Thunder (Nov 16,1997, Empire, Shephard's Bush, London)
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きのうは疲れていたので、後ろのちょっと高くなったところで眺めていたのだが、 せっかくここまで来たんだからきょうは最前を狙おうということになった。
開場は7時だが、熱心なファンは12時くらいから並んでいるらしい。そこまでしなくても大丈夫だろうということで(日本対イラン戦の決着がなかなかつかなかったせいもあり)、4時くらいに列に加わる。すでに20人くらいが並んでいた。幸いロンドンは暖冬で、ジャケットだけで外に立っていても寒くない程度の気温だ。とはいうものの、薄いTシャツ1枚で歩き回っている地元民の丈夫さには開いた口がふさがらない。
会場の裏口には大きなビデオクルー用の機材車が止まっていて、車内のモニターには会場内で行われているリハーサルとおぼしき光景が映っているので、ドアが開くたびにじろじろ見てしまった。これを見る限りでは、きょうのダニーはTシャツ姿のようだ。お願いだから着替えないで、そのまま出てきてね。
ようやく開場、いそいで場所の確保に走る。幸い、端ではあるがルークの立ち位置の最前を確保することができた。ここ巨人の国では最前がとれなければ意味がない。2列目なんて人の頭しか見えなくなってしまうもの。いったん場所をとってしまうと、もうビールを買いにいったりできないけれど、幸い前座のNEVER THE BRIDEというバンドは、すごく私好みのバンドだったので、待つのもちっとも苦じゃなかった。
ヴォーカルとキーボードがかっこいいお姉さん2人で、あとギターとベースとドラムが貧相なおじさんたちという編成だが、このお姉さんたちがとにかく半端じゃないかっこよさ。特にヴォーカルの人は、声といいルックスといい、ジャニス・ジョプリンを思い出させるような姐御肌で、MCなんかもけっこうアニキ入ってるし、色気を売り物にしてないのに、それでいてセクシーというタイプ。曲もけっこうよくて、私、日本に帰ってからアルバム「NEVER THE BRIDE」を買ってしまった。全曲聴いたら超好みのバンドで、けっこう今ハマってる。こういう巡り合いってうれしいよね。
日曜の夜とあって、きのうに比べると客の入りは少し少な目だ。が、1階のスタンディングにいる客のほとんどは、きのうも見た顔ばかり。盛り上がりに不安はない。
きのうと同様"SMOKE ON THE WATER""CAN'T GET ENOUGH"ときて、さらに"IN A BROKEN DREAMS"まで入ったところで始まった。今夜はなんと、ハリーが燕尾服とシルクハット、ステッキでキメて登場し、"LONDON, LONDON"をソロで歌う。ときどき、ミュージカル俳優のようにステッキを投げてみせたりして、なかなかの役者ぶり。歌い終わるやいなやメンバーがよってたかって燕尾服を脱がせ、派手なサッカーシャツ姿の本来のハリーに戻してしまう。うむ、このシーンはビデオのオープニングに使われるんじゃないだろうか?
ビデオカメラは2階正面にひとつ、天井からひとつ、それにステージ前にスタッフが2人、両側についている。私の前にひとりいるので、時々邪魔になるけど、思ったほどは気にならない。下から見上げるようにして撮っているからかな。あのアングルだと、ギターソロのときにルークがものすごく苦しそうな表情をするのが映りすぎて怖いんじゃないかとよけいな心配をしてしまう。
危惧していた衣装だが、ありがたいことにダニーはリハーサル時と同じ紺の半袖Tシャツにジーンズだった。これも決してかっこいいと言えるような代物ではないが、ジャージやポロシャツよりはマシでしょう。聞いた話ではWOLVERHAMPTONでは水色の細かい縞の入ったまるでおっさんのゴルフ行きみたいなポロシャツでステージに立ったそうだから。ジーンズも昔はわりと大き目のをベルトで腰のところをきゅっとしめてはいていたものだけれど、いまではキツキツではいているものだから、ポケットに手をつっこんで出すと、ポケットの裏布が外にはみ出し てしまい、両側ともダランとたれている。それをまた気がつかないままで踊ったり歌ったりしているのが、なんともいえずガキっぽい。でも、いつのまにか直ってたのは、メンバーが注意したのかしら?
ルークは黒地に透かしが入ったような長袖のシャツ、ベンも織り縞の入った黒のシルクのシャツ、クリスにいたってはなんと黒のラメ入りのブラウスを着てきた。おい、なんか間違えてないかい。
セットリストを見ればわかるように、きょうはまさにハイライト集。きのうの"DON'T WAIT FOR ME"を合わせれば、私が聴きたかった曲はほぼ網羅されたと言えるかもしれない。最初に"WELCOME TO THE PARTY"がくるのもまさにツボにはまった曲順と言える。"LAZY SUNDAY"はダニーが「僕らのヒーローであるスティーブ・マリオットの曲」と紹介したSMALL FACESのカヴァー。"THE ONLY ONE"は新曲だ。
ところで、THUNDERのライブでは最前にいてもまったく押されない。ふつうライブが始まる瞬間に後ろからぎゅーっと圧縮されるものだが、みんなきちんと自分の2本の足で立っていて、それ以上前に行こうとはしないので。これってなんだかすごいと思ってしまう。もちろん手拍子を打ったり、踊ったりするときに、軽く体がふれてしまったりするけれど、そんなときには必ず小声で「SORRY」と謝る声がする。おかげで、よけいなことに気をとられずに思う存分ライブを楽しむことができた。
ルークもベンも、きょうはいつもよりヘアスタイルにも気をつかったようで(スタイリストがついたのかな)、ギターを激しく弾いたりステージの上を動き回ったりするときに、その髪がふわふわっと宙になびく姿がとてもすてき。ダニーに髪がないだけに、よりいっそう印象的だった。
"HIGHER GROUND"から"EMPTY CITY"まではもう夢心地。いつもライブのたびに聴きたいと思っていて、でも、そのうちのひとつかふたつしかやってくれないことが多い曲をたたみかけるように演奏してくれるんだもの。"I'LL BE WAITING"のあとに、ルークがカントリー風のフレーズをアコースティックギターで弾いてみせ、「なにかのカヴァーなのかしら? どういう意味だろう?」と思っているところに"UNTIL MY DYING DAY"のイントロを弾き始めたときには、心の中で「うおーっ!」と叫んでしまった。
あまりにもドラマチックな曲ばかりが続くと消耗するからというのか、軽めの曲があとに続き、噂に聞いていた"LOVE WALKED IN"の大合唱。これ、実際に聴くまでは大好きなバラードをみんなでカラオケみたいに歌っちゃうのはいやだなあ、ダニーの歌だけをじっくり聴いていたいのに、と思っていたんだけれど、その場で実際に聴いてみるとこれがもうとってもいい。なんていうのかなあ、全然カラオケっぽくなくて、歌に凄みが出る感じ。ただ甘いだけの曲じゃなくなってる。
新曲は思わず腰が動いてしまうような軽快なリズムのアップテンポの曲だった。ルーク、なにかいいことあったのね、とかんぐりたくなる曲調とタイトルだ。ちょっとポップすぎるきらいがなくもないが、これから練っていくとまた違った感じになっていくんだろうな。
もう最後はこの曲しかない!という"DIRTY LOVE"ですべてをしめくくり、メンバーは笑顔でステージを去っていった。途中のMCでも言っていたが、これからレコーディングスタジオにこもり、新譜の作業にかかるわけで、きょうが「THRILL OF IT ALL」ツアーの本当の最終日、ということになる。なんだか感無量で、終わったあとのプラスチックカップが散乱した床を眺めながら、ぼーっとしてしまった。かなり無理をしてここまで来たが、この手の旅をしたときにいつも感じるように、今回も「思いきってやってきてほんとうによかった」と思えた。この感 激が得られる限り、きっと何度でも(ふつうの人から見たら)馬鹿な旅を繰り返すんだろうなあ。
1. LONDON, LONDON
2. WELCOME TO THE PARTY
3. PILOT OF MY DREAMS
4. HIGHER GROUND
5. I'LL BE WAITING
6. UNTIL MY DYING DAY
7. GIMME SOME LOVIN'
8. EMPTY CITY
9. A BETTER MAN
10. LIVING FOR TODAY
11. DOES IT FEEL LIKE LOVE
12. LAZY SUNDAY
13. STAND UP
14. LOVE WALKED IN
15. EVERYBODY WANTS HER
16. RIVER OF PAIN
17. SHE'S SO FINE
-ENCORE-
18. LOW LIFE IN HIGH PLACES
19. THE ONLY ONE
20. DIRTY LOVE