SHOH's LIVE REPORTS

Supergrass (Sep 28,1995 at Shinjuku Liquid Room,Tokyo)


れそうになって、あわてて会場に入ると中はすでにうす暗く、地球をバックに立つ3人のシルエットのロゴを使ったバックドロップがステージ正面にかかり、そこにほんのりライトが当たっている。

ほとんど満員状態で、当然のようにフロアにはすでに隙間なんてない。こうなったら全体を把握するほうに重点を置こうと心を決め、PA卓のうしろ、ステージ正面が見える場所に陣取った。やがて客入れの音楽がフェイドアウトし、静かなオーケストラの曲が流れる。まるでこれから文芸名作映画でも始まりそうな雰囲気。ステージは暗くなっているが、バックドロップに赤いライトが当てられていて、なにやら怪しげな雰囲気がただよっている。

そしてメンバー登場! なんのてらいもなく、ばらばらと出てくると「くんにちは!」と元気に挨拶し、いきなりノイジーなギターがBGMをかき消すように鳴らされる。アルバム1曲目の「I'D LIKE TO KNOW」でスタートだ。

ギャズは、写真で見るよりがっちりしていて、大人っぽく見える。とても19歳には見えない。もっと大人っぽいというか、おじさんぽいのがベースのミッキーで、彼は少しダイエットしたほうがいいかもしれないなあ。ドラムのダニーは、写真だとちょっと病気っぽいけど、実際に見るとけっこう華奢で可愛くてお茶目。

しかし、驚いたのはギャズの服装。黒い半袖Tシャツの胸のところに、ビニールテープか何かで縦に大きく「日本」と貼ってある。私は気がつかなかったのだけど、ミッキーの白いTシャツにも同じ「日本」が貼ってあったらしい。一体なにを考えているのやら。それともファンからのプレゼントだろうか?

フロアはすでにひとつの大きな生き物のようにうねっている。ステージが砂浜でフロアが海と言ったほうが近いかな。ステージめがけて大きくうねる波が寄せては返し寄せては返し……これが最後まで続いたのだから、SUPERGRASSのファンってやっぱり若いんだなあ。

さて肝心の演奏だが、これが意外に(と言ったら失礼か)うまい! 特にギャズの声がすごく力強くてよく通るので、実にライブ映えする。ミッキーの女性のように高いコーラスもアルバム通りで(ちょっと最初の2曲くらいマイクの調子が悪くて聞こえにくかったのだけれど)、これがまたかっこいい。

ドラムも、時々もたったり走ったりはするけれど、実にスピーディで切れがいいし、ベースもギターもいい音出してる。サポートのキーボードはギャズのお兄さんだそうだけど、この人がパートタイマーみたいで、おかしい。なにしろ、曲の途中でも自分の出番が終わると袖に引っ込んじゃうのだ。

ギャズがギターソロを弾くときは、ミッキーと向かい合う形でミッキーのほうに歩いていくような感じで弾くことが多いんだけど、これがすごく躍動感があってかっこいい。普通ギタリストって、客席に向かって目なんてつぶっちゃって、ナルちゃん状態で弾きまくるじゃない?そういうところがないのもギャズらしくていいなあ……なんて、けっこう贔屓の引き倒しになってるかも。

アルバムではわからないけれど、バンドとしてタイトだなって実感したのが、ピシッと決まる無音状態。ほんの1拍なんだけど、このタイミングって、けっこうむずかしいと思う。ノリノリで踊りながら聴いてるところをスッとはずされると、「こいつぅ、にくいにくい!」と思わず肩を叩きそうになってしまう。

3曲目に入るところ、ダニーがカウントをとってかっこよく入るはずだったのだが、カウントをとった拍子に左手のスティックを落としてしまい、あわてて予備をとろうとしたがこれまた失敗。5秒くらい遅れてようやく両手にスティックがそろったのだった。「何してんだ、あいつ?」というようにギャズが振り返って見てたのが笑えた。

全体として、ほとんどMCらしいMCはない。「ありがとう」「THANK YOU」「MAKE A NOISE」くらいかな。が、4曲目に入るところで、ギャズは何を思ったか客に手拍子をさせた。これがまた全然曲と合わないテンポで始めたもので、最初のうち何を演奏したいのかよくわからん状態。しばらくたってから、あ、「TIME」だったのかって感じになってしまった。珍しいことにこの曲はアルバムよりスロウなくらいゆっくりした歌いっぷり。曲が終わったとき、客がクールダウンしたかと心配したギャズは「ごめんね、ちょっとスロウすぎたね」などと謝っておりました。

今回のライブのベストチューンはと聞かれたら、私は「ODD?」を推したい。「MANSIZE ROOSTER」は楽しかったし「ALRIGHT」のギターは気持ちいいし「CAUGHT BY THE FUZZ」も 「LENNY」もよかったけれど、背筋に鳥肌たつかと思ったのはこれ。キーボードの入り方といい、途中からのギターの音色といい、ギャズの高音の張りといい、これはSUPERGRASSでなければ表現できない世界なんじゃないか、って感じてしまった。次の「SHE'S SO LOOSE」へのつなげ方も見事。

新曲はミディアム・テンポの割りとふつうっぽい曲。はっきり言って、それほどいい曲とは思えなかった。ちょっとお風呂で口ずさんでいたらできちゃった、みたいな曲かな?

「CONDITION」 のときには、ケニー・ロギンスがどうとかこうとかって言ってたけれど、この曲「ALRIGHT」 の解説ではミッキー・ニューベリーという人の名前が書いてあったような? ケニー・ロギンス(ロジャース?)も歌っていたのかしら?

30分たったかたたないかで本編終了。「さようなら」なんて言って引っ込んでしまったけれど、これで私たちが納得するはずがない。

アンコール1曲目はミニアルバム「ALRIGHT」 にもライブが収録されていた「STRANGE ONES」。あれも確かアンコール1曲目だったっけ。大体どこでもセットリストは一緒なのかも。

次の曲に入る前に、ダニーが「お母ちゃん、ぼく(指を)切っちゃった」と悲しげな声を出した。ドラムセットのどこかに引っ掛けて切っちゃったらしい。すると驚いたことにギャズがドラム台のところまで行き、ダニーの指をチュッチュっとなめてあげたのでした。ギャズはダニーのお母さん代わりなのか……?

アンコール3曲目は、なんと「STONE FREE」! ギターの音色も歌う声も、急にジミヘンっぽくなったのが笑える。ギャズってジミヘン・フリーク?

そしてオーラスはもちろんこれ。「LENNY」! いかにもSUPERGRASSのライブらしく、大騒ぎのうちに幕を閉じたのでした。

しかし、噂には聞いていたけれど、ほんっとに短かった。あとから数えてみると15曲もやってたのだが、実感としては10曲くらいしかやらなかったような感じ。メンバーの体力から言っても、もっとできるはずだし、曲だってもっとあるのにと思うけど、今の彼らはアコースティック・タイムをやったり、スロウなバラードをはさんだりといった演出で2時間のショーをやるより、1時間弱でも最初から最後まで突っ走って、風のように猿(ひええ、ぴったりすぎる誤変換)去るライブがお似合いなのかもしれない。

1.I'DLIKE TO KNOW
2.SITTING UP STRAIGHT
3.MAN SIZE ROOSTER
4.TIME
5.ALRIGHT
6.ODD
7.SHE'S SO LOOSE
8.NEW SONG(IF YOU WANT TO STAY HOME?)
9.LOSE IT
10.CONDITION
11.CAUGHT BY THE FUZZ
-ENCORE-
12.STRANGE ONES
13.WHERE HAVE ALL THE GOOD TIMES GONE? -ENCORE-
14.STONE FREE
15.LENNY

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