SHOH's LIVE REPORTS

Sting (June 22,1995 at Yoyogi Kyogijo, Tokyo)


終日とあって、実に実にリラックスした気持ちのいいステージでした。きょうの彼を見ていると、やはり初日の武道館では相当緊張していたんだなあ、といまさらながら胸が痛くなってしまったりして。

どのくらいリラックスしていたかというと、

* 最初の曲が終わって「どうもありがとう!」と元気に叫ぶところで、「こんばんわ!」のオマケがついていたり・「SEVEN DAYS」の途中で、スティングが「COM'ON VINNIE!」と叫んでドラムがジャジャジャンと入るところで、きょうは異様に大きな音で後ろから叩きつけるようなドラミングだったんだけど、その音のデカさに思わず首をすくめてしまったスティング、何度も何度も後ろを振り返っては笑っていたり。 * 曲の途中で何度も「さあ、ご一緒に」というように手を客席にさしのべてみたり。 * 「WHEN WE DANCE」 が終わってステージが暗くなると、そのままステージの前を横切って袖にひっこむような動きを見せ、そこにケニーがキーボードで「ENGLISHMAN IN NEWYORK」 のイントロを弾くと、振り向いて「やれやれ」というジェスチャーをしながら正面にもどっていったり。

な〜んて感じ。思いっきりお茶目でやんちゃ坊主みたいな面をいっぱい見せてくれた、きょうのスティングなのでした。

最後の「FRAGILE」 にいたっては、スタッフがギターを持ってきても、ぼーっと突っ立ったまま。仕方なくそのスタッフがストラップを肩にかけてあげ、左手を持ち上げてネックをつかませ、右手を弦に当ててあげるという、まるで赤ちゃんのようにお世話をしてもらうスティングなのでした。

開演前、いつにもまして入念なサウンドチェックをしていただけあって、代々木とは思えないほどの音のよさで、きょうはラッキーにも彼の真正面だった私は、まるで小さなクラブで見ているかのような気分になってしまいました。

細かいミスはけっこう多かったんだけど(入るところをちょっとはずしたり、歌い出しの音が少し違ってたりといった)、そんなことまったく気にならないくらい、のびのび気持ちよく、心からライブを楽しんでいるようすのスティングに、こちらまでニコニコ顔になってしまった一夜でした。

今回のライブ、MCがほとんどないにも関わらず、まったくだれるところがなかったというのは、曲間のつなぎが実にスムースという点が大きかったと思う。ギターチェンジもすばやくて、調整もよくできていたみたいだし(1日目の最後、ギターをギターテクニシャンに渡したドミニクがねぎらうように腕をたたくシーンを目撃しました。かなり満足してたんだろうな)。

「FRAGILE」 については、書き方が少し舌足らずだったみたいです。エレキ・ギターとは言っても、単にギターにシールドがついていてアンプとつながっていた(=アンプラグドではない)というだけのことで、別にスティングがジミヘンみたいにギターを弾いていたわけではありません。ギターの音色そのものはアコースティックのときとほとんど変わらず、例の弦がこすれる音もしっかり聞こえました。強いて言えば、音の突き抜け方がシャープだったってことくらいかな。私はライブで彼がひとりでアコースティックギター1本で歌うほうに慣れてしまったので驚いたのですが、そうでなければ、むしろアルバム通りの音だと言えます。

で、セットリストは下記の通りです。前回いらした方は、「なんだ、ほとんど同じじゃないか」と思われるでしょう。ほんとにそうなんですね。「WHEN WE DANCE」 が入って、POLICEナンバーが少し増えたくらいかな、違いは。ただ、「SHAPE OF MY HEART」 が、先日公開された映画「レオン」で効果的な使われ方をしたあとだけに、より深く心にしみてきたり、発売直後のPOLICEのライブアルバム及びビデオとPOLICE 時代の曲を聴き(見)比べることができたりと、ファンとしては1粒で2度おいしい内容になっていたと思う。

個人的には「DEMOLITION MAN」 「WRAPPED AROUND YOUR FINGERS」「MAD ABOUT YOU」 「WE'LL BE TOGETHER」 あたりも聴きたかったのだけど……。

「WHEN WE DANCE」 の最後に、TEMPTATIONS の「MY GIRL」 そっくりのリフが入るでしょ? あそこのとこ、きょうははっきりとわかる形で2フレーズくらい元歌を歌っていました。あれはかっこよかったなあ。R&B寄りのスティングというのも魅力ですよねえ。期待しちゃおう。

新譜を出したわけでもなく、BON JOVIみたいにベスト・アルバムが爆発的に売れたわけでもないのに、どうしてこの来日という疑問もあったのですが、今回の彼の声を聴いて、私、確信してしまいました。

スティングは、この前のライブのお詫びみたいな気持ちで来日したんじゃないかなあ。自分自身にとって実に不本意な形のライブしかできなかった、というのがプロとしてすごく心に残っていたんじゃないか。ほんとはもっとちゃんとしたパフォーマンスができるんだ、ってことを示したかったんだと思うんです。

少なくとも私なんかは、「スティングもそろそろ年だから、あんな高いキーで歌わなくても」などと放言していたことを、海よりも深く反省したのでした。

いい曲を書き、いいアルバムを作るだけじゃなく、ステージでいいパフォーマンスを見せること、それがスティングのミュージシャンとしての自己実現の形なんだろうなあ。そんな彼にいつまでもどこまでもついていきたい、と思った今回のライブ体験でした。

1.IF I EVER LOSE MY FAITH IN YOU
2.IF YOU LOVE SOMEBODY SET THEM FREE
3.LOVE IS STRONGER THAN JUSTICE
4.SEVEN DAYS
5.FIELDS OF GOLD
6.SYNCHRONICITY II
7.EVERY LITTLE THING SHE DOES IS MAGIC
8.ROXANNE
9.IT'S PROBABLY ME 〜 SISTER MOON 〜 IT'S PROBABLY ME
10.SHAPE OF MY HEART
11.WALKING ON THE MOON
12.MESSAGE IN A BOTTLE
13.WHEN WE DANCE
14.ENGLISHMAN IN NEWYORK
15.KING OF PAIN
16.WHEN THE WORLD IS RUNNING DOWN
-ENCORE-
17.SHE'S TOO GOOD FOR ME
18.NOTHING 'BOUT ME
19.EVERY BREATH YOU TAKE
-ENCORE-
20.FRAGILE

P.S.そういえば、ドミニク君、きょうは黒いタンクトップでした(パンツは同じ)。半袖のオヤジTシャツよりもっと似合わ なかったです。


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