Vince Neil (Jan 9,1996, Shinjuku Riquid Room, Tokyo)
えーと、私は「CARVED IN STONE」 はあんまり気に入っていなかったもので、正直言ってライブにはMOTLEY CRUEの曲を目当てに行きました。なにしろMOTLEY時代の彼だったら、あんな小さなクラブで間近に見るなんて不可能でしたからねぇ。
だから、しょっぱなから「KICK START MY HEART」 で始まったときには「わあ、きたきた!」とか思って、思いっきりのってしまったのだ。でも、まさかあそこまで徹底してMOTLEY路線で行くとは思わなかったなあ。「RED HOT」までやるんだものなあ。
ベーシストは美形だし、ドラマーも若くてほっそりしているし……あれ、でも待てよ、あのベーシストってニッキー・シックスの若い頃そっくりだし、ドラマーのあばら骨の浮き方はトミー・リーみたい。三十郎さんご贔屓のギタリストは、ミック・マーズとは似ても似つかない筋肉質タイプだったけど、全体的なビジュアル面からいうと、なんともMOTLEYライクな顔ぶれだったんですね、今回の来日メンバー。みんな黒髪だしぃ。
そのせいかどうか、とにかく新譜からの曲はノリが悪い。前にTVで見たインタビューでは、とにかくあのアルバムに関してヴィンスの反応が悪かった。プロデューサーも、自分が選んだわけではなくて、レコード会社からの紹介だったとはっきり言っていたし、結局は作らされたアルバムだったのかも。
それにしてもヴィンス、太った。前も決してスリムとはいえない体だったけど、それでもなんとなく意識のどこかにかっこよく見せようという緊張感が働いていて、ステージで動いているとかっこよく見えてしまったものだけれど、今回の彼はただの元気のないおじさんにしか見えないのはなぜ?
私が初めて彼のライブパフォーマンスを映像で見たのが、モスクワでのBON JOVIたちと一緒の例のコンサート。あのときのヴィンスはほんとうに凄かった。それまでの出演者(SKID ROWとかCINDERELLA)にはなかった、大会場を一瞬のうちに掌握してしまうカリスマ性が感じられた。たいして歌がうまいとも思えなかったのに、一挙手一投足から目が離せない。ロックスターってこういうものなんだ、ってそのとき初めて納得した。
そんな彼にクラブ・ギグは似合わない。大スターがドームや武道館公演の合間のファンサービスにやってるわけじゃない。クラブしかセッティングできなくて、しかもそれすら完売できなかったのだ。いくらふだんっぽく、気楽にやってるように見せても、おしつぶされそうになってる彼の自尊心が背後から覗いているようで、なんだか涙が出そうになっちゃった。
さて、ここでちょっと話はそれますが、きのうCCRのライブに行きました。これはまさに懐メロ路線。 会場に来ていた人の半分くらいは40〜50歳くらいのおじさん達だったし、セットリストはすべて過去のヒット曲。新曲皆無。多分バンド活動なんてしてないんじゃないかなあ、ふだん。まあ、この前のEAGLESみたいなもんですね。
ところが、これがもう楽しかったのなんのって。最初はオズオズと見ていたおじさんたちも最後には総立ち、拍手喝采で楽しむことのできたライブでした。
で、いろいろ考えたんですよね。前の日のヴィンスとやってることはほぼ同じなのに、何が違ったんだろうって。
で、結局はやってる側の気持ちではないか、という気がしてきました。CCRのおじさん達は、過去にやるだけのことはやって、今はきっとそれぞれに自分なりの生活というのを確立しているんだと思うのね。で、ひさしぶりに(25年ぶり!)日本に来て、好きな曲を楽しみながら演奏して、みんなをしっかり楽しませて、自分達も思いきり楽しんで帰ろう……そんな気分でやってたように見えた。
かたやヴィンスのほうは、大切な娘を亡くし、レコード会社の圧力で作らされたアルバムは失敗、さらにはそのせいで契約を切られそうになっていて、過去には武道館をソールドアウトにした実績もある日本で起死回生を狙ってみたのに、小さなクラブでのギグしか設定できず、しかもそのチケットすら捌けない。
こんな状態でやるライブがうまくいくとはとても思えない。もちろん、プロだったらどんな状況でも100%の実力を発揮するべきだ、という意見もあるだろうけど、それはあまりにも非人間的よね。
日本人的な判官びいきかもしれないけれど、今回は許しちゃう。その代わり、次には絶対に楽しませてよね、ヴィンス。でもって、あなたも心から楽しんでいってね。