SHOH's LIVE REPORTS

John Sykes (Dec 3,1995 at Shinjuku Kousei-Nenkin Kaikan, Tokyo)


曜日だとはいえ、5時開演というのはミュージシャンにとっては異常な時間。はたしてサイクシーの状態は……と危ぶんでいたのだが、とんでもない。1曲目からサイクシーはパワー全開。しごく御機嫌で首をこくこく振りながらにこにことギターを弾く姿を見ることができた。ああよかった。

サイクシーは、白と黒の縦縞のスタンドカラーシャツに色の褪せたブルージーンズ。先週TV神奈川の番組に出演したときと同じかっこだ。彼にはよそゆきとかステージ用とか普段着とかの概念はないのかね? でも、こないだのプロモ来日のときにはけっこうお洒落なジャケットとスパッツで決めてたと思うのだけれど。それと、シャツの裾を外に出しているのは、体形が気になり出した証拠か。

怪しいベースのメキシコ人マルコは、赤いチェックの半袖シャツに黒のスリムジーンス。半袖の左袖だけはしっかりめくって、自慢の刺青(「愛」)を見せているのがラテン系らしい。

ドラマーのトミーは白いタンクトップを着ていたのだけれど、すぐに脱いでしまって上半身裸に。それもそのはず、あとでアコースティックセットのとき前に出てきたのを見たら、アーノルド・シュワルツネッガーかグレン・ダンジグかと思うほどの筋肉マン。 セットリストを見てもらえばおわかりでしょうが、5曲目はなんと!LIZZYのあの曲。去年の11月にトリビュートライブで見たときのことを思い出し、思わず「スコットがいないぃ」 と涙ぐんでしまった私。その代わりというわけでもないのだろうが、オープニングのところで、マルコがサイクシーと背中をつけるようにして弾いていたのが印象的だった。でもねえ、ああいうときには腰を動かさないでほしいのぉ。

もっと恐ろしかったのが7曲目のあれ。なにしろいちばん盛り上がるところで、マルコがサイクシーの顔を見ながら怪しく腰を振って後ろにズリズリ下がっていくんですもの。せっかくの名曲だというのに思わず爆笑してしまったではないか。

さて、ここでステージに椅子が運ばれ、アコースティックセットに。サイクシーが真ん中でジェリーロールギター(本人がそう呼んでた)を抱え、右にはトミーがマラカスを振りながらスティックでタンバリンを叩き、左ではマルコがベースを。

ここでの「SHE KNOWS」 は最高! サイクシーのヴォーカルがここまでうまくなったかと思わず感慨にふける。ただしサイクシーは、隣りのトミーのテンポが気に入らないのと、キーボードが入るところを間違えたかで、最初のうちずっと横を睨んでいたのがちと怖かった。さすがに大人になったのか、キレたりはしなかったけど。

「へえ、これをやるのか」と驚かされたあの曲(無理して出した笑い声がつらそう)も意外だったが、「I DON'T WANNA LIVE MY LIFE LIKE YOU」がライブ映えするのにもびっくり。アルバムで初めて聴いたときは「え、サイクシーがパンク?」と驚いたものだけど、繰り返して聴いているうちに耳になじんだのか、元々曲の根底には別のものがあったからなのか、ライブで聴くと全然パンクなんかじゃなかった。フィルと一緒に作ってたら「COLD SWEAT」みたいになってたかも。

本編最後は「WE ALL FALL DOWN」。仲間うちでは「DO OR DIE」とこれと、どっちをやるだろうかというのが話題になっていたのだけれど(なかにはメドレーでやるんじゃないかという暴論も)、やはりこっちだった。そりゃそうよね。曲の構成といい、ギターソロといい、どう考えてもこっちの完成度が高いんですもの。深いファンの方には申し訳ないけど、どうして「DO OR DIE」 を「OUT OF MY TREE」に入れたのか理解できないです、私。

この曲でメンバー紹介。最初にキーボード、次にマルコ、最後にトミー、そしてロードクルーやスタッフへの感謝の言葉なんかも聞かれて、さすがにサイクシー大人になったなあ、と感慨にふけっていると、すかさずマルコが、まるでプロレスラーを紹介するかのような大げさなトーンで「ジョーン・サイクス」。それに答えるサイクシーが、ちょっとはにかんだような、得意そうな、例の独特の表情を見せて手を振り回していたのがラブリーだったなあ。

で、アンコール1曲目は「PLEASE DON'T LEAVE ME」。ああもう最初のギターを聴いたとたんに背筋がぞくぞく。こんなに美しい曲がこの世の中にいったいあといくつあるだろう。これ1曲書いただけでも、サイクシーがこの世に生まれてきたことは神様から私たちへの贈り物だってことが納得できてしまう。

続いてまたまたLIZZY の「DANCING IN THE MOONLIGHT」。これは、この前のトリビュートではやらなかった曲だけに、妙になつかしい感じがしてしまう。ただ、きょうはこの曲、ちょっと手抜きっぽくて、わりとあっさりめに終わってしまった。まあ、知ってる人が少なくて手拍子のタイミングとかも合わなかったりするから仕方がないとも言えるんだけど……。

で、いったん引っ込んだものの、もちろんまだあの曲をやってないから誰も帰ろうとしない。拍手がどんどん強くなりメンバーが再度登場。そして、あの名曲「STILL OF THE NIGHT」! これはもう凄かった。なにがって、元曲とはまったく変えた、というかふくらませたギターソロ。歌は局限までカット。これはもうWHITESNAKEの「STILL OF THE NIGHT」じゃなくて、JOHN SYKES の「STILL OF THE NIGHT」なんだって、素直に納得できる内容だった。思えば最初にBLUE MURDERで来日したときから、とにかくこの曲にこだわりまくり、初来日のときなんか弓まで使って対抗していたサイクシーだけど、ヴォーカルの格が違いすぎるために、「そりゃあ作ったのはサイクシーだろうけど、カヴァデールが歌わなくちゃねえ」と内心思ってしまっていた私なんだけど、きょうというきょうは負けました。あそこまで自分のものにされてしまったら、これは素直に認めるしかないかなあ、って。

というわけで、日本公演で初めての日本語「ありがとう」を残してサイクシーは去っていった。このあとまだいくつかの公演があるけど、多分セットリストは同じはず。あとは彼のギターと声の調子がどうなるかで、内容が微妙に変わっていくことでしょう。

今回のライブ、新譜を出したあとのものにしては「OUT OF MY TREE」からの曲が極端に少ないと思った。たった5曲。それに比べてTHIN LIZZYの曲が4曲(フィルとのソロも含めれば5曲)、WHITESNKAEが1曲、そしてBLUE MURDER が5曲。どうもサイクシーは「OUT OF MY TREE」が気に入っていないんじゃないか、という気がする。この日本公演のあと果たしてSYKES としての活動を続けるのかどうか、ちょっと気になりますね。マルコとはずっと一緒にやっていくのだろうけれど。

1.RIOT
2.SOUL STEALER
3.COLD SWEAT
4.STANDING AT THE CROSSROADS
5.JAILBREAK
6.I DON'T BELIEVE IN ANYTHING
7.THUNDER AND LIGHTNING
8.SHE KNOWS
9.JELLY ROLL
10.JESUS & MARY
11.B****
12.I DON'T WANNA LIVE MY LIFE LIKE YOU
13.WE ALL FALL DOWN
-ENCORE-
14.PLEASE DON'T LEAVVE ME
15.DANCING IN THE MOONLIGHT
-ENCORE-
16.STILL OF THE NIGHT

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