■僕がblogしない理由
時代はblogなんだそうである。
「懐しいねえ。スティーブ・マックイーンがぶよぶよの怪物と戦うやつ」
そうそう、『絶対の危機』ね。チャック・ラッセルが'88年にリメイクして――ってそれはblogじゃなくてblobだってば。blogはweblogの略。
「weblog? 掲示板の過去ログみたいな?」
じゃなくて、直訳すると『ウェブ日誌』。
「そんなの前からあるじゃん」
そうなんだけど、《ASCII24》によると、『米国内の最近の傾向では、単なる日記ではなく、日々の新聞やテレビなどのニュースを紹介し、その記事に対する何らかのコメントを加えたウェブページをblogと称しているケースが多いようだ』ってさ。
「メディア批評日記とか、個人ニュースサイトとかでしょ。それも前からあるじゃん」
そ、それもそうなんだけど、blogの場合はトピック志向で、第三者が簡単にコメントできるようなシステムが基本になってて……。
「ツッコミ可能の日記ね。それも前からあるじゃん」
いや、たしかにそうなんだけど……。というわけで、日本におけるblog認知状況はやや混沌としている。ぼく自身、「hyperdiaryがWeb日記になって、最近はウェブログって呼ぶのが流行なのか。でも"ぶろぐ"って呼び名は語感がどうもね」って程度の認識だったんですが、あらためて関心を持つことになったきっかけは、静岡大学情報学部助教授の(というか古いWeb日記仲間の)赤尾晃一氏から届いたメール。「日本ウェブログ学会設立準備人へのお誘い」って件名で、『今回のblog論争にも触発され,長年“塩漬け”してきた「日本web日記学会」を,「日本ウェブログ学会」としてリニューアルして,今度こそは本気で(笑),設立大会を実施したいと考えています』という文面。
日本web日記学会っていうのは、日記者が集まって4年前に設立準備会(という名のオフ会)を開いたきりの組織なんですが(その会に出るため大森があわててまとめたのが「WWW日記原稿アーカイブ」http://www.ltokyo.com/ohmori/d_article.html)、今回それを、「Web日記のみならず,広くテキスト系・ジャーナル系のサイトをも考察対象として包含しうる組織体として」日本ウェブログ学会に改称する、と。
■blog論争の顛末
名前だけのことならなんでもいいんだけど、むしろ興味を引かれたのはメールにあった「今回のblog論争」という件り。論争があるなら見にいかなきゃってことで、「blog論争」でgoogleして騒動の経緯を確認したところ、要するに上で書いたような「そういうものは昔からあったじゃん」的シニカル派と「『ウェブログ革命』は『ナップスター革命』に匹敵する」(HotWired)的なblog熱狂派の対立が基本軸らしい。
ま、真の意味でまったく新しいものなどこの世に存在しないわけで(サイバーパンク騒動の折り、SF界の長老ジャック・ウィリアムスンが「わしが60年SFを書いてきた経験から言うと、こういうことは昔もあった」と発言したのを思い出す)、要は「今度のお祭りに積極的に参加したいかどうか」の問題という気がしないでもない。
たしかにGreymatterとかMovable Typeとかのblog作成ツールはけっこう便利そうだし、特定トピックに関して検索するときのことを考えると、いろんな話が入り乱れて日付順に並んでいる従来型のWEB日記より、(日付に関係なく)話題別のblog型のほうが閲覧はしやすい。
僕自身、「××について言及のあるサイトへのリンク集」みたいなものを手作業でつくってると(たとえば「ウェブ上で読める『航路』感想リンク」とか)、特定トピックに直接リンクできるWeb日記のほうがありがたいなあと思うわけですが、まあそれだって、Web日記作成支援スクリプトのnDiaryとかtDiaryでそれに近いことが実現できる。実際tDiaryなんか、日記をblog風に運営するためのBlogkitを半分ジョークでリリースしたりしてるくらいだし、テキストサイト更新自動チェック用のアンテナ類も各種存在する。
大森の場合は、いまだにテキストエディタで書いたhtmlファイルをftpしてる状態で、はじめてWeb日記を書きはじめた1995年の4月からほとんどまったく進歩がない。だからこそ、一気にMovable Typeを導入してblog者になっちゃう手もあるかなあとは思うものの、やっぱり腰が重いのは、たぶん自分にとっての「お祭り」が7年前に終わっちゃった感が強いせいだろう。
「でもそんなこと言ってると、いつの間にかblogに包囲されてたりして」
そうなったら、ショッピングモールに立てこもって闘うしか。ってだからそれはblogじゃなくてblobだってば。