SHOH's LIVE REPORTS

Van Halen (Oct 26,1995 at Yoyogi Kyogijo, Tokyo)


れそうになって、あせあせと会場に入って行ったら、MOTLEY CRUEが流れてた。「わ、らしいなあ」と思いつつ、席までたどりついたところで場内暗転。ふう、間に合った。

というわけでオープニングの「RIGHT NOW」 からノリノリで始まったVAN HALEN のコンサート。代々木競技場は屋根の近くまで人でいっぱい。ほんとにソールドアウトだったみたい。しかも全員が立ち上がって、手を振り上げ歌ってる。サミーも、うれしそうに何度も何度も感謝の言葉を述べていましたが、3日間の東京公演ソールドアウトというのは、ほんとのファンに支えられてのことだったんだなあ、と改めて思ったことでした。

かつてはナンバー1だったバンドだけど、この間のロンドン公演ではBON JOVIの前座に甘んじてたし、ここのところのグランジ・オルタナブームで本国アメリカでもぱっとしなかったんだろうから、お世辞なんかじゃなく本気で、「JAPAN IS A REAL ROCK COUNTRY」だと感激したんでしょうね。

サミーは、恐れていたほどには太ってなかった。前にTVでウェンブリーでのライブを流したときには、げげぇと思うほどのお腹だったんだけど、きょう目の前まで来て手を上げたときに、短いTシャツの下から覗いたそれは、息を吸っている限りはへっこんでた。←息を吐くとポコンとふくらんじゃうのは仕方がないよね(・_・)

声は時々苦しそうになって、マイケルに歌わせたり、観客にマイクを向けちゃったりするシーンもあったけど、全体としてはよく出ていたほうだと思う。シャウトもしてたし、高い声も伸びてたし。それに、エアロビクスのインストラクターかと思うほどによく動く! ステージの端まで来て、ピョンピョン飛び跳ねるような踊りを見せながら歌うわ、アンプによじのぼって客を煽るわ、ステージに寝ころがってしまうわ、よくやるなあ。

ステージはごくごくシンプル。奥のスクリーンに、カメラ1台で追ったメンバーの姿が写るくらいで、ライティングもそれほど凝っていない。「AMSTERDAM」 のとき、サミーが「これはビデオクリップにもなってないし、MTVでも流したことのないほんとの内輪のホームビデオだよ」と紹介した、アムステルダムで撮ったと思われるメンバーたちのプライベートビデオが流れたのが唯一演出らしい演出といえる。

そういえばマイケル・アンソニーのベースソロがめちゃくちゃ笑えた。なにしろあの体で暴れまくりの騒ぎまくり。最後にはベースをマイクスタンドで弾くという荒技まで見せてくれて、もうお腹の皮よじれちゃった。

アレックスのドラムソロは、実際に叩いてる彼と、スクリーンに写るパーカッションを叩くもうひとりの彼とでツインドラムになっている趣向が。しかし、立ち上がって挨拶する彼をよく見たら、首に鞭打ち症みたいなギブスをはめている。横山弁護士じゃないんだから。一体どうしたんだろう?

エディのソロは、もう説明の必要もないだろうな。例によってネックの先にタバコをはさんで悠々たる態度で超人的なソロを弾きまくる。

おかしかったのは、私の前にいた熱狂的なアメリカ人男性ファン2人。エディがライトハンドの妙技を見せたとき、くるっと後ろを振り向いて「どうだぁ」とでも言うように、私たち日本人を見渡したのだ。やはり郷土の英雄なのだろうか。

このふたり、ほんとうにVAN HALEN が好きらしくて、最初から最後までノリノリなのはもちろん、実に細々と準備をしている。バラードが始まりそうになると、蛍光ライトのスティックをとりだし、隣にいたカップルにまで渡して、4人で動きをそろえて手を振るようにお願いしてるし、サミーがギターを抱えてひとりで歌い出すと、すかさず「55」と書いた標識を頭上に掲げてアピールするし、日本列島の絵と「 WELCOME TO 日本」と書いた大きな垂れ幕をステージに投げるし……(これはちゃんとサミーが拾って客席に見せたあと、自分の腰に巻いて1曲歌い、そのあと客席に投げ返してました)。で、アンコールの最後には、出ましたやっぱりのアメリカ国旗。いやはや、ここまで準備万端整えてる献身的なファンって、日本人でも珍しいと思う。感動してしまった。

そういえばサミーは、客席に黄色いジャンパーが投げ込まれると、それまで着ていたTシャツをやおら脱いで、そのジャンパーを素肌に着、さらに客席から渡されたキャップもかぶって1曲歌ってた。やさしいなぁ、と思うのは、そうして着てみせたあと、ちゃんと客席にそれを返すんですよね。まあ、杉良太郎やエルビスみたいでもあるけれど、返してもらったファンはうれしいだろうなあ。

新譜からの曲が想像以上に多くて、おまけにそれに対する客の反応も予想以上に大きくて、「ああ、ちゃんと新しいファンを獲得し続けているバンドなんだなあ」とうれしくなってしまった。「FEELIN'」 でのサミーのドラマチックな歌とエディの超絶ギター、そしてツインギター(サミーも弾いてた)の迫力はアルバムをはるかに超えていて、これはもうライブでなければ味わえない感動。

もちろん「JUMP」や「PANAMA」での盛り上がりは、もう狂乱状態。「ジャンプ!」というところでは、代々木じゅうの人間がいっせいに飛び上がるものだから、床が抜けるんじゃないかと心配になっちゃった。

いい汗かいた夜だった。


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