SHOH's LIVE REPORTS

Wildhearts (Sep 20,1997, Akasaka Blitz, Tokyo)


やあ、驚いた。いろいろモンダイがあるバンドだとは聞いていたが、今まで見たライブはどれも、その年のベスト5にらくらく入る出来のものばかりだったので、「日ごろの生活態度がどうだってステージでよければそれでいいじゃない」 なんて軽く考えていた。

しかし・・・。

最初の3曲くらいはよかった。前座の STRAWBERRY SLAUGHTER HOUSE でかなりだれてたもので(演奏はタイトだったし態度も好感がもてたし、ヘヴィーなリフもかっこよかったんだけど、曲がつまらなかった)、「さすがだわ! かっこい〜!」 と感動してた。

ジンジャーがまた昔みたいな肩くらいまでの長髪にしてて、両サイドと後ろの3人がみんな肩を出した黒ベストに黒のパンツ、それにぴったりなでつけた短髪というキャロルな風だったのと対照的に、黒の長袖シャツに黒いスカーフを首に巻いたスタイルというのが実に映えていて、このあたりのビジュアル的な面はかなり計算されてるのかも、なんて考えていた。

が、4曲目あたりからどうもジンジャーの様子がおかしいのに気がついた。

曲を始めてもうまく合わなくて途中でやめてしまい、別の曲を演奏する。ギターがハウリングしまくりなのに腹を立てたのか、わざと自分でアンプをいじってひどいハウリングを起こして客に聴かせる。「何が聴きたい?」 と聞いたのに、英語がわからないファンが 「いえ〜!」 と答えたもので、「なんだ、"YES" って曲が聴きたいのか?」 と意地悪を言う。さらに2回目にはもっとわかりやすく発音して、もっていたハンドマイクをゴンと客席に落とした(凄い音がしたけど頭に当たったファンがいたのかも)。さらに曲の途中でギターを抱えたままで客席にダイブし、歌の番になっても浮上できなくて歌なしの曲が続いてしまう。最後にようやくステージに手をさしのべ、ダニーに引っ張り上げられるが、そのときもへらへらと腑抜けたような笑いを顔に張り付かせていて、めちゃくちゃ変。引っ張り上げたダニーのほうは、もうほんとに 「いやだなあ(・_・)」 という顔をしていて、ほとほと愛想がつきたという感じ。とはいうものの、彼も時々ステージ端のほうに行っては置いてあったバケツに吐いてるんだから、お互い様ってやつかも。新曲を紹介しておいて 「"SMOKE ON THE WATER" に似てるんだ」 なんて言ってみたり、アンコール(これがまた果てしなくいつまでも出てこなかった)では実際にその "SMOKE ON THE WATER" をはちゃめちゃな酔っ払いヴァージョンでやっちゃうし(その前に GUNS の "SWEET CHILD O MINE" のギターを弾きはじめたが、ほかのメンバーが続けなかったので途中で終わってしまった)。マイクスタンドを客席に落とすし、ハンドマイクでギターをゴンゴン殴りながら弾いて、そのあとドラム台のところに捨ててきちゃうし。ギターテクが交替のギターをもってこようとしているのに、離れたところから持ってるギターを投げつけるし。あげくにはいやがるリッキーに無理矢理ステージ前に出てこさせて歌わせるし(完全に打ち合わせなしだったみたいで、かなり音痴な彼は必死に歌ってた。ドラムはジンジャーが叩いてた)。

あんなにいい曲をいっぱいもっていて、演奏力もあって、こんなに日本で人気があって(赤坂 BLITZ は今まで見たことがないくらい人が詰め込まれてた。2階席も満員)、いくらでもビッグになれるバンドなのに、こんなことしてるときじゃないでしょ、と思ってしまう。

それでも最後のほうには、「最近こういう破天荒なバンドっていないから、希少価値なのかもねえ」 などとなかばあきらめ、次は何が起こるのかを楽しみにする姿勢になったので、まあそれなりに楽しむことはできたんだけど、下のフロアでやる気十分で飛び跳ねるつもりでいた子たちは、かなりとまどったんだろうなあ。

そんな状況なのに、少しでも盛り上げようと手拍子を叩いたり、歓声を上げたりするファンに対して、「お、こんなとこでも盛り上がってる」 みたいなことを言って喜んでるジンジャーを見て、「才能はあるけど態度のよくない生徒を教育するとき、厳しく叱って矯正するのと、いいところを上手に誉めてのばしてあげるのと2つ方法があるけれど、ジンジャーの場合はどっちが正しい導き方なんだろう?」 としょーもないことを考えてしまった私なのだった。


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