Wildhearts (Oct 19,1996, Shinjuku Riquid Room, Tokyo)
去年の今頃もこうやってライブレポート書いてたなあ…シミジミ。
で、あのときも解散の噂があったにも関わらず、日本のファンの熱い反応に感激したジンジャーが思い直してくれて、再びやる気になってくれたんだけど、またもや同じ状況に。どーしていつもそうなの、と思いながらも、考え直してもらうためならどんなことでもしてみせる覚悟(ほんとか)で行った新宿リキッドルーム。
ソールドアウトだと聞いていたので、物凄い混雑を予想していたけれど、会場内は思いのほかすいていた。多分プロモーターが事故を恐れて、あまりいっぱいいっぱいに詰めこまなかったんだと思う。この前ここに来たのは GOTTHARD だったけど、あのときのほうが人は多かったと思うもの。
さて、登場するなり、「みんなに謝らなくてはならないことがある」 ときた。「げ、いきなりかしら」 とびびったら、解散の話じゃなくて 「俺ののどが……いたーい(日本語)」 と訴えるジンジャー。あのねえ、子供じゃないんだから。
いきなり2曲目で "SUCKERPUNCH"、次に "I WANNA GO WHERE THE PEOPLE GO"(そういえば、ステージに置かれたアンプには 「I WANNA GO WHERE YOU TOUR」 って書かれていたような気がする)ときてしまったので、もう会場キレまくり。前のほうではダイブだのローリングだの人が飛び交っている。じっとしてる頭なんてひとつもない。みんなピョンピョンと上下に跳ねている。もちろん私も跳ねている。
ジンジャーは黒の長袖シャツに黒のレザーパンツ、髪は茶色っぽくて去年よりは長い、あごのところに少し髭をはやしている。服装や髪型のせいか、去年は街の不良のあんちゃん風だったのが、今回は大人っぽく落ち着いた男性に見えてしまい、なんだか少し胸がときめいてしまった。酒飲みだし、言うことはコロコロ変わるし、つきあったら苦労が耐えないけど、でも、断れないタイプよねえ、などとしょーもないことを考えながら跳ねる私。
みょうに丁寧で、高めの声で発する 「ありがとうございます」 は今回も健在。"SUCKERPUNCH" の途中、みんなテンション上がりまくりのときに、改まって 「ありがとう」 とか言われると、なんかびっくりしちゃう。
ジンジャー、途中でも 「喉が痛くてたまらないから、みんな一緒に歌って手伝ってくれよ」 とか言ってたけど、そのわりにはちゃんと声を出していて、シャウトするときも思い切り大声出してたし、偉い偉い。それにダニーとジェフが一生懸命大声でコーラスつけてたので、それもジンジャーのつらさをカバーしていたと思う。この前の来日のときも、一見どーしよーもないあんちゃんばっかりのバンドに見えて、その実演奏はうまいしコーラスもばっちりだして驚かしてくれたんだけど、ほんとにいいバンドなのよねえ。
途中、客席から誰かが栄養ドリンクの瓶を渡したら、ちゃんとお礼を言って飲んでいた。シュッシュっていう喉に吹きつけるスプレーみたいなのも使ってたなあ。元々しゃがれた声だから、風邪をひいても歌う声には支障はないだろうけど、本人はつらいよね。それでも、最初から最後までジンジャーは元気いっぱい、歌っていないときにはステージを右に左にと走り回り、客席に向かってアピールしてみせる。
途中、客席に歌わせるところで、あまりにもみんなが大声で歌うものだから、ジンジャーったら歌うのやめてステージにねっころがっちゃった。ジェフとダニーが客席を煽り、何小節か繰り返してやっと起き上がったジンジャーは、かっこよくギターをならし、キメキメで曲を終わらせて 「みんな上手だったぜ!」 と褒めてくれた。
今夜いちばん驚いたのは、"SICK OF DRUGS" が始まったときに、ステージ横から日本人の男性がダーッと走り出てきてステージの向こうまで行き、スタッフからギターを受け取って弾き始めたとき。おまけにジンジャーにうながされて、歌まで歌ってしまうんだから。日本のバンドの誰かがゲストで参加したのかなあと思っていると、次の "RED LIGHT-GREEN LIGHT" (このときの照明があのふざけたビデオクリップ同様、赤と緑のライトを交互に照らすというやつで、まったく連中ときたらって感じで苦笑) も一緒にやってしまい、ステージを去っていった。誰だったんだろうとジンジャーのMCを待っていたら、なんとレコード会社イーストウエストの担当社員だったという。
やっぱりこれが最後ということで、遊びの要素が多かったのかなあ。エルビス・コステロ(ジンジャーってば 「VERY UGLY」 って2度も言ってたが、なにか恨みでもあるのか? )の曲をカヴァーしたのも驚きだったけど、アンコールでは遊びっぽく「PRETTY VACANT」 を演奏してダニーが歌ってみせ、次には 「PIPELINE」 が始まって、ローディが出てきて一緒にドラムを叩いてみせるという趣向。もう完全に遊びまくり。
それでも最後に "DON'T WORRY 'BOUT ME" の大合唱が客席から始まったときには、なんだかうるうるしてきそうになって、ステージの上のメンバーも思いがけないほど大きなみんなのコーラスにとまどったような顔をして立ち尽くしていた。で、ひょっとしたら連中も泣くんじゃないかと思ったときに、ジンジャーが客席に飛び込み、大混乱に。おかげでコーラスは止まってしまい、涙の幕切れは回避されたのでした。
でもね、それまでのライブに行った人の話だと、途中で解散するとかいう話が必ず出てたみたいなんだけど、きのうのライブでは 「これが東京での最後の夜だ」 とかいうMCはあったけど、解散という話は一度も出なかった。曲間に 「SAYONARA AMIGOS」 という言葉は聞かれたけど、あれはどちらかというとROMONES のパクリではないかと思ったし。
なんとなくジンジャーの気持ちの中で 「もう少しがんばってみようかな」 って思いがふくらんできたんじゃないかと期待している私です。こんなにメロディアスでヘヴィーでパンキッシュな音楽をやれるバンドって、そうそうみつかるもんじゃないと思うのだ。失いたくない。ね。
汗びっしょりになったTシャツを脱いで、新しいのに着替えてから外に出たらポツポツと雨の粒が。「あれ?」 と思っているうちにどんどん降りが激しくなって、あっという間にドシャブリの雨に。なんか連中をひきとめる私たちの涙を束にしたみたい、って思っちゃった。でも、その雨もライブのあとの疲れをビールで癒している間に上がってくれたし、これはもう未来は明るいってことよね!←思いこみってやつです(^_^)ハイ