沖縄の新グランドデザインと国際都市形成ビジョン
(国際都市形成整備構想調査2概要書)

沖縄県企画開発部、(財)都市経済研究所 94.3

【1】国際環境変化の中の沖縄…
アジア内海沿岸諸国のnode(結節点)

(1)豊かな国際交流の歴史
 かつて琉球王国時代にアジアの重要な貿易拠点として、東南・東アジア諸国と活発な交流を行っていたことから始まり、沖縄はわが国の中で最も豊富かつ長期の国際交流の歴史をもつ地域である。

(2)急成長遂げる近隣アジア諸国
 現在、アジア地域においては、華南経済圏をはじめとして、隣接する国・地域がボーダーを超えて相互の経済交流を深め、活力ある新たな経済圏が生み出されている。
 今後、発展著しいこの地域は、世界の「成長センター」として、21世紀世界経済をリードする役割を果たすと考えられる。
*沖縄は、日本、中国、韓国を中心とする東アジアの国々とフィリピン、タイ、マレーシア等の東南アジア諸国とを結ぶ’node’(結節点)に位置している。
 近年の東南アジア・東アジア地域の経済発展と交流の活発化は、沖縄にとって大きなチャンスである。
 今後わが国と近隣アジア諸国との国際交流を深める上で、アジア内海(日本海、東シナ海、南シナ海)に展開する沿岸諸国相互を結ぶ「国際交流拠点」として、豊かな国際交流の歴史をもつ沖縄に期待される役割と可能性は大きい。*

 

【2】わが国における沖縄の位置…

アジアと日本を結ぶ”南の交流拠点”

(1)沖縄の特性:最も親アジア的な国際交流地域
1:地域的特性

・わが国と東南アジア諸国の接点(アジアにおける結節点)
・東南アジア地域に共通する豊かな熱帯・亜熱帯・海洋性環境
・サンゴ礁やマングローブ等の貴重な自然・生態系
・日本一の長寿地域
・亜熱帯特性を活用した「農」や「食」に対するソフト
・国際衛星放送受信に対する立地的優位性 etc.

2:歴史的特性

・独立国家「琉球王国」としての歴史
・平和・友好を基調とするアジア諸国との交易の歴史
・多くの海外移民と中南米・ハワイ等の諸外国との人的交流
・戦争体験(唯一の地上戦の地)
・米国統治
・米国留学経験者等、国際的人材の蓄積 etc.

3:県民性

・寛容さ、おおらかさ
・相互扶助と共生の思想
・異文化・外国人に対する親和性、許容性
・「海外雄飛」の精神
・優れた語学的センス
・貿易センス
・強い平和志向
・歴史経験に育まれた国際感覚、バランス感覚 etc.

(2)わが国の課題:アジアの安定と発展に向けた平和的貢献
 戦後、わが国は国際自由貿易体制の枠組みの中で著しい経済成長を遂げ、アジア唯一の経済先進国として繁栄を享受してきた。東西冷戦構造が崩壊した今日、先進諸国と開発途上国との間のいわゆる「南北格差」の解消は国際社会の最重要課題であり、開発途上国との協力・協調を基調とする「アジアの安定と発展に向けた平和的貢献」は、わが国にとって必須の課題である。
*今日、アジア太平洋地域の平和と発展に向けた近隣諸国との連携ならびに国際交流拠点の形成は、わが国にとって極めて重要な課題である。しかし、日本がアジアに残した負の歴史的遺産や相互理解の不足に起因するさまざまな摩擦は、アジア諸国との成熟した信頼関係の構築を困難にしている。
 かつて、海洋交易国家としてアジア諸国との平和的交流を重ね、共生の歴史を歩んだ沖縄は、わが国において最も「親アジア的」な素養を備えた地域であり、今後は東南・東アジア諸国と日本を結ぶ「南の交流拠点」としての発展が期待される。*

 

【3】交流圏・交流軸の設定…
亜熱帯交流圏−東アジア経済圏交流−環太平洋交流圏を結ぶ「アジア太平洋交流軸」の拠点へ

 沖縄を中心とする交流圏域としては、歴史的に文化交流が展開された「亜熱帯文化交流圏」、経済成長著しいNIEsや、華南経済圏を含む「東アジア経済交流圏」があり、さらに東南・東アジア諸国からオセアニア。米国に至る「環太平洋交流圏」を加えた3つの交流圏域が設定できる。
 沖縄は、海と情報を媒介(メディア)としてこれらの圏域を結ぶ「アジア太平洋交流軸」の交流拠点に位置づけられる。

 

【4】沖縄に期待される役割…アジアの国々の多面的交流の”掛け橋”として

 琉球王国時代、沖縄はアジアで最も活力ある海洋貿易国家であった。「平和」と「友好」の旗を高く掲げ、遠くマラッカまで出航し、近隣諸国と友好的関係を築き上げた「南海の王国」琉球。首里城正殿に掛着された「万国津梁の鐘」には舟しゅうを以て万国の津梁と為し、すなわち、「舟を用いて世界の”掛け橋”の役割を果たす」との意が刻まれている。
 いま、沖縄に求められているのは、かつての琉球王国がそうであったように、国際交流を通じて「アジアの国々の多面的交流の”掛け橋”」となり、アジアの平和と発展に寄与することである。
 その実現にあたっては、沖縄本島を中心とする南西諸島が、亜熱帯文化交流圏/東アジア経済交流圏/環太平洋交流圏を結びつける「アジア太平洋交流軸」の拠点として位置づけられ、わが国においては「南の地域連携軸」として整備推進を図ることが課題となる。

(1)国際貢献への3つの視点:
「経済文化交流」「平和外交」「国際技術協力」

(2)沖縄のめざすべき方向性:
「アジアの掛け橋(リエゾン機能)」を担う国際交流拠点(国際都市)の形成
 アジアの国々の多面的交流の「掛け橋」として沖縄に期待される役割は、「経済文化交流」「平和外交」「国際技術協力」の3つの視点に立脚したアジア地域への積極的貢献である。
 国際貢献を基本方針とする交流推進にあたっては、その基盤となる「国際都市」の形成、沖縄の有する独自の可能性を発揮し得る政策的誘導が課題となる。

 

【5】沖縄の国際都市像とその基本方針
 …沖縄独自の資源を活かした活力と魅力あふれる、質の高い国際都市へ

 国際都市形成にあたっては、沖縄の地域・文化的特性を最大限に尊重し、「沖縄型クオリティ・オブ・ライフ」の実現を図ることが課題である。

(1)国際都市像の基本コンセプト
・沖縄のもつ歴史的蓄積、地理的特性等を戦略的資源と捉え、かつ沖縄型ライフスタイルと価値観を活かしたソフトの構築を行う。
・「南の交流拠点」としての都市基盤を整備し、21世紀に向けて、活力と魅力にあふれる、質の高い国際都市圏の形成をめざす。

(2)国際都市OKINAWA形成へ7つの基本方針
●南北交流の拠点としての「場」の整備と提供
東南・東アジア地域をはじめとする「南の地域」とわが国とを結ぶ’リエゾン’機能を備えた国際交流拠点として、積極的に「場」の提供を図る。
●わが国「南の地域連携軸」の形成
沖縄の位置する南西諸島の一体的発展・連携、従来の境界を超えた「南の地域連携軸」形成を図ると同時に、東南・東アジアにおける「南北交流拠点」に位置づける。
●「環境共生モデル地域」の形成と世界への情報発信
21世紀における地域開発モデルとなるような「環境共生モデル地域」の形成を推進し、その理念と発展について世界に向けた情報発信を行う。
●魅力ある「国際的保養リゾート」の形成
沖縄の豊かな自然環境と文化的魅力を積極的に保全・活用した「国際保養リゾート」の形成を推進し、経済自立化に向けた高付加価値産業の振興を図る。
●拠点地域と基幹的インフラの戦略的整備
「活力ある国際都市」の形成に向け、拠点地域における主要機能の拡充と基幹的都市基盤の戦略的整備を推進する。
●質の高い、潤いに満ちた生活空間の形成
豊かな自然環境や文化遺産等の保全とともに、地域の人々が住み・憩い・楽しむ、「質の高い、潤に満ちた生活空間」の形成を推進する。
●地域アイデンティティを尊重した新たな行政体制等の確立
沖縄の歴史的・文化的アイデンティティを尊重し、地域の独自性を発揮し得る、実情に即した行政体制の確立を図り、発展的な国際都市形成を推進する。

 

【6】新たな都市圏構造の構築からクオリティ・オブ・ライフの実現へ
 …沖縄型クオリティ・オブ・ライフの実現をめざして

 沖縄本島中南部都市圏は、那覇市と沖縄市を大小2つの核とし、軍用地を取り囲む形で市街地が展開している。
 国際都市の形成にあたっては、必要な機能を軍用地の転用を含む新しい拠点に適宜配備し、
・インフラ整備を通じた相互の有機的連携により、効率的で均衡がとれ、
・環境と共生した新しい都市圏構造の形成から、沖縄型クオリティ・オブ・ライフの実現を図る。
 都市整備においては「国際都市」としての諸機能の拡充を図るとともに、各種交流ネットワークの構築、既存プロジェクトとの整合等を図る。
 国際都市形成の課題:国際都市形成に向けた各種の施策が、地域経済活性化をはじめ、住民のクオリティ・オブ・ライフの実現につながるシステムの構築が求められる。

 

【7】沖縄中南部都市圏国際都市形成構想(案)

・国際交流センターゾーン(学術・文化拠点:中南部国際学園都市、国際交流拠点:宜野湾国際交流都市)
・新都市拠点:那覇国際新都心、嘉手納新国際都市
・国際物流拠点:那覇港国際物流都市
・国際航空拠点:那覇空港国際臨空都市
・国際平和外交拠点:国際平和創造の杜
・国際リゾート拠点:南部海岸国際ヘルスケアリゾート
・新産業開発拠点:トロピカルテクノパークシティ
・国際文化観光拠点:沖縄国際文化観光都市
・亜熱帯農業研究開発拠点:読谷先進農業地域
・文化・芸術拠点:首里国際文化都市

 

【8】国際都市の形成推進に向けて

国際都市形成実現に向けての4つの戦略プロジェクト

(1)平和外交等、国際交流による国際都市形成
迎賓館の建設、各種国際機関の誘致、JICA(国際協力事業団)「沖縄センター」等国際交流期間の拡充により、構想の推進を図る。
(2)学術・研究を通じた国際貢献の推進
学術・研究情報の一元化に向けた組織づくり等を行い、沖縄の地域特性を活用した亜熱帯農業や環境技術等を通じた国際貢献を図る。
(3)東南・東アジア経済・文化交流拠点の形成に向けた基盤整備
交通ネットワークの整備、後背地を含めたインフラの強化、国際物流資本等の充実を通じ、東南・東アジアの経済・文化交流拠点に向けた基盤整備を図る。
(4)国際都市形成を通じた「豊かさ」の実現
美しい自然環境との共生、独自の伝統文化の継承を図り、地域住民が誇りと喜びを持てる「豊かな国際都市」を実現する。

 

【9】実現化への課題

(1)役割分担の明確化と推進体制の重層的構築
・構想を深め、実現化方策を具体化する「頭脳(ブレーン)」の組織化
・相互連携を図るための国、県・市町村、民間の役割分担の明確化
・推進体制の重層形成と積極的な啓発の推進
(2)交流圏及び地域連携軸の具体化とポスト4全総への位置づけ
・3つの交流圏域の構図の具体的検討
・沖縄を中心とする地域連携軸の具体的検討
・4全総後の新しい国土計画への位置づけの明確化
(3)国の支援策の活用と拡充
・各省諸事業制度、制度施策の積極的な活用と組み合わせ
・新しい支援策の検討・具体化
(4)時間軸を決定した具体的な事業展開

 

【付】沖縄国際都市形成マスタープラン(素案)

・国際交通・物流ネットワーク拠点
・国際ビジネス拠点
・国際協力交流拠点
・国際エアロネットワーク拠点
・国際平和交流拠点
・国際ヘルシーリゾート開発拠点
・国際産業技術研究開発拠点
・国際島嶼リゾート開発拠点
・国際亜熱帯農業技術研究開発拠点
・国際サンセットリゾート開発拠点
・国際学術交流拠点
・伊江島・本部半島国際リゾート開発拠点
・国際サンライズリゾートシティ開発拠点
・亜熱帯森林修復技術研究開発拠点
・国際亜熱帯自然環境保全・技術開発交流拠点
・奥間国際リゾート開発拠点