時間を短縮させた。

2.薬剤統計
・発注用
レセコンを使って1ヶ月の薬剤使用量を名前順でプリントアウトし、これに基づき、各薬剤の下限在庫量を決定する。その下限在庫量を小出しの各区分に貼り付けておき、この下限在庫量を下回れば、薬品問屋に発注する。 ・棚卸用
当院は医療法人で8月末を会計年度末に決めているので、年度末には棚卸を行う。そのため、在庫する全薬剤のリストアップが必要になるが、レセコンに登録している全薬剤を名前順でプリントアウトして、これに基づき、全薬剤の在庫量のチェックを行い、パソコンの表計算ソフトで集計整理をして棚卸を行っている。 ・入札用
会計年度末に、各薬品問屋に当院使用薬剤のリストを渡し、各薬剤の納入価格を記入してもらい、これによって、次年度からの各問屋から納入してもらうメーカー決定している。この薬剤リストの中で、使用金額が上位50品目については薬剤名の最後に*を付けておく。各メーカーの薬剤の購入先の問屋を決定するに当たって、この*マークを付けた薬剤のみで比較検討しているが、この*マークを付けるために、レセコンを使って「金額順使用薬剤」をプリントアウトしている。

b.パソコン
1985年からパソコンを使い始め、86年から表計算ソフトを使って、棚卸や入札のデータ整理を行い、また使用薬剤のデータベースを構築し、各薬剤の効能、適応、用量、副作用などを診察机上に置いたパソコンで即刻表示できるようにしてきた。表計算ソフトは、スーパーカルク3から始まり、これとロータス1−2−3を併用する期間が続いたが、98年からエクセルを主に使うようになった。

1.棚卸
レセコンの棚卸用のところで述べたが、棚卸の集計整理はパソコンの表計算ソフトを使って行って来た。

2.入札
薬品の入札についても、レセコンの入札用のところで述べたように、集計整理にはパソコンの表計算ソフトを使って来た。98年から各薬品問屋に、エクセルで入力した入札用のデータをフロッピーで渡し、これに納入価を入力してもらって回収し、それを整理分析して、回収2時間後には、各薬品メーカに対応する薬問屋(帳合)を決定してきた。また、同時に各薬剤の対薬価率も即座に算出してすることができた。

3.薬剤データベース
スーパーカルク3の時代から、当院使用薬剤の簡単なデータベースを表計算ソフトで作ってきた。それは以下の項目で構成されている。 1)薬剤名 2)識別用情報 3)規格単位 4)薬剤説明 5)服用注意 6)当院分類 7)分類番号 8)薬効分類 9)一般名 10)薬効 11)注意 12)保険用量 13)保険適応

4.薬剤説明文データベース
「薬剤データベース」の中の内用薬、外用薬360品目について、患者説明に必要な以下の5項目を含んだ「薬剤説明文データベース」を、パソコンのMifesというエディターを使って、テキストファイルで作成している。これに基づいて、「薬剤説明文を短冊シートに印刷」して渡しているが、その項目は、1)薬剤名、2)識別情報、3)規格単位、4)薬剤の説明、5)服用上の注意など、から成っている。

(例)
◆アイトロール:白色錠剤、銀色台紙
 20mg:狭心症治療薬(亜硝酸薬)
  朝夕食後服用 ときに軽い頭痛あり


4)薬剤説明の工夫

1.薬剤説明短冊シートを全薬剤に付ける
96年7月より、当院で使用している内服薬、外用薬約400種類について、短冊シートの薬剤説明文を付けてきた。その項目は上記の1)薬剤名、2)識別情報、3)規格単位、4)薬剤の説明の4種類で、その中でも、4)薬剤の説明は、簡潔で普通の人にわかりやすいように表現を工夫した。

04年3月より、5)服用上の注意の項目を1行追加した。これは「治療薬マニュアル2003」を中心に、「メディクイックブックPART12004 薬の説明」「処方せんチェック虎の巻2003」を参考にして、約350品目について、服薬する上での最低限の注意をまとめたものである。

この「薬剤説明短冊シート」の作成は、パソコンのところで触れたように、まず、EXCELで「薬剤データベース」を作り、それを使って「薬剤説明文データベース」をMIFESで作成する。、これを使って、個々の薬剤につき、短冊シートを1列に12個、それを2列で合計24個をA4用紙印刷する。これをカッターで裁断し、24個の短冊シートにして束ねて各薬剤の側に置く。

調剤の際に、この「薬剤説明短冊シート」をそれぞれの薬剤に付ける。

この360品目の薬剤の内、繁用するほぼ半数の品目については、24個の短冊シートを印刷したA4用紙のままでクリアファイルに保存してある。ここにある薬剤については、「薬剤説明短冊シート」の数が減ってくると、職員がこのA4用紙をクリアファイルから取り出し、コピー機で複写をしたものを裁断して、補充する。

このA4用紙で保存していない薬剤については、職員から「薬剤説明短冊シート」の数が少なくなったことを知らされると、机上のパソコンから、その薬剤の短冊シートをA4用紙に24個印刷して、職員に手渡す。この間作業に要する時間は1分以下で、職員はそれを直接裁断して、補充をする。

この「薬剤説明短冊シート」のメリットは、1)診療する医師の手作りであるため、診療にマッチし、無駄や的外れの説明が少ないこと、2)調剤時に説明文をつける手間と時間が最小限で済むこと、3)補充が容易で、ほとんどが職員のレベルで可能であることである。

2.薬袋の工夫
開業以来、既成の薬袋ではなく、服用方法を分かりやすくした当院オリジナルの薬袋を、内用薬、外用薬、頓服薬について使ってきた。

3.重大な副作用の出やすい薬の説明
副作用の出やすい薬はなるだけ使わないようにしている。過去30年間の診療で命に関係したり、後遺症が残るような重大な副作用をきたした症例は経験していない。副作用の中で、発疹の出る可能性の高い薬を使う場合、そのことを予め充分に説明し、写真をお見せして、もし、発疹が出たら、服用を止め、即刻受診するように指示してきた。

4.副作用が出た場合の説明
副作用にも、軽いものから重篤なものまでいろいろある。例えば高血圧や心不全に非常に有用なACE阻害薬では、女性の20%近くに空咳が出ると言われている。また、安定剤(抗不安薬)や抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬による眠気などは多かれ少なかれ、服用した大部分の人に起きる症状であり、これらを副作用と呼ぶよりは随伴作用とでも呼ぶべきであろう。

このような薬の随伴作用のような軽い副作用と、命に関係するような重篤な副作用との間に、発疹とか下痢嘔吐とか尿閉などの中程度の副作用がある。その中でも頻度が高くて、派手な副作用は薬疹であろう。

薬を服用している人に発疹などの異常な症状が現われれば、まず服用している薬の副作用ではないかと考え、その中で過去に使っていない薬をカルテから調べるとともに、その薬の服薬を止めて経過を見る。もちろん、過去に使って異常がない薬で、今回はじめて異常が出たというケースもあり得るが、その頻度は低い。

この時に参考にしている文献は、じほう社の「日本医薬品集」と医学書院発行今日の診療DVD−ROMに含まれている「治療薬マニュアル」で、DVDの方は、机上のパソコンのモニターに表示して、患者と一緒に、薬の副作用かどうか調べることが多い。

次いで、名刺大の黄色い紙に印刷した「薬物アレルギ―カード」に、「この方は次の薬剤に過敏症状を認めました」として、「薬剤名、症状、出現時期を記載し」、これを2部作って、1部を患者に差し上げ、もう1部を当院で保管し、カルテの表紙に同様の記事を書き込み、薬物アレルギーの記録としている。

開業して10年くらいの間は、この薬疹の発現がかなり高頻度に見られたが、最近では同じ薬でありながら薬疹の頻度は目に見えて少なくなっている。同じ名前の薬でも中身の改良が続けられ、不純物やアレルギー反応を起こし易い添加物の混入が減ってきているのではなかろうか?

ペニシリンやテトラサイクリンによる猛烈な薬疹をポラロイドで撮影した写真のアルバムが手許にあるが、ここ20年近く、そのような薬疹に遭遇する機会が激減している。

5.特殊な服用法の薬
薬の服用は、毎食後3回、朝食後1回などが多いが、1日5回に分けて飲む薬とか、食直前に服用する薬など特殊な飲み方が必要な薬もある。そのような場合は、私が直接、服用法をくわしく説明している。

6.妊娠していることが不明の時期の投薬
風邪症状の患者で、妊娠が不明の時期の場合、原則として、「イソジンガーグル」などの外用薬の投与に留めるが、咳、痰が強い場合、一般の鎮咳剤や去痰剤は催奇性の危険度が低いことを説明して、短期間投与を行っている。発熱については、水分摂取をすすめ、高熱に対しては添付文書、虎ノ門病院の基準で危険が少ないとされている「アセトアミノフェン(カロナール)」を投与している。

胃腸症状で来院の患者の場合、制吐剤として「ナウゼリン」より催奇性の点で安全な「プリンペラン」を投与することにしている。

7.投薬後妊娠していたことが分かった場合の説明
風邪薬を投薬した後で妊娠が分かった場合、投薬した薬剤名を書いて渡し、産婦人科で相談するように指示してきた。しかし、92年に虎ノ門病院産婦人科のスタッフが執筆した「実践 妊娠と薬 1173例の相談事例とその情報 Drugs in Oregnancy 」を購入して以来、これをまず開いて、使った薬の危険度を調べ、催奇性の危険の説明するようになった。

添付文書で妊婦禁忌とされている多くのNSAIDsが、疫学調査、症例報告を重視した虎ノ門病院の基準では、危険度1であること、服用時期も点数化され、これとの積によって総合的な危険度の評価を行う虎ノ門病院方式は、臨床医にとって非常に有用である。

8.実物を見せて説明する
院内処方の有利な点の一つが、薬の実物を見せて説明できることである。また、目の前で噛んで味を調べたり、吸入や点鼻の仕方の実際を説明したり、貼り薬の使い方の実演もできる。

9.Web発信
96年8月15日に野村医院のホームページを開設したが、その15日後に、患者さんのための薬の説明集を掲載した。以来3回改訂版を載せ、今回改訂4版 五十音別、薬効別、剤形別を掲載した。その前書きを、ここに転記しておく。

当院では、約400種類の内用薬と外用薬を使っています。96年7月より患者さんに投薬する薬には以下の説明用シートを付け、説明はできるだけ分かりやすい言葉にするように努めました。市販されている患者さん向けのピルブックなどよりも分かりやすい表現にしたつもりです。(1996.8.30.)

野村医院のホームページを開設した直後に、この薬の説明集を掲載し、97年6月3日に改訂2版、01年3月15日に改訂3版を掲載しました。それから3年が過ぎ、使用薬剤の変動があったほか、新しく「服用上の注意など」の項目を増やしたので、全面改訂を行いました。薬剤の種類は約350種です。(2004.2.29.)


5)薬剤購入の工夫

89年から医療法人に組織変更し、会計年度末が8月なったので、毎年、棚卸し前の7月ないし8月に、薬品問屋に購入薬剤の納入価格の見積りを出してもらっている。それは棚卸しの薬剤価格を決めるのに必要だからであるが、これを利用して、納入価格の競争入札も行い、その結果に基づいて各製薬メーカーに対応する薬問屋を決めてきた。これを業界語では「帳合(ちょうあい)を決める」と呼んでいるようだ。私は価格交渉が苦手なので、84年に青色申告を採用して以来、出入りの薬品卸問屋6社に納入価格を入札してもらうことで価格交渉を省いてきた。

この入札では、薬剤の全品目約350種をチェックするのではなく、「重点50品目」をチェックするという方法で行ってきた。これは、「パレートの法則」に準じたやり方である。これはイタリアの経済学者V.Paretoが唱えた法則で、ABC分析、28の法則、20%80%の法則などとも言われている。要は「全体の2割の項目が成果全体の8割を占めている」という経験則で、「全体の2割の商品群で8割の利益をあげる」とか、「企業の売上の8割は顧客数の2割によりもたらされる」のように応用されている。

約350品目中の50品目は全体の14%でしかないが、使用薬剤全部の費用の約70%を占めている。このように、数少ない重点品目をチェックし管理するということは、時間と労力を省くメリットがあり、それ以上に、大勢の判断を誤らないという重要な効用がある。この上位50品目の決定は、レセコンを使えば極めて簡単に行うことができる。

表計算ソフトで「薬剤の見積りファイル」を作り、メーカー、品名、薬価、納入包装の4項目はこちらで記入し、納入価の部分を空欄にしておく。これを印刷して各問屋に手渡し、納入価の部分に記入してもらい、それを私がパソコンに打ち込んで、比較検討して帳合を決めてきた。

98年からは表計算ソフトをEXCELに変更し、これを「フロッピーディスク」で各問屋に手渡して、それに納入価格を入力してもらって回収する方法に変更した。これによって時間と労力の大幅な節約ができ、フロッピーを回収した2時間後には、各薬品メーカに対応する薬問屋を決定すること(帳合を決めること)ができるようになった。また、同時に各薬剤の対薬価率も即座に算出することができるようになった。

ここ数年、ほとんどの薬剤の対薬価率が90%を上回っている。薬剤の購入に際しては5%の消費税が加算されるが、診療費には消費税は含めない。その上、薬剤には期限切れなどの不良在庫が出ることが必然であり、その両方を合わせると、実質薬剤差益はほとんどない。しかし、それも致し方ないとは思っている。


7.将来の展望とまとめ

1)明治時代より医薬分業が本来のかたち、院内処方は例外措置

今回「医薬分業」について勉強をしてはじめて知って驚いたことは、明治7年(1874年)に「医制」という法律が制定され、その中で「医師たる者は自ら薬をひさぐことを禁ず」とされ、「二等医師は願いにより、薬舗開業の仮免許を授け調薬を許す」と例外を認めたということだった。つまり、「医薬分業」が本来のかたちであり、「院内処方」は例外措置だったのである。これは、当時欧米、特にドイツ医学に範を求めたことから当然の流れだったと思われる。

しかし、わが国では、昔から医師は薬師(くすし)と言われ、病の診察と薬の調合を兼ねてきたため、「医薬分業」は定着しなかった。法律の例外規定が最初から続けられ、法律制定から100年過ぎた74年ころになって、ようやく「医薬分業」が進み始めたとは、いかにも日本的であると思う。

2)医薬分業は医師と薬剤師を相互監視させる西洋的発想

西洋では700年前から「医薬分業」であると言われるが、それは西暦1240年、シチリア国王フリードリッヒII世が、「死亡診断書を書く立場にある者はくすりを処方することはできない」としたことに由来するそうだ。その動機が、宮廷医による暗殺防止と税徴収のためだと知ると、こちらは西洋的な発想だと納得がいく。

3)わが国の医薬分業の割合が50%を越えた

明治7年の「医制」制定から100年が経過した74年ころから、わが国で「医薬分業」が行われはじめ、87年が10%、95年に20%、98年に30%、00年に40%を越え、03年の8月には50.2%となり、50%の大台を突破した。ここ数年の「医薬分業」の普及は著しい。

この「医薬分業」普及の一番大きな理由は、厚生省(厚生労働省)の「利益誘導政策」によるものであることを、否定する者はいないだろう。度重なる薬価改訂で、薬価の切り下げが行われ、「薬価差益」がわずかになった時、「院外処方」に対して「院内処方」よりも50点(500円)から39点(390円)の格差があれば、そちらを選ぶ医療機関が続出しても不思議はない。その上、「院外処方」であれば、在庫を持つことも、調剤することも必要ではなく、そのメリットからだけでも、「院外処方」を選ぶ価値があると考えて当然だろう。

02年の診療報酬改訂で、「院外処方」「院内処方」の格差は27点(270円)に下げられたが、医院経営から言えば、まだまだ「院外処方」の方が有利で、このままの格差であれば、「医薬分業」は進んで行くものと思われる。

最初に述べたように、1874年に「医薬分業」が法律で制定されたが、それは行われず、例外措置の「院内処方」が100年以上も続けられてきたことの意味は大きいと思う。敗戦後、生活の欧米化は急速に進み、医療の面でもそれは例外ではなかった。しかし、医師は薬師(くすし)と言われ、診察と薬の調合を兼ねてきたわが国の伝統は「医薬分業」になじまず、「院内処方」が続けられてきたのである。

4)医薬分業は医療機関にメリットが大きく、患者にはデメリットが大きい

ここ10年ばかりの間で急速に「医薬分業」が普及してきたのは、患者側からのニーズによるものではなく、専ら、医療機関側の経営上の利点からであった。それは「薬価差益」の減少と厚生省(厚労省)の「医薬分業誘導政策」が合致した結果である。

さきに、「4.医薬分業の利点と欠点」のところで、詳しく述べたように、「医薬分業」のメリットは医療機関側に大きいが、患者側にはメリットは少なく、デメリットは大きい。特に、一般開業医の場合、大病院のような難しい病気を診療することは稀で、処方する薬剤も簡単なものが多く、難しい調剤や副作用の強い薬を処方するケースは少ない。だから、患者にとって「医薬分業」のメリットは少なく、二度手間、時間がかかる、費用が増すというデメリットの方がはるかに大きい。

私個人の経験から言えば、内科診療所で今日まで30年6ヶ月間診療を行ってきたが、その間に医療事故は一度も経験していないし、薬剤の副作用としても、薬物性肝機能障害で入院した症例が4〜5例あるばかりで、それも後遺症の残るような重篤なものは一例もなく、その他は薬疹のような薬物アレルギ―がほとんどで、それも最近は少なく、年に数例経験する程度である。

一方、当診療所の場合、診察を終わった患者が、処方された薬を受け取り、会計を終了するまでに要する時間は平均して数分以内である。

5)院内処方料は少なくとも院外処方せん料と同じにする必要がある

開業医の場合、「院内処方」を止めて「院外処方」に切り換え、「医薬分業」を行うと、経済的、時間的、心理的にメリットが大きく、デメリットはわずかである。新規開業の医療機関や既に「医薬分業」に変更した医療機関はもちろん、「院内処方」の医療機関からも「医薬分業」に転換するところが続出するであろう。それも致し方ないことかもしれない。

しかし、中には患者の大きなデメリットを無視できず、「院内処方」を続ける医療機関もあるだろう。「薬価差益」がほとんどない現状でも、そのような医療機関の「院内処方料」「院外処方料」よりも低く決められていることは不条理である。まさか「分業なくして改革なし」などと愚かなことを考えているのではあるまい。大切なのは、患者のメリット、デメリットであり、医療機関のメリット、デメリットはその次の問題である。

「薬漬け」ということばはマスコミが作ったもので、実際と異なっている場合が多いと思っているが、それを防ぐつもりであれば、「薬価差益」が最低限になるように、薬価を大幅に下げれば解決できる問題である。それをすることができないところに、厚生労働省の弱みがあると思うのは下衆の勘ぐりだろうか?

6)院内処方の良さを見直すべき時ではないか?

「医薬分業」を採用する医療機関の割合が50%を越えた今、法令で定められたこの「医薬分業」が100年以上に亘って行われず、法令の例外措置である「院内処方」が続いてきたという歴史的事実を考えてみる必要がある。

欧米では7〜800年前から「医薬分業」が行われ、「院内処方」なるものを経験していない。その欧米の医療システムを、無批判に受け入れ、それを良しとする考えは余りにも乱暴であろう。 わが国では医師は伝統的に「院内処方」を行ってきた。小規模の診療所では、「院内処方」の方が患者のニーズに合っている割合がはるかに多いと考えられる。もし、欧米の患者が、わが国の「院内処方」を知り、これを体験した場合、こちらを選ぶ場合もかなりあるに違いない。

「医薬分業」の普及は、厚生省の「利益誘導政策」によってもたらされたものであり、それが続くかぎり、この流れは変わらないであろう。しかし、患者のニーズに合い、医療費の節減に役立つ、日本伝統の「院内処方」を育み、発展させ、欧米の人たちにも広めていくことことは極めて価値あることではなかろうか? そのためには「医薬分業」への「利益誘導政策」を止め、「院内処方」にも対等の配慮をはらう必要がある。

患者にとって「医薬分業」が望ましい大病院もあれば、「院内処方」が望ましい小規模診療所もあるだろう。患者のニーズによって、「院外処方」「院内処方」のどちらを選んでも、患者の負担に大きな違いのない医療システムこそが理想ではなかろうか?


<2004.3.4.>

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